光と影のデュエット   作:楠木 蓮華

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光の影と影の影は交わらない

櫻田光様……一応王族なので敬意をはらった呼び方にするが、櫻田光様との出会いからのこと……あの後俺は無理やり保健室に連れてかれ、保険室の先生に軽く手当をしてもらった。もちろん、どうしてこんな怪我をしているのかは聞かれた。

 

俺は言うつもりはなかったのだが……光様曰く、こういうのは放っておいたらだめなんだよっ! ということで、光様が洗いざらい言ってしまった。

 

その後は俺が想像していたこととはまったく違い、とてもあっさりしていた。 先生直々にイジメをしていた奴らをこってりしぼったらしく、保険室で安静にしていた俺のところに謝りに来た時にはあの時の威勢は見る影もなくなっていた。むしろ人が変わったかのような真面目な雰囲気になり、むしろ人をここまで変えてしまった先生に恐怖を抱いたくらいだった。

 

そして放課後になり、今に至るわけだが。

 

「それで……どうして光様、ここまで来てるんですか?」

 

「だって怪我人を放っておけないでしょっ?」

 

「確かに怪我人ですけど……大したことないって言いましたよね?」

 

「怪我人の言ってることなんて聞きませーん!」

 

「いや、むしろ聞いてくださいよ」

 

今、俺達は俺の家への道を帰っていた。話していた通り、怪我をした俺を心配したのかなんなのか……付き添いをすると言ってきかなかったのだ。だから仕方なく、付き添いをお願いすることにした。

 

「そんなことよりもっ!」

 

「はい?」

 

「あたしのことを様付けて呼ぶのと、敬語禁止っ!」

 

頬を膨らませながらそう言う光様を少し可愛いと思いながらも、少し考える。言うとは思っていた……絶対にそう言われることは予想していたけれど、やはり人付き合いをする中で、礼儀というのは大切にしなければならないだろう。相手が王族ならば尚更……。

 

「いや、でも……」

 

「禁止っ!」

 

「だ、だから……」

 

「き・ん・しっ!」

 

「で、でも!」

 

「禁止ぃ〜!!」

 

「あ〜もうわかった! 了解! 言うとおりにしてやるよっ!」

 

「ふふんっ。 最初からそうしていればいいんだよっ」

 

胸を張りながらしてやったりと言うかのような顔をする光様……光に、俺は心の中で溜め息をついた。王族というのは知っていたし、名前くらいはテレビでも何度も見かけたが、実際に会ったのは今日が初めてだったのだ。同じ学校にいてそれはどうなのかとも思うが、人なんて、会おうと思わなければ会いたい人とはそうそう会うことなんてない。

 

だが会って思ったことは、感動とか、そういうのとはまるで違って……

 

「どうしたの? ジロジロ見て……」

 

「ん……? あ、いや、なんか拍子抜けだなぁって」

 

ジト目で俺を睨んでくる光に聞かれ、さらりと思ったことを言い返す。

 

「拍子抜け?」

 

「あぁ……王族ってさ、俺にとっては雲の上の人ってイメージだったし……光みたいに、なんていうのかな……王族の人も普通の女の子なんだなぁって」

 

「そりゃ〜そうだよ〜、あたし達は能力がある以外は至って普通だからねっ」

 

「そうなんだよな……王族っていっても、神様とかじゃないんだよな……」

 

ふとそう思う。王族は偉いんだろう……国民のために頑張って、できる限りのことをして、皆を笑顔にして……でも、それにも限界がある……だって人間だから。王族は神じゃないから……だから、全ては救えない……

 

「どうかしたの……?」

 

「へ……?」

 

ふと気づくと、なにやら心配そうな表情で光が俺のことを見ていた。

 

「いや……なにもしないけど、どうしてだ?」

 

「えっと、なにか怖い顔してたから……」

 

「そうだったか?」

 

「うん……」

 

どうやら顔に出ていたらしい……、気をつけないといけないな。いつもポーカーフェイスで、感情をそんなに表に出してはいけない……。きっと色々なことがあったせいで少し疲れているのかもしれない……家に帰って一度寝ればいつも通りになるはずだ……。

 

「そ、そういえばあたし、君の名前聞いてないよっ!」

 

「い、今更だな……そういえば言ってなかったが」

 

「ドタバタしてたからなぁ……ねぇ、教えてよっ!」

 

「別に知っても何の得もないぞ?」

 

「得不得なんて関係ないよっ、知らないんじゃ呼ぶこともできないじゃんっ!」

 

「まぁ、そうか……」

 

そういえばそうだ……ずっと君とか、そういうので呼ばれてたら誰だかわからないしな。

 

「俺の名前は月夜待 影だ。 好きに呼んでくれ」

 

「なら影君だね!」

 

「いきなり下の名前かよ……」

 

「それは影君だって同じじゃんっ! それに呼び捨てだしっ」

 

「だって櫻田……じゃ他の光の兄弟姉妹と被るだろ? それに俺は女の子にちゃん付けをするなんて出来ない」

 

「なら光さんって呼べばいいじゃん!」

 

俺は頭を抱える。光の性格は詳しくは知らないし、どんな子なのかも知らんけど、絶対にさん付けなんて嫌がるくせに……第一きっと、さん付けも敬語のうちにはいるかもしれないっていう、俺なりの配慮だったんだが……本人がいうなら仕方ないな……。

 

「なら今度からはそう呼ばせてもらうよ、光さん」

 

「な、なんだかよそよそしいというか距離ができた感じがするっ! それからなんだか気持ち悪い!」

 

「き、気持ち悪いってなんだ! 光さんが呼べって言ったんだろうがっ!」

 

「や〜め〜てぇ! なんだか嫌だからぁ!」

「自分から言っておいてすぐにやめてとかどういうことだよっ!」

 

「だから気持ち悪いって言ってるじゃ〜ん!」

 

「失礼すぎるだろっ!」

 

こんな風に、夕方の太陽が沈む頃……俺達は夕日の光を背中に浴びながら、帰路を進んでいく。影は俺達の身長を軽く超え、道路に伸びていく。言い合ってる俺達と同じように、影は背の高さで競っているようだった。

 

そんな風景を見ながら、俺達は言い合いをする。やはり今俺の心にあるこの気持ちの正体も、名前もわからないけれど……

 

「だからぁ……って、わぁ……夕日が綺麗〜!」

 

「あのなぁ……って、そうだな……」

この時間は、俺の生きてきたほんの少しの人生の中でも、きっと一番……落ち着けて、そして……楽しく感じていた。

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