とある傭兵の虚ノ物語   作:狼少年

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二章の話にめちゃくちゃ力を注いでる……気がする。


episode14『新世紀の大剣使い』

1

 

 

新世紀の大剣使い(シュヴェールト)』。

 

 

そう、彼は名乗ったが、レイは自身の耳にその言葉が届く前に突撃していた。

 

 

ガッッギィィィィ!!!!!!

 

 

と。

金属同士がぶつかり合う激しい爆音が人口ビーチに響き渡る。響き渡るといっても、人がいる所からはかけ離れているため、その音が他人の耳に触れる事はないとは思うが。

 

 

「……そんな馬鹿デカい剣、さっきまで持ってなかっただろ」

 

 

「そういうお前だって今握ってる(それ)はなんだよ」

 

 

「……それじゃない、ブリューナクだ」

 

 

そう強く吐き捨てると、剣のように振り下ろしている槍を一度大剣から離し、一気に腰を屈める。

その動作から一秒も経っただろうか。すかさず、レイは下方から上方へブリューナクを『新世紀の大剣使い』へと突き放つ。

 

 

だが、その素早い攻撃は届かず。

 

 

大柄の男は大剣をそのまま垂直に砂浜へと刺した。

 

 

すると、懐目掛けて放たれたブリューナクは横幅約1mはあろう大剣に阻まれ弾かれてしまった。

 

 

「……ちっ」

 

 

レイは体勢を整えるべく、咄嗟に後方へ大きく下がる。

 

 

「バカみたいにデカい剣を振るってるんだ、動きも鈍くなるだろ……とか考えただろ?甘いねぇ。そんぐらいの速さならまだついていけるぜ?」

 

 

ニッ。

焦げ茶色をした短髪ツンツン男は歯を見せて笑った。

 

 

「……、」

 

 

対して、灰色の髪のポニテ少年は目尻にシワを寄せながら、目を細めた。

基本無表情な彼の顔が、歪んだ。

 

 

唐突だった。

 

 

いつの間にか『新世紀の大剣使い』に向けられていたブリューナクの五つの穂先から、泡白いビームのようなモノが発射された。

 

 

「速さだけは認める。だけど、俺は見切ってるぞ」

 

 

光の速さで進んだレーザーだったが、いとも容易く大柄な男はそれを避けた。その体型に似合わない程の俊敏な動きで。

 

 

もし、顔を少しでも逸らすのが遅かったら、彼の頭部は木っ端微塵に消し飛んでいたであろう。

 

 

「……お前。何者だ」

 

 

ここでようやく、レイは男に興味を示した。

 

 

「はぁ。さっき言ったのに、これだから話を聞いていない脳筋は困るんだ。俺はお前と同じ『裏世界の七人(リバーシブルセブン)』と呼ばれている者の一人、『新世紀の大剣使い(シュヴェールト)』だ」

 

 

「……『裏世界の七人』だと?確かにその強さ、納得した」

 

 

「だからよ、話を聞いてくれ!!戦闘に応じた俺が悪かった!!ホントは話し合うだけで良かったんだよ〜!!」

 

 

先程までの様子とは一転、両手のひらをすりすりと合わせながらせがむ筋肉質な男の姿がそこにはあった。

 

 

「……分かった。話を聞こう。お前が『裏世界の七人』というなら、俺の二つ名を知っている理由にも繋がる」

 

 

レイは『新世紀の大剣使い』同様、ブリューナクを砂浜へ突き刺し、彼の元へと寄った。

 

 

 

 

2

 

 

「遊楽さぁーん!」

 

 

「はぁーいぃー?」

 

 

「レイさん見ませんでしたかぁー?」

 

 

「んー、さっきまでいたけど、ふらっとどっか行っちゃたよー?」

 

 

「そうですかー!ありがとうございまーす!!」

 

 

パラソル近くまで寄ってきた茶髪のビキニ少女は「おっかしいなぁ。どこ行っちゃったんだろ?」と言いながら、戻って行った。

 

 

「んー。私の予想だと、今頃彼は出会ってるんじゃないかなぁ。もう一人の『裏世界の七人』に」

 

 

ボソボソと、誰に話すわけでもなくただただ独り言を呟く木原遊楽。

 

 

「出会うはずのない人達。出会う必要が無かった人達。本当はお互いがお互いを干渉する事はいけないことなんだよ、()()の場合はね」

 

 

はは。

ははは。

 

 

一人の少女(クレハ=トリオール)の存在がこうも彼らを引き寄せる。さあ、君達みんな揃ったらどんな楽しい事が起きるんだろうねぇ」

 

 

遊楽は笑う。

いや、()()は笑う。

 

 

3

 

 

学園都市内のどこかの路地裏。

 

 

「ふぅ。これでいい感じに使ってなかった能力(チカラ)の調子を取り戻してきました。あ、またローブが汚れてしまいました。取替えなくては」

 

 

『虚無の槍使い』や『新世紀の大剣使い』が人口ビーチにいる中、学園都市にいるもう一人の『裏世界の七人』である『死を呼ぶ血眼(デッドアイ)』はケラケラしていた。

 

 

「おいおい。それで何人目だよ。さすがに殺しすぎじゃないか、『妹達(シスターズ)』」

 

 

()()()五人しか殺してませんけどなにか?」

 

 

何を普通な事を言っているんですか、と言わんばかりの表情を名織へと向けるエンギルス。

 

 

名織はあれから通院を繰り返し、やっと外を歩けるようにはなった。『なった』はいい。仮にも助けてくれたエンギルスの手助けになるように学園都市の事は色々教えた。そして今日初めて、エンギルスについてきた。そしたらこれだ。

 

 

同じ顔をした茶髪の少女を狩っているとは聞いていたが、まさか、こんな酷いやり方(・・・・・)で、しかも何人も殺しているとは、名織は思ってもいなかった。

 

 

「一応、学園都市の奴らもこいつら(妹達)を実験で使ってるらしいんだ。下手に手を出すと、学園都市の『闇』に消されかねないぞ?」

 

 

悪魔でも遠回しに、少女はエンギルスに『やめておけ』と言った。

 

 

「ふーむ。確かに人のモノに手を出し過ぎた感はありますね。ですが、この子でもう終わりです。準備は整いました」

 

 

満足気に語る黒髪褐色の少年を見て、(これ以上あの実験(・・・・)の邪魔にならないということに対して)少し安堵する名織。

 

 

そこへ。

ふわりと。

優しい風……いや、なまめかしい風が吹いた。

 

 

「……ほーう。こんな所にも現れるんですね、リヒア」

 

 

エンギルスの真っ赤な眼に映るのは、同じく真っ赤な眼を持った、それ(・・)以外が全て真っ白な少女。肩甲骨まで伸びた後ろ髪や眉まである前髪、全身の肌や身につけているワンピースまでもが、まるで雪のように真っ白である。眼以外の全てのモノから色素が抜けてしまった、そんな感じだ。

 

 

「ふふ。やっぱ来ちゃったよ」

 

 

身長150cmにも満たない小柄で華奢な少女は微笑む。

その微笑みに対し、彼は表情を大きく歪ませた。

 

 

「なぁにが『来ちゃった』ですか大罪人。ところ構わず(わたくし)の前に現れやがりまして。ですが、そんな生活とも、もうおさらばです」

 

 

「ふぅん。何か見つかったの」

 

 

「そうですよそうですよ。あなたを殺す方法をようやっと見つけたんですよ。この!学園都市にね!だから、もう少しだけ待っててくださいねぇリヒア。あなたの罪滅ぼしも兼ねて、あなたを殺してあげますからぁ」

 

 

「それはとても楽しみね」

 

 

『死を呼ぶ血眼』はその能力から、人間の寿命を見ることが出来る。西暦何年何月何日何時何分何秒まで、きっちりかっちりと。知ることが出来る。

 

 

だが、その能力には例外があった。

 

 

それが、目の前の白い少女だ。

彼女だけは……寿命が見えない。

一番殺したいと願っている少女(・・・・・・・・・・・・・・)の寿命だけが、どうしても見えない。能力が働かないのだ。

 

 

「こいつ……何でそんなに執着してんだ。それに……」

 

 

名織は、深く考え込んだ。

 

 

そして、死んでグチャグチャにひしゃげた茶髪の少女だったモノ(・・・・・)踏みつけながら『死を呼ぶ血眼』は言った。

 

 

 

 

 

「はぁ、『死』というものは素敵ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

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