旧地獄
とある居酒屋にて
「うぃーす」
「あ、ヤマメちゃん久しぶりねぇ」
「女将さんお久しぶり勇儀いるかい?」
「勇儀ちゃんならあそこの個室にいるわよ」
「ん、あんがと女将さん。悪いねぇ最近飲みに来れんで、近頃忙しくてさ」
「仕方ないわよお仕事なら、それにしても大変そうねぇ、まぁ暇があったらいつでも来てね」
「じゃあ今度必ず飲みにくるから」
「ふふ、じゃあサービスしないとね」
「お、いいねぇ!さて、勇儀早く連れて仕事終わらせようかね」
「あ、あとヤマメちゃん」
「んー?」
「勇儀ちゃん今ね……また、その……してるみたいだから…」
「なっ、あのバカ……またかよ…」
☆
「はぅ!あ、あぁん!いやっ、あぁぁ!」
「はっはっ…へへ、可愛いよ凄く可愛い!」
「待って!勇儀さん私…アァァァァ!だ、ダメ!……あぁぁぁん!」
「はっ!ははっ!あはははは〜!」
☆
「オイお前……」
「お、ヤマメじゃーん!どうしたー?」
ヤマメが室内に入ると全裸で酒を飲む勇儀がいた。
「どうしたじゃねぇよ仕事だ仕事!てか昼間から何ヤってやがる!?いくら個室でも店でヤんなって前に言っただろうが!この店は風俗じゃねぇんだよ!」
「いやぁさ、可愛い子いるじゃん?飲みさそうじゃん?酔って頬赤らめた女の子とかエロいじゃん?興奮するじゃん?押し倒すじゃん?なんつーか自然の摂理っての?こうなっちゃうでしょ?」
「普通の奴はなんねぇよ!せめてラブホとかどっか別のとこでやれ!このバカが!ていうか店でこういう事されると女将さんも他の客も困るだろうが!」
「え、女将さんに迷惑かかってんのか〜……善処する」
「善処って、やめる気ねぇだろお前」
「性欲には勝てないんだヨ!というか女将さんもいつかいただきたい!」
「パルスィにチクんぞ?」
「え!?ちょっと!それずるい!」
「ずるくねぇよアホ!今からパルスィに電話すっからな」
「ちょ、ちょっと待って!待たれよ相棒!わかったもうやめる!店じゃもうしないから!」
「はぁ……とにかくとっとと後始末して外に来い、移動しながら今回の仕事内容を説明する」
「りょーかいでーす」
☆
「じゃ、なんかあったら連絡してねぇ」
「はい!じゃ、また」
「またねー!………あぁいい子だったなぁ可愛かったなぁ!」
「オイコラ!勇儀早くしろ!」
一足先に車で待っていたヤマメが叫ぶ。
「へいへい、とその前に女将さん!」
「ん、なぁに勇儀ちゃん?」
「いやぁ、迷惑かけてごめんねぇ」
「え、いや良いのよ別に気にしてないから」
「そう?なら良かった……うん、そうだね」
勇儀は女将の耳元で囁く。
「毎回私のやってる事を録画するくらいだもんねぇ、最近隠しカメラの数も増えたしね」
「ふ、ふぇ……え、勇儀ちゃんそれは……」
「うん、いいよいいよ気にしてないから……あ、でも〜」
「え?」
「今度は女将さんが相手してくれたらなんて……ね?」
「え……そ、その」
女将が顔を赤らめたじろぐ。
「また連絡するから」
その光景を車内で見ていたヤマメはため息をついた。
「……あんにゃろ、マジで女将まで狙ってんのか」
「おまんた〜」
「おせぇよ……はよ車乗れ」
「はぁ、本当は夕方からパルスィと予定あんだけど〜」
「文句言うな、これ資料だ読め」
「ほいほい、え〜なになに?」
『共食い及び妖怪の惨殺をする妖を確認。
被害:妖精六体 妖怪二十二体 鬼三体。
被害にあった鬼は嬲り殺されていた。
妖精と妖怪のほとんどは骨だけが残り食い殺されていた。
なお、襲われたうちの鬼の一体は一命を取り留め犯人について聞くことができた。
犯人は全長十尺程の巨体、相手の体中の骨を砕き臓物が飛び散るのを楽しんでいるように見え、そして妖怪を恨んでいるようにも見えた。また種族は鬼のように見えたと言う事である。
犯人の処遇:発見次第即刻処刑せよ。』
「最近地底で目撃情報があったらしい」
「へぇ、妖殺しの妖ねぇ〜今回はなかなか楽しませてくれる感じの奴かな?ヤマメはどう思う〜?」
「さぁな会えばわかんだろ」
「だね〜」
その時、ふと外を見た勇儀は暗闇からこちらを見る者をみつけた。
「ねぇヤマメっちゃ?」
「気色悪い、なんだヤマメっちゃって」
「犯人見つけたかも」
「何!?」
「ほれアソコ」
「どこだ?」
「あるぇ?確かに見たのに〜いなくなっ…………あ」
勇儀が何かに気付いたように言葉を途中で止め、ヤマメの方を向く。
「ん?」
「あ、これやべぇ奴だわヤマメっちゃ」
頭をボリボリと掻いて勇儀が言った。
「ミスった……気付かれちったわ」
「は?」
その時、二人の乗った車のボンネットに巨大な物体が落下してきた。
ボンネットは衝撃で大きく凹み煙を吹き出している。
「な、な、なぁーっ!?」
「あれま、意外と素早いんね」
「rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」
「はじめまして妖殺しさんや今ちょうど美女二人でアンタの話してたんだ〜」
「わ、わ、わ、私の車が!私の車がァァァァァァァ!」
「krrrrrrrrrrrrrrrrruuuuuuuu!!」
「え?何語?それ何語〜?意味わからん日本語で喋ってくれない?」
「irrrarrrrrayakあsぃコロsr!!」
「はぁ?」
「urrrrarrアrヤカkkシsssコrrrrロス!!」
「ん〜?『あやかしころす』か?」
「死ぬのは貴様だッ!」
そう言うとヤマメは車をバックさせる。
車がバックした衝撃でその巨体はよろめき地面に落ちる。
「最強最速の河童製スーパーニトロで死ねやぁぁぁっ!」
すぐさまヤマメは思い切りアクセルを踏み地面に倒れる妖殺しに突撃する。
「おぉ〜無茶するねぇ」
「おぅらぁぁぁぁ!」
「grrrrrrrrrraaaaaaaaaaaa!!!」
妖殺しは車の前に立ち上がる。
「ほう、真正面からやり合うつもりかイイね」
全速力の車と十尺の巨体がぶつかる。
凄まじい衝撃と轟音が響く。
妖殺しは車とぶつかった衝撃で腕が裂け骨がむき出しになっている。
しかし、痛みなどまるでないかのように、その状態で車を抑えている。
「なんなんだコイツ!」
「ヤマメ〜コレやばいんでない?」
「そう思うならなんとかしろぉぉ!それがお前の仕事だろーが!」
「へいへーい……んじゃ頑張っちゃおうかね」
「drrrrrrrrrriiiiiiiiiiiaauuuu!!!」
「よっこらせっと」
車から降りてゆらゆらと妖殺しに近づく勇儀。
「agggg?」
「ちょっと失礼」
そう言うと勇儀は拳を握り横から妖殺しの腹部に拳を叩き込んだ。
「dryyyyooooogiiiiii!?」
「あ、痛かった?でも硬いなー今ので殺すつもりだったんだけど」
「ugggggggaaaaaaaaarr!!」
妖殺しは車を払い除け勇儀に飛びかかる。
ヤマメはアクセルを踏んだまま払い除けられたため進行方向を無理やりずらされそのまま建物に激突した。
「あ、あ、あぁぁぁぁ!私の車がボコボコだぁ〜!!」
一方で妖殺しは勇儀に飛びかかるもそれを難なく勇儀はかわす。
「力は強いみたいだけど技がねぇよなぁ……そんなもんじゃ私にゃ当たらんよ?」
「iguaaaaaaaaa!!」
「一々なぁ、叫ぶんじゃないよオイ……耳がキィーンとするだろ〜」
「shyaaaaaaaaaaaaa!!」
「話聞かないタイプの奴か、そ〜いう奴は女の子にモテないぜ?」
妖殺しの大振りの拳は勇儀に当たる事なく空振りし地面を砕く。
「aiiiiiiii!!モgrrrトeeコgrrロrrrrス」
「こいつ……ラリってんのか?そもそも同族殺しってのも気になるしな……」
「ishaauuuuuuuu!!」
「……ま、いいか〜」
勇儀に向かって突撃してくる妖殺し。
勇儀はそれを避けようとせず正面で構える。
「私の仕事は〜」
「ugaaaaaaaa!!」
「殺すだけだから〜なっ!」
勇儀の拳は妖殺しを貫いた。
「iguaaaaaaaaa!!」
「は〜い、さよーなりぃ〜」
「…………」
「ようやっと大人しくなったねぇ」
勇儀が腕を引き抜こうとすると突然妖殺しの両腕が勇儀の腕を掴んだ。
「チッ…ま〜だ生きてんの?面倒臭いだけど」
「urrrrrrrrrrrrrrrr!!アyrrカシiiiハコロrrrrrrスuuuuggg!!」
「さっきから妖殺す〜妖殺す〜ってお前も妖だろ〜?違う?第一共食いなんてしてる時点でさぁ……お前は妖以下のただの畜生だよ」
「aggggggggrrrrrrrrraaaaa!!」
「あるぇ?もしかして怒った〜?」
腕を掴む力が増す。
このまま勇儀の腕を砕こうとしているのだ。
「こんなもん〜?まだまだちょいと痛めの指圧マッサージだぜ〜?」
そんな時ふと妖殺しの懐を見ると何かがあるのに気がついた。
「ん〜?なんだありゃ写真?」
それは一枚の家族写真だった。
「……あぁ、なぁるほど成程」
勇儀はその写真が何を意味するかすぐに理解した。
「アンタ、人だったな?」
「ugrrrrrr!?」
「人から鬼へなんて珍しい話じゃあない。その写真アンタの家族か?大方妖怪に家族を喰われた恨みで鬼化したか?それなら人を襲わず同族を嬲り殺してたってのもわかる……けどその力はなんだ?私の知っている限りだと人から鬼になったやつはこんな力出せないはずんだけどなぁ」
「ugiiiiiiiiiigaaaaaaa!!」
「ま、どうでもいいや!これ以上考えんのめんどいし!とにかく……」
「とにかく死ねぇぇぇぇ!」
「うひゃっ!ヤマメ!?」
「graaaaa!?」
「車の恨みじゃぁぁぁぁ!」
ヤマメの指から伸びた蜘蛛の糸が妖殺しの腕に巻き付く。
「gyaaaaaaaa!!」
「あ、ダメダメそれ暴れると……」
糸をとろうともがいた瞬間、妖殺しの両腕が切断された。
「grrrrrrrrrraaaaa!!」
「あぁ〜だからダメって言ったのに」
「腕はもらった!次は……足だ!」
「ていうか〜今の私の腕までもってかれそうになったんだけど〜?」
「知ったことか!」
「うっわ何この人怖い」
「shagooooaaaaaaaaaa!!」
「ヤマメ〜こいつ元々人間っぽい。だけど多分色々いじられてるわ」
「元人間で色々いじられてる?………それに腕切られたのに本物の妖怪ならともかく人間上がりがあの痛みをくらって立ってるとは確かに不自然だ。もしかすると麻薬の類で痛みを最小限にしている……とかか?」
「麻薬……麻薬……あ、そういやヤマメこの前最近出回っている妖怪向けの薬あるって言ってなかった〜?」
「は、そうだ!あの薬、マドクリフ!」
「マドクリフ?」
「使用者の理性をぶっ飛ばして身体能力を何十倍にも跳ね上げ痛みすら和らげる。使用すれば妖精すらも鬼と同等の力にするやばい薬らしい」
「へぇ〜…で、あのザマか」
「guurrrrrraaaaaaaaaaa!!」
「ま、薬使ってようが何だろうが関係ないね〜とっとと終わらせて……女の子とイチャラブだっ!」
「結局それかよっ!」
「goooooooooooooo!!」
「足はもらう!」
「じゃあ私ガンメーン!」
素早く伸びた糸が妖殺しの左足に絡みつき瞬時に切断される。
左足をなくしバランスを失った巨体は前かがみに倒れようとしていた。
そこにすかさず勇儀が顔面に拳をぶつけた。
妖殺しの頭蓋は砕け弾け飛んだ。
「決着〜!」
「勇儀後ろ!」
「はん?」
「uggggggggggggggggg!!」
「……………」
勇儀は動じる事無く拳を構えた。
そして。
「――――――――!?」
「見苦しい」
勇儀の放った拳は妖殺しの上半身を吹き飛ばした。
☆
「うひゃ〜、疲れたぁ〜」
「私の車が……」
「ヤマメまぁだ落ち込んでるの?」
「当たり前だろ!」
「別にいいでしょ、ヤマメあと十台くらい持ってるでしょー?」
「良かねぇよ!アイツという車はこの世でアイツただ一台だったんだよ!」
「ヤマメって変態だよねぇ……」
「テメェに言われたかねぇよ!」
☆
「……以上報告終わり」
「ふぁ〜、眠っ。あ、藍〜カツ丼食いたい」
「駄目だ」
「カツ丼なんて食べさせるわけないでしょ!」
「うぇ、橙ちゃん耳元で大声ださんでよ」
「うっさい!アンタ達今回も暴れすぎよ!」
「え〜暴れたのはあの妖殺しでしょ〜」
「あんな街中で戦闘をする時点で間違ってるのよ!付近の建造物二件半壊、大量の肉片が飛び散った家の住人からクレームがきてるわよ!」
「半壊って〜一件はヤマメの車が突っ込んだとこでなぁい?」
「うっ…すんません……あ、いやでももう一件と肉片はお前だろ!」
「どうだったかなぁ〜」
「あ、テメェ!しらばっくれてんじゃあねぇ!」
「怒るとお肌あれるよぉ〜ヤマメっちゃ〜」
「うっせ!余計なお世話だっ!あとその呼び方はやめろ!」
「アンタら反省する気あんのかーっ!」
☆
「うひぃー相変わらず橙ちゃんは生真面目生娘だねぇ〜」
「星熊、黒谷ちょっといいか」
「うーん?何ぃ〜藍、もしかしてデートのお誘い?」
「今回の犯人についてだ」
「なんだぁ」
「妖殺し…やっぱり元は人間だったんですか?」
「あぁ、確認が取れた。半年前に無法の妖怪共に襲われ妻子を失った男がいた。付近の住人の話によればその後行方知れずだったらしい」
「薬の方は〜?」
「黒谷の予想通り奴はマドクリフを摂取していた…相当な量をな。今奴がどうやって鬼化し、薬を手に入れたのかを調べている」
「ふぅ〜ん。ま、どうでもいいやぁ!あとはそっちで頑張ってちょっ!さいなら〜」
「それでは、また用があれば連絡ください」
「……あぁ」
☆
「むぅ……」
「どうした橙、機嫌が悪いな」
「私は奴等が嫌いです特に鬼の方」
「だろうな」
「紫様はどうしてあんな奴らなんかに……」
「あの方にはあの方のお考えがある。今更何を言ってもどうにもならん」
「やっぱり藍様も奴等の協力は不服なのですか?」
「当たり前だ……だが、割り切らないといけない事もあるのさ」
★
『あ、遅かったねぇ〜』
『なん…だ……貴様ら…』
『私〜?私は鬼、こわぁいこわぁい悪鬼ザンス!なんつって!』
『あ、どうもすみません!あの、これはこいつが勝手に……!』
『こ、これは貴様らがやったのか?』
『そだよ、あれ?アンタんとこの上司から聞いてない?』
『紫様から?』
『そそ、あ〜にしても久々に動いたから疲れたわ〜帰るから後の処理はよろしく〜』
『なんだと!?』
『これも聞いてない?それもアンタのし・ご・と』
☆
「やっと家だぁ」
「この車良いな、買いだな」
車の情報雑誌を読みながらヤマメが興奮した様子で言う。
「ヤマメまた車買うの?」
「あぁ、最近出た新型車が超クールなんだ!」
「へぇ〜……あ、ヤマメ〜もう遅いから今日うち泊まってきなよ」
「ん、あぁ……そだなこんな時間だし、キスメに連絡入れとくか」
☆
「ただーいまーっ!」
「おそぉぉぉぉいっ!」
「あ、パルスィ」
「勇儀帰るの遅すぎよ!一体何時だと思ってんの!?」
「う、うーんと…」
「あんた今日朝っぱらからヤマメと仕事だって言って昼過ぎには帰るって言ってたじゃない!」
「は?朝から仕事?私聞いてねぇぞ」
「はぁ!?」
「え、えっと…あの……」
「てかお前昼間から女の子と酒飲んでたじゃねぇか」
「ばっ、それは言っちゃダメって」
「ほう……まぁた女遊びか成程」
「え、いや……あ、そうそうパルスィにお土産お土産ぇ……ほ、ほら」
「なにこれ猫耳?」
「う、嬉しいでしょ?」
「はぁ?こ、こんなのあんたが喜ぶだけでしょ」
「可愛いよパルスィ」
「ちょ、馬鹿っ!ヤマメが見てる」
「大丈夫だよ」
「いや、私いるから何も大丈夫じゃないから」
「…………」
「…………」
「んじゃ〜ベット行こうか〜」
「おい待て今の間はなんだ?出てけってか?泊まってけって言ったのお前だかんな?」
「ちっ」
「おいこら舌打ちしてんじゃねぇよ!ていうか結構な回数泊まらせてもらってるけどお前ら毎回ヤってただろ私に遠慮なしに!」
「あー、やっぱ聞こえてるよね〜」
「ちょっと!聞こえないはずって言ってたじゃない!」
「そ〜だっけ?」
「ヤ、ヤマメ……」
「うっ………はぁ分かった、分かりました今日は帰るよ」
溜め息をつき外に出ようとするヤマメであった。
「勇儀、お前今度おごれよ?」
「へぃーす」
☆
「ああ、ちきしょう今日は冷えるなぁ〜さっさと帰ろ。やっぱ帰るって連絡したけどキスメはもう寝てるか」
ヤマメが自宅へ帰ろうとしているとある気配を感じた。
「誰だ?」
ヤマメがそう言うと背後から一人の女が出てきた。
「なかなか上手く気配を消しちゃいたけど相手が悪かったな」
「ふ、流石ですね」
「何者だお前?」
「私の名は魂魄妖夢、剣の道を極めんとする者でございます」
「剣士か、そんな奴が私に何の用?」
「はい、貴女を一流の武芸者として見込んで頼み事があるです」
「武芸者ぁ?」
「はい、昼間この先の通りで大男との戦闘を見学させていただきました」
「あー、アレ見てたのか」
「はい、ヤマメ殿の洗練された暗器使いには感服いたしました」
「暗器って……アレは、んな大したモンじゃないよ」
「ふ、ご謙遜を……私は今、主の元を離れ一人、剣の道を極めるため流浪の旅をしているのですが中々良い修行相手が見つからず困っていました」
「修行相手って…」
「私はまだ貴女のような暗器使いとは闘った事がございません。ですのでどうか一つ手合わせをしたいと思い参りました」
「…………いや」
「はい?」
「いやいやいや!絶対やだよ!」
「な、何故でございますか!?」
「まず時間考えろよ真夜中だぞ!?今私帰宅途中だぞ!?私の帰りを待つ奴(多分寝てるけど)だっているんだぞ?タイミング悪すぎだろ!」
「………………ん?」
妖夢は首を傾げる。
「わかんねぇのかよ!わかれや!」
「ヤマメ殿!敵はいつ何時現れるのかわからぬのですぞ!?第一貴女程の武芸者が臆するなどらしくありませんぞ!」
「う、うぜぇぇぇぇ!なんだお前!大体私はブゲイシャなんかじゃあねぇって言ってんだろが!」
「むむむ…」
頬を膨らませ涙を浮かべた目でこちらを見る妖夢。
「あー!こんクソ…わぁーった一回だけだ!とっとと構えろ!」
「は、はいっ!」
「ったく、一撃でキメて帰るから覚悟しやがれ」
「……参ります」
「ん、待て?お前刀は…」
妖夢はゆっくりと拳を掲げ、そしてそれを振り下ろした。
「斬ッ!」
振り下ろされた妖夢の拳から斬撃が放たれる。
「何!?これは!!」
ヤマメは瞬時に糸の盾を形成し斬撃を防いだ。
「この一撃、防ぐとは…」
「手刀だと……!」
―――めんどくせぇ事になったなぁ……全部あの淫乱勇儀のせいだ!野郎マジで今度一回ハッ倒す!
☆
「へっくしゅん!」
「うぇ、勇儀風邪?」
「う〜んわかんない……けど」
勇儀がパルスィを押し倒す。
「ひゃ!」
「温め合えば寒くない〜」
「勇儀……馬鹿……」
「うひひっ!」