ゼロの使い魔《怪人の主は純血の姫》 作:Gesamtsieg
テンション高めだけど酒は入ってないです。ええ。入ってませんとも。
〈左手〉
ギーシュと戦った時、初めて剣を握った。
青銅の塊は予想以上に重くてちょっと驚いたけど、それ以上に柄を握った瞬間漲る力に当惑した。
すでに体中痛いほど痛めつけられていたのに妙に調子が良くて、羽のように体が軽かったのは、記憶に新しい。
いざ剣を振るってみると、面白いように青銅でできたはずのゴーレムが切り裂け、彼らの攻撃もまるで児戯のように感じた。
だから調子に乗っていたんだと思う。
あの力があるとわかった今、どんな奴にも負けるわけがない。ましてや年端もいかない女の子に後れを取るはずがない、と。
だけど、頼みにしていた力はその上を行く力によっていとも簡単に敗れた。
いくら全力で剣を振るっても少女の柔肌に傷をつけることはないし、その灰色の髪の1本さえも切り落とすことが出来ない。
十数分が経過する頃には息が荒げ、半時経つ頃には慢心を捨て、一時間後には立つことすらままならなくなった。
剣を地面に突き立てた時が俺の敗北の時間であり、仮初のプライドが崩れきった瞬間だった。
為す術もなく敗北を認めた後は、どこかスッキリした気持ちになった。
もともと戦いが大好きというわけでもない平凡な一般市民の俺だ。諦めたなら整理も早い。
それに、体力を使い切って息も絶え絶えな敗者に勝者はこう言ったんだ。
「やるなぁ少年。ちゃんと剣術を修めていたら勝負になったかもしれない」
君にはまだ可能性がある。そう言ってもらえたことは、素人で自負のない俺にとって素直に嬉しかった。
通信簿に落ち着きがないだとか、好奇心が強いだとかしか書かれたことがない俺にも人より優れたものがある。自信が持てるとまでは言わないけど、やっぱり嬉しい。
「アサシン、いやアサシンさん」
「アサシンでいいってば」
「俺に剣術を教えてください!」
この人自身が示してくれた可能性だ。断られることはないだろう。そう思っていたんだけど・・・・・・。
「嫌だ。てゆーか無理」
すげなく断られた。
「な、なんで」
「俺に剣術は使えない。証拠にさっきの勝負の時も剣を用意していなかっただろうが」
そういえば、アサシンは無手で戦っていた。
「だがそうだな・・・・・・授業くらいはしてやれる」
「授業?」
「応。剣術じゃなくて戦闘の授業さ。如何に相手を滅ぼし、自分が生き残る為の授業。ヒーローなんかとは相容れないであろう、人殺し教室だ」
人殺し。
そう聞いて俺は思わず絶句した。言い訳をさせてもらえるならば、そんなこととは無縁な平和な現代社会に生きてきた人間、それもただの高校生にショックを受けないわけがない。
それを知ってか知らずか、暗殺者は再び問いかける。
「この先は地獄だぜ?」
〈虚無〉
最近私の使い魔であるサイトが心なしか様子がおかしい。
いつも通りのほほんとしてるかと思えば、珍しく何か悩んでいるようなそぶりを見せたり、急に変な質問をしてきたり。
例えば今日の午後は、
「なぁルイズ。メイジって戦場に出たりするのか?」
とか訊いてきた。
おかしいとは思ったけど、特に差し支える質問でもないし、私は素直に答えた。
「場合によるわ。軍と関係の深い家の貴族なら進んで戦場に出るでしょうし、両親が行かせたがらないような家もあるのよ。私の場合は後者ね。多分だけどお父様が許してくださらないと思うわ」
私としては、戦場に出ることがお国や姫様の為になるなら喜んでそうするんだけどね。メイジの杖は国の為にあるんだから。
するとサイトは神妙な顔をして、
「そうか・・・・・・じゃあ、俺が人を殺さなきゃいけないようなことはないんだな」
なんて言う。
いきなり何を言うのかしらこの使い魔は。ありもしない仮定で悩むような性格には見えなかったんだけど。
「当たり前でしょ。あんたは平民とはいえ私の使い魔なんだから。人殺しなんて最低なことさせるわけないじゃない」
悩みを晴らしてあげるような気持ちで言ったつもりが、サイトの表情に変化はない。
本当にどうしたのだろう。
誰かに入れ知恵でもされたのかしら。サイトの交流関係から言うと、メイドかアルルかギーシュか食堂の料理人たちか、あとはアサシンとかいうアルルの使い魔ね。うん妖しいのがアサシンくらいしかいないわ。
親友の使い魔を悪く言うようで嫌だけど、ひひ、卑猥なこと言うし、病み上がりのサイトに喧嘩なんか申し込んでくるし。
決めつけるには早いけど、訊いてみる価値くらいはあるわ。
さて、あいつはどこにいるのかしらね。
暗「アサシンさんの解説コーナー。本日は特別ゲスト第二弾としてサイト君の主、ルイズをお呼びしております」
ルイズ(以下零)「え、何!? ここどこ!?」
暗「拉致ってきたなんて言ってはいけないぞ★」
零「あ、あんた、アルルのとこのアサシンじゃない! どういうことよ!? 説明しなさい!」
暗「相変わらず元気のいいお嬢さんだ。良いでしょう。説明させていただきましょう」
暗「要するに、なんとなく連れて来ただけだ!」
ドガンッ。
暗「いきなり爆発をぶちかますのはどうかと」
零「あんたの言葉を借りるなら、なんとなく、よ」
零「なるほど。ここは本編の解説コーナーというわけなのね」
暗「そういうわけだからなんか質問どーぞ」
零「あんた記憶喪失なのよね?」
暗「そーだな」
零「じゃあ、なんで戦闘技術? なんかは覚えてるのよ?」
暗「戦うことがお役目みたいなサーヴァントが戦えなくなったら終わりだからな。仕様みたいなもんだ」
暗「ま、早い話自分のステータスくらいなら読み取れるし、身体も戦い方を覚えているって感じだな」
零「ふぅん。だからサイトに戦闘技術を教えられるなんて言ったのね」
暗「そういうこった。ま、基本感覚派の俺に教師が務まるとは思えんがな」
零「? どうして? 腕があればできるじゃない」
暗「いい選手がいい監督になれるとは限らないんだぜ」
暗「今回はこれで終わりだが、ここで嬉しいお知らせがある」
暗「作者の都合によりこのコーナーが短縮されることになった」
零「具体的には今まで毎回やっていたのを、数話に一回っていう頻度に変えるだけよ」
暗「ぶっちゃけ作者の技量不足とネタ不足だが広い心で包み込むように見てくれると有難い」
零「めんどうになったともいえるわ」
暗「それを言っちゃあいけない。ま、俺としては願ったり叶ったりではある。俺も面倒だからな」
零(もうだめね。この作者と主人公)
暗「というわけでまた次回!」