首都高のシンデレラ   作:囃子とも

12 / 13
終章

 年が明けて、一週間。

 原田美世は、346プロダクションの応接室へ呼び出された。

 対面に座るのは、菊地真一。チームKSの今年の契約の話なのは、容易に想像できる。

 右隣に座るプロデューサーは、恐る恐る話を切り出した。

「えっと、今年の契約の事ですよね?」

「勿論、そうですよ」

 菊地は、間髪入れずそう答えた。

 

 本来であれば、プロデューサーから、相手方へ出向くのが普通なのだが。美世も、プロデューサーも疑問を払拭出来ない。

「まずは、こちらの契約書類に目を通していただけますか?」

 そう言いながら、菊地は書類を提示した。

「えっと……今季は、チームKSのテストドライバーとしての契約!?」

 内容を読み上げ、美世は素っ頓狂な声を上げた。

「それって、レースクイーンじゃなくて、ドライバーとしての契約ですか!?」

 プロデューサーも、予想外の内容に戸惑いを隠せない。

「その通り。スカウトと思って貰って構わない」

 菊地の首は縦に動いた。

 

 そして、言葉を続ける。

「最初に断っておくと、原田さんの事は色々聞いてる。普段乗っている、GT-Rを自ら手掛けた事も含めてね。

 そこで、芸能活動と並行して、うちチームで一年間テストドライバーをやって貰いたいんだ。

 まず、岩崎自身も他のカテゴリーのエントリーや、パーツメーカーのテストが増えてきた分、テストのスケジュールが取れなくなった。

 俺自身でテストする事も出来るが、正直年齢的にも結構きつい」

 菊地は、真っ直ぐに美世を見ている。

「何よりも、君の年齢は若い。その若さで、あれだけ車を仕上げて、尚且つ走りの方も中々の物だと思っている。

 今後のチームの為にも、若手の育成は急務なんだ」

 菊地の言葉に、美世もプロデューサーも呆然と固まる。

「……タレントとレーサーの兼業は、過去に例が幾つも存在する。近藤真彦さんをしかりね。

 是非とも、検討していただきたい」

 そう言って、頭を下げた菊地。

「……願っても無い話です。あたしなんかで良ければ、この場で契約書にサインをしても良いくらいです」

 美世は、目をキラキラと輝かせる。

「……細かい内容の詰めもあります。ですが、是非とも前向きに考えさせて頂きます。

 何せ、一般公道をぶっ飛ばすより、よっぽど健全ですから」

 プロデューサーは、笑いながらそう言った。

「では、よろしくお願いします。

 ……それと、原田さん」

 

 菊地は、最後にある人物からのメッセージを伝えた。

「岩崎が、サーキットで待ってるそうだ。それだけです」

 少しの間を置いて、美世は満面の笑みを見せて答えた。

 

「……はい!!」

 

 

 




これにて完結です。

細かい小ネタは、そのうち投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。