とある傭兵の虚ノ物語   作:狼少年

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第一章
episode0『プロローグ』


人口約230万人、その八割が学生で占められているここ、学園都市。日々を重ねるごとに技術が進歩していくこの場所では、進化出来ない者は簡単に切り捨てられていく。

 

甘くはない世界だ。

 

能力開発を受けても、能力が発言しない……level0と認定された学生に幸せは訪れない、と言っても過言ではないだろう。

 

厳しい世界だ。

 

 

 

 

 

第七学区、路地裏。

 

 

「いーから金出せって言ってんだろぉがよっ!!」

 

 

怒号と共に、少年の身体が蹴り上げられる。

七月二十五日、午後十一時を回った頃であろうか。真っ暗な空の下、どこにでもいるような一人の高校生は、典型的なカツアゲにあっていた。

 

 

「……な、無いってさっきから言ってるじゃないか……」

 

 

「あぁ??てめぇがぼっちゃんなのは調べがついてんだよぉ。んだからさっさと金出せよっ!!!!」

 

 

ゴガッ!!と。痛々しい音が路地裏に響く。少年一人に対して、カツアゲをしている不良の数は三人。さすがに武が悪い。

 

 

「level0のくせして良い学校通えてんのは、金持ちのお父さんのおかげなんだよなぁ??全く情けないねぇ。そうは思わないかいっ!!??」

 

 

今度は、顔面を思いっきり殴られた。勢いよく吹き飛んだ少年の身体は、壁に叩きつけられる。

それでも、抵抗はしない。

 

 

「……そういう君達だって……level0なんだろ……?ふっ。いいゴミ分だな……」

 

 

だが、毒を吐いた。

 

 

「あぁぁん??もう一回言ってみろこのボンボンがぁっ!!ぶっっ殺してやるよぉぉぉぉ!!」

 

 

「やれるもんならやってみろよ……。殺す勇気なんて、お前らにあるわけないだろ?」

 

 

不良三人衆の中のリーダー格が少年の言葉にカチンときた。勢いよく胸ぐらを掴み上げると、あいた方の手を首元に押し付ける。

 

 

その手には、直径15cm程の一般的なナイフが握られていた。

 

 

「……っ!!」

 

 

「俺はなぁ、こう見えても何人か殺った事があんだよ……。だから、人殺しなんて容易いんだよぉ」

 

 

「おいやめろって!また少年院に行きてーのかよ!」

 

 

不良の一人が、笑いながらそう言った。

 

 

「どんだけ少年院ぶちこまれても、ウゼェやつは殺す。これが俺のモットーだ。死ねぇぇぇぇっ!!!!」

 

 

 

 

少年は目を瞑る。

 

 

 

……終わった。

 

 

金持ちの子供として生まれてきたが、勉強がどうも出来なくて、大嫌いだった。親の期待にも答えられず、のうのうと生きてきた。

 

 

その点、弟はとても頭がいい。そりゃあ弟の方を可愛がるのは当たり前だ。仕方がない。出来の悪い自分が悪いんだ。

 

 

だからもう、死んだほうがいいんだ。

 

 

頭の悪い自分なんて、死ねばいいんだ。

 

 

level0に、生きる価値なんて無いんだ。

 

 

level4の弟を見てみろ。

 

 

とっても楽しそうだ。幸せそうだ。何なんだよあれは。何で自分はああなれなかった?いや、原因なんて明白だろ。

 

 

頭だよ。

脳みそだよ。

色々足んなかったんだよ。

足りないものだらけ。

 

 

運動神経も、成績も、友達の数も、器用さも。

何もかもが弟の方が上回っている。あいつに全部奪われた。

 

 

……いや。

その言い方は間違ってるかな。

自分の出来の悪さを、たまに弟のせいにしたくなる。そんな自分も大嫌いだ。何も出来ない自分が大嫌いだが、そんな自分が一番嫌いだ。

 

 

……弟は好きかって?

 

 

……。……。……。

 

 

 

 

……大好きだよ……。

 

 

 

 

あいつは……自分を侮辱することなんてなかった。比べることなんてなかった。いつも、いつも……。

 

 

兄さんは出来ないんじゃない。

まだ、自分の力に目覚めてないだけなんだよ。

 

 

って、励ましてくれる。

そんな弟が大好きだ。

 

 

あぁ。ちくしょう。

 

 

完全に死ぬ気だったのに。

 

 

弟のあの笑顔を思い出しちまった。

 

 

あの言葉を聞くだけで、どれだけ自分が救われたことか。

もう少しだけ頑張ってみよう、って。どれだけ思ったことか。

 

 

……っくしょう。

 

 

……っくしょう!!

 

 

ちくしょおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……死にたいか?」

 

 

「……っ!!??」

 

 

どこからか、声が聞こえた。

 

 

「誰だっ!?」

 

 

リーダー格の男が後ろを振り向くと、そこには、2mはあるであろう大きなギターケースを担いだ白髪の少年(?)が立っていた。近くの地面に、先程までピンピンしていた不良二人が仰向けに倒れていた。

 

 

「お、お前……っ!!誰だか知らねぇけどよくも二人を!!!!」

 

 

不良の言葉を無視し、白髪は少年に問う。

 

 

「……もう一度聞く。死にたいか、少年?」

 

 

「僕は……僕は……っ!!」

 

 

胸ぐらを掴む不良の手を振りほどき、少年は叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「まだ死にたくないっ!!!!

 

 

 

 

 

「……、」

 

 

白髪の口角が少しだけ上に上がる。

 

 

「このヤロォぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

不良のリーダー格が白髪に向かってナイフを振りかざす。だが、その刃が彼に届くことはなく。

 

 

「……ふぇっ!?」

 

 

脇腹から大量の血が噴き出した。まるで、噴水のように。振りかざした勢いのまま、不良のリーダー格は倒れこんだ。

 

 

「今、何が……?」

 

 

少年は、白髪が何をしたのか全く分からなかった。見えなかった、と言った方が正しいだろうか。とにかく、目の前の男は一瞬で不良を戦闘不能に追い込んだ。

 

 

「助けてくれて……ありがとう」

 

 

「……その命、大事にしろよ」

 

 

そう言い残すと、彼は闇夜に消えようとする。

 

 

「あの!!」

 

 

「……、」

 

 

「名前を……名前を教えて下さい!!」

 

 

一度その場で立ち止まると、少年の方を振り返り、告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……レイ=テレストカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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