ゼロの使い魔《怪人の主は純血の姫》   作:Gesamtsieg

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これまた随分と更新が遅れたなあと思う次第でございます。

我ながら平常運転ですね。

反省はしてるんですよ?


互いを知り、事を識る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         〈純血〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問おう。貴女が俺のマスターか?」

 

色の抜けたような人形じみた少女は、確かに僕へとそう言った。

 

少女は、その言葉と同じく人智を超越した圧倒的な存在を放っている。

 

人間じゃない。直感的にそう感じた。このような存在が人間や亜人と同列の次元にいていいはずがない、と。

 

まるで、そう、ラグドリアン湖の水の精霊を相手にしているような、そんな感触。だというのに、どういうわけかシンパシーを感じる。例えるなら、異国の地で同郷の人に会ったような気持ち。

 

そんな不思議な感覚に引っ張られるように、僕は思わず口を開いた。

 

「うん。君は、いや、君が僕の使い魔だ」

 

灰色の少女は面白いものを見たというような笑みを浮かべて、鷹揚に頷く。

 

「なるほど。わかった。これからよろしく頼むよ、マスター」

 

大勢の生徒と少々の大人が見守る中、こうして僕たちは出会い、主従と相成った。

 

 

 

 

 

使い魔召喚の儀が終わり、親友ともいえる桃色の少女と互いの使い魔を紹介し合った後、僕は使い魔と共に寮の自室へと帰った。

 

そこで軽く自己紹介を行ったわけだけど・・・・・・

 

「つまり君は人間じゃなくて、幽霊みたいなものだと?」

「大まかにはその解釈で間違いはないさ。通常の霊体と違って今回は肉体があるがね」

 

肉体がある幽霊。なかなかに奇妙なものを僕は召喚してしまったらしい。

 

彼女、いや、彼についてわかったことをまとめてみよう。

 

記憶喪失で名前や素性はわからないが、戦いや日常生活では問題がない。体は女性だが、魂―――心だろうか?―――は男性である。人間ではなく肉体を持った幽霊のようなもの。・・・・・・信じがたいことではあるが、異世界から召喚された可能性が高いらしい。彼の世界では月は一つしかないそうだ。

 

僕にとっても、おそらくは本人にとっても本当に難儀なことに、彼自身について何一つわかっていないも同然だ。

 

「まぁ、名前がわからないのは不便だということはわかる。差支えなければ、当面俺のことはアサシンとでも呼んでくれ」

「アサシン、ね。わかった。・・・・・・ところでアサシン。君も僕のことはアルルと呼んでほしい。愛称だよ」

 

アルルカーナ・ボナパルド。縮めてアルル。

 

初めてこう呼んでくれたのはルイズだ。当時、名字で呼ばれたくないと言った僕に、彼女が言った言葉はよく覚えている。

 

『じゃあ、アルルってどう? 可愛くていい名前だと思うわ』

 

新しい自分を貰えたような気がして嬉しかった。未だにそう呼んでくれるのはルイズだけだけど。

 

「オーケー、アルル。だが、公式の場やサーヴァントとして動く時はマスターと呼ばせてもらう。それでもかまわないか?」

「もちろん。ところで、おーけーって?」

 

聞き覚えのない言葉だ。でも、どこか小気味がいい。

 

「了解、とか大丈夫、とかいう意味さ」

「ふぅん。いいね。僕もこれから使わせてもらおう」

 

おーけー・・・・・・オーケー、ね。ルイズにも教えてあげようかな。

 

「マスター、サーヴァントとして説明しておかなければいけないことがある」

「何かな、アサシン?」

 

一応出しておいたワインのグラスを片手で弄びながら、アサシンは目をこちらに向けた。マスターと、僕を呼んだということは使い魔として僕に用件があるということだろう。その目はいくらか真剣だ。

 

「まず、俺とマスターは今、二つの繫がり―――パスがある」

 

右手で二本指を立てる。

 

「一つ目はマスターがこの世界の召喚術でつなげた、使い魔とその主に繋がれるパス。マスターの話通りならこれはおそらくどちらかが死ぬまで消えない」

 

その内一本を折り曲げる。

 

「二つ目は俺の世界の召喚術に則って結ばれた、サーヴァントとマスターに繋がれるパス。こちらは一つ目のリンク程無制限じゃない。制限を過ぎても消えることはないが、命令権を喪う。このパスがある限りサーヴァントはマスターから魔力―――精神力のようなものを供給され続ける。逆に言えば、この魔力供給が切れて時間が経ち過ぎるとサーヴァントは存在していられない。まぁ、俺は受肉しているわけだし余程意図的に大量の魔力を放出しない限り大丈夫だとは思うが」

 

もう一本の指を折り曲げ、握りこぶしを作る。

 

「その制限というのが・・・・・・マスター、自分の右腕を確認してみてくれ。何もなければ左腕もだ」

 

言われた通りに右腕の袖を肩までまくり上げてみる。制服はちょっと大きめな為そう窮屈でもなかった。

 

「あ、赤い痣みたいな、紋様?がある」

 

右肩から二の腕にかけて描かれたそれは、よくよく見ると三つのパーツに別れているように見えた。古代文字でもないし、見慣れた様式でもない。十中八九、アサシンの世界のものだろう。

 

「それが制限だ。それは令呪という聖痕。三つあるだろう? その数だけマスターはサーヴァントへの絶対命令権を持つ。使うごとに一画ずつ消えていき、使い切ると先ほど言ったようにマスターはサーヴァントに一切の強制力を持つことができなくなるのさ」

 

なるほど。主従の関係を明確化させ、一種の安全装置としても働くのか。

 

(まぁ、本来それは聖杯から配られるもので、聖杯戦争もなさそうなこの世界で何故存在しているのかはわからんが)

 

ボソボソとアサシンが呟く。声が小さすぎて何を言っているのかわからない。

 

「そしてここからが重要だ。令呪は絶対命令権であると同時に、奥の手になりうるのさ」

「奥の手?」

「令呪はそれ自体が強大な魔力。通常サーヴァントができないようなことも、令呪の命令に帯びる魔力を上乗せすることによって可能になることもあるということだ。例えば、大幅な身体強化や離れた場所からの瞬間転移とか、な」

「へぇ。つまり便利だからこそ乱用はできない、と」

「理解が早くて助かる。下らない命令で消費されたら困るのは、マスターだけじゃなくサーヴァントも含まれる」

 

そこでアサシンは、グラスの中のワインを飲み乾し、思い出したように言った。

 

「後もう一つ。令呪は明確で瞬間的な命令には文字通り絶対の力を発揮するが、あやふやで長期的な命令には力が発揮されづらい。絶対服従とかな。一応程度だがサーヴァントにも抵抗力があるってことさ」

「うん。大体理解した。じゃあ、今度はこっちの使い魔についてだけど――――――」

 

夜は長い。いつもはそう思うのに、今日はどうしてかとても短く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          〈怪人〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がこのハルケギニアという世界に召喚されて約一日経った。その間にもちろん何もしていなかったわけじゃない。アルルから大まかにこの世界について聞き出している。

 

文明レベルは中世ヨーロッパ。歴史が長いにしては科学が未発達であり、その原因は魔法という奇跡が一般化されているところにある。が、魔法を使えるのは始祖と呼ばれるブリミルという人間の子孫―――つまり貴族だけ。彼らはメイジと呼ばれ、ある意味中世ヨーロッパの貴族よりも民から恐れられ権力を持っている。平民はメイジに勝てないという固定観念が根強いようだ。ちなみにここは、トリステインという由緒ある王国にある貴族の子女を育成する教育機関らしい。名前はトリステイン魔法学院。我がご主人様もここの生徒だという。

 

うむ。明確に俺の知っている世界じゃない。

 

並行世界。それも、根元から変わってしまい理すら捻じ曲がってしまった並行異世界といったところ。厄介なところに召喚されたものだ。

 

今日は、少しでも情報を得る為、アルルが受けている授業に同行させてもらった。

 

十代後半ほどの少年少女たちが、こぞって一言もしゃべらず教壇で魔法について講義を行っている恰幅のいい中年の女性に視線を向けている。真面目で結構なことだが、どうも俺はこういう雰囲気が苦手らしい。大量の虫でも放してぶち壊してみたくなる。

 

今は、そうだな。魔法の系統についての質問に、小太りの男子生徒が焦ったように答えているところか。

 

火、水、土、風・・・・・・ね。元の世界でいう五大元素にあたるものだろう。この世界ではこれらをいくつ重ねて魔法を撃てるかによってメイジのランクが変わるらしい。

 

「皆さんもご存じのとおり、今は失われた系統である虚無を加えた五系統から魔法は成り立っていますね」

 

虚無は・・・・・・何だろうな。元の世界でも、一部の魔術師が持っているような架空元素のようなものだろうか。それとも俺たちで言う『魔法』のようなもの?

 

そもそも『魔法』と『魔術』は別物だ。科学や他の手段で代用できる程度の奇跡が『魔術』。何をもってしても再現できない本当の奇跡を『魔法』。後者は片手で数えるほどしか使い手がいないことを考えると、この世界の魔法は『魔術』に近いものなのかもしれない。『魔法』っていうのは並行世界の管理や世界の創造すら可能にするからな。まぁ、俺は魔術でさえ落第だがね。なんせ記憶がないから使えるはずもない。

 

てか、『仕切り直し』を持ってるってことは、相当生存能力が高かった英霊か? それとも逃げ足が速かっただけか? なんか後者な気がするなぁ。俺の英霊としての格はそんなに高くなさそうだ。ま、並行異世界なら知名度とか関係ないしどうでもいいことではあるが――――――。

 

「伏せてッ!!」

「っ!」

 

アルルの切羽詰まった声を聞き、反射的に椅子を蹴飛ばして床に伏せた、その直後だった。

 

 

≪バァァァァァンッッッッッッッッ!!!≫

 

 

爆音。爆発した音と書いて爆音。

 

それも小物が破裂したなんてレベルの音ではじゃない、この教室の備品を悉く吹き飛ばしてしまうような風圧を持った、それなりに大きな爆発だ。

 

前兆のようなものは感じなかった。いきなり。いきなりこの教室内で爆発が起きたのだ。

 

爆風の流れから見て爆心地は教卓付近。その近くには教師と、それと昨日アルルの紹介で知り合ったルイズという少女がいたはずだ。

 

そう思い至るや否や、急いで周囲を確認する。

 

爆風は収まりかけ、煙も少し晴れてきた。アルルは無事だろう。伏せろと言ったのは彼女なのだから。他の生徒も、その使い魔たちも大きな怪我を負った者はいないように見える。ルイズの使い魔の少年も目を回してはいるようだが、それだけ。至って健康らしい。

 

問題の教師とルイズは・・・・・・マジですか? 無傷? あの距離で、あれだけの爆発を受けて? 

 

二人共、服こそボロボロに煤けて、ルイズに至っては可愛らしい三角の布が見えてしまっているが、傷自体はほとんどない。挙句の果てにこう呟いた。

 

「ちょっと失敗したみたいね」

 

これが『ちょっと』らしい。どうやら彼女と俺の間には文化の違い以上の感覚の差がありそうだ。

 

ていうか、これルイズがやったのか。宝具でいうならD+程度はありそうだ。火力だけならサーヴァントに迫る、ね。こりゃあ将来が楽しみだ。

 

「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」

「いつだって成功の確率、ゼロじゃないかよ!」

 

煙が晴れて安全を確認した生徒たちが口々に文句を言う。察するにこれが初めてじゃないんだな。だったら慣れても良かろうに。

 

さて。場も収まったようだし、我がご主人様はどうしたのかねっと。

 

辺りを見渡して―――ありゃ? いない。いくら扉に近い席に座っていたとはいえ、あの一瞬で教室の外に逃げられるとは思えんし・・・・・・。

 

 

ふにっ。

 

 

おっ。なんか手のひらにほんのり柔らかい感触が。

 

 

ふにっふにっ。

 

 

ううむ、ちょっと小さいけど気持ちいい。もっともっと。

 

 

ふにっふにっふにっ。

 

 

それにしてもどこか懐かしい感触だな。まるで誰かの体の一部であるような・・・・・・。

 

 

ふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにっあんっ。

 

 

なんか今ヘンな声混じらなかったか? すごーく聞き覚えのあるような。

 

 

「・・・・・・その・・・・・・・・・・・・そろそろやめてもらえると、ね?」

「あ、はい」

 

 

うん。普通に聞き覚えあったわ。てかご主人様の声だわ。

 

正直に言おう。気づいてました。途中からわざとやってました。だって気持ちよかったんです。女の子大好きなんです。

 

「・・・・・・で、言い訳は?」

 

まるで菩薩の用だ。

 

思わずそう呟いてしまいそうなほど綺麗な笑顔で、しかしどうみても般若が垣間見える雰囲気で地獄の閻魔はそう言った。

 

ならば男としてこう言うしかあるまい。

 

 

 

「とても気持ちよかったです」

 

 

 

悔いはなかった。

 

 

 




暗「どうもー。第二回アサシンさんの解説コーナーでーす」

僕「生徒でーす」

暗「始まってばかりですが、今日はこれで終わりでーす(サッ)」

僕「(ガシッ)許されないよ?」

暗「ですよねー・・・・・・」



僕「さて、僕の言いたいことはわかっているよね?」

暗「な、なんのことかな」

僕「脳を直接殴られて思い出すのと、自己申告するの、どっちがいい?」

暗「すみませんでした。でもわざとじゃないんです」

僕「じゃあ、僕がこれから君に何をしても?」

暗「文句のもの字もございません」


      ―――少々お待ちください―――


僕「よし。本題に入ろうか(スッキリ)」

暗「Yes sir・・・・・・(げっそり)」

僕「今回のお題は『聖杯』。これについて知りたいんだ」

暗「オーケー。聖杯っていうのは、本来聖遺物の一種だ。聖遺物っていうのは十字教やほかの宗教で尊ばれている過去の偉人が残した遺物で、聖骸布などがそれにあたる。他にも宗教的に聖なるものと認められれば聖遺物だな」

僕「僕たちハルケギニアの住人でいうと、始祖ブリミル様が遺した物品みたいな感じかな?」

暗「そうだな。それで大体あってる」

僕「でも、それだと古いだけで宗教者や歴史学者以外には無用の長物じゃない?」

暗「その通り。だが、俺たちの世界の聖遺物は特殊な力を持つもんでな、聖骸布なんかは染みついた偉人の力が大元になってるといわれている。だから魔術的にも非常に価値があるのさ」

僕「なるほど。強力なマジックアイテムというわけだね」

暗「先ほど言った通り、聖杯もその一つだ。だが、聖杯に関して言えば少々特殊でね、その特異な部分こそが人々を惹きつけてやまない」

僕「人々っていうのは君の世界のメイジのことだよね。余程強力なマジックアイテムなんだ?」

暗「うむ。超がつくほど強力だ。なんせどんな願いでも叶えてしまう聖なる杯だからな」

僕「どんな願いでも!?」

暗「落ち着け。・・・・・・まぁ、実際のところ現実はそう甘くない。どんな願いも叶えるという聖杯のオリジナルは見つかっていないんだよ」

僕「ということは伝説のアイテムってこと?」

暗「そうだ。だが、魔術師たちは伝説を現実にしようとした。その結果完成したのが、とある東の町に作られた人工聖杯。システムや過程はややこしいからここでは省くが、オリジナルにならぶ性能を持ったマジックアイテムを魔術師たちは作り上げてしまったのさ」

暗「しかし、そんなものが存在すれば奪い合いにならないはずがない。無秩序に奪い合うよりはマシ。そう考えて魔術師たちは聖杯戦争という裏の戦争を考え出した」

暗「聖杯戦争の詳細についてはまた今度としよう。けど、これで聖杯がいったいどういうものかはわかってもらえたはずだが?」

僕「うん。大体わかったよ」

暗「じゃあ、今回は大分長くなったしこの辺りで終わっておこう。また次回!」

僕「尺がないからって適当に終わった感すごいけど、また次回~!」

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