とある傭兵の虚ノ物語   作:狼少年

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episode12『終幕。そして始まり』

1

 

 

八月三日、昼間。

学園都市のどこかの、とある病室。

 

 

「……、」

 

 

ベッドの上に置いてある枕に寄りかかりながら、少年は窓の外の景色を見つめていた。

 

 

「なにしんみりしてるんですかー?」

 

 

近くの椅子に座る茶髪の少女が聞く。

 

 

「……いやぁ。あれから数日経ったな、と思って」

 

 

「そりゃあ経ちましたよ。暗部のアジトに乗り込んだ次の日の朝に警備員(アンチスキル)が駆け付けてなかったら、レイさん死んでたかもしれないんですよ!?」

 

 

「……俺は死なないよ」

 

 

「ハイハイわかりましたー。私だって少し寝込んでましたけど、すぐ回復しましたよ!レイさんなんて何日寝てましたか!?丸々五日間ですよ!い、つ、か、か、ん!!!!昨日ひょいっと目を覚ましたと思ったらすぐに起き上がってコンビニ行っちゃうしもぉ!!大体レイさんは……etc」

 

 

あーだこーだと五月蝿いナナシを無視し、暗部の事をレイは考えていた。

 

 

(……存在操作(リアルコントローラー)。どうにもあれが能力開発で手に入れた力だとは思い難い。どちらかと言ったら『こっち側(魔術サイド)』の一品の可能性が高い。そうなると、『聖人』の可能性も浮上する。だが、あれを仮にも『()()』とするなら……『原石』という線も……)

 

 

「って、ちゃんと聞いてますかレイさん!?」

 

 

「……いや、全く」

 

 

「清々しいくらいに正直ですねっ!!私レイさんのそういう所嫌いじゃないですよっ!!」

 

 

なんにせよ、赤傘(ヤツ)は強かった。まだ生きていると考えると、さすがのレイでもゾッとした。一瞬にして心臓と肺を持ってかれたのだ。並々の恐怖感を彼は抱いている。

 

 

(……学園都市……能力。もっと色々知る必要があるな。でないと、何かあった時にクレハを守れない)

 

 

当面の目的である、

クレハ=トリオールの護衛。

具体的には何から、いつまで、どう守るかは聞かされていない。しかし、彼はその仕事をこなすだけだ。

 

 

フリーの傭兵として。

一人の男として。

 

 

と。その時。

病室のドアが突如、ガッと開く。

同時に、小さな影が宙に浮かび上がった。

 

 

「レーーーーーーイッ!!!!会いたかったよおおおおお!!!!」

 

 

金色の髪を携えた少女、クレハ=トリオールがレイへと向かってダイビングジャンプした所で、この場面は終わりにしよう。

 

 

 

 

2

 

 

「くっそぉ……『虚無の槍使い(ゼロランサー)』。いつか必ず……、みんなの仇を取りに行くからな」

 

 

 

 

そして少年は闇へと消える。

 

 

 

 

3

 

 

「な……ぜ私を……、とミサカは……問います」

 

 

時刻は午後八時を過ぎた頃だろうか。高層ビルの屋上で、茶色の髪を携えた女子中学生が血を吐きながら倒れていた。

 

 

学園都市(ここ)に来て数日が経ちました。ある女の子に色々な場所を教えてもらっていたんですが……どうにも気になっていましてね」

 

 

少年はそう言って自作のローブを翻し、少女へと近付く。

 

 

「あなたの顔、何回見たことやら。あまりにも多すぎる。偶然とは思えません。決定的だったのは、何度見ても寿命が変わっていること。(わたくし)のこの『眼』はごまかせませんよ?」

 

 

カチャッ、と。かけていた丸メガネを外す。そこから覗くのは、真っ赤に輝く大きな『眼』だった。

 

 

「私は人の寿命を見ることが出来ます。そしてその寿命はポンポンと簡単に変わる事はありません。しかしどうでしょう。あなた……いや、あなた達はみんな寿命がバラバラだ。しかも、とても短いです。この事から察するに、あなた達はクローンですね。ふぅむ。さすが学園都市です。倫理なんて無視してそんなことも簡単にやってしまうとは……」

 

 

「だから……なんですか?それが分かって、なぜ……あなたは私を襲ったの……ですか……と、ミサカは核心を突こうと試みます」

 

 

その質問に対し、彼は答えた。

 

 

「本当は誰でも良かったんです。この眼の力を調節する為の犠牲が欲しかっただけです。そしたらですね、たまたまあなたを見かけまして、そしたらたまたまクローンという事が分かりまして、これを利用しない手はない!と思いまして、はい。これがあなたを襲撃した理由ですかね。はい、ホント、誰でも良かったんですよ」

 

 

少女は恐怖を覚えた。無差別殺人犯のような殺害理由を聞いて、身体が震えた。確かに、()()()()の為に消費される儚い命ではあるかもしれない。だが、こんな得体の知れないヤツに殺されるとなると、話は変わってくる。

 

 

「そろそろですかね」

 

 

そう呟くと、ローブの少年は茶髪の少女に背を向ける。

 

 

「時間です。楽しかったですよ。今度は、別なあなたと会いましょう」

 

 

そして、右手を上空にあげ、軽く指を鳴らした。

 

 

次の瞬間。

少女の身体が爆散した。

 

 

一瞬だが、ビル屋上に血の雨が降り注いだ。ベチャベチャと固形物やら液体やらが飛び散る。

 

 

「あ。ローブが汚れてしまいましたね。新しいローブに変えねば」

 

 

赤黒い液体がこべりついたローブを脱ぎ捨て、彼は笑う。

 

 

死を呼ぶ血眼(デッドアイ)』は笑う。

 

 

「待っててくださいね、リヒア。すぐに殺してあげますから」

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