とある傭兵の虚ノ物語   作:狼少年

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episode10『不死身の強さ』

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これで、『虚無の槍使い(ゼロランサー)』を捕らえた。

暗部『アクセル』の構成員二名を殺した『レイ=テレストカ』を串刺しにする事ができた。

 

 

「どうせ音恋が死に際にでもこの場所喋ったんでしょお?でもごめんねぇ、こっちはいつでも迎え撃つ準備ができてるんだよねぇー」

 

 

ヒールを鳴らしながら、木っ端微塵に壊れた壁からセーラー服の少女が教室に入ってくる。

 

 

「こんな雑魚にあいつら殺されたのかよ。やっぱあいつら、その程度だったってことか」

 

 

「そんなこと言わないであげてよ。明島や音恋のおかげで彼の事を知れたんだから」

 

 

「けっ」

 

 

そう吐き捨てると、名織はダランと下がったレイの顔に手を当てる。

 

 

「にしても綺麗な顔してんな。やっぱ外人は顔が整ってて羨ましいぜ」

 

 

透き通った白い肌や、鼻や唇、耳を徐々に触っていく。その様子はどこか妖艶だった。

 

 

 

 

「……I'll kill you」

 

 

 

 

次の瞬間。

剣で突き刺され封じられていたレイの右腕が突如動き出し、名織の首を掴んだ。

 

 

「ぐぅえっ!!??」

 

 

「Go to the hell!!」

 

 

そしてそのまま、窓に向かって投げ捨てた。窓にガラスが無いため、抵抗なく名織の体が校舎の四階から放り出される。

 

 

「名織ちゃん!?」

 

 

赤傘は慌ててベランダに出ようとレイに背中を向けようとした。

 

 

だが、感じた。

 

 

とてつもない殺気を。

灰色の髪を持つ少年から。

『背を向けたら殺す』

そう、彼の目が刻みつけてくる。

 

 

「君は……一体!?といようりか、その身体……っ!!」

 

 

驚いた。

先程まで床から生えた剣で身体を串刺しにされ、足が浮いていたというのに今は地面にしっかりとついている。理由は、彼を見れば明白だった。

 

 

「身体の力だけで剣を折って脱出したのか……。なんて強引なことを……、身体がボロボロじゃないか」

 

 

赤傘の言うとおり、刺さった剣を無理矢理へし折り、身体の自由を取り戻していた。だが、そのせいで血がいたるところから吹き出している。その姿は、まるで刃という花弁が咲き乱れる花のようだった。

 

 

「君、剣山みたいになってるよ……怖い怖い」

 

 

一本一本、折れた剣を身体から抜いていくレイ。床や服に染み付いた血の量を見る限り、生死を心配してしまうレベルである。

 

 

しかし、彼は倒れていない。

赤い液体まみれになりながらも、真っ直ぐと己の敵を見据えている。

 

 

「……落ち着いてきた」

 

 

「落ち着いた……?その状態で……?」

 

 

「……ちょっと頭に血がのぼり過ぎてた。こんだけぶちまければ、それは冷静にもなるさ」

 

 

ブチッ、ブチッ、ブチッ、と。

エグい音を響かせ、ようやく最後の一本を抜き取った。

 

 

「……お前があいつらのリーダーだな?」

 

 

「そう。名前は赤傘(あかがさ)。暗部『アクセル』のリーダーをやってるよん」

 

 

「……分かってるとは思うが、後はお前だけだ。お前を殺して終わりだ」

 

 

「そっか……もう、僕だけなのか。本当に寂しくなったものだね」

 

 

レイは手に握るブリューナクの穂先をゆっくりと赤傘へ向ける。

 

 

「……始めようぜ、能力者」

 

 

「……やめた方がいい。君じゃ僕は倒せない。わざわざ僕の寿()()を削って倒す価値があるとは思えない」

 

 

「……一体何を言ってるんだ、お前」

 

 

「もういいや。逃げてくれないかな、侵入者(ゼロランサー)?今だったら見逃してあげるよ」

 

 

なんだ。

なんだ、この余裕は。

何故こんなに余裕なんだ。

目の前の敵の能力は、俺を確実に倒せる程の力があるというのか……?

 

 

分からない。

だが、引き下がるわけにもいかない。

 

 

「……ふざけるな。俺はお前を殺すまでここを離れるつもりは無い」

 

 

「じゃあ……()()()()()

 

 

レイがブリューナクを持つ腕を後ろへ引き、投げ放とうとした時だった。

 

 

「……ッ!?」

 

 

赤傘はもう、目の前にいなかった。

彼の気配は背中から感じられた。

 

 

 

 

「体験してくれ、僕の能力を」

 

 

 

 

ゆっくりと、赤傘の指がレイの身体に触れる。

 

 

そして。

 

 

 

 

「ーーーーーーアァーーーーーァーーーーあああーーーーーッ!!!!????」

 

 

 

 

声にならない叫び声が廃校舎内に伝わった。

 

 

首を抑えながら悶え苦しみ出す少年。

やがて、彼は弱っていき、プツンと動きを止めた。

 

 

 

 

2

 

 

「1分経ったからもう戻ったはずだけど……戻ったところで、だよね」

 

 

存在操作(リアルコントローラー)

それが彼、赤傘の能力。

()()にあるものを一定時間だけ存在を消すことができる。今回の場合、赤傘はレイの『心臓』と『肺』を一分間だけ消した。それにより呼吸困難に陥ったレイは暴れ回ったということだ。勿論、一分間()()存在を消したので、一分間経てば元に戻るが死んだ後では意味が無い。

 

 

「はぁ。これがバンバン使えたらいいんだけどねぇ。この能力で存在を消した時間だけ僕の寿命を削ってるんだ。つーまーり、一応奥の手ってやつ。でもまぁ、今思うと君に使う価値はあったかもね」

 

 

完全敗北。

床につっ伏す彼に相応しい四文字だった。

 

 

 

 

いや、完全というのはまだ早い。

完全と決めつけるのは……まだだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ドクン。

 

 

「……ッ!?」

 

 

……ドクン。

 

 

「嘘……でしょ……!?」

 

 

ドクン、ドクン、ドクン。

 

 

聴こえてくるはずの音が、聴こえてくる。

 

 

聴きたく……ない。

 

 

のっそり、と。

血まみれの少年は立ち上がる。

 

 

 

 

「化け物ぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

()()に恐怖を覚えた赤傘は窓から教室を飛び出し、闇夜に姿を消した。

 

 

「俺は……死なねぇぞ……」

 

 

荒い息を吐きながらそう告げるが、さすがに無理があったのか、再び床にうつ伏せに倒れ込む。

 

 

血がどれだけ出ても、剣をたくさん突き刺されても、心臓や肺を一定時間奪われても、

 

 

 

 

彼は死ななかった。

彼は生きていた。

レイ=テレストカは生きている。

 

 

 

 

赤傘が最後に残した言葉は、正しいのかもしれない。

 

 

 

 

そう、まさしく彼は……

化け物だ。

 

 

 

 

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