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『太陽ノ術式』
それが、彼の今の姿だった。その名の通り、太陽の力を行使し、自身に太陽の
「オッらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
先に飛びかかったのは音恋だ。ギチギチと拳を握り締めながらレイの方へ突っ走る。
対して少年は、向かってくる音恋に重なるように掌をかざす。
そして、
「……『
そう呟いた。
次の瞬間。
ブワッ!!!!と。レイの背中から炎で形成された槍のようなモノが突き出る。計四本の炎の槍は向かってくる音恋に襲いかかった。
「そんなの当たらないよ!!」
だが、その炎の槍を華麗にかわしていく。
「喰らえぇぇぇぇっ!!!!」
音恋の拳が、レイの顔面に炸裂する。
……する、はずだった。
フワッ。
そんな音が聴こえてきそうな軽い感覚。確かに顔面を捉えたはず。しかし、感触が無い。殴った時に感じられる柔らかい肉の感触が……無い。
気づくと。
辺りの状況が変だった。
視界に広がる光景が、揺れている。
揺らめいている。
まるで、暑い夏の日にアスファルトの上で揺らめくもやもやした……そう『
「『陽炎』……?」
「……正解。その通り、『
その声が背中から聞こえてきた時にはもう遅かった。
先ほどの
「……チェックメイト」
膝をつき、彼はうつ伏せに倒れ込んだ。その背中は駆動鎧が剥がれ落ち、焼け爛れた肌が痛々しく露出している。
「レイさん!!」
黒いパーカーに身を包む茶髪の中学生が少年に駆け寄った。
「って、熱っ!!え、これまともに近づけないじゃないですか!!」
「……当たり前だ。太陽と大体同じ
「ふへぇ……これじゃあ抱きつけないじゃないですか……」
「……?」
「な、何でもないですぅ!!って、ミサカは残念な……ぐぅぅ……もうっ!!」
その時だった。
パンパンパンッ!!
乾いた音が突如として鳴り響く。
この音を、レイは知っている。乾ききったこの嫌な音の正体を。何度も何度も戦場で聞いてきた、
「最後の……抵抗……だ」
少年に外傷はない。
と、すると。
「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ナナシの身体に三発ほど。
銃弾が命中していた。
「……ッ!!!!」
それに気づいた少年は、ブリューナクで音恋の右腕をまるごと一本切り飛ばす。
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!???」
「……腕一本で済むと思うなよ?」
とりあえず、倒れるナナシを抱え、応急処置を施していくレイ。銃弾は深くは入っておらず、当たった所も運良く急所を外していた為、軽い処置で済んだ。
そして処置が終わった後は……決まっていた。
「……おい。まだ生きてるよな?」
「ハァ、はぁ、はァ……駆動鎧をぉ……舐めない方がぁ……いいぞォ……」
「……あぁ。これは俺の油断が招いた結果だ」
今度はブリューナクを左腕の付け根に向ける。
「……俺は決めた。クレハ護衛任務にて、貴様らはとても邪魔な存在だ。だから、まずは貴様らを消す。貴様らの組織を潰す。全員殺す。その為にも、貴様に今死なれてはアジトの場所が聞き出せなくなる」
「……僕が仲間の居場所を教えるとでも……??」
シュパッ。
軽快な音共に、残り一本の音恋の腕が吹き飛んだ。
「ぶわぁぁぁぁあああああああああ腕がぁぁぁぁああああああああああああああ腕ぇぇぇぇええええええ!!!!」
「……吐け」
「イダいぃだいびぃだいよぉおおおおお!!!???」
「……五月蝿い。言え」
次は、槍の矛先を音恋の体に当て、零距離で光のレーザーを放つ。
もう、ここからは声にならない声が続いた
最終的に、四肢は全てなくなり、肌は全身焼き爛れ、何十もの箇所にレーザーで貫いた穴が開き、最早人間のそれではなくなっていた。
だが、どうしてか、まだ死なない。
普通の人間ならとっくに死んでいるはずだが。
なぜ生きているか?
原因は駆動鎧……
拷問用術式。
『死ス前二明カサンコトヲ』
回復魔術を応用し生まれたこの術式。対象の人物から術者が聞き出したい事を聞き出せるまで、不死にさせることが出来る。対象者に特別な術式を組み込む事によって発動するが、その術式があまりに複雑な為、使用できる術者は世界に数人しかいないという。また、一時的にだが人間を『不死』の状態にさせることができ、様々な応用が効くので、禁忌の魔術とされている。
「……もう、死にたくなっただろ?ほら、早く吐いちまえよ。吐けばそんな苦しまずに死ねるぞ」
「……ぇ」
「……あ?」
「……だ、い……七……学区……の……もと明星……高……校……のhai……校…舎……ぅぐっ!!」
ようやく、
「……、」
返り血で真っ赤に染まった少年の体。音恋が死んだ頃には『太陽ノ術式』が解け、通常の姿に戻っていた。
「……なぁ。今の俺は何に見える?」
誰にきいているのか、分からない。
意識の無い少女二人か。
そこに置いてある人間だった肉塊か。
彼にしか分からない。
「……『
レイの口角が恐ろしく引き上がり、
「『鬼』か?」
普段の彼からは想像もできないような、まさしく『鬼』のような表情をした少年を、誰も見ることは無かった。