恋姫†有双   作:生甘蕉

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四十六話  好き!

 セーブしたのはたぶん、セーブ3だと思う。

 セーブ1は毎朝のだし、セーブ2は重要イベント直前。

 残るはセーブ3しかない。スタート時点のはずだから、上書きしてもやり直しは容易なはず。

 いくら意識が朦朧としていても、それぐらいの判断はしてる。

 そう信じることにした。

 

「あ、けどロードできても病気で死んじゃうかもしれないのか」

 やっぱりセーブ2からの方がいいか?

 ……でも、なんとかなる気もするんだよなあ。

「うまくロードできたらさ、華佗に頼んで、俺の腹の中の異物を取り出してもらって」

「いいのですか? 華佗がそう言い出した時には、激しく拒否なさってましたが」

 うん。だってあん時は俺の子だと思っていたし。

「なんかさ、たぶんもう出しても大丈夫な気がするんだ」

 お腹に手を当ててみたけど、違和感はない。道場だからなのかな。

 

 恐る恐るたぶん使ったはずのセーブ3をロード。

 これで失敗だったら、また最初っからなんだよなあ……。

 

 

「ご主人様!」

 目を覚ました俺を涙ぐんだ蜀の嫁さんたちが迎えてくれた。

 ロードして始まったタイミングは、赤壁に勝利してそれを眠り続ける俺に告げた時。苦しみだした時にセーブしたのかな。

 ロード後は前回と違い、俺が苦しむことはなかったらしい。

 俺の言いつけどおりに華佗に手術を頼んだ愛紗たち。

 華佗も俺の腹部の異物の存在がはっきりとわかる、と俺の腹を切り裂いてそれを取り出してくれた。

「……ここか」

 服をめくって自分の腹を確認する。四、五センチの縫合痕。

 もう抜糸は済んでるらしい。麻沸散の影響もあってすぐに起きなかったのだと後で華佗が教えてくれた。

 

「こんな小さく切って、取り出せたの?」

 縫合痕を障りながら聞く。

 うん。痛くはないな。さすが華佗。

「ああ。まだあまりいじるな。だが、なんでこんな物が身体の中から……呪いの類か?」

 華佗が俺から取り出したものを見せてくれる。

 それは、胎児でもガン細胞でもなかった。

 手にとって確認してみる。

「もしかしたら、と思っていたけどやっぱりそうか」

「身に覚えがあるのか?」

「うん。けど、なんか白いな」

「それはたぶん、骨と同じ材質だ。天井の身体の中で作られたのかもしれない」

 これが俺の骨か。

 身体ん中で骨が増えてたから、苦しかったのかな?

 

 

 

 赤壁で大敗を喫した魏軍は、江陵を放棄した。

 現在は新野城へ入城したらしい。

「やっぱり戦うの?」

 桃香の問いに朱里ちゃんが頷く。

「はい。後の不安材料は減らしておくべきです」

「華琳殿も戦う準備をしています」

 戦いなんて早いとこ止めて、華琳ちゃんに会いたいけどね。

 

「わざわざ誘ってなんて、無理矢理戦いを作り出してるみたい……」

 桃香には、戦いを続けることに迷いがあるのかもしれない。

「桃香はなんのために戦うの?」

「ご主人様?」

「胸を張ってそれが言えないんなら、止めてもいい」

 俺の言葉に天才ロリ軍師たちが慌てだす。

「はわわわ、そ、それはまずいです」

「あわわわ、今さら止めるわけには……」

 

「ご主人様……」

 俯いたままの桃香。

 でも、よく考えればきっとわかると思う。戦いは避けられないことに。

 俺や朱里ちゃんたちが教えるのは簡単だ。

 けど、桃香は自分で見出さなければいけない。じゃないと、桃香を育てられてないって華琳ちゃんに怒られそう。

 

「朱里ちゃん、雛里ちゃん、桃香なら大丈夫だから、ちゃんと準備しといてね」

 桃香には聞こえないように二人を宥める。

「信じておられるのですね」

「うん。俺の嫁さんの一人だからね」

 

 

 

 襄陽にて会合する蜀軍、魏軍、呉軍。

 ……すぐにも野戦に突入しそうな陣を張ってはいるが、会敵、ではない。

「茶番、よねぇ」

 三軍の中央で欠伸まじりに雪蓮が呟く。

「そうぼやかないの」

 同じく欠伸を堪えながらの俺。

 俺と雪蓮の他は側にいない。

 二人から離れた場所で俺たちを見守っている。

 

「昨夜はずいぶん、おさかんだったようね」

「……そうでもない」

「なに、まだなの?」

 呆れた声と目線。

「いや、それがさ」

 弁明するより先に華琳ちゃんが現われた。供を連れてないその姿は、舌戦を仕掛けにきたように見えるだろう。

「……桃香はどうしたの?」

「くるよ」

 直前まで悩んでいた……わけではなく、戦う決意をした桃香を直前まで愛紗に特訓してもらった。

 そのせいで、疲れが出てしまったようだ。

 

「ごめんなさい。寝坊しちゃった」

 緊張感のかけらもなくやってくる桃香。

 うん。ガチガチになってるよりは、いいんじゃないかな?

 

「あなたらしいわね」

「えへへ」

 褒められたと思い、さらに表情を緩める桃香。……やっぱりもう少し緊張してもらいたいかも。

「じゃあ、予定通り始める?」

「……ほんとに五胡、くるんでしょうね? 来なかったら、かなり恥ずかしいんだけど」

 三国の軍がここに集ったのは、戦うためではない。

 決戦すると見せかけて、五胡を誘き寄せるため。

 国境付近には、密かに各国の兵が配置され、五胡の進行に備えている。

 真・蜀ルートの最後の戦いを準備万端で行う予定。

 

「そっちでも動きは掴んでいるんだろ? それにこなかったらこなかったで、三国の和平の宣言とかしちゃうにはちょうどいいでしょ」

 五胡が現われなかった時は魏ルートっぽい流れに持ち込む算段だ。

 まあ、一度は大陸から去ろうとした華琳ちゃんがこの場にいるんだから、さらに恥なんてかかせないけどね。

「……とりあえず、舌戦やっとく? そこから、華琳ちゃんと桃香が一騎打ちって流れで」

「茶番ねぇ」

 今度はため息まじりの雪蓮。

 桃香の数少ない見せ場なんだから、我慢してほしい。

 

 華琳ちゃんと桃香を残して、武将、軍師たちが控える場所へと戻る俺と雪蓮。

「……ずいぶん自信たっぷりだけど、勝てるつもり?」

「特訓はしたけどね」

 華琳ちゃんに桃香が勝つのは無理だろうね。

「やっぱ、私がやろうか」

「いや、雪蓮本気になるでしょ」

 俺と雪蓮は軍師たちの報告を聞きながら、始まった二人の舌戦を観戦する。

 

 

「こないわねえ」

「見抜かれたのかな?」

 舌戦が終わり、華琳ちゃんと桃香が戦っているが、二人の技量があまりにも離れているため逆に安心して見ていられる。

 華琳ちゃんが桃香に稽古をつけているようにすら感じるのは気のせいじゃないかもしれない。

「桃香様!」

 愛紗や焔耶は不安で仕方ないみたいだけど。

 

「曹操ってあんなに強かったのね」

「凄いでしょ」

「どっちの味方だ、お館!」

 焔耶が俺を睨む。その目に涙が溜まっているのは、桃香が心配なせいだろう。

「俺は嫁さんの味方。辛いかもしれないけど、桃香の頑張りを見てあげて」

 道場で和解し、三国が争う必要がなくなり、これで戦いは終わったと、五胡とわざわざ戦う必要はあるのかと悩んでいた桃香。

 ……俺としては五胡を共通の敵として戦えば、三国の絆が深まるっていう蜀ルートの展開は楽だから有りだと思う。なにより、ここで後々のためにも桃香が揺るがない信念を見せてくれた方が、蜀としてもありがたい。

 その思惑通りに、何度も何度も立ち上がる桃香。

 そろそろ、華琳ちゃんが桃香を認めて、三国の同盟とか連合とかを発表してほしいんだけど……まだかな?

 

「もしかしたら華琳殿は、桃香さまがどこまで立ち上がるか試してるのかもしれぬ。ご覧なされよ、あの楽しそうな顔を」

 うん。星の指摘通り、華琳ちゃんはSなスイッチ入っちゃった顔になってる。

 桃香の方は泣きそうになってるし。

 頑張れ、桃香頑張れ。

 

 ……やっと桃香が倒れて、華琳ちゃんが三国の連合を語り始める。

 慌てて、桃香に駆け寄る俺たち。

「……ごめん、負けちゃった」

「うん。よく頑張った」

 ……というか頑張りすぎ。いいタイミング見計らって倒れなさいって説明したのに。

「だって、華琳さんに私の気持ち、全部伝えたかったから」

 まったく。桃香の頭をなでてから、華琳ちゃんに向かう。

 

「まだこないの?」

 周囲には聞こえないように華琳ちゃんが囁く。

「うん。……華琳ちゃんやりすぎ」

 俺も小声で華琳ちゃんに抗議。

「だって……あなたの初めてはもらいました、なんて桃香が言うから」

 どんどん小声になっていったけど、最愛の華琳ちゃんの声を聞き逃す俺ではない。

「華琳ちゃん!」

 嫉妬してくれたことに嬉しくなって華琳ちゃんを抱きしめる。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい! まだ大事な話が済んでない!」

 あ、そうだった。

 名残惜しいが、華琳ちゃんをはなす。

 そう。大事な……俺の作戦はまだ済んでないのだから。

 

「覇道を諦めるって言うのね、曹操」

 やる気の感じられない棒読みの雪蓮。

 もう少し真面目にやって。そんなに五胡と戦いたかったの?

 

「大陸を建て直すため、私は大陸を一つの国にするつもりだった。でも、あなたたちとならその必要はなさそうね」

 愛紗に支えられて、桃香が立ち上がる。

「華琳さん」

 その目には先ほどとは違う涙。

「私は大陸の平和を乱さない限り、あなた達の国のあり方には干渉しない」

 華琳ちゃんの宣言で、周りに動揺が広がるのがここからでも見て取れる。

 次は桃香と雪蓮が畳み掛ける番。

「三人がそれぞれの国を大切にしながら……」

 そして、俺は桃香の宣言を側で聞きながらも、心臓が破裂しそうなほど、緊張していく。

 

 

「ここに!」

「大陸連合の発足を!」

「宣言する!」

 三人の王が力強く宣言すると、兵たちの歓声が上がった。

 でも、俺はその歓声よりも自分の心音の方がやかましいほど。

 

「……皇一?」

「どうしたのご主人様? 顔色が変だよ」

 変ってなんだよ。

「雪蓮、桃香」

 名を呼ぶと、わかったと頷いて二人が離れていく。

 雪蓮はにやにやと。桃香は愛紗に支えられながら。

 

「華琳ちゃん」

 華琳ちゃんの名を呼んでから、大きく深呼吸。

「なにかしら?」

「今までずっと言えなかったことを言うよ」

 やっぱりものすごい緊張する。

 作戦とはいえ、こんな大勢の前でなんて止めておけばよかった。

 昨夜、言っとけばよかった……。

 

 

 昨夜、俺は華琳ちゃんの天幕にお邪魔していた。

 呼び出しを受けたからだ。

 魏軍へと潜り込むのは、明命が案内してくれた。魏の親衛隊たちも協力してくれたので意外とすんなりいってしまった。

「病はもういいようね」

「みんなに心配かけちゃったね」

「あんたの心配なんてするわけないでしょう!」

 桂花が即座に否定する。

 天幕には魏の主要な将、軍師が揃っていた。馬騰ちゃんと華雄がいないのは俺の嫁が集まったってことなんだろう。

 

「皇一、私のことを思い出した?」

「……それが、まだ」

 失望と非難の視線が天幕中から俺に刺さる。

 俺だって思い出したい!

 腹の異物を取り出せば思い出す、なんて考えもあったが、失った十年の大体の記憶は思い出せたのに、華琳ちゃんのことだけがぽっかりと抜けている。

 情けない。そして悔しい。

 

「泣くのはまだ早いわ」

「華琳ちゃん?」

「沙和が持っているもの、あれがなにかわかる?」

 沙和が両手で抱えるようになにかを持っていた。

「……布?」

 沙和が持っているからには服なのだろうけど、いったいなんだろう?

 

「皇一、自決を気にすることはないわ」

「でも、そのせいで俺はみんなのことを忘れちゃった。みんなに悲しい思いをさせた……」

 あんなこと、しなければよかった。

「あれは私に勝つために道場を使ったのではないのだから、気にすることはないわ」

 え?

 華琳ちゃんに勝つため?

「華琳ちゃん、いったいなにを……うっ、うう……」

 なんだ? 頭痛がする。

 もしかして記憶が戻るのか?

 けど、今まで記憶が戻った時にこんなことは……。

 

「春蘭」

「はっ」

 華琳ちゃんが声をかけると、春蘭が沙和の持っていた布の一つを受け取り、広げてみせる。

「エプロン? ……っ!」

 まただ。ずきずきと頭が痛む。

 

「桂花」

「……は、はい」

 桂花がゆっくりと服を脱ぎだす。ストリップ?

 猫耳フードを最後までとらなかったところに桂花の執着を感じる。

 そして……。

「は、裸エプロンっ!?」

 沙和から受け取ったエプロンを装着する桂花。

 男の浪漫がそこに具現化した!

 

「ぐっ!」

 あまりの痛みに両手で頭をおさえる。

 なんだ、これは?

「……もう少しのようね。全員、裸前掛けになりなさい」

 華琳ちゃんの指示で、華琳ちゃん以外の全員が裸になり、エプロンを装着する。

 パラダイスがそこに出現した。

「い、いったい……!」

 感涙してしかるべき状況なのに、頭痛がそれを許してくれない。

 あまりの激痛に立ってることもできず膝をつく。

 

「これでも駄目なのか!」

「華琳さま」

 期待のこもった眼差しを華琳ちゃんに向ける春蘭と桂花。

 二人とも華琳ちゃんを向いたので、俺に後姿を見せていた。

 裸エプロンのバックは最高だった。

 

「仕方ないわね」

 俺に見せつける様にゆっくりと脱いでいく華琳ちゃん。

 途中で稟が鼻血を吹き上げて倒れ、風が介抱している。

「か、華琳ちゃん……」

 沙和からエプロンを受け取って完成したその姿は、まさに完璧!

 全裸ではない。あえて靴下ははいているというこだわり! その上にたった一枚のエプロン。

 完璧で究極だった。

 

 ずきぃんという今までで一番鋭い痛みの後、痛みは消え失せた。

 そして、俺は全てを思い出した。

「ありがとう! ありがとう華琳ちゃん! 愛してる!」

 立ち上がり駆け寄って、華琳ちゃんを抱きしめながら思わず泣いてしまう俺。

 

「……あなたの名前は?」

「天井皇一」

「あなたの一番大事な人は」

「華琳ちゃん!」

 嫁さんみんな大事だけど、一番といったら華琳ちゃんで間違いない。

「私の初めてを奪った回数は?」

「三十二回」

 ……合ってるよね?

 

「やはり朱里の言った通りだったみたいね。さすがは伏竜」

「えっ?」

 天幕のみんなが俺の記憶の復活を喜ぶ中、華琳ちゃんが解説してくれた。

「皇一、あなたは私のことを思い出せなかったのではないの。……思い出したくなかったの」

「そんな馬鹿な」

 華琳ちゃんが微笑んでいた。

 

「あなたは裸前掛けの条件を満たせなかったことを思い出したくなかった」

 ……ああ、そうか。

「華琳ちゃんの期待に応えられなかった。失望されて、華琳ちゃんに捨てられてしまうのが怖かった」

 うん。思い出した。

 自殺なんかで道場使って、華琳ちゃんとの約束をはたすつもりなかったと、嫌われるのを心配してた俺。

 

「だから、思い出さなかったの?」

「たぶん……ごめん!」

 華琳ちゃんを強く抱きしめながら謝る。

 

 その後、みんなと話しこんでずいぶん夜更かししてしまった。

 エッチはしていない。

 というか、全員すぐ裸エプロンから着替えてしまった。

 残念でならない。

 あのパラダイスは絶対に忘れないようにしたい。

 

 

 あの時、言っておけばよかったと後悔しながらも、小さな箱を華琳ちゃんに手渡す。

「これは?」

 柔らかい小さな手に持たせたまま、その箱の蓋を開けた。

「指輪?」

 それを手に取り、じっくりと調べる華琳ちゃん。

「前のとよく似ているわね」

 そう。一周目の結婚指輪にそっくりな指輪。僅かな違いはあるけれど。

「白いのね」

「なんか、俺の骨なんだって」

 これこそが、俺の体内で発生した異物の正体。

「皇一の? 大丈夫なの?」

 心配そうに俺と指輪を見比べている。

 

「これを精製しようとして、俺の身体おかしくなってたみたい。今は大丈夫」

 なんで自分の身体で指輪を作らなければならなかったんだろう? マジで意味不明である。

「……そう。私に捨てられる、と記憶を封じたように、私との絆を形にしたかったのではなくて?」

「それならわからなくもないか。……でも、それで指輪なんかできちゃうのかなあ?」

 指輪が体内で完成するあたりで、嫁以外の失っていた記憶も戻ってきている。なにか、別の力が働いていたのかもしれない。

 まあ、それはともかくとして。

 再び大きく深呼吸。そして、眼鏡を外す。

 

「華琳ちゃん、結婚して下さい!」

 大きな声で告白する俺。

 これこそが俺の作戦。

 衆人環視の上でなら、断りにくいでしょ。というセコい計算。

 ……やっぱり止めておけばよかった! 無茶苦茶恥ずかしい。

 

「いきなりなにを言い出すの?」

「ずっと華琳ちゃんに言いたくて、でも言えなかったんだ。断られたらどうしよう、って」

「もう私たちは夫婦でしょう?」

 呆れた顔の華琳ちゃん。

 でもその頬は真っ赤だ。とても可愛い。

 

「今はまだ結婚式はしていない。前の時も交渉のついでみたいな扱いで、明確な返事をもらっていない」

 華琳ちゃんを見つめる。

「大好きだよ、華琳ちゃん」

 ストレートに俺の思いを伝える。眼鏡を外してなかったら言えないよ、こんな台詞。

 

「……」

 華琳ちゃんが口を開いた時、三国の兵士が駆け寄ってきた。

 連絡兵? このいいタイミングでまさか……?

 俺たちの微妙な表情にやっと状況を把握して、言い辛そうにしながらも兵士たちが報告する。

「ご、五胡の軍勢が……」

 やっぱりか。

 はじめて、五胡をこれほどまでに憎いと思った。

 もっと早くか、もうちょい遅くこいよう!

 

「求婚の返答は五胡を撃退してからね」

 いつのまにか戻ってきていた雪蓮と桃香。

「みんなーっ、曹操さんの返事が知りたかったら、五胡を倒そーっ!」

 五胡の襲来に動揺していた兵たちから再び歓声が上がる。なんか士気がすごい上がったみたいだ。

 俺と華琳ちゃんは真っ赤になっていたけど。

 

 

 五胡はあっさりと、とまではいえないが撃退に成功した。

 勝利宣言の時になぜか、華琳ちゃんだけではなく嫁全員にプロポーズする羽目になってしまった。

 恥ずかしさで死にそうだった。

 俺一人じゃ恥ずかしすぎたので、二人ほど巻き込んだ。

 一刀君が祭さんに。

 馬騰ちゃんが華佗にそれぞれ求婚した。

 

「鈴々もお嫁さんなのだ!」

 いつのまにか嫁が増えていた。

 まさか季衣ちゃんが鈴々ちゃんを連れてくるとは思わなかった。「可哀相だからちびっこもお嫁さんにしてあげて」って。

 季衣ちゃんいい子すぎる。鈴々ちゃんの目が赤かったので泣かれちゃったんだろうな。

 季衣ちゃんの前で泣く鈴々ちゃんってのはちょっと想像できなかった。

 ……すぐにベッドで見ることになったけどさ。

 

「わ、私もか?」

 華雄も初めてだったよ。

 

「抱っこしたらお嫁さんにするって、言ってたよ?」

 抱っこじゃなくて、抱いたら、だから。璃々ちゃんはもう少し待っててね。

 

 紫苑さんと桔梗さんは最近一刀君と仲良くなってる気がするので、もしかしたらもしかするのかもしれない。

 恐るべし熟女キラー。

 

 

 真の状態でスタートしたおかげか、終末はこなかった。

 これでもう、初めからやり直さずに済むっぽい。

 結局、道場の正体はわからなかったな。

 

 萌将伝のように都で暮らすことになり、そこでの記念式典の一環としてやっと結婚式を挙げた。

 さすがに全員一緒での初夜は無理だったのでいくつかのグループごとになった。一周目の一刀君の気持ちがわかる。

 まあ、俺の一番は決まっているのでそれを巡っての争いがなかったのが救いか。

「本当に、変態なんだから」

 ベッドの上で、華琳ちゃんが呆れている。

 新妻が身に纏うのは、わざわざ着なおしてくれたウェディングドレス。

 一生懸命頼み込んで、やっとオーケーしてもらった。

「変態は嫌?」

 ふるふると首を振る華琳ちゃん。

 そして、俺の耳元で囁く。

 

「皇一、好きよ」

 俺はもう死んでもいいと思った。

 ……フラグじゃないってば。

 

 




おつきあいありがとうございました
これにて完結です

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