欲望にはチュウジツに!   作:猫毛布

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息抜き(8000字

今日は早めに投稿が出来たので、もしかしたらもう一本上げるかも知れないです。
10時過ぎても上がってないときはお察しください。


あんな可愛いヤツが女な訳ないッ!

 シャワーから出てきたお湯を浴びていればようやく頭が冷えてきた。冷静になれば後悔と罪悪感が心から湧き出してきた。

 瞼を閉じて溜め息を吐き出し、セシリア・オルコットはシャワーのバルブを捻って水を頭から被る。

 

 助けられた、という自覚はあるし感謝もしている。穂次が自分を押し出さなければ今頃ベッドの上で寝ていたのは自分だった筈だ。

 自分が素直に感謝の言葉を出せなかった、という事もある。けれど、言うタイミングを逃してしまったのだ。あれよあれよ、と彼の言葉に流されて、気がつけばいつもの様に彼に対して酷い物言いをしていた様な気がする。というか、していた。

 そもそも彼がソレを咎めずに、言葉を受け入れ、更には冗談の様に振舞っているのだから、という言い訳を心で唱えながらふと疑問が沸く。

 もしかしたら実は嫌がっていて、けれどソレを言い出せないでいるかも……。

 そう考えて、そんな彼を想像して、いや、無いだろう。と自分を否定した。アレがそんな人な訳が無い。むしろ自分からヘラヘラ笑ってセクハラ発言をするような男だ。セクハラ発言が無ければそれなりに見てくれもいいのに。

 

 そんな男に助けられた。助けてくれた。あの時点で一番素早く動く事が出来たのは機体スペックを考えると一夏だったであろうけれど、自分を助けたのは穂次だった。

 その理由を聞いてみれば、男だから、という随分と抽象的な言葉が返され、理解も出来なかった。いっその事いつもの様に「セシリアさんのおっぱいを触りたくて移動したらあのISに邪魔されたでござる」なんて言ってくれた方がまだ理解できる。

 そこまで考えてから、自分の中での彼が随分と酷い扱いである事に気付いた。そもそも彼が変な発言をするのだから、悪い。そうに決まっている。

 彼が真面目な顔で、それこそ自分を助けたぐらいに真面目な顔で、真面目な事を言っていたならば。

 

「――っ!」

 

 セシリアは無言でシャワーのバルブを回して水の勢いを強くした。激しく白い肌を叩く水のお陰か、幾分か顔の熱は引いた。

 彼はいつもの様にヘラヘラ笑っているのがお似合いだ。そうに決まっている。

 でも、それでも……。

 

「…………ないですわ。そんな訳がある筈ありません!」

 

 否定をする。無いったら無いのだ。

 セシリアの脳内には金色にも似た黄色の騎士が自慢の盾を構えていた。その顔は真剣そのもので、「俺がセシリアさんを護ってやるよ」なんてありえない事を言っているのだ。頬が熱くなってきた。

 そもそもあんなセクハラ男のドコがいいと言うのだろうか。口を開けば自分の胸を触りたいなどと言うし、挙句には自分以外の人にも可愛いなんて言うし!

 いや、これ以上は止めよう。あんなヤツのことを考えても生産性などないのだ。

 バルブを捻って水をお湯へと変えて冷えていた体を温める。

 今一度溜め息を吐き出して、セシリアは自身の胸に手を伸ばす。

 水の流れる隆起を少し撫でて、眉間に皺を寄せてからお湯と一緒に色々な妄想を排水溝へと流す。

 

「……ま、まあちょっとぐらいはカッコよかったですわよね?」

 

 誰に聞かれる事もない確認の様な言葉を呟いて、セシリアは顔を少し赤くする。どうせ本人には言われないだろう言葉はお湯と一緒にどこかへと流れていった。

 

 

 

「ぶえっくし!」

「なんだ、風邪か?」

「いや、違うと思うけど……あれか。何処かの美少女が俺のことをカッコいい! とか噂してるんだろ。イヤー! 俺って罪な男だぜ!」

「お前、本心で言ってる?」

「そうだよな、悪口だよなぁ……目の前で言われたら反応出来るのに、悔しい!」

「言われる事自体はいいのね。馬鹿」

「もっと言ってもいいんですよ! 鈴音さん!」

「さっさと帰ってもらえる?」

「ヒッ……俺の部屋なんですがソレハ」

「土に」

「あ……(察し」

 

 そんな美少女とは関係ない所で変態は説教中に更に罵倒されるのである。

 

 

◆◆

 

「うーん……どうしたもんかなぁ」

 

 日曜日という事もあり、IS学園はそれほど賑わいも無く、(セカンド)である俺を眺める人もソレほど多くない。というよりも、俺よりも一夏の方が人気だから仕方ないね。

 一夏とセットじゃない俺はカレーの福神漬け、トンカツ定食の冷奴、酢豚のパイナップルみたいな存在らしい。まあ、居なくても問題ないけれど居れば居るならそれでよし、みたいな。

 ともあれ、男性的にモテている一夏に比べれば相変わらず珍獣感の止まない俺は言動もあって親しみやすいお調子者、という立ち位置なのだ。話掛けてくれる美少女が増えるのだから俺として大満足である。

 

 さて、俺の前には券売機がある。寮生活に置いて、食堂を利用することになるのだけれどここ数ヶ月で大体のメニューをコンプリートした俺は二週目に入ろうとしている。

 その二週目の第一食。ここは慎重に決めなくてはいけない。それこそ今後の学園生活が掛かる。

 

「あら? 穂次さん。おはようございます」

「おはよう、セシリアさん。今日もお綺麗です!」

「…………」

「ん、どうしたの? 何かあった?」

「……いえ、なんでもありませんわ」

「なるほど、低血圧って訳ですね!」

「…………はぁ」

「いや、反応が溜め息だと流石に傷つくんですが」

 

 本当に低血圧なのだろうか。いや、普段の朝は普通にしているし……実は休日は昼まで寝てる派とか? それなら朝の食堂には来ないだろう。

 悩んでいながら食券のボタンを押す。押してしまった。クセみたいなモノなのか、一夏との飯が増えていたからだろうか、日替り定食の食券が券売機から吐き出された。俺の二週目は日替りかよ……ま、いっか。

 

「セシリアさん何食べるの? いつもと一緒でいい?」

「え、あ、はい」

「はいはーい」

 

 軽めのサンドイッチセットの食券を券売機から吐き出させて食堂のおば様へと渡し、料理が出来るまでゆっくり待つ。

 

「……どうしてナチュラルにわたくしの食券まで買ってますの?」

「え? サンドイッチな気分じゃなかったとか?」

「そうではなくて……もういいですわ」

「何を諦められたんだ……」

 

 何か調子が狂ってしまう。いや、というよりもセシリアさんの調子がおかしいのだろうか。

 ふむ、ココは俺が頑張ってセシリアさんの調子を戻さなくてはいけないな!

 

「本当にどうしたんだ? セシリアさん。おっぱいでも萎んだの?」

「…………ハァ」

「これはマジな溜め息だな! 俺でもわかるゾ☆」

 

 ジト目で睨まれながら溜め息を吐かれた。流石の俺も傷つくんですよ! 朝からいいものを見れた、と言いたいけれど、それはソレ。

 サンドイッチセットと日替り定食のお盆を持って空いている席に移動して座る。

 

「…………ありがとうございました」

「セシリアさんが俺に感謝してる……だと!?」

「茶化さないでいただけます?」

「ヒッ……スグにキツく睨まれるのはどうかと思うんですが……」

「……ハァ」

「ホントにどうしたんだよー。俺にでも吐き出しちゃいなヨ! 俺なんて壁みたいなモノだから吐き出しても問題ないんだゼ!」

「……前に助けていただいたのに、すっかり感謝をするのを忘れていましたので……」

「あー、っても、アレはアレで。俺としては当然の事をしただけだからなぁ」

「それでも感謝されるべき行為である事は変わりませんわ。その……ありがとうございました」

「うむ。報酬としておっぱいを揉めるとか」

「は?」

「あ、なんでもないッス」

「……そうやってスグに誤魔化しますのね」

「へらへら笑ってるのが俺だからネ! まあおっぱい触りたいのは本心だけど」

「救いようがありませんわね」

「へっへっ、だからこれからも適度に罵ってくれればいいんだと思うよ!」

「……ハァ」

「いやだから溜め息は止めてぇ!」

 

 何かに失望するように溜め息を吐かれるのは流石に傷つくんだからな!

 それにしても不機嫌顔でもサンドイッチを小さく食べてるセシリアさんは可愛いなぁ。ずっと眺めていた。 ハッ! 今こそISの記録機能を用いる時じゃないか!

 

「穂次さん?」

「ん?」

「許可無くISを使用すると織斑先生が飛んできますわよ?」

「ヒエッ……まだ何も行動してないのに気付かれたでゴザル」

「考えが顔に出てるからですわ」

「なるほど! 真面目な顔をしてればバレないんだな! おっぱいを触りたい」

「声に出していますわよ、変態」

「ありがとうございます!」

「…………はぁ、もういいですわ」

「急に諦められるとどうしていいかわかんねーんですが」

「穂次さん。今日のご予定は?」

「へ? まさかデートのお誘い!?」

「アリーナでガッツリ絞ってあげますわ」

「ドキドキしてきた……」

「?」

「ツッコミも居ないからどうしようもないッスなぁ……。ああ、それで。今日は予定があるから無理ですゴメンナサイ」

「ご自宅にでも帰りますの?」

「――、あー、いや、ちょっと日用品を買いにね」

「そうでしたの」

 

 出てきそうになった言葉を飲み込む。別に言ってもいいのだけれど、変に気を使われるのも困る。

 へらへら笑いながら「ふーん」と言葉を漏らしているセシリアさんを眺める。日常的に絵画を見つめる生活ってこんな感じなのかね? 美人が三日で飽きるとかないわ。絶対ない。一生見れるよ!

 

「なら、わたくしも着いていってあげますわ」

「え? いや、いいです」

「…………」

「そんな怒ったような顔をしないでもらえますかね? 可愛いなぁ」

「一応、理由を聞かせてもらいましょうか」

「禁則事こ、スイマセンスイマセン睨まないで下さい」

「理由はありませんのね」

「いやー、セシリアさんじゃなくても断ってるぞ? むしろ、俺だってセシリアさんを隣に連れて歩きたい。小物屋とかに行って「キャーアレ可愛いー」なんて言いたい」

「アナタが言うんですのね……、気持ち悪い」

「冗談ですよ。アッハッハッハッ! ヤダナー!」

「それで、そこまでわたくしを連れて歩きたい夏野穂次さんはどうしてわたくしの申し出を断りましたの?」

「あー……凄い言い難いんですけど」

「?」

「俗に言う、女の子の日。みたいな感じで男にも特有の男の子の日というモノがあるんですよ」

「……な、なんですって」

「だから、まあ、その消耗品を買いに行くんで、ね?」

「わ、わかりましたわ……申し訳ありません」

「ちょれー」

「何か言いました?」

「いえいえ」

 

 そんなのある訳ねぇだろwwwwどうして信じるんだよwwww俺って俳優にでもなれるんじゃね?wwwうっはっwwwIS学園辞めても先は明るいな!

 明るけりゃァいいなぁ……。

 

 ともあれ、朝食も終わり俺は街に買い物に、そして夕方に戻った俺は騙されたことを教えてもらったセシリアさんの待つ寮にシバかれに行くのでした……メデタイ!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 六月上旬。俺の耳に途轍もない情報が入ってきた。

 どうやら今月の学年別トーナメントで優勝すると一夏とデート出来るらしい。いや、うん、コレはどうでもいい。どうせ一夏だからそんな事ありえない。

 問題は、よく情報をくれる女の子が「女の子だけの内緒話だよ!」と言ってその情報を俺にくれた事だ。

 ……俺は女の子だったのか! やっべぇ、鈴音さんの事を馬鹿に出来ない絶壁っぷりなんだけど。

 

 ともあれ、女としてはともかくとして、男としての自信を大きく無くした俺は日々をヘラヘラ笑いながら過ごしている。何も知らない一夏から「目が死んでる」と評価を得たが大体コイツの所為と考えるとイライラしてきたからコイツの手助けはしない事を心に誓ったのである。

 お前は勝手に困っていろ、一夏。アーッハッハッハッハッ!

 

 そんな噂の飛び交う月曜日。唯一その噂を一夏に伝える事が出来そうな俺が黙っている事で一夏を取り巻く環境が凄い面白い事になっている月曜日。当然、その事を一夏は知らない。一夏の見ていない所で火花を散らしあう女生徒達を見ていると俺の胃に穴が開きそうな気がしてならない。俺はまったく関係ないのに。つーか、俺とのデートとか、そういう噂はまったくでないんだけど、それはどういう事だよ。

 

「やっぱり一夏が悪なんだなって」

「なんでだよ」

「うるせぇ、この野郎。女の子扱いされた俺の気持ちがお前にわかるか!?」

「いや、むしろお前のドコが女の子なのかすら分からん」

「そうだな。俺にもさっぱりわかんねーよ……わかんねーよ……」

「お、おぅ……お前も苦労してるんだな」

「お前の苦労は幸せそうだな! 呪うぞ!」

「なんで呪われなきゃならないんだよ!」

「――黙れ、阿呆共」

 

 しっかり二撃で俺と一夏の頭を捉えた織斑先生が淡々と言葉を繋げる。俺と一夏は黒い閃光が走ったことにより頭から湯気が出ている気がするけど、きっとそれは気のせいだろう。つーか、叩かれて湯気が出るなんてギャグ漫画じゃあるまいし……どういう速度で殴られたんだ、マジで。

 

「では、山田先生。ホームルームを」

「は、はい! ええっと、今日はなんと転入生を紹介します! それも二人ですよ!」

「ハイ! おっぱ、山田先生!」

「…………はい、夏野君」

「すっげぇ顔を顰められたけど、関係ねぇ! 可愛いですか!?」

「……さ、それでは入ってきてくださーい」

 

 凄い無視のされ方をされた気がする。

 入ってきたのは両方ともズボンを穿いた存在だった。

 片方はわかる。女の子だ。白銀の長い髪と眼帯の美少女。緊張とは無縁なのか厳しい顔をして視線で一度グルリと見渡して一夏の所で停止し、そして静かに瞳が閉じられた。あ……またッスか。そうッスか。

 もう片方。セシリアさんと違って黄色の強い金色の髪。爽やかそうな笑みを浮かべている。コチラも美少女だ。ああ、美少女だ。

 両者とも胸がとても残念だが、美少女を見るには関係ない。全てのおっぱいには各々に良さがあるのだ……。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことが多いかと思いますが、よろしくお願いします」

「お、男……?」

「ハッハッ、一夏、何言ってんだよ。あんな可愛い男が居るわけないだろーヤダナー」

「あ、はい。僕と同じ境遇の方がいるという事で本国から転入――」

 

 俺の視界は真っ白になった。

 男……? 男だと……? いやいや、何を言ってるんだ。お前の様な可愛い男が居る訳ないだろう。俺を騙そうなんて百年早いぞ!

 

 

 

 マジかよ……。

 パチクリしている俺に苦笑して、まったく嫌味のない爽やかな笑顔を浮かべているデュノア。

 途端に黄色い声が響く。

 

「きゃああああああ!」

「男子! 三人目の男子!」

「美形! しかも守ってあげたくなる形の!」

「きゃあああ、デュノアクーン! コッチ向いてぇ!」

「なんで穂次まで参加してるんだよ……。一応、確認しとくけど男なんだぞ?」

「バッカッ! あんな可愛いヤツが女な訳ないだろ!?」

「穂次が壊れた……」

「デュノアくーん! ほらもう一回笑顔をコッヂッ!!」

「黙れ、騒ぐな、静かにしろ。あの阿呆の様になりたいなら騒げ」

 

 額に何かが高速でぶつかった。大丈夫? 俺の頭を貫通してないよな?

 当たったソコを手で触れて確認すれば何か白い粉が付着していた。チョークだろうか……いや、チョークが粉々になる速度ってなんだよ……怖すぎ。

 俺の犠牲もあって静かになったクラスに一息吐き出した織斑先生。

 

 さて静かにもなった事でタイミングは十二分にあったのだけれど、銀髪美少女は口を開かない。実は極度の上がり性なのだろうか。フフフッ、なるほど、それならば俺がその緊張を解さねばならないな!

 立ち上がろうとした俺の机に何かが飛来して、粉々に散った。織斑先生を見ればこちらに鋭い瞳を向けている。コワイ!

 もう一度溜め息を吐き出した織斑先生が腕を組み、黙っている銀髪美少女に、若干面倒そうに声を掛ける。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

 

 アカン。これはマジな受け答えだ。たぶん俺がふざけた事、それも織斑先生に対して言えば殺されても文句を言えないレベルのソレだ。次から織斑先生に何かをいう時は場所を確認していう事にしよう。

 ん? そもそも織斑先生に何かを言う時は命を掛けて言ってるからそれほど変わってないな! 問題なんてなかった!

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 自分の名前を言って、それきり黙っているボーデヴィッヒさん。俺はこの自己紹介を知っているぞ。二ヶ月ぐらい前に聞いた自己紹介だ。

 俺は視線を一夏に向ければ、一夏は乾いた笑いを浮かべている。お前が自己紹介した時もこんな空気だったんだぞ!

 そんな一夏を再度視界へと入れたボーデヴィッヒさんはコツコツと靴を鳴らしながら一夏へと近付く。あー、あれですか。ツンデレ、ツンデレ、と続いて次はド直球系のソレですか。くっそ羨ましい! 死んでしまえばいいのに!

 

 俺が一夏へと怨念を送っていると、ボーデヴィッヒさんの右腕が振られた。乾いた音が響き、一夏が頬を押さえている。

 

「お前が、お前があの人の弟などと私は認めない!」

 

 俺が一夏にちょっと優しくしようと心に誓った瞬間であった。

 ともあれ、叩かれた一夏は少しだけキョトンとしてその表情を怒りへと染める。

 

「なにしやがる!」

「ふん……」

「こういう役目はソコにいる穂次の役目だろうが!」

「おう、ちょっと待て一夏」

「あー、ゴホンゴホン。それではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二アリーナに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行なう。では、解散」

 

 一夏がこれ以上何かを言わない為か、それともボーデヴィッヒさんにこれ以上一夏に何かをさせない為か。少なからず俺がこれ以上何かを言われない為でないだろう。泣けるゼ!

 

「あー、夏野。デュノアの面倒を頼む」

「そういうのってクラス代表の仕事じゃないんスかね?」

「アレだけはしゃいだのだ。嬉しかろう」

「あ、ハイ……つーか、コレ断ったら折檻コースのヤツだ」

「なんだ学習しているじゃないか。ツマランな」

「ヒエッ……俺はいつ殺されるんですかね?」

「さてな。では頼んだぞ」

「へいへい」

 

 ともあれ、いくらか納まったとはいえ、まだ心に怒りが残っている一夏の腕を掴んで、コチラに寄ってきた爽やか美少年のデュノアに向く。

 

「君が夏野君? はじめまして、僕は――」

「あー、自己紹介はまた後で。非常に惜しいけど今はココからスグ離れなきゃいけないんだ」

「へ?」

「ハッハッ、キョトンとした顔もイケてるとか最強かよ。ともあれ、変態扱いは俺だけで十分だろ、ほら行くぞー」

「え、わ、」

「ほら、一夏。いつまでも俺に腕を引っ張られてるな! 俺の許容量は男一人で限界なんだ!」

「筋力がないのか?」

「精神的なソレだ! つーか、なんなの!? 俺の役目って! この野郎!」

「お前の日頃の行動思い出してみろ! 叩かれたのがお前ならシックリ来るだろ!」

「……おお、すごい普通だったわ」

「だろ?」

「いや、夏野君は普段どういう性格なのさ」

「フッ、俺ほど素晴らしいイケメンな性格なヤツも早々おらんだろう! 敬え! そして俺を崇めるのだ!」

「あー、まあノリが良くて、いいヤツって事は確かだから」

「一夏からの評価が微妙に高くてムズ痒いんですが……」

 

 へらへらと笑いながら急ぎ足は止めない。本当に変に評価が高くてビックリである。

 

「あ! 転校生発見!」

「しかも織斑君と一緒!?」

「夏野くんも居るわ!」

「夏野くーん! 新しい情報ちょーだい!」

「一夏が俺のこと好きだってよ!」

「きゃあああああ! また薄い本が厚くなるわね!」

「その原因が本人っていうのも凄いわね!」

「おい穂次」

「安心しろ一夏! 俺は被害の及ばない所でへらへら笑ってっから」

「死ね」

「ひぇぇ……」

 

 ともあれ、軽口を叩きながら急ぎ足は決して止めない。走りもしない。きっと走れば後ろから『シュッセキボ』が飛んでくるのだから。

 

「な、何? どうしてみんな騒いでるの?」

「だいたい穂次が悪い」

「つーか、男が俺ら三人だけだからなぁ。しかも一夏もデュノアもイケメンだろ? 俺は珍獣枠だから(震え声」

「……?」

「ま、そこらも後で話そうぜ。ともかく今は遅れない様に急ごうゼ☆」

 

 ホント、せめて更衣室が近くにあればいいんだけどなぁ。いや平均レベルの高い女生徒達の触れあいは非常に嬉しいけどサ!

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