恋姫†有双   作:生甘蕉

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十二話   秘策?

 新たな力。

 その名も双刀(ツインブレイド)

 そう。

 北郷一刀の二倍の能力を手に入れた俺!

 

 

 

 嘘ですごめんなさい。

 本数倍でも半分以下ですきっと。使えないでしょこんなの!

 神様、もしいるのならチートで無双とかもう言いません。戦闘力たったの5でもかまわないから、普通の身体に戻してプリーズ!

 

 

 

 

 俺は今現在、一刀君たちと共にいる。

 苦労して街にたどり着いた時、迂闊にも接触してしまったからだ。

 道とか方向とかわかってる分、一周目よりも早く着いてしまい、黄巾党退治に出陣する一刀君たちと鉢合わせ。

 格好はともかく腕時計でこっちの人間じゃないことがばれて、いっしょにいることになってしまった。

 関羽ってば強引。俺を逃がしたら一刀君にも逃げられるとか思ってんのかな?

 空腹でフラフラなのに戦闘ですよ。

 

 案の定、戦闘中にぶっ倒れた。

 道場へ行かずに済んだのは関羽と張飛ちゃんが守ってくれたおかげらしい。まあ、一刀君のついでだろうな。

 

 

「それじゃ、お願いします」

 黄巾撃退でお祭りモードな中、やっと食事をした俺は一周目で世話になった商隊に頼んで陳留の華琳ちゃんたちに手紙を出す。

 手紙なんて書かずに道場で連絡すればいいのだが死ぬのは嫌。痛いし。辛いし。

 華琳ちゃんに慌てて書いた手紙には「ボーナスで身体に異常発生、治るまでは会えない。治ったらすぐにそっちへ向かう」って書いておいた。ちゃんと追伸で「愛してる」ってのも忘れてないよ、うん。書いた後転がってたら変な目で見られたけどさ。

 そして春蘭、秋蘭には図面付きであるものを依頼。本当はこっちの方がメインで街につくまでずっとそれを考えていたから、一刀君たちの接近に気付かなかったんだけどね。

 季衣ちゃんと桂花はもういっしょにいるのかな? 今回は急ぎだったので書けなかったけど後でちゃんと手紙を書いておかないとまずいだろう。

 

 

「手紙出す相手なんているんだ」

「うん。俺がこっちに来てからずいぶんとなるしね」

 正確にはずいぶんとやり直してるしね、だけどさ。

「こっちの文章書けるなんてすごい」

「一刀君ならすぐに覚えるよ」

 一刀君はやはりこっちの世界に全然詳しくない。二周目なのは俺と引継いだ嫁さんたちだけっぽい。

 一刀君にしてみれば俺は「知らない天井(あまい)」か……。

 さ、寂しくなんかないんだからね!

 

 

 読み書きができると知られてしまった俺。

 二周目は迂闊続きだ。用心しないと。

 そもそも周回ボーナスを適当に決めたのがケチのつき始めだったんだよなぁ。

 そんなことを書類の山を前にして思った。

 幽州啄郡啄県の県令となった一刀君。読みはともかく書くのがまだまだらしく政務は関羽と何故か、俺にもまわって来る。

 いや内政とか俺の担当じゃないから。

 一周目でやってたのってせいぜい季衣ちゃんのお手伝いレベルですから!

 

「俺、そろそろ人探しの旅に戻りたいんですが……」

 一応、俺はそんな理由で彷徨ってることにした。華佗を探してるってのは嘘じゃないし。だから俺にもなんか役職回そうとしてたけどそれは辞退している。

「せめてこれが片付くまでは……」

 困った顔で俺を見る関羽。いや無理でしょ。片付くどころか増える一方だし。

「……文官さん入るまでだからね」

 俺も甘いな。早く孔明ちゃんこないかなぁ。

 

「探している方というのは? こちらでも探して見ますので」

 仕事の手は休めずに関羽が聞いてくる。見つかったら俺が出て行かなくなるとか考えているのかな?

「華佗。……俺の身体を治してくれるかもしれないお医者さん」

「医者?」

「うん。あ、伝染(うつ)すとかないから安心していいよ」

 ボーナスだからたぶんうつりはしないだろう。女の子が複乳になったら悲しすぎる。

 

 あれ? なんか関羽手が止まってるけど。

 もしかして泣きそうになってない?

「そのようなお身体で……」

 俺のこと不治の病とか勘違いしちゃった? そりゃ俺、スタート地点から街までの絶食でやつれたけどさ。

「いや、あのね」

「自らの治療を後回しにしてまで我らを手伝ってくれる……天の人はなんという方たちばかりなのだ!」

 手伝わせているのは君たちでしょ。

 あ、涙を手の甲で拭ったよね、今。関羽内で俺、死病とかにされてるんじゃないの?

 

「天井殿!」

「ん?」

「私のことは以後、愛紗とお呼び下さい」

「受け取れない。だって俺はここを出て行くんだよ」

 真名なんて受け取ったらここから俺、逃げにくくなるでしょ。

 

「構いません」

 関羽って一度決めたらなかなか折れないところがあるのは二周目の短い付き合いでもわかった。よく言えば芯が通っている。悪く言えば頑固者。これは俺の話聞いてくれないね。

「……わかった。一刀君と同じで俺には返す真名がない。皇一って呼んでくれ」

「はい。皇一殿」

 にっこりと笑う愛紗が可愛くて、やっぱりなんか逃げにくくなったと確信。

 これ以上深入りする前に脱出せねば。

 

 

 その機会は意外と早くやってきた。

 県境の警備隊が黄巾党に全滅させられ、今は公孫賛が率いる官軍が防戦してくれているらしい。一刀君たちは公孫賛を援護すべく出陣する。

 普通の人! いや、無印では違うだろうけど。

 チャンスだ。

 少ない荷物をデイバッグに詰め込んでいく。ここで得たお給金や用意したアイテムも。

 ……重いな。

「トレーニングのための重りと思うしかないか」

 忙しくて一刀君と兵士さんたちの訓練とかつきあうの少なかったからなあ。もっと鍛えないと駄目だね、これは。

 

 

 

「姓は諸葛! 名は亮! 字は孔明ですぅ!」

 県境に向かう途中、黄巾党の別働隊に襲われてた孔明ちゃんとも合流できた。

 うん。これでやっと出て行ける。

 関係ないけど孔明ちゃんってランドセルっぽい鞄背負ってる。色が黒なのが残念だけど。

「うん、一刀君たちの仲間になったんだってね」

「!」

 あれ? なんか驚いた顔で俺を見ている?

「あ、俺ね。姓は天井、名は皇一。字はないよ」

 

「あ、あの、天井しゃんはご主人様と?」

「うん。同郷ってことになるのかな? まあ、でも天の御遣いってのは一刀君で間違いないけど」

「そ、そうでしゅか」

 なんだろう? 俺と一刀君をチラチラ交互に見たりして。

 ……まさか、ね。

「ああ、八百一本な関係じゃないから」

 

「はわわっ! ななな、なにを言ってるのかしゃっぱりわかりましぇん!」

 一応言ってみたらビンゴ!

 的中しても嬉しくないけどさ。

 

 ……いや嬉しいか。八百一本に反応したってことは春蘭たちが上手くやってくれてるってことだからね。たぶん。

「そう? まあ地味なおっさんと一刀君じゃソレはないよね」

 

 

 

 愛紗や孔明ちゃんの活躍で、黄巾別働隊はあっさり撃破。

 やっぱり軍師って凄いなあ。愛紗と張飛ちゃんの武力も無茶苦茶だし。

 負傷兵の後送や部隊の再編成も手早く済ます孔明ちゃん。もうこっちの戦力を把握しているのか。さすがである。

 

 黄巾党の本隊が陣を張っている地点に急ぐ途中で、孔明ちゃんと愛紗たちが真名交換。なぜか俺も巻き込まれてしまう。

「俺は一刀君といっしょで真名がないから皇一でいいよ」

 ますます一刀君たちと別れづらくなったけど、ロリっ娘二人の真名を得たから良しってことで。

 ……絆も深まったとか一刀君が言う。もしかして俺が別れようとしてるの気付いている?

 今はちょっと無理そうだけど、タイミングを見計らって早く一刀君たちから逃げないとまずいかな。

 

 二里ほどの移動で公孫賛の陣地へ到着。

 朱里ちゃんと共に一刀君に連れられて公孫賛と対面する。

 無印公孫賛は男前だった。

 そして、無印趙雲は猪だった。

 

「ちょっと待って」

 たった一人出陣しようとする趙雲を追っかける。

「貴殿は?」

「天の御使い君の同郷のただの人。名前は天井皇一」

「そのただの人がなにゆえ……いや名乗られた以上、こちらも名乗るべきか。私は趙子龍」

「常山の昇り竜、だっけ?」

「ほう。ただの人というわりにはお詳しいらしい」

 話はしてくれてるけど、足は止めてくれない趙雲。早足なんで追っかけるのも大変。

 

「本気で一人で戦いに行くつもり?」

「無論そのつもりだが」

「そうか。じゃ、餞別」

 デイバッグから小さな壷を取り出して放り投げる。早歩きのまま振り向きもせずに背後から投げられたそれを受け取める趙雲。

「これは?」

「腹減ってたら力出ないよね。残念ながら今あげられる食料はそのメンマしかないけど」

「……かたじけない」

 やっと足を止め、壷を開ける趙雲。いつのまにか手にしていた箸でメンマを摘み口へと運ぶ。

 一応、趙雲好感度アップ用に厳選したメンマなんだけど口に合うかな?

 

「…………」

 無言でメンマを味わってる。

 気に入らなかったのかな?

「…………」

 うん。そろそろ一刀君たちのとこへ戻ろう。そう思ったころ、やっと趙雲が声を発した。

「馳走になった」

 壷を投げて返してくれる。なんとか落とさないで受け取る。

「残りは帰ってきてから頂くとしよう」

 なんかそれ死亡フラグっぽいけど。食いかけのステーキとかさ。

 

 

「趙雲一人で出てっちゃったよ」

 一刀君たちの陣へ戻る俺。

「やっぱり止められなかったか」

 いや止めてないけどね。後で護衛頼もうと思うから好感度下げたくないし。

 

 一刀君たちは趙雲が一人で出陣するのを見越して、それを救助する作戦を立てていた。趙雲を救うためにすぐに出陣する北郷軍。

 趙雲追っかけて疲れてる俺。荷物置いていくんだった。

 動きが重かった俺はあっさり撃破された。

 二周目初めての道場行き。メンマの死亡フラグは俺のだったみたい。

 

 

 

 真っ先に確認するがボーナスは解除できないみたいだった。

 というか、『2しゅうめ』の項目自体が消えてしまっている。一周クリアしないと出てこないのか?

 

「ふむ。……異常は見受けられないのだけど?」

 華琳ちゃんが俺を睨む。

「言いにくいとこが言いにくい状況になってる」

 説明しようとすれば簡単だけどまだ止めておこう。切られたくない。

 

「ふむ。……似合ってる、かな?」

 今度は俺が華琳ちゃんを視か……観察。

 春蘭と秋蘭に手紙で頼んだことが少し形になっていた。

「疑問系?」

 俺が手紙で頼んだこと。

 それは華琳ちゃんの衣装を真・恋姫†無双の衣装に替えること。

 

 無印と真の大きな違いといえば、勢力別ルートと新キャラとそして、華琳ちゃんの新衣装。

 華琳ちゃんが真魏ルートを目指すなら衣装も真のにした方がいいんじゃないか。スタート地点から人里までの道中にそう思いついて手紙を書いた。

 今の華琳ちゃんは無印と真の間ってとこかな。ニーソや腕のは真っぽくなってるけど服は無印のまま。

「胸元の開口部の大きさが難しくてな」

 春蘭が拘っている点を説明してくれた。

「うん。それはわかる。でも早く完成させてくれ。効果があるみたいなんだ」

 たぶん、これの影響で朱里ちゃんが腐女子になったんだと思う。

 

「効果、ね。たしかに新しい衣装のおかげなのかしら?」

 真バージョンの髑髏の髪飾りを手で弄びながら華琳ちゃんが続ける。

「これを着けてから典韋が見つかったわ。正確には季衣が思い出した、だけど」

「え? だってそんな子知らないって……」

 一周目の時、季衣ちゃんはそう言ってたはずだ。

 

「不思議なんだけど、華琳さまが髪飾りとり替えたら流琉のこと思い出したんだ!」

 そこまで効果があるのか。

 真・華琳ちゃんが完成したら魏メンバー勢揃いできるかも知れないな。

 ……朱里ちゃんの反応見ると他の勢力の真キャラも出てくる可能性も高いか。楽観はできないのね。

 

「北郷は今どうしてる?」

「孔明ちゃんを仲間に入れて、公孫賛と合流したとこ」

「そう。このままずっと北郷といるつもり?」

「いや、黄巾が一段落したら一刀君たちと別れる予定。真・衣装が効果あるのなら余計に一刀君よりも先に人材を集めた方がいいと思う」

「人材?」

「一刀君と結婚した武将たちを奪うつもりはないけど、これから北郷軍に入るはずの者たちに先に接触して味方にできればって思ってる」

 できれば幼女をね。BBAはいいや。

 

「できるの?」

「まあ、曹操のとこが待遇いいとか、噂ほど曹操は奸雄じゃないとか勧めてみるよ」

 一刀君よりも先に華琳ちゃんに会ってくれれば見込みはある。

「あと、華佗にも会いたいし」

 できればじゃなくて絶対に会いたい!

「華佗ね。こちらでも探しておくわ」

 

「じゃ、そろそろ」

「待ちなさい」

 華琳ちゃんに唇を奪われる。

「んっ」

 舌が入ってきた。新婚さんのいってらっしゃいのキスかと思ったら、そんなレベルじゃないらしい。

 

 やっと解放された時、俺はばれちゃ不味いとこがばれちゃ不味い状態になってないか心配で仕方なかった。

「……早く戻ってこないと続きができないわ」

 くっ。なんという不意打ち! 可愛すぎる!!

 抱き締めたかったけどボーナスを秘密にするためにクリック連打で急いでロード。

 

 毎朝の日課であるセーブ1をロードしたんだけど、朝の生理現象がいつも以上に凄かった。

 

 


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