恋姫†有双   作:生甘蕉

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三十話   姉?

 久しぶりの……道場以外では、三周目初めて会った華琳ちゃん。

 この甘い香りも、この柔らかさも久しぶり。お預けされてた嫁分を取り戻すべく貪るように口づけを続ける。

 いずれ戦って勝たなければいけないんだけど、今はまだその時じゃない。

 俺は嬉しくって仕方がない。

 だって蜀ルートと同じなら、これからええと……たしか半年ぐらいはいっしょにいられるはずだもんね。

 

「い、つ、ま、で、してるつもりですか!?」

 少しばかりの怒気をはらんだ愛紗の声で、名残惜しくも俺は華琳ちゃんを解放する。

「……腕を上げたわね」

 真っ赤になって潤んだ瞳で俺を見つめる華琳ちゃん。

 可愛すぎる!

 こんな場所、こんなタイミングじゃなかったらすぐにでも最後までいっちゃいそう。

 

「くっ。蛇らしく舌が二股にでもなったのではないのか?」

 あと、ギャラリーがいなければ、も最後までの条件に必要みたい。春蘭が俺を睨んでる。

 この場にいるほとんどの女の子たちと同じく頬が赤い。俺と華琳ちゃんのキスにあてられちゃったのだろう。

「蛇は止めてってば」

 離れ際に華琳ちゃんから回収できた眼鏡をかけながら抗議。

 

「そうです! ご主人様は蛇じゃなくて竜です! 双頭竜だもん!」

 いや、それ勘弁して下さい。この連中は意味知ってるんだからさ。

「ほう。それを知っているのに劉備、あなたは皇一の嫁ではないのね?」

「え?」

「お尻だけ、いえ、胸だけなの?」

 桃香のお尻と胸をじっくり観察しながらなに言ってるのさ華琳ちゃん。

「ちょっといいかしら?」

 って、観察だけじゃなくていきなり胸揉んじゃうの?

 

「むう。この胸なら挟めるの? ……いえ、……ふむ」

 桃香の胸を揉みしだきながら、なにごとかを考える華琳ちゃん。まあ、何を考えてるのかはわかるけど。

「あ、あん」

 桃香が真っ赤になって……感じてるのか、華琳ちゃんさすがだな。

「い、いつまでやってるのだ! 桃香さまをはなせ!」

「あら? 愛紗も? 構わないわよ」

 とっさに両手で自分の胸を両手でかばって後ずさっちゃう愛紗。

 愛紗も華琳ちゃんのフィンガーテクニック味わったことがあるからね。その脅威を思い出したのだろう。頬も赤らんでいる。

 

「華琳さま、そのあたりでお止め下さい」

「そうです華琳さま、いくら天井の戻りが遅くて欲求不満とはいえ、揉むならわたしの胸を!」

 秋蘭が止め、春蘭が泣く。

 だが、華琳ちゃんの手は動きを止めない。

 春蘭が言ったように欲求不満なの? 俺のせいなのか?

 

「ふふふ。可愛いわ劉備。あなたの目指すものは何?」

 桃香の耳に囁く様に問う。……だけじゃなくてついでに、はむっと耳朶を甘噛み。

 

「ひぅ! ……わ、わたしは、っう!」

 桃香に理想を聞いておきながら、攻撃の手は緩めない華琳ちゃん。

「こ、この大陸を、誰しもが笑顔で過ごせる、はふぅっ! 平和な国に、ひ! たい」

 それでも桃香はセクハラにめげず、なんとか言い切った。

 えらいぞ桃香。そして色っぽかったぞ。うん。

 

「これがあなたの主なのね愛紗」

 やっと桃香を解放。

 真っ赤な顔でふらつく桃香に愛紗が駆け寄って支える。

「そうだ!」

 満足したのか大きく頷く華琳ちゃん。

「その胸の想い、よくわかったわ」

 

「なあ、劉備の胸はそんなに重いのか?」

 春蘭の疑問にため息をついて秋蘭が説明する。

「姉者、その重いではない。胸の内の想い、つまり心の方だ」

「そうか。さすがは華琳さま! 劉備の本心を引き出すためだったのですね!」

 そりゃ春蘭なら華琳ちゃんに胸を揉まれればすぐに本心引き出されちゃうだろうけどさ。そんなことしなくても桃香はちゃんと答えたってば。

 

 

 その後、曹操軍と共同作戦。

 冀州へ進軍して黄巾党の拠点を攻めた。

 まあ、共同作戦といっても囮をやらされたんだけどね劉備軍は。

 けど敵主力部隊が留守中。囮役の劉備軍でも俺も死ぬことなく黄巾党に勝利。

 主力部隊がいないせいか、天和たちに会えることはなかった。無事だといいなあ。

 あと、驚いたことに季衣ちゃんが城の正殿の屋根に旗を突き刺してた。三羽烏は義勇軍として参加してたみたいだから、魏ルートのイベントも混じっているようだった。

 

 そして、黄巾との戦いを続けるため、予定通り曹操軍とさらに共同作戦をすることとなる。

 華琳ちゃんたちといれるのも嬉しいけど、大事なのはここで劉備軍に実戦経験をつませられること。

 桃香たちに指揮の仕方とかのいい手本を見せられるのは大きい。

 俺も戦闘指揮官として必死に勉強しなおし。

 黄巾党征伐に明け暮れて桃香たちの指揮能力は上がったけど、あまり華琳ちゃんたちとの時間はとれなかった。……寂しい。

 

 

「華琳さまよりも先に、わたしたちが貴様とするわけにもいくまい」

 春蘭に会いに行ったらなにか勘違いされた。

 三周目はいまだに魏の嫁さんたちとはしていない。……したのは白蓮と星だけっだりする。愛紗や雛里ちゃんともまだ。

「いや、そうじゃなくてね。孫策に会ったんだって?」

「なんだ、そのことか」

「ごめんね、期待させちゃって」

「き、期待などしておらん!」

 真っ赤になって慌てる春蘭を秋蘭とともに堪能する。

 

「孫策は道場で会った時と違った?」

「う、うむ。野獣だな、あれは」

 野獣か。春蘭が言うなよ。……いや、春蘭が言うから信憑性があるのかな?

「やっぱり孫策よりも先に天和たちを見つけないとまずいか」

「なんだ、貴様もあいつらが黄巾党の首領だと知っていたのか」

 うん。魏ルートみたいに天和たちだって気づいてたんだね。よかった。

 たしか他のルートだと討ち取られたって話しか出てこないから心配だったんだ。

 

「うん。でも張三姉妹は自分の意思で首領やってるわけじゃないはずだから、助けてやってほしい」

「そうなのか?」

「たぶん。詳しいことは捕まえてから聞いてくれ」

「そう言われてもな。やつらの居所はいまだに掴めぬのだ」

 あ! 魏ルートならここで大事なイベントがあったじゃないか!

 俺は慌てて春蘭たちに別れを告げ、今度は情報収集中の凪に会いに行く。

 

 

「た、隊長、申し訳ないのですが、華琳さまよりも先には……」

 凪まで……魏の嫁さんみんなで申し合わせているのかな?

「あのね、こんな森の中でそんなことしないってば」

 青姦とかさ、嫁さんの裸、他のやつに見せる可能性あることなんて俺がするはずないでしょ!

「俺が会いにくるのってそれしかないの? そりゃ最近は劉備軍の仕事とか、自分を鍛えるのに忙しくてみんなに会えなかったけどさ……。あっち抜きだって俺、ずっとみんなといっしょにいたいのに」

 なんか悲しくなってくる。いずれこの後、魏のみんなとは戦わなきゃいけないわけだし……。

 

「な、泣かないで下さい隊長!」

 え? 俺また泣いてた?

 凪がオロオロしてしまった。いかん、泣いてる場合じゃない。

 深呼吸して落ち着こう。吸ってー……。

「でええいっ!」

 大きく息を吸った後に息を吐こうとした時、凪がいきなり氣弾を発射。

 

「ゲフッ……ブホッ……」

 凪がなんで氣弾発射したかはわかるけど、タイミングのせいで咽てしまう俺。ああ、鼻水出ちゃった。

「だ、大丈夫ですか!?」

「ゲホッ、そ、それよりも敵なんだろ?」

「はい! 今仕留めます!」

 あっという間に数人の男達を倒す凪。うん。黄巾党の連絡員なはず。

 あれ? この時って凪の部下もいっしょにいたんだっけ?

 ミスったかもしれない。縛ったり、連行したりする人手足りないかも……。

 ……部下連れてこなかったってのは、もしかして凪、期待してた?

 まあ仕方ないか。とりあえずは本題に入ろう。

 

「隊長?」

「こいつらの所持品を確認しよう。なにか手掛かりがあるはず」

 そして当然のように、細い巻物を発見した。

 ……条件整えたら、やっぱりイベント発生しやすいのかな?

 俺は主人公の一刀君じゃないけど、凪に隊長って呼ばれてるから上手くいったのかもしれない。

 

 

 俺たちの参加も許された軍議で、発見した連絡文書によって黄巾党の本隊を発見したとの報告を受ける。

「じゃあ、そこに張三姉妹もいるのか」

「ええっ? 張角さんたちって女の子なの?」

 驚く桃香。

「手足がいっぱいある角が生えた大男って聞いてたのに~」

「と、桃香さま、そんな人間はいません」

「で、でも、尻尾はあるよね、きっと!」

 朱里ちゃんに詰め寄る桃香。なにを期待してたんだろう。

 天和たちに尻尾か。ケモミミとセットならアリかな、うん。

 

「報告によれば、張三姉妹も揃っているらしいが……どうやら、らいぶを行っているだけらしくてな」

「ああ。やっぱり」

 秋蘭も前回、シスターズのライブを経験したことあるからそう判断したんだろう。

「どういう状況かわかるのか?」

「うん。張三姉妹が黄巾党の首謀者ってわけじゃない。たぶん歌で大陸制覇とか言ったら勘違いされただけだと思う」

「なによそれ」

 二周目でも黄巾党にはいたらしいから、あんまり警戒してなかったんだろうな。そしたらいつのまにか祭り上げられちゃったと。

 

「黄巾は張三姉妹のファンの暴走ってこと。もう彼女たちでは止められなくなっちゃってるんだろうね」

「そう。……だからあの娘たちを救え、と?」

「うん」

「ご、ご主人様? 張角たちには討伐の命令が下ってるのですよ」

 驚き慌てた朱里ちゃんに雛里ちゃんが説明する。

「朱里ちゃん、張三姉妹もご主人様のお嫁さんなの」

「はわわ! またご主人様のお嫁さんですか!?」

 敵の首領が嫁って言われたらそりゃ驚くよなぁ。

 

「本当なのご主人様?」

「うん。だから絶対に助ける!」

「そっか。そうだね、張角さんたちが悪い人じゃないなら、助けなきゃ駄目だよね!」

 ……そんな簡単に納得しちゃっていいの桃香?

 討ち取れれば名を上げるチャンスなんだよ。

 まあ、絶対にそんなことはさせないけどさ。

 

「みんな、ご主人様のためにもがんばろう!」

「おうなのだ! お兄ちゃんのためにがんばるのだ!」

 鈴々ちゃんの返事に季衣ちゃんがジロリと睨んだ。

「なんでちびっこが、兄ちゃんをお兄ちゃんって呼ぶんだ!」

「鈴々のお兄ちゃんだからなのだ!」

 そういや最近そんな呼ばれ方してるな。おっちゃんでいいって言ってるのに。愛紗が指示したのかな?

 

「兄ちゃんはボクたちの兄ちゃんだ!」

「愛紗はお兄ちゃんのおよめさんなのだ! 姉者のおむこさんだから鈴々のお兄ちゃんであってるのだ!」

「そ、そんなのずるいぞ!」

「ふふーんなのだ!」

 焦る季衣ちゃんに勝ち誇った鈴々ちゃんだったが、華琳ちゃんの一言で逆転されてしまう。

 

「あら、では私もお姉ちゃんなのかしら?」

「にゃ?」

 季衣ちゃんと鈴々ちゃんが同時に首を傾げた。可愛いなあ。

「だって『お兄ちゃん』の妻なのだから」

 か、華琳ちゃんがお兄ちゃんって! 俺のことをお兄ちゃんって!

 しかもお兄ちゃんの妻って!!

 やばい俺、稟の様に鼻血が出てもおかしくないくらいだ。

 

「じゃあ……ボクもちびっこの姉ちゃん?」

「誰がハルマキの妹なんかになるかなのだ! どう見たって鈴々の方がお姉ちゃんなのだ!」

 いやどう見ても同じくらいにしか。

 

「うう、お姉ちゃんとしての立場が……」

「なにをおっしゃるのです! 私と鈴々の姉は桃香さまだけです!」

 落ち込む桃香を愛紗が励ます。

 まあ、そんなに姉がいたんじゃややこしいよね。

 ……みんな竿姉妹だよ、とおっさん臭いことを思ったけど、それは言わない方がいいだろうな。自重しよう。

 

 

 

 なんとか天和たちと連絡取りたかったけど、今を逃したらまた見失うってことですぐに戦うことになってしまった。

 華琳ちゃんとの約束がなければ、俺が黄巾党に潜り込んで接触するのに。何度か死ぬの前提でさ。

 仕方なく、劉備軍は桃香と愛紗と朱里ちゃんの攻撃組、俺と鈴々ちゃん、雛里ちゃんの捜索組に分かれて本隊と戦うことになった。

「愛紗、そっちで張三姉妹を見つけたら頼む」

「はい。心得ています。鈴々、ご主人様たちを頼むぞ」

「まかせるのだ。お兄ちゃんと雛里は鈴々が守るのだ!」

 うん。頼りにしてる。

 

 

「黄巾のやつら、すごい混乱してるみたいなのだ」

 敵陣から火の手が上がっている。

「うん。場所はいいかな? 雛里ちゃん」

「はい。張三姉妹が逃げてくるとすれば、たぶんここです」

 俺たちは雛里ちゃんの指示で逃走予定地点に潜んでいる。あまり目立たないように兵が少なめなのがちょっと心細いけど、鈴々ちゃんがいるから大丈夫だろう。

「お兄ちゃん、誰かきたのだ!」

 

 鈴々ちゃんが見つけたのは間違いなく天和たちだった。堪らずに駆け寄る俺。

「え? 皇一?」

「うん。やっと見つけた」

「嘘、本当に?」

「皇一さん……」

 俺を確認した三人も走ってきて俺に抱きついた。

 

「今までどうしてたの! 怖かったんだからね!」

 地和が怒鳴るがその目には涙が。本当に怖かったようだ。

「おなかすいたよー」

 天和も泣いている。

「華琳さまと連絡を取りたかったのですが、いつもあの人たちが側にいて、そんなこともできなくて……」

 やっぱりそうだったんだ。苦労したんだね、人和。

 

「とにかく三人とも、無事でよかった」

「でもわたし達、討伐の命令が下っちゃったのよ!」

「大丈夫。俺が可愛い嫁さんを死なせるもんか!」

 三人を抱きしめる腕に力を込める。

「……こーいち、ちょっと逞しくなったじゃない」

 ちょっとだけなの?

 

 しばらくその抱擁を楽しんだ後、三人を華琳ちゃんのところへ連れて行った。

「久しぶりね」

「もっと早く助けてほしかったわ!」

「ふふっ、元気そうね」

 三人の無事を喜んでいるのか、華琳ちゃんの機嫌はいいようだ。

 その後、魏ルートっぽい流れで張角たちは死んだことにされ、天和たちは華琳ちゃんのために働くことになった。

 

 

 戦いを終え、城へ戻ると広間に集合をかけられた。

 何進将軍の名代、呂布からのお言葉。……を通訳? するねね。

 呂布は喋ってないから、ねねが覚えてるんだろうな。元気そうでよかった。

 でも、華琳ちゃんが西園八校尉に任命されたってことだけ伝えると、もう行っちゃった。全然話できなかった。

 前以上に呂布に懐いているみたいだし、お兄ちゃんはもう用済みなのかな……寂しい。

 

「呂布は相変わらずのようね」

「怒ってはいないんだ?」

「皇一の情けない顔見たらそんな気も失せたわ。義妹を完全に取られちゃったみたいね」

「やっぱり、そうなのかな?」

 兄殿って呼んでくれてたねねが懐かしい。

 

 後で聞いた話だが、この時の落ち込んだ俺の顔を見ていたせいで、もう一度ねねがやってきた時に、季衣ちゃんが怒っててねねの話し相手のお誘いを断ったらしい。

 真・魏ルートの拠点イベントだと、知らない人にお菓子をあげるって言われてもついてっちゃいけない、って理由で季衣ちゃんは断ったはず。

 引継ぎがあるから、ねねは知ってる人ってことでもしかしたら誘いに乗っていたかもしれない。

 断らないとねねが何進に疑われるから、怪我の巧妙ってとこかな。

 

 

 宴会では、シスターズと早くも仲良くなった桃香が歌ってもらったり、歌を教えたりしていた。

「ア~ルト~~ロン♪」

 ちょっ、なんでその歌教えちゃうかな。

 しかもなんでみんなで歌っちゃったりするのかな。

「ねえ。歌のせいで双頭竜が恋しくなっちゃった~」

「お姉ちゃんずるい! ちぃだって久しぶりに皇一の双頭竜に会いたい!」

「ご主人様の双頭竜?」

 一瞬、桃香の目が光った気がした。まずいかな?

 

「なに言ってるんだよ、この酔っ払いめ」

 そう誤魔化すことにした。

「そうね。いくら久しぶりにちゃんとした食事ができたからって、姉さんたち呑みすぎよ。もう寝ましょう。皇一さん、姉さんを運ぶのを手伝って下さい」

 グッジョブ人和。

 俺は天和を支えながら、その場を脱出した。

 

 

 そして、朝帰りして愛紗に怒られたのだった。

 

 


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