恋姫†有双   作:生甘蕉

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四十話   メイドさん?

 蜀の王となった桃香は、治安の回復と税制の改革に張り切っている。

 俺の方はいまだに勉強とトレーニングに重点をおいていた。

 読み書きできなきゃ政務もあまり手伝えないし。

 色々知ってたはずの十年後の俺だったら政務を手伝ったり、必要な策とか出したんだろうか?

 ……桃香に対する扱い考えるとそんなことはなかったのかもしれない。今は俺にできることをがんばろう。

 

 俺にできること、か。

 勉強だけでよさそうでもあるが、そんなことはない。

 身体を鍛えるトレーニングは絶対に必要だ。

 戦場で生き残るためもあるけど、それだけじゃない。

「だって見られちゃうんだもんなあ、好きな女の子に」

 十年後の俺が腹筋が割れたのを喜んだという本当の理由が、最近わかった気がする。

 弛んだお腹を見られて嫌われたくないよね。

 

 そして勉強とトレーニング以外にも、それ以上にも大事なこと。

 みんなの支えになりたい。

 ……なんか話を聞いているとおっさんの癖にマスコット扱いだったような気もするが、それでも早くみんなのことを思い出したい。

 だから、開いた時間はみんなとの時間にあてる。

 桃香たちの手伝いがあまりできないのはサボってるわけじゃない。

 いいわけっぽいかな?

 

 

 

 メイドさん二人の買い物につきあっている俺は、月ちゃんから荷物を奪うように預かった。

「あ、ありがとうございます、ご主人様……」 

「いいよ。これぐらいなら余裕だから」

 真っ赤になって照れてる月ちゃん可愛いなあ。カッコつけられたし、鍛えてて本当に良かった!

 

 二人とも今はメイドをしているが、以前は武将と軍師だったらしい。

 眼鏡で軍師な詠はともかく、この儚げな月ちゃんが武将だったとはとても見えないんだけど。

 ……季衣ちゃんや鈴々ちゃんみたいな例があるんでなんとも言えない。もしかして無茶苦茶強かったりするんだろうか?

「なにを月を視姦してるのよ、この蛇太守!」

 なんか凄いことを言われました。

「蛇太守? 太守は桃香だし、そもそもなんで蛇?」

「あんたのが双頭の蛇みたいに……なに言わせようとしてんのよ、この変態!」

 頬染めながら怒る詠。可愛いけど酷い。

 というか、俺のムスコさんが蛇だというのか? このボクっ娘は。

 なんか他でも言われてた気もするけど、双頭竜の方がよっぽどマシじゃないか。

 双頭竜の歌も流行ってるらしいし、もしかして俺の下半身の秘密って相当広まっているの?

 ……双頭だけに相当。

 寒いギャグに気づいたせいか、俺はさらに落ち込んだ。

 

「詠ちゃん、ご主人様にそんなこと言っちゃ駄目だよ」

「だ、だって、こいつ未だに月のこと思い出さないのよ、月のことその程度にしか思ってないんだ!」

 ビシっと俺を指差す眼鏡メイド。

「……ご主人様、華琳さんのことを思い出しました?」

 月ちゃんの質問に首を横に振る俺。

 思い出したいなあ。今頃なにしてるかなあ、華琳ちゃん。

「……ごめん」

 詠が謝る。

「華琳を思い出せてないんじゃ、ボクのはただの言いがかりだった」

 ……月ちゃんや詠の中では、十年後の俺の一番は華琳ちゃんだという認識らしい。

 魏の嫁たちの説明でもそうだったけど、華琳ちゃんの部下じゃない娘もそう思っているのか。

 

 買い物を続けている途中で、露店で詠が見つけたかんざしを購入。

 月ちゃんにプレゼント。

 というより、それを買う詠の財布扱いな感じの俺。

 でも、そのおかげで二人のことを思い出した。無印のイベントだね、これ。

 かんざしを着けた月ちゃんを見て、ふとちょっとした悪戯?を思いつく。

「よく似合っているよ。お持ち帰りしたいぐらい」

「へぅ……」

 記憶に合わせて眼鏡を外してから、頬に手を添えて照れる月ちゃんをお姫様抱っこ。

「こら、荷物地面に置いてなにやってんのよ!」

「詠、ごめんね。季衣ちゃんがいればよかったんだけど」

「……それって」

 詠も気づいたようだ。

 俺が月ちゃんをお姫様抱っこしたのは、二人と初めて会った時。眼鏡を奪われた俺が月ちゃんをお姫様抱っこ。季衣ちゃんが詠を抱えて、二人を救出したんだっけ。

「うん。思い出したよ、二人のこと。忘れちゃっててごめんね。筋肉痛になってでも荷物はちゃんと運ぶから安心して」

 月ちゃんを下ろしたら、二人が俺に抱きついてきた。

「……ご主人様」

「遅すぎるわよ、この愚図!」

 怒ってながらも詠の声が涙声だったのには、触れないでおいた。

 

 

 

 いつまでも避けられてばかりも嫌なので、鈴々ちゃんを探していたら城壁の上でなんか薄い本を読んでいたのを発見。

「お兄ちゃん?」

「なに読んでるの?」

「お勉強なのだ」

 その薄い本を慌てて背中に隠したせいか、今日は俺を避けるように逃げられないで済んでいる。

「鈴々ちゃんが勉強!?」

 いつも勉強させようとする愛紗から逃げているのに?

「失礼なのだ!」

 いかん、怒らせてしまった。

 なんとかご機嫌をとらないと。肉まんでももって鈴々ちゃんを探せばよかったか。

 

「偉いね鈴々ちゃん。なんの勉強してるのかな?」

「それは言えないのだ!」

 おかしい。

 鈴々ちゃんが勉強してるなんて、もっと自慢してもいいはずなのに。

 これはあれか? テスト前に俺全然勉強してねーぜ、っていう……違うか。

 でも薄い本を隠すところも怪しいし。

 

 ……薄い本?

 思い出してしまった。

「もしかしてそれ、朱里ちゃんに借りた本?」

「お兄ちゃん、すごいのだ!」

 驚く鈴々ちゃん。

 うん。俺はちゃんと鈴々ちゃんの記憶を入手できているようだ。

 

「……にゃ? もしかしてお兄ちゃん、思い出したのだ?」

 時々鋭いんだよな、この娘。

「うん。だからその本の題名、教えて?」

 鈴々ちゃんから本のタイトルを聞いて、イベントを確認できた。

 このイベントが発生したってことは、鈴々ちゃんに嫌われてたってわけじゃなくて一安心。

 でも、これに興味を持ったってことはさ。

 

「ええと、鈴々ちゃん、その本で大人になる勉強はちょっと違うかも」

「そうなの? 鈴々早く大人になりたいのに」

「どうして?」

 あんまり大きくならないでもいいのに。

「ハルマキに負けるのは嫌なのだ!」

「季衣ちゃんに?」

「ハルマキもお兄ちゃんにオトナにしてもらったって美羽が教えてくれたのだ」

 ええと、美羽ちゃんなに教えちゃってくれてるんですか。

「鈴々もお兄ちゃんに大人にしてもらうのだ!」

 大きな声でそう宣言する鈴々ちゃん。

 慌てて周囲を確認する俺。

 愛紗あたりに聞かれたら、正座でお説教数時間のコースが確定しそうだ。

 

「ふう、誰もいないようだ。……鈴々ちゃん、そういうことは大きな声でいっちゃ駄目だから。だいたい、大人になるって意味はわかってる?」

「にゃんにゃんするのだ!」

 再び周囲を見渡す俺。……心臓によくないな。

「……鈴々ちゃん、それはやっぱりその本じゃ勉強できない。だから別の人に教えてもらお?」

「お兄ちゃんに教えてもらうのだ」

「愛紗に怒られるからそれは無理」

 ならば誰に教えてもらうかだけど、熟女にまかせるとテクニックの方を教わってきそうだし、真面目な子がいいだろうな。

 愛紗……はやっぱり無理か。鈴々ちゃんにはまだ早すぎるって言われそう。

 なら、詠……は鈴々ちゃんが俺のことを変な呼び方するようになりそうなのでパス。

 あとは……苦労人の二人か。

「うん。白蓮と斗詩に教えてもらって。二人ならちゃんと教えてくれるから。……そうだね、美羽ちゃんや朱里ちゃんたちも一緒に教わった方がいいかな」

「わかったのだ」

 二人に鈴々ちゃんを丸投げどころか教える対象増やしちゃったけど、鈴々ちゃんにこんな本を渡す朱里ちゃんにはちゃんとした知識があった方がいいはずだし、美羽ちゃんは俺の嫁だけど、なんかそっちの知識が不足してる。

 ……そんな娘とやっちゃったのか、十年後の俺。鬼畜かも……。

 

 

 鈴々ちゃんのことで一声かけておこうと朱里ちゃんを探したら、雛里ちゃんもいっしょに街の視察に行くことになった。

 市を見たり、お茶して朱里ちゃんにお菓子を作ってもらうことを約束したりしてたら、二人の記憶が復活した。

「もうあんまり親子と間違われないから、若返ったのも悪いことばかりじゃないのかな?」

「はわわっ、ご主人様記憶が?」

「うん。二人にも苦労かけたね」

 頭を深く下げてお詫び。

「あわわっ、ご主人様……」

「これからも二人には世話になると思う。頼りにしてるよ」

 俺たちは恋人つなぎで手をつないで城へと帰った。

 

 

 

 今夜はねねと恋がいない。

 他の女の子がくるのかな?

 ずっと俺といっしょに寝てくれてるねねと恋。

 ……別に毎晩エッチしてるわけではない。

 俺の護衛と、慣れたのか最近あんまり見なくなったけど悪夢予防のためだ。

 エッチはたまに。

 そのねねと恋は俺の部屋に他の女の子がくる時は外してくれることが多い。

 前もって女の子同士で打ち合わせとかしてるのかもしれない。

 

 とんとんと扉がノックされる。

 誰かな?

 記憶が戻っていない娘もたまにくる。

 いろいろ話をして、俺の記憶が戻らないのがわかると悲しそうに出て行く。

 あれは辛い。胃が痛くなる。

 まあ、今蜀にいる娘で思い出してないのは星だけだからその心配は薄いか。

 ……こないだみたいに星が夜這いしてくるのは勘弁してほしいけど。記憶が戻ったらって約束して諦めてもらったもんなあ。照明がなくて暗いのに星が落ち込んだのがわかって、かなりしんどかった。

 と、考え事してたら、ノックの間隔が短くなってどんどん、どんどん、と力強く連打されてる。

「ちょっと! いないの?」

 

「どうぞ」

 俺の返事で女の子たちが入ってきた。

 月ちゃんと詠。さっき怒鳴ったのは詠だな。

 そして。

 雛里ちゃんと朱里ちゃん。

「四人できたの?」

 二人ずつの組み合わせはわかるんだけど、それが二組いっしょとか。

 月ちゃんと詠だけだったらエッチもアリかな? だったんだけどなあ。

 

「あんた、白蓮と斗詩に性教育お願いしたでしょ」

「うん。もう済んだの?」

 鈴々ちゃん行動早いなあ。

「それで、鈴々ちゃんがすぐにご主人様のところへ行こうとしまして」

「……鈴々ちゃんらしい。でも、ここにきてないってことは止めてくれたんだろ?」

「はい。ご主人様のお相手は一人じゃ大変だと斗詩さんが説得してくれました」

 そうか。斗詩もやっぱり大変だったのか。ごめんね。

 

「鈴々ちゃん、美羽ちゃんにいっしょに行こうと誘ったのですが、美羽ちゃんは妾なら一人で大丈夫じゃ! と強がってしまって」

 むう、鈴々ちゃんと美羽ちゃんが逆な気もするが、美羽ちゃん一応経験者だしな。

 それにしても、美羽ちゃんから季衣ちゃんのことも聞いていたみたいだし、いつの間に二人はそこまで仲良くなったのかな?

「それで、鈴々ちゃんは愛紗さんを誘ってしまい……たぶんまだお説教されています」

 ああ……せめて桃香だったら可能性が高かっただろうに。姉妹丼はならずか。

 

「鈴々はそれでいいとして、朱里の方が、ね」

 呆れたとも困ったともいえる表情で朱里を見る詠。

「はわわわわ……」

 ええと、それってもしかして。

 ……四人ともお風呂上りか。いい香りがしてる。

 

「勘違いだったらごめんね、朱里ちゃん。こんな時間に俺の部屋にきたってことはさ」

 はわわと唸りながら少しの間の後、こくんと頷いた朱里ちゃん。さすが天才軍師、察しがいい。

「俺でいいの? 俺は……」

 言いかけてる途中で、詠が俺の眼鏡を奪った。

「そういう台詞の時は眼鏡を外す!」

「そ、そうなの!?」

「あんたは華琳とそう約束してた」

 マジですか?

 ……華琳ちゃんとの約束なら仕方がないか。

 眼鏡を外したまま仕切り直し。

 朱里ちゃんや他の娘の頬がさらに赤くなった気がする。

 

「俺でいいの? 俺は抱いちゃったら嫁にしてるみたいなんだけど」

「ご主人様がいいです。雛里ちゃんだけじゃなくて、わたしもお嫁さんにして下さい」

「わたしからもお願いします。朱里ちゃんもご主人様のお嫁さんに……」

 雛里ちゃんも朱里ちゃんを応援する。

 この二人は一緒の方が当然なのかもしれない。

「ありがとう」

 朱里ちゃんと雛里ちゃんにキス。

 

「……で、月ちゃんと詠ちゃんも?」

「ボクたちを除け者にするつもり?」

 眼鏡の奥でギロリと俺を睨む。でも怒りとは別に顔が赤く染まっているので微笑ましいというか、可愛い。

「除け者なんてそんなつもりはまったくないけどさ、月ちゃんはいいの?」

「……はい」

 ブラボー! おお……ブラボー!!

 思わず仰け反ってジャンプして拍手したいぐらいテンション上がっちゃったよ俺!

 こんな可愛い娘たちと5Pですよ! しかもみんな処女っ!

 筋肉痛もないし、今日の俺は頑張れる!

 

 

「もっと大きい寝台を用意しましょう」

「そうだね朱里ちゃん」

 さすがに五人で寝るのは難しそうだったので、月ちゃんと詠は自室へと戻った。本当の初めてを終えたばかりの朱里ちゃんに俺といっしょに寝るのを譲ってくれたらしい。今度埋め合わせしないと。

 でかいベッドか。魏にいた時のは季衣ちゃんと流琉と美羽ちゃんといっしょに寝れたぐらい大きかった。

 けど、そんなの申請したら愛紗に怒られそうな気もする。

 ……まあ、予算を通してくれる二人が納得してるから大丈夫かな?

 桃香もすぐ了承しそうだし。

 

 

 

 

 蜀へ外敵が侵入してきた。

 しかも二つ。

 西方の五胡と南方の南蛮。

 敵軍の初動から軍師たちは西への対処を優先と判断。

 しかし南も放っておくわけにもいかないので、警備兵たちが立て籠もってる砦に兵と武将を派遣して防衛に徹することになった。

 行くのは紫苑と恋、ねね。

 

 残りは五胡との戦いへ出陣。

 俺もそっちへ同行した。

 いつも護衛してくれている恋とねねがいないのは不安というか寂しい。

 ねねの言う通り、俺の親衛隊にした方が良かったんだろうか。ねねは二周目で魏の親衛隊にいたからなあ。

 けど、王である桃香を差し置いてってのはマズイだろうし。

 ……蜀の親衛隊設立するとしたら、焔耶が間違いなく立候補するだろうな。

 なんて設営された俺のテントで考えてたら、その焔耶と桃香が入ってきた。

「ご主人様こんばんは」

「こんばんは。って寝てなくていいの?」

 焔耶は桃香の護衛かな。愛しい桃香がこんな時間に男のとこへ行くなんて見過ごせなかったんだろう。

 

「もう。せっかく会いにきたのに」

「そうは言ってもさ。こんな時に」

「いつもは恋ちゃんとねねちゃんと寝てるご主人様は一人だと寂しいよね。一緒に寝てあげようって」

 ……恋が南方へ行くと立候補した時にまったく悩まずに決めたのは、もしかしてこういう思惑があったから? ってのは穿ちすぎか。

 桃香は腹黒ってキャラ説があったから、それに引っ張られてるのかもしれない。

 

「焔耶、桃香を連れていっていいから殴るのは勘弁して下さい」

 焔耶には何度か殴られてるけど、無茶苦茶痛い。たぶんしっかり手加減はしてるはずなんだろうけど。

「なにを言ってる。貴様、桃香様のお誘いを断るつもりか!」

「え? いや、だって」

「ご主人様、今夜は焔耶ちゃんもいっしょに、ね」

 真っ赤になった焔耶を後ろから押すような位置でに桃香が微笑む。

 

「い、いいのか焔耶? 桃香がこんなこと言っちゃってるんだけど?」

 焔耶が怒って殴りかかってきても防御できるように両腕を顔の前でクロスさせながら聞く俺。

 回避? 無理でしょ。

「お、お館の……なら、桃香様と一つになれるのだろう!」

 さらに赤くなって焔耶が吠える。

「ど、どこでそれを!?」

「あ、鈴々ちゃんの大人勉強の時にわたしと焔耶ちゃんも聞いていたんだ♪」

 挙手して桃香が報告してくれた。

「ちなみに教えてくれたのは詠ちゃん。わたし、一人でしかご主人様の相手したことないからビックリしちゃった」

 詠め、余計なことを。帰ったらオシオキ……は無理そうか。月に告げ口くらいしか俺に報復手段はないのか……。

 

「じゃあその時、俺が処女をもらっちゃったら、その娘を嫁にしているってのは聞いた?」

「うん。わたしもご主人様もお嫁さんだもん♪」

 嬉しそうに胸の前で両手を合わせる桃香。

「焔耶はそれでいいの?」

「か、構わん!」

「俺以外の男とするのは絶対に許さないよ」

「桃香様とならいいのであれば問題ない!」

 どうしよう?

 ……断ったら、焔耶が震えている手で今握っている金棒の威力を味わうことになりそう。

 焔耶も可愛いし、いいかな?

 処女だし。

 俺は流されるまま、桃香と焔耶と楽しんでしまった。

 

 

 

 五胡の軍勢はあっさりと撃退に成功。鎮守府を築き、兵隊さんを常駐させることに決めて、そのまま俺たちは南方の紫苑たちの下へ急行する。

 南蛮兵たちもすぐに撤退してくれた。

 ……南蛮兵ってネコミミロリばっかだったけど。

 俺たちの援軍の数にビビったのかもしれない。

 怖がらせちゃってごめんねロリっ子たち。いつか行こう南蛮。ネコミミロリたちの夢の国。

 

 

 

 

 成都に戻った俺たちは外敵を警戒しながらも通常業務を再開。

 俺は、勉強とトレーニングに励む。

 ……はずだった。

「昼間の酒は効くねぇ」

「まぁ、ご主人様ったら」

 昼間から酒を飲んでいた紫苑と桔梗に捕まった俺は、簡単に誘いに乗ってしまっていた。

 だって璃々ちゃんも一緒にいたからさあ。

 

「お館様もいける口か」

「いや、たぶん普通だけど」

 でも、久しぶりに飲んだアルコール、結構効いてるかもしれない。

「いやいや。量の多い少ないは問題でなく……」

 思い出した。この展開はあれか。

「璃々ちゃんが聞いてるし、下ネタ禁止で」

「酒の席には下ネタがつきものですぞ」

 ああもう、桔梗酔ってるな。

 こんな時は俺も酔っちゃった方がいいんだろうな。……そんな風に考えるってことはもう酔ってるか。

「お代わりですか?」

 紫苑が次々と俺の杯に注いでくれる。

 

 

「残念ですが俺は処女じゃないと嫌なんですぅ!」

「青いのう」

 あれ?

 なんでこんな話になってるんでしたっけ?

 たしか焔耶さんに手を出したことがばれて……。

 可愛がっていた娘を嫁にやる前に、確認せねば、でしたっけ?

 酔っていますね、俺。

 

「ですからお二人のお誘いもたいへん魅力的ですが受けることができませぇん」

「酔ってるのう」

「ええ。口調がいつも以上に丁寧になってるわ」

 はい。そりゃ酔ってますよ。

「俺にはそりゃぁもぉたぁくさんのお嫁さんがいるんでぇす」

「ならば多少の女遊びなど気にすることはあるまい」

「遊びで抱くことなんてしませぇん! ぜぇんぶ本気!」

「それはそれで気が多すぎる気もしますわ」

 紫苑さんの的確なツッコミ。

 

「……わけあって今はいっしょにいれないお嫁さんも多いんです。そんな娘たちも俺のために純潔守ってくれてるんでぇす! ですから! 俺が非処女の女性を抱いたら裏切りになるでしょお!」

「嫁ではない処女を抱くのは裏切りにならんというのが、いかにもお館様だのう」

「抱いちゃったら嫁にするもぉん」

 そろそろ、ここを抜け出して部屋に戻った方がいいかもしれない。

 でも、膝の上の璃々ちゃん可愛いしなあ。お酒臭くてごめんね。

 

 

「……頭痛い」

 夕方、というか気づいた時にはもう日は落ちていた。

 起きたのは自分の部屋のベッドだったけど、幸いにも熟女が一緒に寝ていることはなかったので一安心。

 ベッドもそっちで使った形跡ないし、たぶん大丈夫だよね?

 

 

 

 呉から使者として思春、明命、亞莎がきてくれた。

 準備がいるというので少し待ってから会いにいったら三人ともメイド服……いや、これはエプロンドレスか。

 みんな似合っている。思春なんか髪を下ろしていて、イメージがだいぶ違う。

 ……イメージって言っても記憶無くしてから道場以外で会うのは初めてだったりする。

 このエプロンドレスは、許貢の残党の生首の塩漬けといっしょに華琳ちゃんが呉に送ったものらしい。元をたどれば、俺が魏の服屋に頼んでいたものだそうだ。

 ……それにしても華琳ちゃん、処罰って殺しちゃったのか。

 まだしてもいない事で殺されるなんて、そんなにも怒っていたのか。

「たぶん皇一さまが記憶を失う原因でもあったことも理由かと」

 亞莎が教えてくれる。慰めてくれてるんだろうけど、俺が理由というのもちょっと気が重い。……まあ、顔知らないんで夢に出てくることはないだろうし、考えないことにしよう。

 今は三人の姿を楽しむ方が優先。

 三人のことも思い出したしね!

 

 三人が揃ってエプロンドレス装備ってのは萌将伝のイベントだったけど、記憶は復活した。

 あれはメイド喫茶をやったはず。

 でも三人のエプロンドレス姿が魅力的で、見ただけで済んでしまった。

 ……思春がその姿を俺に見せてくれるって条件が厳しすぎるからなのかも?

 

 記憶が戻った俺はふと湧いた疑問を聞く。

「でもさ、三人もこっちにきちゃって大丈夫なの?」

 亞莎は軍師だし、思春と明命は呉の親衛隊の隊長と副長だったはず。

 

「子種を貰いにきたのです!」

「は?」

 明命、それって質問の答えになってないんじゃ?

「雪蓮様は天の血を孫呉に入れるおつもりです。ですが、私たちが北郷様の子を産むことを受け入れないので、それならば同盟国の天の御遣い様の血をと」

「自分とこの天の御遣いじゃなくてもいいの?」

「雪蓮様の命だ」

 ああ、王の命令じゃ仕方ないか。

 

「俺としては凄い嬉しいんだけどなにか裏がありそうな……だいたいなんでこの三人なの?」

 エプロンドレスもらったのがこの三人なせいなのかな?

「皇一さまはおっきなおっぱいよりも、小さなおっぱいの方がお好きだからなのです!」

 宣言したとおり胸を張る明命。そこまで小さくはないと思うんだけど、巨乳どころか爆乳揃いの呉だと小さい部類になっちゃうのかもしれない。

「それならわかるけど……って、俺の好みとかまでばれてるの!?」

「皇一さまは小さな胸とか小さい娘が大好きなのです!」

 妙に嬉しそうで幸せそうな明命。たしかに俺の好みに合致している。

 ……小さい娘っていうのは背が小さいだけじゃないんだけどね。

 

 その明命に申し訳なさそうに亞莎が本命ともいえそうな理由を教えてくれた、

「……たぶん雪蓮様は思春さんがいない内に、蓮華様と北郷様の仲を後押しするつもりなのではないでしょうか」

「孫策って蓮華のお姉さんだよね、そこまでするかな?」

「この案を考えたのは張勲さんです」

「だから早く済ませて蓮華様の元に戻らねばならん!」

 俺の胸ぐらを掴みかねない勢いで思春が迫る。

 そうか。思春が俺のためにエプロンドレス着てくれるなんて出来すぎてると思ったけれど、蓮華のためという理由があったのか。嬉しいから別に構わないけど。

 

 

 俺とエプロンドレス三人との幸せな時間が終わると、三人はすぐに着替えて帰って行ってしまった。

 まあ、子種がほしいってことだったので、じっくりたっぷりと結構時間が経っちゃったけど。

 誰か命中してるかな?

「貴様が思い出すまで帰ってくるな、との命だったが既に思い出したのだ。問題あるまい」

「名残惜しいですが、またいずれ」

「ご達者で」

 俺は三人を見送った。

 うん。思春と明命のふんどし、後ろから眺めるチャンスだし。

 いつもならすぐに見えなくなっちゃうのに、初めての後でしかも俺がんばっちゃたから動きがぎこちないし。

 しっかりと目に焼き付けておこう。

 

 ……俺の嫁なはずの蓮華が心配な自分の心をそう誤魔化すのだった。

 

 


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