ーーー数日後ーーーーー
「はぁ…ねみ、もう3月も終わりか」
(今日も疲れた、主に生きる事に。そしてあのあざとい後輩に入学式の日程やらなんやらあるからって手伝わされたからな)
そういう八幡は学校から家に帰宅した時にそんな事を心で嘆いていた。
(そういえば俺のマイエンジェル小町がいないぞ、どこ行ったんだあいつ)
プルルルルル……
八幡の携帯が鳴っている。
名前表記がされてないので誰なのかわからない。
「そもそも俺が番号教えたやつなんていないはずなんだけどな」
ピッ
「はい」
「せんぱ〜い〜!きいてくださ…」
そこで八幡は電話を切った。
「…人違いだよな、俺あんな誰にでも甘えてきそうな後輩の声なんて知らないし、よし寝よう」
プルルルルルル……
「……お掛けになった電話番号は現在」
低い声でそういう八幡に対していろは笑っていた。
「せんぱい、なに言ってるんですか」
「うるせーよ、なんで番号知ってんだよ」
「葉山先輩から聞きました♪」
葉山ァ……てか、なんであいつも俺の番号知ってるの、教えた覚えないんだけど、何俺の番号絶賛流出中なの?人気者なの?
「んで、何の用だよ」
「もうすぐ春休みじゃないですかー、だから入学式の準備手伝って欲しいなとか思ったり」
あざとかわいい声でいろはは八幡にお願いする。
「悪い、春休み全部開いてねーや、全部小町と遊ぶまである」
「妹さん大好きなんですね、でも来月から一緒に登校できるからよかったじゃないですか」
そう、小町は総武高校に受験し、合格したのだ。受かってお兄ちゃんも嬉しい。だから来月から一緒に通う事になる。
「まあな、じゃ、そういう事で」
「ちょっと待ってくださいよー!手伝ってください〜、いいんですか、私の胸触った事校内でバラしますよ?♪」
「……わかったよ」
「ありがとうございます〜♪使え…頼れるせんぱいいると違いますね♪じゃ、明日の修了式の後に生徒会室に来てください、ではでは〜」
あいつ絶対使える先輩って言おうとしたよな、絶対そうだよな、仮にもお前の好きな人に使えるとか言っていいのかな?
……自意識過剰だな、うん。
ーーーー修了式後ーーーーーー
奉仕部部室……
「来月から私たちも最上級生か〜実感無いねーゆきのん!」
「ええそうね、受験もあるのだし、気を引き締めましょうか」
「受験かー、嫌だなあ…この3人が離れるのはやだよ」
今までの思い出を思い出して由比ヶ浜は少し笑っている、と同時に少し切なくもある。
「気持ち伝えたけど、まだ何にも行動してないよ…」
「由比ヶ浜さん…私、校門で由比ヶ浜さんが告白してるの聞いてしまったの、ごめんなさい」
由比ヶ浜は驚きはしなかった。奉仕部で2人で話していた時、心の内を見せ合った。そして2人はあの男の事を好きだと自覚した。だから雪ノ下には逆に知っておいて欲しかった。
「私、知ってたんだ」
雪ノ下は顔を上げ由比ヶ浜を見つめた。
「私、みんなが思ってるほどいい子じゃないって言ったでしょ?あの場でゆきのんに見せて起きたかった。私が本当に本気なんだってところ」
唇を噛み締め、思った事を全て吐き出そうと、本物の友達だからこそ全てを言おうとする彼女を見て雪ノ下は覚悟した。
「だからゆきのん、もう一回言うね、遠慮はしないよ!」
雪ノ下は何も答えなかった。答えられなかった。本心は遠慮をしているのではないか、彼女に対して引け目を感じているのではないのか。雪ノ下は自問自答を続ける。そして彼女が出した答えは由比ヶ浜の思った通りだった。
「由比ヶ浜さん、私はーーーーー」
同時刻 生徒会室
ガラガラガラ
「おーそーいーでーすーせーんぱーいー♪」
「お前そゆこと男子全般にやってるだろ、勘違いするんだからやめてあげてね、俺はしないけど」
「すぐそーゆー事言うんですから、大丈夫です、せんぱいだけですよ♪」
八幡はそれに、はいはい、と答えると席に座った。
「んで何を手伝えばいいんだ?」
「いや…特に手伝いはないんですよね」
少し困ったような顔をして八幡に言った。
「せんぱい理由がないと来てくれないじゃないですかー、せんぱいと2人でいたかったので呼び出ししちゃいました♪」
ビシッ!っと軽く敬礼をしてウインクをして八幡を見る。
「わかった、帰る」
「ちょっーーーーと!待ってくださいって!可愛い後輩とで2人で居られるんですよー!」
「うるせえ、俺は雪ノ下に呼ばれて部室に顔出さなきゃいけねーんだ」
(でないとあいつに何言われるかわからない、「比企谷くん、あなた約束も守れないの?ゴキブリの方が生きる価値はあるわ、ゴミ谷君に改名したらどうかしら?」とか言われかねない。怖い怖いよゆきのん)
「えー!後15分だけ…だめですか…?」
そう言うと八幡の袖を引っ張り上目遣いをしている。
「せんぱいに会いたかったんです、あんな事があったから…」
あんな事とは不良に絡まれた時のことだ。
「お礼をしたりないし、言い足りなかったんで呼んじゃいました♪」
いろはは笑顔を浮かべているが、心の奥底ではまだ傷が癒えてないのではないか、そのような雰囲気が感じ取れる。
「いやだなーそんなお礼言われることしてないですよー」
「誰の真似してるんですか、オネエみたいで気持ち悪いです」
「誰ってお前だよ」
いつも通りの一色との会話だ。何の他愛もないくだらない会話だ。そういえば平塚先生にも言われたな。そのくだらない事の積み重ねが大切な物を作っていくとかいかないとか。
「むー!!そーゆーわけで今日は夕方まで返しませんからね♪」
「待て俺は雪ノ下のところへ行かなきゃいけないんだ、本当に殺されちゃう俺」
いろはは力を込めて八幡の腕を引っ張っている。(なんで今日に限ってこんなに面倒臭いんだこいつは、いや面倒なのはいつもだけど…しょうがない、お兄ちゃんスキルを発動させるしかないな)
「うーーー!……へ?」
いろはが驚いたのは何故か。それは八幡が自分の頭を撫でてきたのだ。
「……ま、また今度な」
慣れない事をして八幡はその言葉を発する時、噛んでしまったので格好がつかなかった。
「…せ、せんぱい噛んでてカッコ悪いです」
腕を引っ張るのをやめ、ぽかんと彼の事を見上げている。
「じゃーな、またなんかあったらメールしろよ、めんどいけど」
そう言うと八幡は生徒会室から出て行った。
いろははその場から動けなかった。今自分が何をされて何を言われたのか覚えてないのだ。
「(せんぱいこそあざといじゃん…後輩の頭撫でるとか…もーーーーーーー)
いろははその場に撫でられた頭を抱えて座り込んでいた。
ーーー奉仕部ーーーーーーー
ガラガラガラ
「うぃーす」
「あら、ゴミ谷くん遅かったじゃない」
「ヒッキー、やっはろー!」
(あいつ今ゴミって言った?明らかにゴミって言ったよね?あれ?俺の予想当たっちゃった?八幡の予想ドンピシャ!)
「もう人間ですらないのかよ」
「嘘よ、戯れよ」
「なに?どこの時代の人間?」
雪ノ下がそう言うと八幡はいつも通りに反応した。
「んでお前の言ってた用ってなんだよ、早く帰りたいんだが」
雪ノ下は一つ咳払いをして、答えた。
「明日から春休みでしょ?……そ、その由比ヶ浜さんが今日家に泊まりに来るのだけれど、あ、あなたもどうかしら?」
八幡は耳を疑った。彼女が自分を遊びに、いや家に呼ぶなんて今迄なら考えられなかった。
(なんだ!?どーゆー風の吹き回しだ?こいつ何か企んでやがるのか?)
「い、いや俺帰って寝たいしいいよ、お前らで遊べよ、しかも泊りなんて男が行けるわけないだろ」
(常識的に考えればわかるはずだ。
ましてや俺なんて誘うなんて何か企みがあるとしか思えない)
「えー、ヒッキーも行こうよー!ゆきのんに勉強も教えてもらうしさ!」
由比ヶ浜が笑顔で八幡に言う。
「嫌ならいいのよ来なく、きゃっ!!」
由比ヶ浜が口を塞いで雪ノ下を教室の外に連れやった。
(ゆきのん!!!なんですぐマイナスの方向に言うの!!!!)
(いやその…私は由比ヶ浜さんじゃないんだし、こういうの初めてなのよ)
「なんなんだ?あいつら」
そう八幡が言うとと2人は戻ってきた。
「ひ、比企谷君、勉強するためだと思ってきてもらえるかしら…?」
「だから俺はいかな「なんですかー!それー!」
聞き慣れた声が奉仕部の部室内に響いた。
一色いろはが興味津々にその事について尋ねてきた。それもとびっきりの笑顔で。
「雪ノ下先輩!結衣先輩!なんの話ししてたんですかー?」
「今日ゆきのんの家で泊まりで勉強会しよーって言ってたの!」
「そうなんですかー!せんぱいが行くなら私も行きたいです!」
「ええ構わないわ、だけれど一色さん、私の教えは甘くないわよ?」
言葉とは裏腹に雪ノ下の表情は和らいでいる。
「はいー!せんぱいにも教えてもらいますね♪」
「ちょ、待てよ俺まだ行くなんて一言も言ってねーだろ」
本当に面倒臭そうな雰囲気を漂わせている八幡。
(こいつら3人がいる空間になんていたくない、何が起こるかわからない、化学反応で毎日が実験みたい〜♪ってなっちゃうだろ、まあいい、誘われた以上、ここで行かないわけにもいくまい。いやもうほんと全然行く気とかないし、リトさんばりのハーレム空間に乗り込む気ないし、勉強教えて欲しいわけでもないし。ただ。ただね?なんか行かないと氷の女王が目線で俺の事殺しにかかってるからね?ほら人の善意は受け取っておけって母ちゃんによく言われただろ?しょうがない乗り気じゃないけど行くしかない)
「わ、わかったよ、風呂入って飯食ったら今日の夜いけばいいんだろ」
「決まりね」
「やったー!楽しそうだね!ゆきのん!いろはちゃん」
「そうですねー結衣先輩!」
そう言ういろはは何かを企てている表情をしている。雪ノ下と由比ヶ浜は目を合わせて微笑んでいる。
彼と彼女達の春休みが今始まろうとしている。
更新遅れてすいません。
八幡らしさがどうしても欠けてしまいますね…
もっと原作読んでおきます。