恋姫†有双   作:生甘蕉

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二十一話  証明?

「え? え?」

 久しぶりに道場にやってきた俺は引継ぎを確認。

 メンバーが増えていることを確認すると、いつも通り道場の人数が増える。

 そしてその道場新メンバーの少女たちは号泣しながら出現したのだった。

 

「兄様……」

「兄殿ー……」

 流琉、ねね。

 可愛い義妹たちよ、なんで泣いてるの?

 

「皇一……」

「こーいちー……」

「皇一さん……」

 天和、地和、人和の三姉妹。

 姉妹で抱き合って泣いてる。……また間に挟まれたいな。

 

「皇一さん……」

「蛇ち●こ……」

 月ちゃん、詠。

 詠、泣くときぐらい蛇は止めて。

 

「皇一殿ぉ……」

「皇一……」

「皇一殿……」

 愛紗、白蓮、星。

 星までも泣いてる?

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 斗詩。

 泣きながら謝り続けてる。

 

 

「……どういう状況?」

 ふと見ると、華琳ちゃんが楽しそうに見ていた。むこうは理由がわかっているのね。

 

「ぐすっ、……あ、兄殿の姿が見えるです……」

 ねねが俺に気づいた。

「兄様ぁ……」

「皇一さぁん」

 その言葉が引き金になったのか、流琉や月ちゃんがさらに号泣。

 

「いや、あのね」

 見えるって、幻扱いされてるの?

 そりゃ地味で影薄いかもしんないけど、それはあんまりじゃない。

 

「お姉ちゃんにも見えるよぅ。……幽霊?」

「化けて出るんなら眼鏡ぐらい外しなさいよぅ」

 今度は幽霊扱い……。しかも無茶な要求まで。

 

「ん? 幽霊ってことは、俺が死んだってわかっているのね?」

「わかっているもなにも、皇一殿を殺したのは私だ」

「愛紗?」

 おかしい。そんなはずはない。

「いや、俺を殺したのは猪々子じゃ……」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさい!」

 即座に斗詩が泣きながら頭を下げる。普段の苦労がわかるよ、うん。

 

「斗詩が謝ることないよ。もちろん猪々子も悪くない。悪いのは俺」

 そう。

 全ては俺がフラグクラッシャー効果維持のため、緑髪義妹に手を出さないようにしたせい。

 某スカル1なリーさんにあやかったそれは、流琉とねねで効果を確信していたけど、義妹に手を出すと消滅するっぽい。リーさんも義妹を嫁にしてればよかったのに!

 

 

 

 猪々子に捕獲され、真エロイベントの一刀君と同じ要求をされた俺。

「チ●コになれ!」

 斗詩も同意してしまっため、逃げられなくなっていた。

 でもやっぱり、猪々子がアニキと呼んでくれてるおかげか最近死んでなかった俺は、フラグクラッシャー効果を失いたくなかったわけで。

 

「なんで斗詩に二本とも使っちゃうんだよ!」

 そりゃ義妹に手を出せないからなんだけど、猪々子には言っても無駄だろうし。

 話をすり替えるしかないよね。

「猪々子が斗詩の初めてを、前後両方同時に貰ったんじゃないか。どうだった、両方の初めてを奪った感想は?」

「あ、あたいのチ●コが斗詩の初めてを両方……そっか。うん、そうだよな!」

 うん。猪々子ならきっと誤魔化せる。……かな?

 

「じゃあ次はあたいにも!」

「次?」

 そうきたか!

 それでもやっぱり斗詩に両方を。三度目も斗詩に両方。その後、猪々子が泣きながら俺を殴った。

「アニキのバカヤロー!!」

 それが俺が聞いた最後の言葉だったわけなんだけど。

 直接手を出さなくても、いっしょにエロイベント突入したせいでフラグクラッシャー効果無くなっちゃったみたい。

 それで今までの死亡フラグが一気に発動してすぐ死んじゃったのか。

 

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

「だからいいってば。初めてだったのに、両方同時で激しくしちゃってごめんね」

 いまだに深く頭を下げたままの斗詩を慰める。

「兄ちゃん、いっちーを嫌いにならないで!」

「俺を殺したぐらいで嫌いにならないって。一番俺を殺してる華琳ちゃんへの愛だってずっと燃えてるんだよ、俺!」

 次に俺を殺してる春蘭だって好きだよ。処女くれてからは前よりも!

 

「初めてで両方同時……しかも激しく……」

 な、なんか華琳ちゃん睨んでない?

「そ、それで、なんでみんな泣いたり愛紗が俺を殺したことになってるの?」

「皇一が死んだからよ。そして、殺したのは愛紗」

「……どういうこと?」

「猪々子に暴行を受けた皇一は死ななかった。けれど、起きることはなかった」

 ああ、脳死……とはちょっと違うかな。とにかく打ち所が悪かったと。

 

「ずっと眠り続ける皇一を、楽にさせてあげようと決めたの」

「私が皇一殿を……」

 それで愛紗が殺したって。……でもなんで愛紗が? 華琳ちゃんや春蘭じゃなくて。

 貞操を奪った俺を殺して、一刀君のとこへ戻ろうとか?

 

「愛紗はね、皇一を独占したかったの」

「?」

「たとえ殺す役でも誰にも渡したくなかったのね」

 みんな嫌がって仕方なく引き受けたんじゃないの?

 

「……私はずっと皇一殿に惹かれていた。自らの治療すら後回しにして、我らを手助けしてくれたその時からずっと!」

「俺に? 一刀君じゃなくて?」

「ご主人様のことも……二人の方を同時に好きになるなど、私はなんと軽薄で不純だったのだ」

 いや、そんなことないでしょ。一刀君と同じくらい好きってことは愛紗の一番なわけだし嬉しいよ俺。

「皇一殿が二度と目を覚まさぬと知った時、本当に愛していたのが誰かを悟った。そして、私の(こい)が死んだ。女としての私は死んだ!」

「一刀君がいるでしょ?」

 ゆっくりと首を横に振る愛紗。

「たとえご主人様の元へ戻れても、それは武将としての私。女としての私は皇一殿とともにこの世より消えさった」

 なんかすごい思いつめちゃってるなあ。

 俺が死んじゃったから思いで補正とか入って、本命とか勘違いしちゃってるんじゃないのかな?

 

「私も兄様以外の男の人を好きになりません!」

「ねねもですぞ!」

「わ、私もです」

 泣きながらも口々に言ってくれる少女たち。

 うん。やっと状況がわかってきたよ。

 

 

「俺が死んで泣いてくれている娘を初めて見たんで、俺も混乱してたみたい」

「それは普通そうなのでは?」

 星はもう泣いてない。俺が幽霊じゃないことに気づいたんだろうか。

「あのね、俺は何度も死んでるんだ」

「どういうことよ」

 さすが軍師。詠も泣き止んで……まだ泣いてる? 泣きながら質問したのか。

 申し訳ないけどなんか嬉しい。

 俺のためにみんなこんなに泣いてくれてるなんて。

 今までは道場に来ても泣くのは俺。せいぜい季衣ちゃんが慰めてくれるぐらいで、俺のために涙を流してくれる娘なんていなかったもん。

 

 

 一通りのことをみんなに説明。

 猪々子としなかったのは、この説明が大変そうだってのもあるんだよね。

 春蘭みたいに華琳ちゃんが言うから信じる、ってわけにもいかないだろうしさ。

「そんな馬鹿な!」

「そう思う気持ちはわかるけど、本当なんだ」

「じゃ、じゃあまた兄様に会えるのですか?」

 手の甲で涙を拭いながらの流琉。ごめんね、悲しくさせちゃって。

 

「うん。今後ともよろしく」

「ごめんね流琉ー、兄ちゃんの力のことって説明が難しくってさ。春蘭さまや桂花だって信じてくれなかったんだよ」

 頭をかきながら季衣ちゃんが謝る。

「そうだったか?」

 そうだったでしょ春蘭。そのおかげで俺の死亡数、一回増えてるし。……腹上死ってあれっきりの死に方が。

 

「信じられん……」

「愛紗、ああまで言った手前、引っこみがつかないだけではなくて?」

「!」

 図星だったのか真っ赤になっちゃった。

 勢いで(こい)が死んだ、とか女としての自分が死んだ、とか言っちゃったの思い出したんだろう。さっきから俺と目を合わせてくれないし。

 

「愛紗、気持ちはわかる。私だって酔ってた時のこと思い出すと恥ずかしいしさ」

 白蓮の微妙な慰め。

「白蓮殿のあれに比べれば先ほどの愛紗などまだまだ」

 ああ、星はもう泥酔白蓮を知ってるんだ。あのイベントもうやっちゃったのか。

 

「と、とにかく! 死んでもやり直しがきくなどという馬鹿な話があってたまるか!」

 死んでも、じゃなくて死ななきゃ、なんだけどね。

「ズルすぎるよねー」

「そうは言うけどさ地和、死ぬのは痛いし苦しいんだよ。それを何度も味わうってのはかなり辛いんだって」

 何度殺されても慣れないんだよ、死ぬ時のあの感覚。

 

「それに今回のように、生かさず殺さずな状況を作り出せれば、皇一の能力を封じることができるのもわかった。死ななければ使えないのだから」

 なんか華琳ちゃんすごい怖いこと言ってない?

 

 

「で、ここにいる人たちが皇一さんのやり直しに付き合わされるってこと?」

 人和がみんなを見回す。

 ……あれ? そういえば道場主の姿がないな。どこ行ってるんだろ?

「そう。皇一が死ぬまでの記憶を引継げる。その条件は皇一に抱かれること」

 数名が頬を染めていた。ここにいるってことはもう誤魔化しようないんだよね。

 

 ついでだから、現在のメンバーをまとめてみよう。

 まずは一周目で俺と結婚式をした華琳ちゃん、季衣ちゃん、春蘭、秋蘭、桂花の五人。

 そして今回追加の愛紗、白蓮、星、流琉、ねね、天和、地和、人和、月ちゃん、詠、斗詩の十一人。

 足して十六人。……すごいな、一周目で一刀君が結婚した数を超えてるじゃないか!

 

「ずいぶん増えたわね」

 華琳ちゃんも同じ感想を持ったようだ。

「うん。俺が一番信じられない、俺がこんなにみんなに……」

「あら。当然よ。私の夫なのだから」

「……ありがとう華琳ちゃん。まあ、これ以上はさすがに増えないかと思うけど」

 あとはあるとすれば猪々子と霞ぐらい?

 猪々子は泣かせちゃったし、フラグクラッシャー効果無くなったみたいだから願いを叶えてあげたい。

 霞は約束してるから、どうなるかわかんないし。愛紗次第?

 

「さあ、どうかしら?」

 意味ありげに微笑む華琳ちゃん。

 ないと思うけどなあ。

「じゃ、そろそろロードするよ」

「二番目で始めなさい」

「え? セーブ1の今朝……数日起きなくてから死んだみたいだから今朝じゃないか。……最新の記録からじゃなくて?」

 セーブ1に記録。それが毎朝の日課。

 セーブスロットが三つしかないからこまめな記録はこれが限界。

 

「二番目、よ。どこで記録したかなど見当がつくわ」

 うわ、ばれてるのね。

 以前、一周目の華琳ちゃんの初めての直前でセーブしていたセーブ2は、実は今、二周目の華琳ちゃんの初めての直前でセーブしてる。

「そこならば愛紗も信じるしかないわ」

 愛紗も初めての状態だからかな。

 

 

 

 

 華琳ちゃんの言うまま、セーブ2をロード。

 けど、ここってまだ翠とたんぽぽちゃん仲間になってないんだよなあ。

 やっぱり華琳ちゃんは馬騰ちゃんと戦いたいのかな?

 

 セーブ2を記録していたのは閨の扉の前。

 やっと華琳ちゃんとできるからって嬉しくて上書きしたんだよね。一周目の時よりいい状況だからもういいと思ったし。

 ……あれ? もしかして一周目のセーブデータだったら俺ってボーナス適用前?

 元に戻れるチャンス、無駄にしちゃった?

 ……迂闊っ! 気づかなければよかったかも……。

 

 扉を開けると、当然のごとく華琳ちゃんと愛紗。

「こ、皇一殿!」

 赤面した愛紗が慌ててる。

 

「ほら、ちゃんと生きてるでしょ、俺」

 愛紗の頬にそっと触れる。

「どう? 冷たい?」

「い、いえ。本当に生き返って……」

 愛紗の目が潤んでくる。

「皇ぅ一殿ぉ……」

 涙ぐむ愛紗の頭を抱いてそっと撫でる。

「……皇一殿の鼓動が、心音が聞こえます!」

 俺の胸に耳を合わせて目を瞑って、それを聞いている。

 

「生き返ったのとは違うわ。生きてる時に戻ったのよ。これからそれを証明してあげる」

「華琳殿?」

 もうすでに全裸待機だった華琳ちゃん。

 何度見ても綺麗。堪能してたら眼鏡が奪われた。ぽいっと雑に放り投げられる。壊れてないといいなあ。

 

「初めての斗詩に、両方を同時に使ったそうね」

「うん。旗折り効果の緑髪義妹維持のためだったんだけど結局それは駄目だったし、可哀相なことしちゃったよ」

 今度があったら猪々子といっしょに優しくしてあげないと。

「……私だってそれくらい……」

「え?」

「私にも同時に両方使いなさい!」

 な、なに言ってんの華琳ちゃん。

 こないだ二本同時した時だって結構辛そうだったじゃないか。

 

「無茶しないで。今の華琳ちゃんは初めてなんだよ。愛紗といっしょでいいじゃないか」

 そう言ったら愛紗の身体がビクッと反応して硬直しちゃった。

「斗詩にはできて、私にはできないと言うの?」

「もしかして……焼きもち?」

「そっ、そんなのじゃないわ! ただ、私がしてないことをされたのが悔しいだけよっ!」

 真っ赤な顔で否定する華琳ちゃんは可愛いなぁ。

 

 

 

 よほど辛かったのか、ぐったりとしている華琳ちゃん。

 俺なりに気を使ってしたつもりだけど、やっぱり初めてで二本同時はハードすぎるでしょ。

 ただでさえ華琳ちゃんは小さいんだし。

 なのにさ。

「……次よ」

「もう無理だって」

「愛紗としなくちゃ、証明できないでしょ」

 華琳ちゃんの出血で証明できてる気がするのに。

 

「こ、皇一殿」

 愛紗はずっと閨にいた。

 逃げ出すタイミング失っていたのかな。

「愛紗、もう信じてくれたよね?」

「はい。ですから、私も」

 良かった。これで華琳ちゃんの身体に負担かけないですむ。

「私も皇一殿の全てを受け止めます」

 あれ?

 

「華琳殿はお休み下さい」

「愛紗……」

 なんか華琳ちゃんと愛紗でアイコンタクトが成立してるんですけど。

 華琳ちゃんがコクンって頷いたんですけど。

 

「私は嫉妬しています。皇一殿の全てを受け入れた華琳殿に」

「華琳ちゃん、辛そうだったよね?」

 愛紗の前なせいか痛いとは一言も言わなかったけれど、慣れてない身体でただ耐えていただけに見えたはずだ。

「辛くとも皇一殿のために耐え切った。それこそが皇一殿を愛している証」

 そうなの?

 愛されちゃってるの?

 

「ですが、私も皇一殿をお慕いしております。もはや迷いません。私はあなたを愛しています」

「愛紗……」

「華琳殿に、そして季衣に流されたのもあなただったから。二人の誘いを断ることができなかったのは皇一殿を愛していたから。……初めて私からお願いさせてもらいます。抱いて下さい」

 俺は初めて愛紗とキスをした。

 繋がることはあっても、心のどこかで一刀君に遠慮していたのかもしれない。それが消し飛んだ。

「華琳ちゃんのを見ててわかるだろうけど、俺は途中で止められないよ」

「覚悟してます」

 

 

 

 

 道場の隅っこで体育座りしてさめざめと泣く俺。

 そんな俺をスルーして道場新メンバーたちは情報交換中。

 

「久しぶりに麗羽さまに会いました」

 まだ袁紹が一刀君とこに送られる前だったからね。

「翠とたんぽぽがいなかった」

 涼州行く前だってば。

 

「けど、また道場にきたってことはもう死んだの?」

 詠が呆れた顔で俺を見る。

「守ることができなかった……」

 悔しそうなのは愛紗。激しくしちゃったんで動きが悪かったんだね、きっと。

 

 俺を殺したのは華琳ちゃん。

「愛されてるって思ったのに……」

「私の初めてを三十一度も奪っておいて、よくもそんなことが言えるわね」

「三十一度!?」

 華琳ちゃんの発表に驚くみんな。

 ……そりゃ驚くか。

 

 ええと、華琳ちゃんの引継ぎに気づいた時が二十六回目。華琳ちゃんに殺されて引継ぎを知って。

 ロードして術を解いて二十七回、季衣ちゃんとやって殺される。

 ロードして術を解いて二十八回、腹上死。

 ロードして術を解いて二十九回。一周目終了。

 二周目になって愛紗と一緒に、で三十回。

 

「うん。さっきので三十一回目だ」

「中に出されたのは三桁を軽く超えるわね」

 やっぱり愛されてるからそこまで受け入れてくれてるって思っていいのかな。

 それだけやって妊娠してないのは危険日避けてるからなんだけど、華佗にでも聞いたのかも。

 俺としては孕ませたい気もするんだけど、全部終わってからだろうなあ。妊婦華琳ちゃんを楽しめるのは。

 

「もしかして全部数えてるの?」

「さあ?」

 本当だったら痛い女なんだろう。

 でも、それが華琳ちゃんだとすごく嬉しかったりする。頭いいから忘れてないだけかもしれないけど。

 ……なんか春蘭と桂花の目が怖い。桂花なんてぶつぶつと三十一とか三桁とか繰り返してるし。

 

 怖いので離れようとしたら春蘭が、がしっと俺の両肩を掴む。

「次は誰なのだっ!」

「次?」

「貴様が処女を奪った回数だ!」

 がくがくと揺すられながら答えた。

「つ、次は季衣ちゃん」

「ボク?」

 うん。季衣ちゃんの四回。

 

「私はその次だと言うのか!?」

「ううん、三番目は愛紗の二回。後はみんな一回だけだよ」

「なんだと!」

 さらに強く揺さぶる春蘭。けっこうシンドイよこれ。

「姉者。以前は我らの初めては華琳さまだったではないか」

 秋蘭のおかげでシェイクはストップ。俺はへなへなと崩れ落ちた。

「そういえばそうか。しかし愛紗に遅れをとるとは」

「そ、そんなの競ってどうするのさ……」

 

 

 

 そろそろロードしたいけど、その前にむこうじゃしにくい話をしておかないと。

「白装束はどうなってるの?」

 気になっていたけど、むこうでは聞けなかった問題。

 二周目ではまだ遭遇してないから余計に用心している。たぶん華琳ちゃんもなんだろう。

「泰山を極秘裏に調査中よ。それらしき者たちはいるようだけれど、干吉、左慈の姿はないらしいわ」

 やっぱり桂花もちゃんと調べてたんだ。

 真の世界になっちゃったから干吉たちいないのかな? ……油断はできないよね。

「なんですか、その白装束って?」

「世界の敵よ」

 流琉の質問に簡潔に答えた華琳ちゃん。前回結局、干吉を仕留められなかったことを思い出したのかちょっと怖い。

 

 二周目は途中から真・恋姫†無双の世界になっているから、世界の終わりがないといいんだけど。

 泰山にそれっぽいやつらがいるのっては気になるなあ。

「まずは呉、そして一刀君、最後に泰山……って蜀ルートだと五胡の大軍が攻めてくる可能性も高いのか」

「五胡が? ……ふむ。ありえるか」

「うん」

 蜀と呉の同盟と魏の決戦時に現れた共通の敵のおかげで、決戦が有耶無耶になっちゃうんだよね。

 魏ルートと呉ルートだとこないんだけど、一刀君が蜀にいるし。どうなるかな?

 

 

 

 情報交換が済んだのでロードのウィンドウを開こうとしたら、また華琳ちゃんからの指示。

「一番で再開なさい」

 結局最新のセーブで始めるの?

 じゃあなんでさっきはセーブ2で……。

「……もしかして俺に初めてを……両方同時の初めてをくれるためだけにセーブ2使わせたの?」

「違うわ。愛紗に皇一の能力を説明しやすくするためよ」

 そう言いながらも華琳ちゃんの頬が赤い。

 うん。やっぱり俺、愛されてる。

 

「初めてをあげるためになんて華琳さんも可愛いとこあるんだね~」

 華琳ちゃんは可愛いとこだらけだってば天和。

「うんうん。今度ちぃも試そうかなー?」

 試すって二本同時? 大変だよ。

「私は」

 人和の続きが気になったけどロードしちゃった。

 

 

 

 

 その後、やっぱり猪々子がチ●コになれって来たけど、斗詩が同意しなかった。

 気を使ってくれたのかな?

 それとも嫌われた?

 とか思ってたらその晩に一人で俺の部屋にやってきた。

「文ちゃんのことを赦してくれて、ありがとうございます」

「今の猪々子が俺を殺したわけじゃないし、気にしないでいいってば」

「皇一さん……」

 潤んだ瞳の斗詩。猪々子を赦してもらえて泣くほど嬉しい……ってわけじゃないよね。

 

「こ、今度は皇一さんに初めてを貰ってほしくて、あの、お詫びってわけだけじゃなくて……」

「ああ、そうか。前は猪々子が斗詩の初めてを奪ったんだっけ」

 俺内部では俺が奪ったことになってるけどね。前も後ろも。

「けど、いいの? 猪々子といっしょじゃなくて」

「皇一さんに貰ってほしいんです」

 頬を染めて告白してくれる斗詩。

 

「ええと、俺の嫁になってくれるってこと?」

 さらに真っ赤になって頷く。

「ありがとう。けど、一人だと大変だけどいいの?」

 あ、両方同時に使わなきゃいいだけか。最近二本とも使うのに慣れてきて忘れてたな。

 

「……お願いを聞いてもらえませんか?」

「いいよ。片方だけでもなんとかなるから」

「いえ、……眼鏡を外して下さい」

 華琳ちゃんにも言われてるから、仕方なく眼鏡を外す俺。

 でもなんで斗詩まで?

 斗詩にはまだ裸眼の顔見せてなかったはずなのに。

 その答は斗詩が脱いだ時に落ちた一枚の写真だった。

「もしかして俺?」

 隠し撮りらしいがいつ撮ったのだろう、裸眼の俺の写真だった。

 

 

 

 ……真桜エモンって凄いと思い知ったのは、新兵訓練のためにカメラの説明をした時。

 真では真桜が作ったそれで撮った写真を餌に新兵さんにやる気を出させていたんだけど、俺の説明でもやっぱりカメラを完成させてしまった。

 いや俺だってフィルム式のカメラ持ってたおっさんだから説明できたんだけど。しかも一眼レフ。当時は高かったなあ。

 主にコスプレとかフィギュアしか撮ってなかったけどね。この世界に来た時もコミケ行くつもりの装備だったんだけど、携帯でコスプレ撮るつもりだったから、カメラがなかったのが残念。

 でもさ、銀板写真かと思ったらフィルムまで作っちゃう真桜ってすご過ぎ。あと、主人公補正だとしても説明できた一刀君もすごいな。

 

「で、なんで裸眼の俺を撮ろうとするかな?」

 そんなもん新兵さんの餌にならんでしょ?

「他所で売るんや!」

「小遣い稼ぎ狙ってないで、新兵さん用を撮れってば。御前訓練だって近いんだぞ」

 なんとか真桜を説得して準備をさせる。

 後で検閲して華琳ちゃんのは没収しておこうっと。……記憶だけじゃなくてアイテムも引継ぎできればいいのに。

 

 

 

「真桜に買わされたのか……」

「は、はい」

 セーブ2はカメラ完成前だったよな。そこからやり直して……いや、そんなことのためにはできないか。みんなに怒られるだろうし、死ぬのも嫌だし。

「後で没収するしかないか」

「え!?」

「……お金払っちゃったそれは没収しないから」

 ほっとした表情の斗詩。いくらだったんだろ? 怖いから聞かないけど。

「本物の方がもっと素敵ですね」

 写真と見比べないで。

 

 

 

 結局、両方同時で済ませた。

 猪々子が知ったら怒るだろうな。また殺されちゃうかな? ……呉との戦の前にフラグクラッシャー効果失ったの、痛すぎるなあ。

 

 

 

 

 真桜から俺の写真を没収。

 どれくらい売れたか聞いたら眩暈がしてきた。回収は無理そうだし……。

 この反省を元に新兵さんの餌は、モデルに事前に許可を貰っておいた。

 そのせいで逆に御前訓練、変に期待されてたけど満足してもらえたようだ。呉との戦いももう間近。

 

 で、ご褒美として三羽烏から要求されたのがアレだったわけで。

 

 

 

 余韻に浸っている凪と沙和はいいとしてさ。

「あかん……」

 真桜の要求で一人で二本同時したんだけどまずかったかな。

「ウチの『全自動張り型・お菊ちゃん』じゃ、隊長の双頭竜の足元にも及ばへん!」

 

 ……っていうかさ、お菊ちゃん使うとこなかっただけだから。

 

 


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