恋姫†有双   作:生甘蕉

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二十八話  心配?

 途中から変化した二周目と違い、完全に真・恋姫†無双の世界となってスタートした三周目。

 

 孫策が復活。というかまだ死んでいない世界。

 そのせいか、道場主であるはずの孫策の姿が道場にない。

 それだけならば、まだいい。

 孫策の復活を喜べばいいのだから。

 

 だが、冥琳からの情報はそれだけではなかった。

「一刀君を?」

「ああ。祭殿と共に偵察に行った伯符が、天の御遣いだとな」

 ……間違いない。呉ルートだ。でもなんで?

 

「どうしたのだ、まるで死人のように顔色が悪いぞ」

「死んだからここにきたんじゃない。……でも本当に悪いわね」

 春蘭と桂花が俺の顔を覗き込む。それほどまでに俺の血の気が引いていたのだろう。

「そ、孫策はなにか言ってなかった? 天の血を孫呉に入れるとか……」

「ああ……」

 言いにくそうに冥琳が頷いた。

 

「孫呉のために北郷に種馬になってもらう、と」

「やっぱり……」

「どういうこと?」

 蓮華が首を捻る。真のスタート時点だからまだ孫策や冥琳たちと合流してなくて、状況がわかってないんだね。

「孫策は……孫策は、呉のみんなに一刀君の子を産ませるつもりだ」

「そんな!」

「……天の意志を孫呉に仕える武将たちに宿す。それが伯符の狙いらしい」

 その狙いは成功する可能性が高い。真・恋姫†無双で唯一の一刀君の子供ができたのが、呉ルートだった。

 ヤればできちゃうと思う。

 ……いくら一刀君でも、俺の嫁が俺以外の男とヤるなんて……。

 

「……たとえ一夜の契りでも……孫策と会うため、この道場へくるために利用されたのだとしても、自分が抱いた女が他の男のものになるともなれば、許せる皇一ではないわね。そんな顔色にもなるのも納得できたわ」

 華琳ちゃんの言う通りだ。

「孫呉の女を馬鹿にするな!」

「蓮華?」

「私は……もはや皇一さんの嫁。他の男のものなどになるつもりはない!」

 頬を染めながらも強い眼差しでそう言い切った。

「蓮華!」

 思わず蓮華を抱きしめてしまう。当然のように俺の目からは熱い液体が。

「ありがとう! ありがとう蓮華!」

「シャオだって皇一のお嫁さんだもんっ!」

 シャオちゃんがさらに抱きついてきた。

 

「私も皇一様以外とは嫌ですっ!」

「わ、わたしも……」

 明命と亞莎がさらに涙腺を刺激する。

「あり、がと……」

 もはや、まともに礼を言うこともできない俺。

 

 

「いつまでそう言ってられるかしら?」

 唐突に、華琳ちゃんの冷ややかな声。

「相手は、あの北郷一刀。女を誑かすその腕は、皇一の比ではないわ」

 い、言われてみれば……!

 一周目ではたったの半月で呉の娘たちを攻略したのが一刀君だ。

「ねえ、愛紗。愛紗ならそれをよく知っているでしょう?」

「た、たしかに……私が戻った時には既にほとんどの武将が……」

 項垂れてしまう愛紗。よほど辛いことを思い出したのかもしれない。

 

「皇一は以前、私に言ったわね。他の男に抱かれたら記憶の引継ぎはしない、と」

「う、うん」

「嫁と言うからには、他の者もそうなのでしょう?」

「……うん」

 俺はそんなことにはならないって信じたい。

 信じたい、けど相手は……。

 

「安心して皇一! 呉のみんなは皇一に会うまで、ぜーったい、処女のままなんだから!」

 シャオちゃんの台詞にみんな頷いてくれた。冥琳や穏、思春までもが。こんな嬉しいことはない。……心配なのは相変わらずだけど。

 ……そして、やっぱり大喬ちゃん、小喬ちゃんの姿がない。

 引継ぎ欄を再確認しても、名前はあるのに道場にいない。

 

「冥琳、二喬は?」

「それが……探したのだが、見つからないのだ」

 やっぱり。完全に真の世界になってしまった影響か。

 だが、引継ぎ欄の表示は以前と同じ。

 俺の股間もツイン。この片方は大喬ちゃんのモノ。

 ならば方法はあるはず。

「大丈夫だよ。華琳ちゃんの協力があれば!」

 

 

「なるほど。以前の逆をする、と」

「うん。ただし、長い間それをしてると白装束や干吉たちも出てきて、また面倒なことになるかもしれないから、迅速に行わなければいけない」

「華琳が衣装を換えている間に、二人を見つけるのか?」

 そう、二周目で流琉たちが見つかった時の反対。

 華琳ちゃんに無印の衣装をつけてもらって、その間に二喬を探してもらう。

 

「そう。では、呉に勝利したら試しましょう」

「……それだがな、今は伯符がいる。そして、以前の知識を持つ者がこんなにもいる。呉は負けぬよ」

 眼鏡をくいっと持ち上げる冥琳。

「伯符もわずかだが、この道場の記憶があるようだしな。それで北郷を拾ってきたのだろう」

 さらに輝く眼鏡。そのコンボを使うとは。孫策の記憶はハッタリでもなさそうだ。わずかってのが嘘で全部覚えてたりして。

 ……俺は、以前に華琳ちゃんのフォーム変更に気づいた時に、孫策が微笑んでいたのを思い出した。こういうことだったのだろうか?

 

 

「面白いじゃない……前回は歯応えが無さ過ぎたわ」

「なんだと?」

 抱きしめたままの蓮華も反応する。

 

「悪いけど、勝つのはボクたちよ」

 さらに別方向からまた、眼鏡を光らせる少女が。

「詠ちゃん?」

 月ちゃんが焦ってるけど、いいの?

「武将の引継ぎはいなくても、軍師に知識を与えたことを後悔させてあげる」

 やたらに自信たっぷりだ。

 反董卓連合が起きなければ董卓陣営の一人勝ちもなくはない、のかな?

 でもなあ。その原因の袁紹が記憶を引継いでないわけだし。

 

 

「ええと……みんな記憶があるんだし、戦わないって選択肢はないの?」

「ないわ」

「無理だな」

 俺の質問に華琳ちゃんと冥琳が即答する。迷いはまったく感じない。

 

「動乱の切っ掛けともいえる麗羽が記憶を引継いでいないもの。……もし記憶を引継いでいたしても麗羽に話が通じるとは思えないわ」

「ごめんなさいごめんなさい!」

 頭を下げる斗詩。斗詩が謝ることないっていうか、三周目も苦労しそうだな、袁紹の下だと。

「それに、孫策もでしょう?」

「ああ。伯符が目指すのは大陸制覇であろう」

 

「あとは……」

 道場を見回す華琳ちゃん。

「わ、私だって今度は麗羽に負けないぞ」

 しかし白蓮の宣言はスルーして、見ているのは翠。

「早く華佗を見つけて馬騰を完治させておきなさい」

「……それは、涼州と戦うってことか?」

「ええ。今度こそ馬騰と戦えるのが楽しみよ」

 せっかく同盟して客将になってくれたのに、そんなに戦いたいのか華琳ちゃん。……魏ルートでもそんな感じだったもんなあ。

 

 あ、華佗といえば。

「冥琳もちゃんと治療しておいてね。今の冥琳は治療前なんだから」

「そうよ。せっかく姉様が生きているのに冥琳が倒れるなんて許さないわ」

 今度は蓮華の生理不順も診てもらった方がいいのかな。

 

「愛紗はどうする? 北郷抜きで私と戦えるかしら?」

「愛紗とまで戦いたいの?」

「……なんて言うのかしら? 二周目があんな中途半端に終わったせいで、私、もやもやとしているのよ」

「不完全燃焼?」

「ふむ。それが今の私には相応しい言葉ね。覚えておきましょう」

 大陸制覇、その目前で再スタートってなったらスッキリしないのはわかる。……大陸制覇しちゃってから終末きてたらもっと妥協してくれたのかな?

 

「たしかにご主人様は、呉に行ってしまったらしい。だが我らには劉玄徳がおられる!」

「劉玄徳?」

「愛紗の本当の主で、鈴々ちゃんもいれた義姉妹のお姉さん」

「本当の主?」

「今まで一刀君はその娘の役割をしていたんだよ。だから、劉備が出てこなかった」

 まあ、劉備ポジションってだけで、一刀君は桃香とは大分違うけどね。

 

「それに、我らには皇一殿もいる!」

「皇一が?」

「ええっ?」

「なんで?」

 みんな驚いている。

 もちろん俺も驚いている。

「どういうこと?」

 華琳ちゃんが俺を睨む。

 

「皇一殿は天の御遣いとして我らに力を貸してくれると約束してくれた。……我らのご主人様なのだ」

「そ、そりゃそう言ったけど……」

 一刀君が見つかるまでの代理って言ったよね。

「言ったのね?」

 華琳ちゃんが俺を睨む。

「う、うん」

 

「皇一が天の御遣い……面白い」

「え?」

「そうだろう。貴様が天の御遣いだなどと、これほど面白い冗談があるか」

 いや、春蘭、たぶんそんな意味じゃない。

 

「前回、私が満足していないのは途中で終わったからだけではない。敵が弱すぎた。いえ、味方が強すぎたの方が正しいかしら。その強い味方を揃えてくれた皇一が今度は敵にまわる。これが面白くないわけないでしょう?」

 二周目は魏はイージーモードだったから、もの足りなかったのか。

 でもさ、一刀君が呉ルートってだけで魏はハードモードなのに、馬騰を本調子にして、しかも呉はほとんどが前回の記憶を引継いでるし、もしかしたら桃香につくかもしれない雛里ちゃんも記憶を引継いでる。

 そんなスーパーハードモードで、さらに俺に敵に回れっていうの?

 俺に華琳ちゃんと戦えって言うの?

 

「嫌だ! 俺は華琳ちゃんと戦いたくない! 戦えるわけがない!」

「皇一殿。泣いていないで華琳殿の気持ちも察してやれ」

「冥琳?」

「一夜の契りしかない呉の娘のためにあれほど心配し、そして愛紗たちのご主人様となってしまったのだ。そのことを華琳殿が気にしていないはずがなかろう?」

 え? それって……。

 

「そんなのではないわ!」

「華琳ちゃん、もしかして」

「だから、そんなのではないわ!」

 でも、華琳ちゃんの顔は赤い。

 

「ごめんなさい」

 頭を下げて華琳ちゃんに謝る。

 でも、華琳ちゃんは意地になっちゃったみたい。

「謝っても無駄よ皇一、私が欲しければ奪ってみせなさい。私の初めてを無理矢理奪ったあの時のように強引に!」

 強引にって言われたってさ。

 

「皇一が強引に華琳の初めてを? ちぃ、信じられない!」

「シャオも!」

「たんぽぽも。みんなに聞いた話でもそんなのなかったし、ちょっと想像できないよ~」

 みんなって、どんな話してるの?

「無理矢理強引に奪っただと?」

「やっぱり強姦魔だったのね!」

 なんか怖い目で俺を睨んでいる娘たちもいるし。

 

「……俺が華琳ちゃんと戦うなんて……」

「そうね。やり直しをせずに私に勝てたら、あなたの望んだ裸前掛けをやってあげるわ」

「マジですか!?」

 今まで何度頼んでも、華琳ちゃんは裸エプロンをしてくれなかった。その華琳ちゃんが、新婚さんの定番にしておっさんの夢、裸エプを!?

「その気になったかしら? 私に勝てるつもり?」

「やってやる! 華琳ちゃんと新婚気分を満喫してやる!」

 俺は、その勢いですぐにロードしてしまった。

 さすが華琳ちゃん。俺の弱点をよく知っている。勝つのって大変だろうな……。

 

 

 

 ロードして、盗賊との戦いに今度は死亡しなかった。華琳ちゃんはやり直しをせずに、って言っていた。道場へなんて行ってられない。

「変なことになったな」

「うん。……でも、白蓮も大変だよ。袁紹に勝つとか」

「そうだな。はは……」

 戦勝を祝いもせずに乾いた笑いをする俺と白蓮。

 

「いくら夫婦だからって、こんなところで二人の世界つくらないでいいのに」

「桃香さま、あれはちょっと違います」

「愛紗ちゃんにはわかるんだー」

 だからなんで泣く? 人のことはいえないけどさ。

 

 

 その後、しばらく白蓮の城で留まり、盗賊討伐。

 ほぼ蜀ルートと同じ展開だったけれど、その間俺は必死に身体を鍛えていた。死ぬわけにはいかないからね。

 義勇兵といっしょに調練する毎日。筋肉痛が酷いがそれで、蓮華たちのことを心配する時間が少しだけ短くなっていた。

「もしかしたら華琳ちゃん、俺が呉の娘のこと心配してる暇をあたえたくなかったのかな」

「そうは言いますがご主人様、やつれているのではありませんか」

 愛紗が俺を心配する。

「無駄な肉がとれただけだってば」

「そうだぞ愛紗。前回、愛紗が北郷殿のところへ戻った時こそ、生気のない状態であった」

 星の言葉で愛紗の表情が曇る。

「申し訳ありませんご主人様。あの時は、あれこそが正しいものだと……」

 

「気にしないでいいってば。今はこうしてそばにいてくれるんだし、もう一刀君のとこへは行かないんだろう?」

「は、はい……呉にいるのは以前のご主人様とは別人なのでしょう?」

「うん。愛紗や俺たちのことは覚えてないよ。俺も……俺の友達の一刀君とは別人と思うことにしてる」

 愛紗が一刀君のところに戻りたくても、もはやそれは叶わない。もし呉の一刀君と会うことがあったら複雑なものがあるだろうな、と愛紗を抱きしめる。

「ご、ご主人様?」

「ふむ。白蓮殿も呼んでこようか」

 しかしそこへ現れたのは白蓮ではなかった。

 

「あー、またイチャイチャしてるー」

 領主の勉強ということで、白蓮の政務を手伝っていたはずの桃香だった。

 筋肉痛もあるが、いい雰囲気になると桃香の邪魔が入るので、まだ愛紗たちとシてない俺。……狙ってるのかなぁ?

「ご主人様、あのね、わたしたちの仲間になりたいって人がきてくれたんだよ!」

「え? 俺たちの? 義勇兵にじゃなくて?」

「うん。天の御遣いの仲間になりたいんだって!」

 まだ桃香が白蓮から独立してない。たしかそれは朝廷から黄巾党を討伐しろって命令がきてからだったはず。そのタイミングできてくれる二人がいる予定だったんだけどもしかしたら……。

 

 会いにいくと、予想通りの二人が待っていた。

「皇一さん!」

「雛里ちゃん!」

 桃香が紹介するよりも先に俺に抱きついてくる雛里ちゃん。

 

「も、もしかしてまた!?」

「うん。雛里ちゃんも俺の可愛いお嫁さん」

「やっぱりぃー!」

「はわわわわ……雛里ちゃんがお嫁しゃん?」

 涙する桃香と動揺する孔明ちゃん。

 雛里ちゃん、孔明ちゃんに説明してなかったのかな。孔明ちゃんなら道場のこととかも理解してくれると思うんだけど。……後で聞いたら恥ずかしかったんだそうだ。納得。

 

 

「ずいぶん早くきたんだね?」

「はい。少しでも早くお役に立ちたかったんです」

「けど、いいの? 華琳ちゃんのとこじゃなくて」

「……はい」

「ありがとう。二人を仲間に入れてくれないか?」

 桃香に向かって頼む。

 

「は、はい。いいよね? 愛紗ちゃん、鈴々ちゃん」

「はい。この二人は得がたい軍師。きっと桃香さまのお役に立ちます。頼りにしてるぞ」

「ありがとうございます、愛紗さん」

 蜀ルートのはじめは愛紗にビビる雛里ちゃんと違って、この雛里ちゃんは愛紗と仲がいい。なにしろ初めては愛紗といっしょだったもんなあ。

 

「わ、私はえと、姓は諸葛! 名は亮! 字は孔明で真名は朱里です! 朱里って呼んでください!」

 置いてかれた感じを焦ったのか孔明ちゃんが名乗りをあげる。

「俺は天井皇一。真名はないんだ。ゴメンね」

 他のみんなも真名も含めて自己紹介する。これで、朱里ちゃんも真名で呼ぶことができるな。

 

 

 こうして俺たちは蜀ルートの展開よりも早くに軍師二人を仲間にしたのだった。

 このまま白蓮のとこに残って、公孫ルート開拓した方が楽かもしれないのかな?

 

 でも、他の陣営も引継ぎメンバーが真・恋姫†無双の各ルートよりも先に集まっているんだろうな。

 ……呉はちょっと無理か。袁術の客将なんだっけ。

 袁術ちゃんか。会うの楽しみだな。孫策に敗れたら保護してあげたいなあ。

 

 馬騰ちゃんはもう華佗に診てもらっているかな?

 反董卓連合までわからないだろうしなあ。

 

 ねねは大丈夫かな?

 前回あんな出会いだったからちょっと不安。

 ちゃんと呂布の軍師になってるはずだけど。元気だといいなあ。

 

 魏は桂花、季衣ちゃん、流琉、三羽烏はもう集まっててもおかしくないか。

 稟と風は引継いでないからまだだろう。

 張三姉妹は……黄巾党の首領やらされてるのかな?

 怖い思いしてないといいけど。

 

 

 なんか心配なことばかりだなあ……。

 

 


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