明日もハレの日、諏訪の夏 ~カミサマのあだなさけ 作:花市 匁
この小説は東方project様の二次創作です。原作と異なる所が多々あります。
気に入らない点もあるとは思いますが、しばしのあいだお付き合いくださいm(_)m
すこしでもお楽しみいただけたら幸いです。
木々はぬれたように、光り輝き、白と青の天井が眩しい。
そこから降りそそぐ矢のような光りが、Tシャツを汗でしめらせる。
どこまでも続く蒼穹にただよう入道雲は、昨日よりもすこしばかり小さく見える。
アブラゼミがやかましく鳴く、蒸し暑い夏の日の午後。
「はっ、はっ、はああ……」
石櫃衛は、あぜ道を必死で走っていた。
特に急ぐような深刻なことにおちいっているのではないのだが、衛にとってはとても大事なことなのだ。
畷から落っこちないよう気をつけながら、ナップザックを肩にさげてひたすら走る。
横目で諏訪子の姿を探してしまう。しかし居なかった。
彼がめざしているところ――守矢神社は確かこのへんだ。
しばらく走ると、森が見えてくる。
「……………ここか?」
見ると森の入り口の前に立つ木の棒に、「
おそるおそるなかに入ると、視界に映っていた世界が一気にうす暗くなる。むわんとした草熱れが全身を包み込んだ。
しかし、緑の空間はどこか涼しげで、すがすがしいにおいがする。
歩くとやがて、地面が土から石に変わり、いよいよ神社らしい鳥居が見えてきた。
「やっと、着いた……」
耳を澄ますと、なにやら声が聞こえてくる。
楽しそうで、女子特有のかん高い声が森に反響する。一人は知らない、けどもう一人は聞き覚えがある。昨日、夕べに聞いたあの声。
―諏訪子だ。
ゆっくりと神社のほうを覗いてみるや否や、衛はすぐに首をひっこめてしまった。
少女が二人、水鉄砲で遊んでいた。
しかも、きゃっきゃと笑い声をあげる彼女たちの片一方は、やはり洩矢諏訪子、だった。
いいようのない戸惑いの気持ちが衛を襲う。
――やばい。どうしよう。
あの黄色い声の集団に、自分が入り込める隙間がまったく見つからない。
水風船を割ったように、水滴が宙にまき散らかされる。その水のつぶが夏の日差しに照らされ、まるでダイヤモンドの破片をばら撒いたかのような光景をつくりだす。
たらたらといやな汗がながれる。夏の暑さと心の不安が混ざりあったぬるい汗。
だが、もう後には引けない。
声をかけようとした瞬間、
「って、あれ?衛!なんでここに?!」
ふとこちらを見た諏訪子が驚愕の声をあげた。
……助かった
ほっと息をつきたいところをこらえ、そちらに歩み寄る。
「諏訪子様の知り合いですか?」
もう片方の少女が、遊びをやめてそう尋ねてきた。
「え、いや……知り合いというか……」
答えにつまる衛。ここ友達といったほうがいいのだろう。
だが、答えるよりも先に目の前の人が口を開き、叫んだ。
「ももも、もしかして、参拝に来られたのですか?!ありがとうございまあす!!」
絹を裂くような声とともに、言い終わらないうちにいきなりその人が衛に飛びかかってきたのだ。
「むぐぅ!!?」
突然のことに驚倒する。
彼女が衛に抱きついてきたのだ。
顔がぬくぬくとしたやわらかいものにつつまれているような感触をおばえる。
その感触の正体がわかったとき、衛の顔は冗談ぬきで火が出そうなほどに赤く染まった。
「いやあ~ありがとうございます、もうめちゃくちゃ嬉しいですよ!ねえ、あなた、このまま信者になりませんか?マジでおねがいします」
勝手に暴走しだす彼女。声にならない嫋々な悲鳴をあげるが、届かず。
息ができない。
目に涙すら浮かべて、となりの少女へ助けをこう。
願いが伝わったのか、救いの手は差しのべられた。
「ちょ……早苗、それは私の知り合いよ。お門違い、参拝客じゃありません。放してあげて」
その言葉を聞き、早苗、と呼ばれた少女の顔がこわばった。
「………………………え?」
おもむろに、今の自分の状態に目をやる。
びしょびしょに濡れた服で、少年をうでに抱いている自分。
そして、当の少年は耳の先まで真っ赤に染まらせて、ぜえぜえと荒い息を吐いている。
水色と黄色のタータンチェックのワンピースはずぶ濡れで、うっすらと下着が見えていた。
ふっ、とうでの力を抜く。
「………………………」
白い肌をつたう水滴と、汗が混ざる。
今の状況を脳漿をしぼって考え、ゆっくりと理解する。
――今度は彼女が赤くなる番だった。
「えええええええ!?ご、ごめんなさいごめんなさい!ってああ、はずかしい…………」
「え?!い、いやいや、だいじょうぶですよ?」
今度は神社の前で手で顔を覆い、粉乱してしまう彼女。
ここまでの流れだけでも十分疲れたのに、また面倒くさいことになってしまった。
衛の顔の赤みはひいたが、彼女は恥ずかしさのあまり今にも泣きそうだ。
すぐに彼女のパニック状態は回復した。
びしょ濡れの服を着替えてくる、と言って神社に戻っていった。
さて、どう時間を潰そうかと、ぼんやり考える。
すると、となりから声をかけられた。
「なんでここに私がいるって分かったの?」
忘れていた。
今までの混乱で全く意識に入らなかったが、ここには諏訪子がいる。
こうべを巡らすと、そこには昨日の神様がいた。
朱鷺色のワンピースを濡らして、かえる帽子をかぶった少女。
そう問いかける彼女の顔は真剣だった。
――
『神様と二人きり』
ほおをかすめる夏の風は、この森のなかでは妙に冷たい。
草木のじっとりとした空気が、心にもじめじめとした雨を降らす。
なんとも言えない気まずさが衛を襲う。
あの日、昨日の夕べに諏訪子に変な気持ちを抱いてしまったからか。
諏訪子は答えを待っている。
この場でおかしな感情になっているのは自分だけだ。
そのとき、
「はあっ、はあっ……、そこの君……まさか諏訪子様の知り合いとは知りませんでした……ごめんなさい」
早苗、と呼ばれた人が、着替え終わってこちらへ駆けつけてきた。
この空気のなかで乱入してきた場違い感に、若干の怒りを覚える衛。
「衛、だから、なんであんたはここに私がいるってことが分かったの?」
早苗さんも、ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、黙ってしまった。
「それは…………」
諏訪子の質問に戸惑う。
自分の答えがあまりにも単純すぎるからだ。
「だって、ここで神様のいそうな場所っていったら、守矢神社しかないだろ?」
そんな衛の言葉に、諏訪子がきょとんとした。
早苗、と呼ばれた人は顔をあげてなぜか驚いている。
「………え、ぼく、変なこといった……?」
不安になる衛。
しかし彼女たちの反応は衛が予想していたのとは全く違うものだった。
「と、いうことは……もしかしてあなた、この守矢神社をご存知だったのですね!!」
先に口かけしたのは衛に抱きついてきたあの少女だった。
太陽のように破顔一笑して、今度は衛のほおを引っ張ったりと弄りまわす。
一方、諏訪子はなにやらとても安心した面持ちだった。
「ちょ、なにすんだよ!放せっ」
状況の収集がつかなくなるがまずは、ほおの安全を確保する。
ターゲットを逃がした獣のような目になる早苗という人。
いきなり怒鳴られたことにしばし驚き、手をひっこめる。
胸をなでおろす諏訪子はまだいいとして、目の前のこの人はいったい何がしたいのか。
「ったく…………あなた、何者なんですか」
心のなかの出来る限りの悪しき気持ちを集め、言う。
そんな衛の敵視線を感づいたのか、その人はすこし笑顔を崩す。
紺碧色と白のボーダーのパーカをはおり、背は衛よりちょと高い。年は中学生くらいに見える。
今まで気が付かなかったが、彼女の髪は若草色だった。
黒髪が緑に見えたのからではなく、髪そのものが緑。けれど、違和感は全くない。
その長い髪が、風になびく。
森の緑と一体化、いや、この空間と彼女自身が調和していた。
「すみません、いきなりの出来事に取り乱してしまって………」
活発さもなかに澄んだ水のような響きがある声。
先ほどの笑顔とは一片して、清楚な笑みがあった。
「申しおくれました。私、ここ守矢神社の巫女をつとめている、東風谷早苗といいます」
「諏訪子様のお友達、よろしくおねがいしますね」
――そういって、早苗はぺこりとお辞儀をした。
この作品に最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
お楽しみいただければ嬉しいです。
最近は寒いですね。私は現在絶賛病気中です……((( +д+)o=3=3
まあ病気といっても最初はただの風邪だったのですが、それを放っておいたら悪してしまい、三週間たっても快方に向かいません。
しかも親指がわずかに痙攣したり、ふくらはぎの筋肉痛が激イタだったりと、HPが削られるうえ、特殊攻撃の状態異常によって大変です。(今はけっこう良くなりました)
皆さんも体調には十分気をつけてください。風邪はこじらす前に休んだほうが断然いいことを身をもって実感しました。
またもやくだらない(?)話が長々としてしまったことをお詫びするとともに、改めて読んでくださった方に心より感謝申し上げます。
ご意見、ご評価、ご感想のほど、頂けたらうれしいです。