5時間目が始まっていろははずっと机で伏せていた。
「(はぁー、やっちゃったー私…いきなりすぎたかな、でも先輩が好きなんだもん。
でも……)」
だがしかし、いろはには少なくとも強敵が2人いる。雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣だ。
「(この前3人で出掛けて結衣先輩が雪ノ下先輩に宣戦布告のような事をしたって、結衣先輩言ってたし、先輩は気づいてるようでな気づいてないし…)」
「(でも、あの2人には負けてられない!だから宣言したんだ!)」
などと1人心の中でやり取りをしているうちに
5時間目、6時間目は終わっていた。
「(今日も奉仕部行って先輩と話そ…)」
〜放課後〜
「よう」
「あら今日は早いのね」
いつものように雪ノ下は3人分の紅茶を淹れておいてくれて、教室内はいい匂いがする。
「まあな、由比ヶ浜は?」
「さあ?すぐ来るんじゃないかしら」
「やっはろー!」
「おう」
「こんにちは」
「ヒッキーこの前はありがとー」
「こっちこそありがとな、クッキー。由比ヶ浜にしてはうまかった」
「なんかバカにされてる!?」
「いやだって今までのお前の料理センスからしたらあんなまともな食べ物初めてだろ」
「そうね、由比ヶ浜さんが珍しく人が食べられるものを作ったようね」
「ゆきのん〜ひどいよ〜」
奉仕部のいつもの会話だ。中身がない話をしているかもしれないがそれがどことなく落ち着く自分がいる。この関係がいつまで続くのだろうと不安を抱えながら。
「こんにちわー♪」
「あ、いろはちゃんだ!やっはろー!」
「こんにちは」
「何しに来たんだよ、お前は」
「むー、先輩その態度はひどいです!」
頬を膨らませてそっぽを向くいろは。
(あぁ…本当あざとかわいいなこいつ)
「今日は何の用かしら?」
「生徒会主催のイベントで相談がありましてですね、先輩を借りたいと思いまして」
「え、やだよめんどくさい」
「なんですぐそーゆーこというんですかー!
誰のせいで生徒会長になったと思ってるんですかー?」
それを言われると弱る。八幡がいろはを生徒会長にしたのも同然なのだからそれを言われると手伝うしかない。
「昼休みやっただろ。まだ資料あんのかよ」
「そんなところです!それと相談したいことあるんですってー」
「ちょっと待ちなさい、あなた達昼休み会っていたの?」
「ヒッキー昼休みいないと思ったらいろはちゃんのところにいたんだ!いろはちゃんになにしたの!ヒッキーきも!」
「一色さん、何か弱味でも握られて何かされたのかしら?警察を呼びましょう」
「なんで俺がこいつに手を出したって事になってるんだよ。生徒会の手伝いをさせられてただけだ」
「そうなんですよー、先輩にそんな度胸あるわけないじゃないですかー」
「だよねー!ヒッキーがそんなことするわけないって信じてた!」
「お前思いっきりきもいって言ってたよね」
「でも比企谷君にばかりいつも任せてられないわ。だから一色さん今回は私と由比ヶ浜さんが手伝うわ」
「そーだよ!いつもヒッキーに任せてばかりだと大変だし!」
2人の勢いにいろはは圧倒されている。
「じゃ、じゃー今回はお2人にお願いしますね」
「というわけで比企谷君、今日は帰っていいわよ。」
「いや俺も手伝う「いいの!ヒッキーは今日は帰って!」
「お、おう、わかった帰るよ。じゃーな」
その状況が読めない八幡はとりあえず帰ることにした。
「ではでは、生徒会室にお願いします!」
「なんか最近扱い雑だな、不幸だ…」
〜生徒会室〜
「いろはちゃんー、この資料はここでいいのー?」
「あ、はい!そこでおっけーです!」
「大体終わったわね」
「後は生徒会主催のイベント第2弾を何にするかって事なんですけど、わたしはバレンタインもやったんで、ホワイトデーもやりたいな!って思ってるんですけどー」
「お、いいじゃん!でも男の子達くるかなー」
「比企谷君はともかく葉山君やその隣のうるさい人とか来てくれそうじゃないかしら」
「戸部先輩ですか、そうですね、来させますよー」
「後は優実子と姫菜も呼んでみるね!」
「内容としては男の子がホワイトデーで女の子に作るってことでいいですよねー?」
「でも作ってくれるかなー、ヒッキーやらなそー」
「あの男は無駄口を叩いてやらなそうだけれど、でもやらせるわ、大丈夫よ」
「じゃーこれで決まりにしますねー、それとお2人に大事なお話があります」
2人は珍しく真面目な顔をしたいろはに驚いている。その眼差しはとてもまっすぐで純粋だった。
「わたし、先輩に告白したんです」
真剣な眼差しを2人に向ける。その眼差しはとても強い物を感じる。
「え!?」
「……」
「でもまだ返事はもらってなくて、わたしが卒業するまでに好きにさせて彼氏にするって宣言をしたんです。結衣先輩からこの間の話を聞いて決心したんです、だから先輩にいっちゃいました」
この間の話とは水族館に行ったときのことだ。
あの雪の日、
由比ヶ浜と雪ノ下がはっきりとは話さなかったあの会話。奉仕部最期の依頼は奉仕部の未来について、雪ノ下と八幡の依頼、雪ノ下と由比ヶ浜の八幡に対する好意の事だ。それを知った上でいろはは八幡に想いを告げたのだ。
いろはは潤んだ瞳を我慢し言い続ける。
「先輩達にはわたしは負けたくないです!だから雪ノ下先輩と結衣先輩には言っておきたかったんです」
「今日はありがとうございました!イベントについての詳細はまた奉仕部にいって報告するんでよろしくです!では!」
いろはが胸の内を教えてくれた時、2人は何も言えなかった。こうして改めて気持ちを再確認すると不安がある。雪ノ下と由比ヶ浜の関係はこのままでいられるのか。3人のこの関係は無くなってしまうのではないか。
生徒会室から奉仕部の教室に戻ってきた2人。
「いろはちゃん、すごいね」
「ええ」
「私にはあんなことできないなー、あんなにまっすぐで素直な気持ち」
「そうね」
沈黙が2人を包む。
「由比ヶ浜さん、私、比企谷君のこと好き」
「……」
「でも、それくらい由比ヶ浜さんの事も好きよ」
「ゆきのん」
雪ノ下の放った言葉はとても優しさがあり、それと同時に彼女の何かが変わったのを感じた
「ずっと迷ってた、由比ヶ浜さんが比企谷君の事好きだと気づいていたから、私は気持ちを我慢していれば3人のこの関係は続くんだって、だけど一色さんが素直になっているのを見てそれは違うと思ったの」
雪ノ下が自分の気持ちを話してくれたのは初めてではないのか。昔の、今までの自分を否定し、戒めるかのように呟く。
「ゆきのん、私があの雪の日言ったわがままなこと覚えてる?私はねずるい子なんだ本当に。ゆきのんもヒッキーも欲しいと思った。だけどそれは無理だと思ったから勝負の事を言ったんだよ」
「ええ、わかってるわ、だけど由比ヶ浜さん、どちらがどうなっても私たちは友達よ、それは変わりないわ」
「うん…!だから私も遠慮はしないからね!」
2人は笑顔でそう言いあい、他愛のない話でその後も話して帰っていった。いろははその2人の姿を見ながらこの2人の先輩に話して本当に良かったと思った。
今回も見てくださってありがとうございます。
いろはと奉仕部の2人といろはを絡めて書いてみたかったので書きました!雪ノ下と由比ヶ浜の八幡に対する気持ちについても自分なりに書いてみました。
「不幸だ」某ツンツン頭の少年のネタを入れて普段の八幡らしくない事を入れてみました。