海浜幕張にある川崎さんが働いているであろう、ホテルロイヤルオークラの最上階にある、エンジェルラダー天使の階というバーに到着した。
「よう比企谷、中々似合ってるじゃないか」
このエンジェルラダーというお店はドレスコードが必要なため比企谷も紫のYシャツにベージュのジャケットを着て髪もアップバンクにして大人の雰囲気を醸し出していた。
「なんかお前に言われると嫌みにしか聞こえないな」
そんな俺の服装はダブルブレステッドの紺のジャケットにワインレッドのネクというタイそしてグレーのスラックスにチーフちょっと高級なバーに行っても恥ずかしくない格好である。なぜそんなのを持っているかというと親父の仕事柄パーティーとかに毎年連れていかれるので持っているのだ。
「お待たせ~まった~?」
そんな言い合いをしていると後ろから声が聞こえたので振り向くと胸を強調した赤いドレスを着た結衣とかたや胸の露出度は低いがスタイルを強調したきれい目の黒のドレスの雪乃がいた。
「今来たところだよ、結衣と雪乃すごい似合ってるよ」
「ありがと!ゆきのん独り暮らしだしこんな服いっぱい持ってるんだよ!まじ何者!?」
「大袈裟ね、着る機会があるからたまたま持っているだけなのよ」
「早見といい雪ノ下といい普通はそんな服着る機会なんて無いんだけどな」
「じゃあそろそろ行こうか」
そう言いエレベーターに乗り込み最上階にあるバーに到着してカウンターの方へと向かうと川崎さんらしき人物がいた。
「あそこにいるのがそうじゃないか?」
「そうね声をかけてみてちょーだい。比企谷くん」
「川崎…」
「申し訳ございませんどちら様でしたでしょうか」
川崎は白のYシャツに黒のベストワインレッドが少し入っていて首に黒の蝶ネクタイと大人っぽいこのバーに合った服を着ていた
「同じクラスなのに顔も覚えられてないなんてさすが比企谷くんね」
「雪ノ下、それに由比ヶ浜に早見…じゃあ彼も総武高の人ってことか…で?何しに来たの?まさかダブルデートってわけでもないんでしょ?」
川崎はグラスを拭きながら嫌みっぽく言う
「まさかね、冗談にしても趣味が悪いわ」
なんで俺たち二人が傷つけられてんだ…
「夜帰るのが遅いって弟が川崎さんのこと心配してたよ」
「大志が何をいったのか知らないけど気にしないでいいから、もう関わらないで」
「シンデレラの魔法が解けるのは午前0時だけど貴方の魔法はもうすぐ解けてしまうわね」
そういうことか…俺は腕時計に目をすると今の時間は21時50分、労働基準法により18歳以下のアルバイトは5時から22時までとなっている。つまり深夜働けないのである、しかし川崎は朝帰りをしているということもあり、恐らく深夜に働いているので、歳を誤魔化しているので無いかということであろう。
「あのさ~川崎さん、私もお金無いときバイトするけど、歳を誤魔化してまで働かないし…」
結衣がそこまで言いかけると
「別に、お金が必要なだけ」
「あーそれはわかるんだけどよ…」
「働いたら負けとかいってるやつにわかるわけ無いじゃん人生なめすぎ、こっちは遊ぶかねほしさに働いているわけじゃないから、そこらの馬鹿と一緒にしないで」
「じゃあ、なんのために働いているのかな?弟も心配してるみたいだしさ弟には事情話したほうがいいんじゃないか?」
「それをあんたに言う必要はないじゃん、それにさあんたらもさ、偉そうにしてるけど私のためにお金用意できる?うちの親が用意できないものを肩代わりしてくれるんだ」
人のの家の事情に踏み込むのはあまり良い事じゃないし遊ぶお金欲しさじゃないと言うことは歳を誤魔化している意外は恐らくちゃんとした理由なのでこちらとしては中々言い返すことが難しい。
「そのあたりでやめなさい、それ以上吠えるなら…」
「ねぇ雪ノ下、あんたの父親県議会議員なんでしょ?それに早見、あんたのところの父親は医者で病院経営してんでしょ?そんな余裕あるやつが私のことわかるわけ無いじゃん」
雪乃が動揺しグラスを倒したこともあり結衣が立ち上がる
「ちょっと!ゆきのんとゆうくんのことは今関係ないでしょ!!」
「ならわたしの家のことも関係ないでしょ」
「今日はもう帰ろうこのままだと仕事の邪魔にもなるし話が平行線のままだ。」
俺はそう立ち上がり全員分のお金を払ってエレベーターの方へと向かう。
「それにしてもお前ボンボンだったんだな正直驚いた」
「やめてくれ…そんなたいしたことじゃないさ、それより比企谷、最後川崎さんと話してたけど何を話してたんだ?」
「あぁ、明日の五時半マックに集合でそこで川崎がなぜ働いているかそして解決策を話す。だからお前らも五時半にマック集合だ」
「りょーかい、じゃあとりあえず今日は解散ってことでいいな。」
そう言い俺達はそれぞれに帰路につき俺は家に帰りそのままシャワーを浴びて目覚ましをセットしそのままベッドに潜り込む。
一応紗奈にも伝えたようとしたのだが母さんからの許可が降りずに五時半に行くことはできなかった。
五時半と言うことで当然まだ陽も上っているわけもないのでまだ薄暗くマックの中には入るともうみんな集まっていて注文を頼み席につくと同時に制服姿の川崎もやって来た。
「大志、あんたこんな時間に何してるの…」
「それ、こっちの台詞だよ姉ちゃんこんな時間まで何してるんだよ」
「あんたには関係ないでしょ」
「なぁ川崎なんでお前が働いていたか当ててやる」
「うちは進学校だから高2のこの時期になると進学を意識するやつが少なくないし、夏期講習とか真剣に考え始める。だが弟も受験生ということもあり塾に通っているため進学志望の川崎はバイトをし学費やら夏期講習のお金を稼ぐためにバイトしているってわけだ」
「姉ちゃん…」
「だからあんたは知らなくていいっていったじゃん、親にもあんたにも迷惑かけるつもり無いし」
「あのーちょっと良いですかー」
すると小町ちゃんがなにかを言いたそうに手を上げる
「紗希さんが迷惑かけたくないのといっしょで大志くんだって紗希さんに迷惑かけたくないと思っているんですよ~その辺をわかってもらえると下の子的には嬉しいかなって…」
「そこで解決策なんだが、川崎スカラシップって知ってるか?」
比企谷は川崎さんにスカラシップの説明をしていた。川崎さんも頭はいい方なのでスカラシップをとるのも難しくはないということもあり納得した川崎は弟と帰っていった。
「姉弟ってああいうものなのかしら?」
「人によりけりじゃねーの?一番近い他人って言い方もできるしな」
「そうね、それはとてもよくわかるわ」
そう言い雪乃と結衣は帰宅していく、雪乃が何かを思ったのだろう少し不自然だったのが気になったが。
今日は職場見学当日だった、隼人と優美子と一通り見学し終わったのだが今日の比企谷が少しおかしかった、班のメンバーである戸塚と由比ヶ浜と距離を置いて見学をしていて終始どこかを一点に見つめてボーッとしていたように見えた。
「以上で職場見学を終了。解散。」
職場見学が終了しみんなはどこかでご飯を食べようという話になっている。
俺は比企谷のことも気になったので隼人たちの方を断り比企谷に理由を聞くためにとご飯を誘おうとする。
「比企谷少し今日おかしかったぞ、ご飯奢るから理由聞かせてみな」
そう言い比企谷を誘うと後ろから結衣が来た。
「ヒッキー!ゆうくん!遅い!みんなファミレス行っちゃったよ!」
「お前は行かねーの?」
「あ、や、ヒッキーを待ってたというかおいてけぼりは可哀想だし」
「由比ヶ浜は優しいよな俺のことならきにする必要なし、早見と一緒にファミレスに行きな」
「え、ヒッキーは?」
比企谷は少し間を置きふぅーっと息を吐き言葉を続ける
「お前んちの犬を助けたのは偶然だし、あの事故がなくても俺、たぶんボッチだったしお前がきにやむ必要全くなし。悪いな逆に変な気を使わせたみたいで、でもこれからは気にしなくていい、気にして優しくしてんならそんなのは辞めろ…」
比企谷がそういうと結衣は申し訳なさそうに、片手を頭にのせる
「やーなんていうんだろ、別にそんなんじゃなかったんだけどな~」
そう言うと結衣は涙目になりながらこの場から去っていく。
「その現場を見たから俺からはどっちが正しいとか判断はできない、前にも言ったかもしれないけど比企谷はもう少し自分に自身を持った方がいい君は自分が思っているほど悪い人間じゃない、少なくとも俺よりはいい人間だ」
そう言い俺は結衣の跡を追いかけた。