私、ツインテール戦士になります。   作:阿部いりまさ

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ADDITIONAL FILE.4 禁断のツインテール宣戦

 テイルホワイトとの激闘を繰り広げた国立競技場から数十キロ離れた改装中の店舗の中で、リアルミーティアは体を休めていた。

 変身を解いたその容姿は、リアルと瓜二つだ。彼女が双子だと証明するのにはそれで充分だろう。

 破損したエモーショナルステッキを見て、彼女は目を細める。

 誤算だった。

 テイルホワイトのことはあらかじめ調べておいたが、まさかエモーショナルステッキに対応するために髪型を変えて戦うとは思っても見なかった。

 一日で決着をつける予定であったが、まさか撤退するハメになるとは……彼女は歯をくいしばる。

 

「……私は負けてません」

 

 彼女の心はまるで折れていない。

 エモーショナルステッキを小さく畳み込み、ポケットの中へ突っ込む。こうすることで、ステッキの多少の破損は自動で修復される。認めたくはないが、エレメリアンの技術は非常に優れているのだ。

 ステッキの回復まで、多少の時間がかかる。しかし、彼女がその間なにもしないわけではない。

 ステッキの戦術に対応された以上、どのようにテイルホワイトを倒せばいいのか考えなければならない。そのはずだが、彼女の目に迷いはなかった。

 誤算だった。

 そう、前の誤算とは別にもう一つ。こちらが優位となる嬉しい誤算があったのだ。

 これをうまく利用すれば、私がテイルホワイトに負けることなどありえない。彼女はそう確信している。

 

「ええ、問題ありません。ただこの時間は有意義に使わないと損です、ね」

 

 自分に言い聞かせるように、そう呟く。

 月の光が窓から差し込んだとき、彼女は満悦の表情を見せていた。

 

 

 初めてリアルミーティアと戦ってから今日で二日。

 毎日警戒しているものの、一向に彼女は姿を見せない。さすがにずっと気を張り詰めているせいか、私にも他の全員にもだんだんと疲労の色が見えてくる。

 リアルミーティアがツインテール属性を諦めた、などという仮定は立てるまでもない。彼女はどこかで虎視眈々と機を伺っているのだろう。

 

「へえ、テイルホワイトとテイルシャドウには強化フォームが……! 髪型を変える以外にもそんなことができるんだね!」

「うん。私がマキシマムチェインで黒羽がアンリミテッドチェイン。私はもうマキシマムチェインにはなれないんだけど……」

「え、どうして?」

「その強化フォームになるためのアイテムが壊れちゃって。もともと作り直せないって言われてたんだけど、最後の戦いだから無理しちゃって。黒羽はまだアンリミテッドチェインになれるんだよね?」

「……ええ」

 

 私のマキシマムバイザーは半年前の最終決戦の際に、無理して使用したために壊れてしまった。

 マキシマムバイザーはもともと修復や量産ができないとフレーヌに言われていたし、聖の五界(セイン・トノフ・イールド)を倒せたなら特に問題はないだろうと思っていたのだ。

 まさか半年後にこうなっていようとは。今の私にバイザーがあれば、かなり有利になるとは言えるんだけど……。

 救いがあるのは黒羽がいてくれること。そしてその黒羽はアンリミテッドチェインになれる、ということだ。

 全てを黒羽に任せる気はないけど……もしかしたら黒羽一人で済んでしまうのではないか。

 

「それよりエモーショナルステッキの開発はリアルなのよね? ならリアルミーティアが使える能力とか教えてほしいわ」

「もちろんだよ」

 

 よくよく考えたらリアルから故郷の世界のことなどは聞いていたけど、エモーショナルステッキの能力などの詳細はまだ聞いていなかった。

 はじめて戦ったときはリアルに訊いている暇もなかったからしょうがないけど。エモーショナルステッキについて、私たちが知っておくのに越したことはないよね。

 

「まず大前提としてエモーショナルステッキは自身のツインテール属性を力の源として使用者をツインテールの戦士へと変身させる。君たちのテイルギアと同じだよ。そしてエモーショナルステッキ最大の特徴は、戦況に応じてステッキの形状を変えること」

「確か剣と銃とハンマーと……あと翼だった」

 

 リアルの口ぶりからすると、どうやらステッキのまま相手を攻撃することはほとんどなさそうだ。

 剣と銃とハンマー、そして空を飛ぶための翼。これだけの万能な力……ステッキを作ったリアルも、使いこなすリアルミーティアも相当すごい。

 私は使っていた武器を確認するように口に出したが、リアルはかぶりを振ると驚くべき事実を口にする。

 

「ステッキは使用者の使い方次第で進化していく。私はあと一つ、鞭にして戦う姿を見たことがあるよ。ただもしかしたら、私の知らない間にさらに使える武器を増やしているかもしれない……」

 

 なんと、先の四つ以外にもそんな能力があったとは。

 しかもどうやら、リアルミーティアはさらにステッキの能力を引き出して新たな力を得ているかもしれないらしい。

 自分が持ち、相手がエレメリアンならばかなり心強いステッキだけど……敵に回すとかなり厄介だ。

 

「もしかしたら奏の三つ編みとポニーテールみて新しい武器を作ってたりして」

 

 志乃は冗談っぽく言うけど、充分にありえる話だ。

 私が二日前に優位に立てたのは、エレメリンクによる奇襲が成功したからともとれる。フロストバンカーとブライニクルブレンドを知ったリアルミーティアが、対策するために新しい力を目覚めさせていないとは言い切れないのだ。

 リアルでさえ知らない能力を持っている可能性があるのなら、あらかじめ作戦を練っていても無駄になってしまう可能性があるのか……。

 どうしたものかと悩んでいたその時、ポケットに入れていたスマホが震えた。

 ラインだ……送り主を確認すると、嵐だった。

 

「嵐から?」

 

 志乃に気づかれてしまった。いや気づかれても全然いいんだけどさ。

 

「うん。なんかこっちに来れなくてごめんとかいろいろ書いてあった」

「ああ、そういえば彼いないわね。世界の危機なのに姿を見せないなんて感心しないわ」

「一昨日はしょうがなかったけど、そういえばもう来てくれてもいいよね!」

 

 まあ、嵐も嵐で大変なのだ。

 ここは一応、やつの名誉のために弁解しておいてあげるとしよう。

 

「なんか今日からプロのチームの練習に参加したり、オファーしてくれたチームと交渉したりするみたい。さすがに将来のことだし、無理は言えないって」

「え、プロって……彼ってそんなにすごい人だったの……?」

 

 志乃はすぐに納得していたが、黒羽はかなり驚愕している。

 それだけ努力してきたとはいえ、もう勉強しなくていいと考えると嵐が羨ましくなるよね。

 この場にいない人の話題でまあまあ盛り上がりながら、私たちは簡単な昼食を済ませた。

 一息ついたところで、あらためてリアルにリアルミーティアのことを訊こうとした、その時。

 

「この音は……!」

 

 エレメリアンの出現……いや、今回に限っては属性力の高まりを検知するアラートだ。

 

「動きはじめたわね」

 

 黒羽がモニターを操作すると、画面に大きくリアルミーティアが映し出され、続いて彼女のいる場所が地図で表示される。

 リアルミーティアがいるのは……国立競技場から東に十キロほど離れた臨海公園だ。

 その公園にはもちろん、近くの世界的なテーマパークにも夏休みの今は観光客で溢れている。そんなところにわざわざ現れたということは……!

 

「属性力を……奪っているわね」

 

 モニターに大写しにされたリアルミーティアはいくつもの光輪を使って、観光客から属性力を奪っていく。

 こうしてはいられない。

 私たちが行けば一昨日のように属性力を返してくれるかもしれない……そんな過度な期待を持つわけではないけど、とりあえずは属性力奪取を止めることはできる。

 私がテイルギアを可視化させると、黒羽も頷きながら右手に色違いのテイルギアを装着した。

 

「「テイルオン!」」

 

 二人揃って、それぞれテイルホワイトとテイルシャドウへの変身が完了する。

 

「あれ、黒羽。変身! じゃなくて奏と同じテイルオンにしたの?」

「ええ、今回はホワイトに合わせてみたわ」

 

 まさかまた、こうして二人で変身することになるなんてね。

 私と黒羽はそれぞれ転送ゲートに入り込む。

 

「オペレートよろしくね。志乃、リアル!」

 

 転送される直前、基地に残る二人に声をかける。

 私のお願いに志乃は敬礼して応えるのを確認する。しかし、リアルは……反応を見る前に、私とシャドウはリアルミーティアのいる臨海公園へと転送されてしまったのだった。

 

 

 臨海公園に到着し、私とシャドウはリアルミーティアと対峙する。

 彼女は大観覧車の下で、属性力奪うその大きな光輪をくるくると回しながら立ち尽くしていた。

 私たちを見つけるとニヤリと笑みを浮かべ、一昨日とは違って属性力を返すことなく光輪を小さくしてしまった。

 やはり、返してくれないか。そうなると、今日は絶対にリアルミーティアを逃さずに倒さなければならない。

 

「テイルホワイト、そしてテイルシャドウ。この世界を守るツインテールの戦士、二人がこうして来てくれて嬉しいです」

「あら、私のことを知ってるのかしら?」

「うふふ、よくしってますよ」

 

 どうりでシャドウを見ても驚かなかったわけだ。

 リアルはシャドウのことを知らなかったみたいだけど、どこか別のところでリアルミーティアはこの世界にもう一人、ツインテールの戦士がいること突き止めていたのか。

 彼女にとっては嬉しい誤算だっただろう。

 なんたってツインテールの戦士は強力なツインテール属性を持たなければならないから。二人を倒せてしまえば、彼女はそれだけ大量のツインテール属性を得られることができる。

 

「ここでは少し手狭ですね。あちらの島へ移動しますか」

 

 リアルミーティアが言うのは、臨海公園の南にある埋め立て地のことだろう。防波堤の役割も兼ねているそこは、芝で覆われており普段はバーベキュー場として人気の場所だ。

 どうやらリアルミーティアが現れた騒ぎで、今はそちらに人はいないらしい。なら激しい戦いになったとしても平気かな。

 橋が一応かかってはいるが、リアルミーティアはそれを使わず大きく飛翔しその埋め立て地へと飛び乗る。当然、私とシャドウもそれに続いた。

 改めて相対する私たち。

 波の音がより一層大きく聞こえるように感じた。

 

「さて、気を使わずにどうぞ二人で来てください。私は逃げませんし、負けもしませんから安心してください、ね!」

 

 こんなわかりやすい挑発に乗るのは癪だけど、リアルミーティアは何をしてくるかまったく読めない。最初から全力で、二人で戦ったほうがいいだろう。

 

「アバランチクロー!」

「ノクスアッシュ……!」

 

 私は二日間で完全に修復したアバランチクローを腕に装着、黒羽は以前と変わらぬ漆黒の輝きを放つ巨大な斧をその手に握りしめた。

 

SHOOT MODE(シュートモード)

 

 リアルミーティアは私たちが手に持つ武器を確認してから、ステッキを銃の形態に変形させた。

 初めてエモーショナルステッキが変形する様を見たシャドウは感嘆の声をあげる。

 

「よし、行こう!」

「蹂躙します!」

 

 自身を鼓舞するために私は声に出し、シャドウと頷き合ってからリアルミーティアに向かい疾駆した。

 私に答えるように叫んだリアルミーティアは、銃ととなったステッキから光弾を雨のように発射。飛来する光弾をできる限り避けつつ、私とシャドウは変わらず彼女に近づいていった。

 

「二人を相手にしようというのは間違いね。私たちは戦闘員(アルティロイド)じゃないのよ!」

 

 さすがはシャドウ。

 無数に迫る光弾すべてをノクスアッシュで叩き落とし、まったくダメージを負うことなくリアルミーティアへ肉薄する。

 そして居合斬りのように、ノクスアッシュを自分の右の脇腹あたりから真一文字に斬りつようとする。しかし――

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

 電子音声が聞こえると同時に剣へと姿を変えたステッキで、リアルミーティアはしっかりと斧を受け止めていた。

 一対一ならそれでいいだろう。ただ、今は二体一だ。斧を受け止めた状態では、私のクローはガードできない!

 シャドウの後ろから飛び出して、私はクローを力いっぱい振り下ろす。

 

「勝算もなしに私が二人を相手にするわけないじゃないですか!」

 

SHOOT MODE(シュートモード)

 

「そんなっ! くうっ⁉︎」

「ホワイト!」

 

 いったいどうしたのか。

 シャドウがノクスアッシュで彼女の剣を抑えていたはず、しかし彼女の手には銃が握られていた。突然のことで対応が遅れ、防御することもできずに私は全ての光弾を至近距離で被弾し吹き飛ばされてしまう。

 

「っ⁉︎」

 

 私の身を案じて力が緩んだ隙を突かれて、シャドウは斧を()で弾かれると、私と同じように光弾の餌食にあう。

 クローを杖代わりに起き上がりリアルミーティアを見据える。すると驚くべき光景が目に入った。

 

「え、剣と……銃⁉︎」

 

 なんとリアルミーティアの右手には剣になったステッキが、左手には銃になったステッキがそれぞれ握られていたのだ。

 エモーショナルステッキは二本あったということ? 

 いや、それならリアルが教えてくれるはずだし先の私との戦いで二本使わなかったのはおかしい。

 それぞれ本物であることを見せつけるかのように、リアルミーティアはそれぞれをステッキへと戻して見せる。

 

TWIN MODE(ツインモード)……。あなたたち二人に対抗するためにアップデートしました!」

 

 まさか、リアルの言っていた通りだ。

 リアルミーティアは次に私たちと戦うのに備えて、使える武器を増やした。新しい武器を増やすのではなく、ステッキ自体を増やしてくるのは予想外だった……!

 しかしシャドウはリアルミーティアに反論する。

 

「ステッキの力でそのステッキで使う武器を作り出すのは納得できるわ。でもステッキと同じものをステッキで作り出すなんて荒唐無稽よ。テイルギアでテイルギアを作り出すくらい無茶苦茶な話だわ」

 

 そう言われれば、確かにそうだ。

 黒羽のいうことは正しい。だけど、目の前には二本のステッキを握ったリアルミーティアが立っている。

 黒羽は一本は偽物だと言いたいのかもしれないが、私が受けた光弾は間違いなく一昨日の光弾と同じだった。偽物だなんてとても信じられない。

 

「リアル、私の推測は間違ってるかしら」

『黒羽が言うなら合ってるに決まってるよ! ねえリアル……ってあれ、リアル?』

 

 通信機越しでリアルに話しかけたシャドウだが、帰ってきたのは志乃の声だけだった。

 まさか……信じられない、信じたくもない考えが私の脳裏に浮かんできた。そしてシャドウが大きくため息をついたとき、その考えが当たっていることを察してしまう。

 

「……志乃。もしかしたらその基地にいると危険かもしれないから、ブレスをつけて家に戻ってて」

『え、でもここのほうが家よりも……』

「リアルミーティアは次に負けたら私たちの拠点を、基地を壊しに行く可能性がある。絶対に逃しはしないけど、念のために……お願い」

『奏がそこまで言うなら、わかった。エレメリンクの準備して、待ってるからね!』

「うん」

 

 私が返答したのを最後に、志乃の声は通信機から聞こえなくなる。

 どうやら基地から出ていってくれたらしい。基地から出てしまえば、私たちの戦いや会話を志乃に聞かれることはまずないだろう。

 

「友達思いなんですね。ツインテールの戦士はそうでなくてはいけません」

「ホワイトのいいところよ」

 

 普段なら照れてるところだけど、今はそんな気分になれるわけがない。

 私が見せるのは恥じらいの表情ではない。のうのうと「友達思い」などと言えるリアルミーティアに対しての怒りだ。

 シャドウは私の顔色を伺ったのち、あらん限りの声で叫んだ。

 

「どうせここにいるんでしょ! 今すぐに出てきなさい……リアル‼︎」

「そんなに大声で叫ばなくても聞こえてるよ」

 

 するとあっさり、先ほどまで私たちと話していたその顔で、リアルは現れた。

 そして当然のようにリアルミーティアの隣へと立ち、剣の状態のステッキを受け取る。

 

「やっぱり……やっぱりあんたたちグルだったの⁉︎」

 

 リアルとリアルミーティアの目的は最初から同じだった。

 私たちを確実に倒すために、彼女らは芝居をした。

 リアルとリアルミーティアが対立しているように見せかけ、リアルは私に近づき確実に私たちを倒すための方法を探っていたんだ。

 

「基地へと入り込むことに成功したあなたは、私と交代してモニターを見張ると提案して、夜中に一人になったときに基地の設備を使って新しくエモーショナルステッキ作ったのね」

「君たちの基地は私の世界の科学力を大きく超えたものだったからね。エモーショナルステッキを短時間でもう一本作るなんて訳なかった。まあオリジナルと違って変身能力までは再現できなかったけど、ね。もちろんツインモードなんてのは嘘だよ」

「それじゃあエモーショナルステッキを作り上げてからすぐ行動を起こさなかったのは……私たちの戦闘データを見ていたのかしら?」

「すごいよ、正解だ。エレメリアン退けた戦士たちだし、この世界の言葉で言うと''念には念を''ってやつだね」

 

 シャドウとリアルの言葉の応酬を、私はただ黙って聞いているしかなかった。

 リアルが近づいできたとき、何も疑わずに信じてしまったのは私だ。リアルが発した一言一句を全て真実だと思ってしまったのは私だ。リアルを基地へと招いてしまったのも、私なのだ……。

 自分で自分が許せずに、クローの取っ手を強く握りしめる。

 いや、待って。

 リアルがツインテールの戦士の属性力を狙っていたなら、初めてパターバットで会ったときにいくらでもチャンスはあったはずだ。なんたって私は普段、テイルブレスを持ち歩いていなかったんだから。

 

「リアル、なんで私と初めて会ったときに属性力を奪おうとしなかったの。あのときに奪ってればこんな回りくどいことをする必要なかったはずじゃん!」

 

 もしかしたらリアルはグルであったとしても、リアルミーティアを止めてほしかったのではないか。演技ではなくそれは本当だったのではないか。だから奪おうとしなかったのではないかと、微かな希望を持ちながら問いかけた。

 しかし、あっさりとその希望は吐き捨てられた。

 

「君たちの属性力はもちろん欲しいよ。ただ私は欲張りでさ……出来るだけたくさん欲しいんだよ」

「何を言って……!」

「君たちのテイルブレスの中にあるツインテール属性も欲しいんだよ」

「なっ……⁉︎」

「私のエモーショナルステッキとは違う。君たちの強さの秘密、心の強さもあるけどさ。一番はテイルギアの中にもう一つツインテール属性があるからということは知っていたんだよね」

 

 ならあのときに属性力を奪わなかったのは、後でより多くの属性力を奪うため……!

 

「属性力を先に奪ってテイルギアの所在を訊き出すっていう手もあったけどね。ツインテール好きだし、テイルホワイトのツインテールを見たかったっていうのはあるけど……」

「あんたが! あんたがツインテールを語るなあああっ‼︎」

 

 気がつけば私はリアルの言葉を遮り叫んでいた。

 間髪入れず脚に力を入れて飛び、リアルの持つステッキへと狙いを定めクロー大きく振り下ろす。

 

「うああああああああああっ‼︎」

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

 電子音声が聞こえるのと同時に、横からもう一つの剣が伸びて私のクローは受け止められた。周囲に鈍い音が響き渡り、これだけでこの埋め立て地を中心にして大きな波が上がった。

 素早くエレメリンクしてポニーテールとなると、ブライニクルブレイドを手に持ち、リアルミーティア目掛けて振るう。

 

「あんたたちはツインテールの戦士なんかじゃない‼︎ あんたたちは……あんたたちはああああああ‼︎」

 

 がむしゃらにブレイドを振るうが、極めて冷静なリアルミーティアはその全てをいなしていく。

 

「先ほどの推察は概ね当たりです、ですが一つ訂正しましょう」

 

 ブレイドと剣を交差させ、鍔迫り合いとなったところでリアルミーティアは余裕ある表情で話す。

 

「リアルと私はグルではありません。なぜなら、私はどちらもリアルでありリアルミーティアなんですから」

「何を言って……!」

「奏!」

 

 シャドウの声が耳に入り、私が一歩引くと、頭上からノクスアッシュでリアルミーティアを斬りつけにかかった。衝撃で地面が裂け、その裂け目は地面を過ぎて海まで達する。

 

「落ち着きなさい!」

「あ、ごめん……」

 

 そうだ、落ち着こう。

 怒りにまかせて攻撃したところでリアルミーティアは倒せないし、属性力も戻ってこない。

 私は自分の頬を叩き、気合を入れ直した。

 シャドウの攻撃を後ろへ大きく飛んで避けたリアルミーティアは、そのままリアルの隣に着地する。

 

「これが答えです」

 

 リアルがもう一つの剣となっているステッキをリアルミーティアに返す。

 するとどういうことか。リアルの体が光に包まれ粒子状になったかと思うと、その粒子はリアルミーティアへと吸い込まれていった。

 私はもちろん驚愕したが、横にいるシャドウは私の比ではなかった。

 

「それは、まるで私と同じ……! なるほど、わかったわ。初めて会ったときから何か似ている気がしたけれど、こういうことだったのね」

 

 まさか黒羽のように……オルトロスギルディだったときのように、別の人格を体から切り離せるということ⁉︎

 そんなことツインテールの戦士だとはいえ、ただの人間ができるのか⁉︎

 

「同じかどうかはわかりません。ただ私が出来るのは分身を使うのではなく、あくまで自分自身だということです。視界も記憶も感触も、全てをその瞬間に感じられるんです。なぜなら、私自身なんですから!」

「まるでエレメリアンね……」

 

 剣を両手に持ち、大きく掲げながらリアルミーティアは笑った。

 こんなのどう考えてもおかしい。

 黒羽の言う通り、いくらなんでも人間離れしすぎだろう。エレメリアンであってもそんなこと可能なのだろうか。

 

「一人の人間がやってたことっていうなら、あんたに妹がいたのも嘘ってわけ⁉︎」

 

 大きく笑うリアルミーティアに向かって問い詰める。

 私から、私たちから同情を引くために咄嗟についた嘘というには出来すぎていないか。

 

「言ったじゃないですか。私は妹に守られたおかげで属性力を奪われずに済んだと」

「じゃあ、その話は本当だっていうの」

「はい。私の世界は……私以外の全てが! ツインテールの戦士として戦っていた妹のリアルまでも属性力を失ったんです!」

 

 妹が、リアルで……リアルミーティア⁉︎

 リアルミーティアは畳みかけるように真実を話すが、まるで理解が追いつかない。

 整理すると、リアルミーティアとして戦っていたのは妹で間違いないけど、今目の前にいるリアルミーティアは自らをリアルだと騙った姉……であっているのだろうか。

 

「絶望しましたよ! テイルレッドが首領を倒したあの日、世界が元に戻らないことに! だから私はリアルの意志を継いで自らのツインテール属性を高め、自分が作ったエモーショナルステッキで変身してリアルミーティアになったんです! 私の世界に……リアルに属性力を取り戻してもらうために‼︎」

 

 リアルの意志を継いでリアルミーティアになったから、自らをリアルと名乗っていたというわけか。

 ツインテールと世界を思うが故の妹の暴走ではなく、妹と世界を思う故の()の暴走。

 

 ――これが私の世界の属性力を狙うツインテールの戦士の、二代目リアルミーティアの真実……!

 

 自らが抱えていたことを捲し立てたリアルミーティアは、二本の剣を地面に突き刺しながら息を整える。

 シャドウはノクスアッシュを肩に担ぎながら、一歩前へ出て口を開いた。

 

「あなたにどんなバックボーンがあろうと、異世界の属性力を奪うことなんて許されないわよ。あなたがしているのはエレメリアンと同じ。それで妹と世界を救うだなんて……思い上がりもいいところだわ!」

「私の気も知らずに……! 黙れえええええええっ‼︎」

 

SHOOT MODE(シュートモード)

 

 ステッキが二本となったことで、剣から銃へと変化させる際の音声も二重になる。

 二丁となった銃で、リアルミーティアは今までよりも遥かに多い光弾を発射。埋め立て地が光弾で見えなくなるほど、ただひたすらに撃ち続ける。

 ポニーテールから三つ編みへ。

 エレメリンクした私は素早くフロストバンカーを装備し、対抗すべく三門の方から光線を発射、少しでも被弾しないようにと光弾を空中で爆発させていった。

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

 片方のみを剣へと変形させると、銃をさらに連射しながら降り注ぐ光弾の中、私に向かい走りはじめた。

 光弾を無視するわけにもいかず、しかし目の前に迫るリアルミーティアの剣を受けてしまうとダメージは計り知れない。

 そんな心配をする間も無く、間にはシャドウが立ち塞がる。

 素早く斧を振るい、剣を交差させるとそのまま刃が当たらないよう水平にしてリアルミーティアへと叩き込んだ。

 剣の刃に手を添えて防御はしていたが、さすがに勢いには勝てずに地面を抉りながら後退していった。

 ここでようやく、私は無数の光弾を消し去ることができた。

 

「出し惜しみしてる場合じゃないわね」

 

 斧の柄を地面へと突き刺し、シャドウはブラジャー型の進化装備(エヴォルブアームズ)を顕現させる。

 進形態のアンリミテッドチェインになるために、ブラを胸へと被せようとした、その時。

 

SHOOT MODE(シュートモード)

 

 再び銃を二丁へと戻し、またもや光弾を発射していく。

 しかし、先ほどまでの出鱈目な撃ち方ではない。しっかりと的を狙って撃っている。その的はシャドウが手にしているアンリミテッドブラだ。

 

「っ⁉︎」

 

 光弾が腕に当たり、アンリミテッドブラは大きく宙を舞う。

 そしてすぐに、リアルミーティアが放った光弾がアンリミテッドブラにも直接被弾すると……粉々になって消えてしまった。

 これではシャドウが、アンリミテッドチェインになることはできない……!

 

「私は基地で見たんです! あなたたち二人とも強化形態がありますけど、それになるために進化装備(エヴォルブアームズ)を装備するそのときこそが一番の隙! アンリミテッドチェインになどさせるわけありません、よ!」

 

FLYING MODE(フライングモード)

 

 片方のステッキが光の翼となり、リアルミーティアは自由自在に飛来しながら私たちに向け光弾を発射しはじめた。

 エモーショナルステッキが一本であれば、フライングモード時には銃や剣といったもので攻撃することはできない。しかし、今は二本目のステッキを使うことでその欠点を解消したわけ……!

 私たちに空を飛ぶ手段は無い。せいぜい高くジャンプするくらいだ。

 空を自在に飛ぶ彼女が繰り出す攻撃に、次第に私たちは追い込まれていく。

 

「こうなったら……‼︎」

「そんなもの撃ったところで、当たるわけありません!」

 

 フロストバンカーを天へと向け、三つの門からそれぞれ光線を繰り出す。しかし、全ての光線は宙を舞うリアルミーティアが言うように全て避けられてしまう。

 今はそれでも構わない。私は続けざまに、光線を何発も発射していく。

 さすがに違和感を覚えたのか、リアルミーティアの表情が引き締まった。そしてすぐに、私の意図を看破する。

 

「まさか……! 光線を三つ編みのように編み込んで……私を捉えようと⁉︎」

 

 さすが、大当たりだ。

 三つ編みのように絡み合う何発もの光線がリアルミーティアの逃げ場を塞ぐと、さらにその全ての光線が一つに纏まりはじめる。

 リアルミーティアの放つ光弾では、フロストバンカーの放つ光線には勝てない。それなら彼女が次に取る行動は一つだ。

 

SLASH MODE(スラッシュモード)

 

 銃から剣へと変形させると、リアルミーティアは前後左右から迫る光線を一閃。光線はすぐに爆発を起こして、彼女は煙に包まれた。

 それを好機と見て、黒羽は斧を振りかぶりながら煙の中へと飛び込んでいく。しかし、リアルミーティアはそれすらも読んでいた。

 突如煙の中から現れたノクスアッシュを、恐るべき反射神経で弾き返そうとしたその時、あることに気づいた。

 

「これは、投擲⁉︎」

 

 リアルミーティアに向かっていたのは振り下ろされたものではなく、シャドウが飛んだ際に囮として投げつけたものだったのだ。

 一瞬怯んだものの、眼前の斧は弾き返した。

 これを投げたシャドウはどこにいるのか、リアルミーティアはすぐに知ることになる。

 

「上か⁉︎」

「はああああああああっ‼︎」

 

 リアルミーティアが気がついたその瞬間、シャドウが上空から落下する姿勢のまま繰り出した強烈な回し蹴りが決まる。

 蹴撃をもろに受けたリアルミーティアはソニックブームを起こしながら落下、当然体勢を立て直すこともできずに墜落した。

 

「あっ……」

 

 エレメリンクを解除してリアルミーティアに弾かれた斧をキャッチしたとき、目の前にエモーショナルステッキが転がってきた。

 シャドウの蹴り技の衝撃がよほどのものだったのか、剣ではなくなり大きく火花が散っている。

 

「……」

 

 ノクスアッシュを振りかぶると、私は躊躇なく振り下ろす。

 エモーショナルステッキは真っ二つに割れたのち、小さな爆発を起こしてバラバラになった。

 これで、残るエモーショナルステッキはあと一本だ。

 

「ホワイト、見なさい」

「え?」

 

 シャドウに促され、大きく穴が空いた地面の上を見るとそこには変身が解けた状態でリアル……の姉が仰向けに倒れていた。

 

「ホワイトがステッキを破壊したと同時に変身が解けたわ」

「じゃあ、まさか……!」

「ええ、ホワイトが壊したのは彼女が元から持っていたオリジナル。この世界で作ったステッキに使用者を変身させる能力はないと言っていたから……」

 

 私たちの、勝ち……⁉︎

 そうだ。いくらもう一本のステッキが使えて、剣や銃といった武器に変形できたとしても、生身の体でそんなものが扱えるはずがない。

 私たちは二代目リアルミーティアの暴走を止めることに、成功したということだ。

 

「くっ……う……!」

 

 残されたステッキを握りしめて立とうとする彼女に向かって、私とシャドウは歩を進めた。

 

「あんたの負けだよ。もうあんたは変身できないし、私たちに勝てる術なんかないでしょ。さっさとみんなの属性力を返して」

 

 ようやく諦めがついたのか、彼女は持っていたステッキを地面へと落とした。

 

「ああ、私の負けだよ。まさか一撃でこの様だなんて……君たちを見くびっていた」

 

 ほとんどシャドウのおかげではあるんだけどね。

 偶然とはいえ、シャドウと一緒に戦えたのはマキシマムチェインになることができない私にとって大きな幸運だったのだ。

 目の前で項垂れる彼女を見ても何かを企んでいる様子はないし、どうやら本当にこれで終わりらしい。

 

「とりあえず属性力を返してもらってから、基地にでも……」

 

 シャドウと今後のことについて話そうとした、その時。

 突如として周りの海が荒れはじめ、頭の中に直接、思わず耳を塞ぎたくなるようなノイズが走った。私だけではなくシャドウも、そして項垂れている彼女も聞こえているらしい。

 そしてノイズが止むと、聞こえてきたのは……声だ。

 

〈そいつは困るな。まだ計画の途中なもんでね〉

 

 海が荒れ、波の音がうるさくてもはっきりと聞こえるこの声は……私の頭に直接話しかけてきているのだろう。

 つまり……この声の正体は‼︎

 警戒したその時、リアルの姉の後ろの空間が歪み現れたのは――。

 

「エレメリアン‼︎」

 

 まるで戦士のような風貌をした、人間に近い容姿から放たれる圧倒的な威圧感。

 今まで戦ってきた私が思うに、アルティメギルが残っていれば間違いなく幹部級のエレメリアンだ。

 そして現れたエレメリアンは、誇るように自らの名前を叫ぶ。

 

「――俺は双子属性(ツインズ)のペルセウスギルディ! アルティメギルを復興し、エレメリアンの英雄となる者だ‼︎」

 

 

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