恋姫†有双   作:生甘蕉

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第一章    無印
一話    魔法使い?


 ふうぅぅぅ。

 大きく息を吐き出すと寝台に眠る女性を見つめる。

 美女というにはまだまだ早そうな……とてもそうは見えないが十八歳は超えているはずの美少女。

 

 金髪美少女の名は曹操ちゃん。

 華琳という真名は知ってるが授けてもらってないので、心の中でも曹操ちゃんと呼ぶ。

 万が一口にでも出したら殺されるから。

 

 殺されるよ、マジで。うん。

 

 

 

 ここは苦労して用意しておいた隠れ家。

 そこに曹操ちゃんと二人きり。

 俺は達成感に満ちていた。

 

 無理もない。

 途方もない難易度のミッション。

 目的は道士の術にかかってしまった曹操ちゃんの救出。

 

 前もって作っておいた白装束の衣装で変装した。

 記憶を頼りに作ってもらったそれの出来はかなり悪かったがバレずにすんだ。白装束のやつらは思考操作とか受けていて判断力下がっているのかもしれない。

 干吉という眼鏡道士が離れた隙に、操り人形とされてしまった曹操ちゃんをさらう。……いや、助け出す。

 

 曹操ちゃんがいなくなったことがばれないように、夏侯惇将軍の部屋から持ってきた曹操ちゃんそっくりの人形を代わりに玉座に置いてくる。

 城を脱出。

 用意しておいた隠れ家へ潜む。

 

 む?

 文章にすると簡単そうだな?

 だがしかし、俺は弱い!

 スペランカー並である!

 このミッションだけでも三度ほど死んだ。

 

 

 そしてコレからさらに難易度が高いミッションが待っている。

 曹操ちゃんにかけられた術を解くという最難関。

 

「震えるな」

 呟きながらも震える手で胸ポケットから取り出したものの包み紙を向き、口に放り込む。

 危ない薬や煙草ではない。

 残り少なくなった遥か遠い故郷の味、粒ガムである。

 味はスーパーハードなミント。眠気覚まし用のキツイやつ。

 

 くっちゃくっちゃ。

「ふん!」

 噛みながら鼻から強く息を吐く。

「うん。落ち着いてきた」

 そうは言ったが手の震えは治まってなどいない。

 落ち着いたんだと自己暗示のように言い聞かせて作業を始める。

 

「落ち着いてきた落ち着いてきた落ち着いてきた落ち着いてきた……北郷一刀なら余裕なんだろうか?」

 思い浮かべてみた。

 

 

北郷一刀

 (括弧内は俺。比較用)

むこうでは学生

 (むこうでは失業中)

こっちでは天の御遣い

 (こっちでは兵士)

剣道部

 (帰宅部だった)

武将達にモテる

 (彼女いない歴=年齢)

この恋姫世界の主人公

 (恋姫プレイ済み)

三国志に詳しい

 (三国志なんぞ知らん)

なんだかんだ死なない

 (すぐ死ぬ)

 

 

 なんだろうこのスペック差。

 マリオとスペランカー以上の開きじゃね?

 悲しくなった。

 涙に濡れた眼鏡を拭いたら手の震えも治まっているのに気付いた。

 

 

 そして曹操ちゃんも下着姿になっていた!

 

 ……もちろん俺が脱がしたのだが。

 

 

 

 恋姫†無双の記憶を頼りに曹操ちゃんの術を解くためだ。

 

 たしかエッチすりゃ術が解けるんだよな?

 

 実は恋姫†無双はプレイしたことがあるが一回きり。

 一回のプレイだけじゃコンプできないエロシーン?

 

 セーブデータもらってきて見ました。

 

 恋姫†無双といっしょに真・恋姫†無双も買ってたからそっちのプレイ優先。

 真はやりまくったよ、うん。

 おかげで無印の記憶が薄い。

 

 

 ははは……まあきっとエッチすりゃ大丈夫! エロゲだし!!

 

 

 

 

「最低だ、俺って」

 

 

 あ、手を拭いてる内にさっきの情報にもう一つ追加だ。

 

北郷一刀

 (括弧内は俺。比較用)

ち●こ

 (魔法使い)

 

 


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