病の流行はたいしたものではなかった。
スーパーナース孔明ちゃんの活躍もあったが、一番の功労者は俺だと思う。
白装束たちってば俺の殺害に力を入れすぎて、そっちが疎かになってたらしい。
侵入した白装束もかなりの数が撃破されていたし。
武将の活躍と俺の犠牲で。
工作員の被害の大きさに干吉は目標を俺から変えたのか、俺はあまり死ななくなった。
次の策の準備してるのかな?
死なないということは華琳ちゃんたちに会えなくなるわけで。
会いたいなぁ。今頃なにやってるんだろう。
教えといた典韋や郭嘉、程昱たちは見つかったかな?
白装束の本拠地探しも気になる。なんとか山だった気がするけど、どこだったっけ?
貂蝉にはまだ会っていない。
色々と聞いてみたいことがあるんだけど。
ラストどうなるかとかさ。
この世界は終わる。
なんとか継続してくれればいいけど無理だろう、やっぱり。
でも、華琳ちゃんや季衣ちゃんが世界の消滅に巻き込まれるのは絶対に嫌だ。
それ避けられるのって『真エンド』だけなんだよなぁ。
一刀君が魏のみんなに手を出してなくても大丈夫だとは思う。
袁紹たちや公孫賛、一刀君とほとんど接触のなかった華雄までもが真エンドでは復活してたのだから。
最後の選択で『皆のことを思い描いた』を選ばせるために、一刀君が一人の女性だけに執着しないように誘導しないと。
それこそがやっとみつけた、俺がここでできること。
で、それを考えると呉と戦争してもらった方がいいんだよね。
たしか次は北郷軍と呉の戦争。
各国の今の戦力を維持できたままなら、決戦時は有利になるのだろう。
けど、孫権たちと一刀君に一線を越えてもらった方が一刀君が目移りするようになると思う。
俺の記憶だと北郷軍と呉の領土を偽者が攻撃するはず。
俺が白装束の工作を前もって一刀君や呉に知らせておけば、もしかしたら戦争は防げるかもしれない。無駄な死者が出ないで済むかもしれない。
でも、俺は教えない。
どうせ真エンドでも助かるのは名前持ちだけっぽいから、と自分を言い聞かせよう。
俺は鬼となろう。
差し出してやる、生贄を。
……ううっ、胃が痛いなぁ。
結局、北郷軍は呉と戦争になった。
俺はずっと城で留守番だったから詳しいことはわからないけど、ハメられたのには孔明ちゃんたちも気付いてたらしい。
教えても意味なかったみたい。
あの決意はなんだったんだ。
胃痛で減った食欲がいまだに戻らない。俺の体重を返して欲しい。
「ふーん。あんたが魏の人質」
「うん。姓は天井、名は皇一。字と真名はない。好きに呼んでくれて結構ですよ、孫呉の末姫様」
北郷軍と孫権たちとの戦いは記憶通りで予定通りに北郷軍の勝利で終わった。
名前持ちの武将の数が違いすぎるのだから当然である。
そして周瑜の謀反。余命少なくなって焦ってるのもあるんだろうと思って、二喬に忠告したけど無駄だった。干吉が唆してんのが大きいのだろう。
孫権、孫尚香、甘寧、陸遜は捕虜として城に保護されている。
一刀君を探して城を探検中の尚香ちゃんに俺は遭遇していた。
「シャオのこと知ってるの?」
「天でも知られる弓腰姫。孫夫人としても有名です」
この俺がロリキャラを忘れるわけがなかろうて。
「夫人?」
「うん。劉備の……こっちだと一刀君になるのかな。のね」
瞬間、勢いが増すピンク髪褐色ロリ。
……ピンク髪褐色ロリって季衣ちゃんとカブるか。まあ季衣ちゃんは褐色って言うには薄いかな?
「それ本当!?」
「一刀君も知ってるはずだよ」
「そうなんだ♪」
すごい嬉しそうだ。こんなにも惚れられるなんて、まったく主人公様は羨ましい。
気をよくしたのか、俺の周りをぐるぐると回って観察。
「あの曹操の夫には見えないんだけどなー」
「よく言われてるよ」
「うーん、曹操は男嫌いって聞いてるし皇一ってもしかして女?」
思わず噴出す俺。
「そう言われるのは初めてだけど」
「なによ、言ってみただけじゃない」
笑われたのが恥ずかしいのか、膨らませた頬が赤い。
「じゃ、アレね」
人差し指を口元にあて、ふふーんと笑う。くるくるとよく表情の変わる娘だ。
「アッチがスゴイんでしょ!」
「はい?」
アッチって、まさかアレ?
「ちょっと聞きたいんだけど」
「いや、ちょっと待って。俺なんてまだまだですよ。一刀君の方がよっぽどすごいよ!」
だって、ち●こだし。
「そ、そんなにスゴイの一刀って?」
「だから安心して身を任せれば大丈夫。優しくリード……先導してくれる。慣れてるから」
「慣れ……なーんか複雑」
不満気な顔を隠そうともしない尚香ちゃん。
ああ、わかるよその気持ち。
「一刀君のお嫁さんになるなら、第二夫人以下が何人いても認められないと」
「むぅ、わかったわ。それぐらいの度量、見せてあげるんだから!」
心の中でガッツポーズ。『真エンド計画』が一歩進んだ。
まあ、尚香ちゃんならほっておいても大丈夫だったろうけど。
後日会った時、性交した、いや、成功したと喜んで俺に真名をくれた。
その日からシャオちゃんと会っている時に鈴の音が聞こえているのは気のせいだと思いたい。
北郷軍と孫権たちとの戦いから約半月。
一刀君たちに呼び出された。
武将、軍師全員と呉の捕虜たちも集っていた。すごいメンバーだな。
でも、璃々ちゃんと貂蝉はいなかった。避けられてるのかな、俺。
「魏に帰ってくれませんか」
「いいの?」
「皇一さんやつれちゃってこのままだと心配です」
いまだ俺の体重は戻っていない。ストレスにも弱いのよ。
「皇いちゅさんが亡くなったら魏が我が国に攻め込む大義名分が立ちましゅ。北郷は人質を殺した、と」
孔明ちゃんに名前をかまれたけど可愛いから気にならない。
ああ、だから干吉は俺に刺客を送りまくったのか。魏と北郷軍を再び戦わせようと。
「華琳ちゃんにそんなつもりはないよ」
だって俺が死んだら巻き戻りだもん。
「けど、帰れるのはありがたいなあ」
やっと華琳ちゃんに会える。
「それに正式な同盟を成立させたから、もう人質は必要ないそうよ」
「華琳ちゃん!」
その場に突然、華琳ちゃんが現れた。春蘭や季衣ちゃんもいっしょだ。
「おっちゃん、だいじょうぶ?」
やつれた俺を心配してくれる愛しい少女の頭をなでなで。
「大丈夫。みんなの顔見たら元気出てきた」
「冥琳との戦を前に、後顧の憂いをたったか」
孫権の言葉で俺も理解した。
周瑜と戦っている時に魏から攻められないよう同盟を結んだらしい。
「帰っちゃうの?」
残念そうに言ってくれたのはシャオちゃん。
「約束はどうするの?」
んん? 約束なんかしたっけ?
「約束?」
孫権も首を傾げる。
「結婚式やるって言ったじゃない!」
「ああ、アレか」
チリーン。
俺の首は今、サンドイッチされています。
甘寧の刀と、華琳ちゃんの大鎌によって。
「どういうことだ?」
「どういうこと?」
「聞きたい、一刀?」
答えたのは俺ではなく、シャオちゃん。
俺? 怖くて口も動かせません。
「しゃ、シャオ? 皇一さんと結婚するのか?」
「だったらどうする~?」
「ええ!?」
困った顔で俺を見る一刀君。俺も必死にアイコンタクトをはかる。
一刀君ニヤリ。どうやら通じたらしい。
「そうか。じゃあ俺は花嫁泥棒しないといけないな」
「やあん、一刀ってば大好き!」
シャオちゃんのタックルを受け止めた一刀君のドヤ顔。
「結婚式って言っても、シャオたちと一刀、皇一と曹操の合同結婚式よ♪」
得意気に語るシャオちゃん。
いまだに一刀君に抱きついたまま。そのおかげで甘寧の刃は俺から一刀君に移動している。
てか
「明確な約束じゃなくて、できたらいいなって話してただけで」
殺気が減ったおかげかやっと俺も口を動かせた。
真エンド計画の一環。一刀君も結婚しちゃえば皆のことを思うしかあるまい。
「たしかにあなたを夫にすると言ったわね」
やっと大鎌をおろしてくれた。
かわりに春蘭が今にも斬りかかってきそうだけど。
「待ちなさいシャオ! そんなのは認められない!」
「お姉ちゃんは一刀と結婚したくないの?」
「え?」
チラリと一刀君を見て真っ赤になる孫権。
「そ、そんなことは……」
「シャオ、シャオたちと一刀って言ったもん。みーんなと一刀の結婚式するの!」
その言葉で騒然となる。
真っ赤になって俯く少女。虚空を見上げてブツブツと呟く少女。ブンブンと頭をふる少女。
多かったのは一刀君に詰め寄る少女たち。
さすが一刀君、たった半月で呉娘全員攻略済みですか。
(ど、どうしよう?)
(年貢の納め時だね。嫌じゃないんだろう)
(それはもちろん)
(なら、いいじゃん)
少女たちから逃げる一刀君と、春蘭から逃げる俺はアイコンタクトを続けたのだった。
真エンドは三回目以降じゃないと選べなかったはずですが、オリ主はセーブデータをもらってきてのプレイだったためと、無印の記憶が薄いため勘違いしています。