淡々と練習をこなしていき、5月下旬になった。授業も終わり、部活に行く途中、金原さんと会ったので少し相談してみた。
「金原さん、練習試合って行なわないんですか?」
「そうだねー。俺っちもそろそろやりたいなって思ってたところなんだけど相手がねー。」
問題はそれだ。俺たちは今、2.3年生がほとんどいない状況にある。大会は2.3年生も来るとのことだが練習試合ではこないだろう。しかもこの状況が他校にバレるわけにはいかないため、非常に練習試合が組みづらいのだ。
「1チームだけこころあたりがあるんですが、そこじゃダメでしょうか?」
「どの高校だい?」
「聖タチバナです。」
「聖タチバナ?あそこに野球部ってないんじゃなかったっけ?」
「はい、去年までなかったんですが自分の元チームメートの奴が聖タチバナには入り野球部を作ったんです。」
「す、すごいね。0から野球部を作るなんて。」
「はい、そいつだったら戦っても得られるものがあると思いますし、どうでしょうか?」
「うん!俺っちに異論はないよ。あとは監督に相談してみて決めようか。」
「はい!」
その後俺たちは監督に相談し、聖タチバナとの練習試合が決まった。
その日の練習も終わり、俺はそいつに電話してみることにした。
『もしもーし。』
「お、テツか?俺だよ!オレオレ!」
『おれおれ詐欺でもする気かい?まったく。』
「はは、とりあえず久しぶりだな!」
『そうだね。久しぶり。』
鉄山 桜花(てつやま おうか)
俺の中学校の頃のチームメートで右投げ左打ちの遊撃手だ。こいつの特徴を挙げるとすれば二つ、驚異的な出塁率と守備範囲だ。
打者としてはとにかく粘り甘い球を弾き返す。基本に忠実だがそれゆえに攻略方法が少ない。俺はこいつが三振したとこをほとんど見たことがない。
守備では一歩目が早く肩も強い。さらにかなりの俊足で球際に強い。こいつが守っているだけで投手はかなり楽になるだろう。
「よく0からチーム作ったよな。どんなチームになりそうだ?」
『うん、なんとか10人集まったよ。でも君が集めたメンバーに負けず劣らずのメンバーが集まったと思うよ。』
「へぇー、そんなすごいメンバーが集まったのか?」
『君が知ってそうなのはパワフルシニアの東條くんと猛田くんだね。』
「!そりゃすげえ奴が入ったな。」
『他にもピッチャーとキャッチャーは君たちを驚かせると思うよ。』
「へぇ、すげえメンバーが集まったな!」
東條 小次郎(とうじょう ごしろう)
右投げ左打ちの三塁手でかなりの守備の名手だ。でもこいつの守備はほとんど印象にない人が多い。それほどにこいつのバッティングには花がある。
それほど体は大きくないがスイングスピードはすでにプロレベルと呼ばれている。選球眼もよく、広角に打つ技術もある。中学野球でも東條の名を知っている奴は多かった。
猛田 慶次(たけだ けいじ)
右投げ右打ちの外野手。強打強肩で守備は荒いところはあるが思い切りがよく、肩の強さにはかなりのものがある。
こいつの1番の特徴は勝負強さだろう。得点圏打率の高さは東條よりも上で猛田が5.6番にいるだけでかなり得点が増える。また、逆境にも強い。俺の印象としては東條や鉄山がチームの柱なら猛田は精神的柱だろう。
他にわかったことはテツたちも俺たちと同じで人数には余裕がなく、練習試合には困っていたとのことだ。それにしてもテツだけじゃなく東條や猛田までいるとはな…。これはかなり苦戦しそうだ。
試合の日になりテツたちが到着した。
「ようこそ!覇堂高校へ!」
「そういうのいいから、案内してくれないかい?」
「はは、手厳しいな。そこに痺れるぅ!憧れるぅ!」
「よし、みんな帰るぞ。どうやらこのバカは案内する気がないらしい。」
「すまんすまん!すぐ案内するから待ってください!」
「まったく。ところで覇堂にも女の子選手がいるって聞いたんだけど。」
「広巳の事か?いるけどそれがどうしたんだ?」
…なんか後ろの女の子の雰囲気が変わった気がするんだが。広巳の知り合いなんだろうか。
「うちのエースががそっちの女の子に興味があるみたいでさ、試合後にちょっと紹介してあげてくれないか?」
「ちょっとダーリン!余計なこと言わなくていいの!」
「だ、ダーリン!?テツお前結婚するのか!?赤飯いる!?」
「結婚もしないし、赤飯もいらない!…まぁ、こっちにもいろいろあるんだよ。」
おぉ、あのテツが少し遠い目をしている。これは珍しいものが観れたもんだ。
「まぁ、聞かないけど話したくなったら話してくれよな。ダーリン❤︎」
「しばくぞ。」
「マジすいませんでした。」
ちょっと短いですけど一旦ここで切ります!次は練習試合が始まりますのでお楽しみに!