結構重大な事を書いたような気もしないでもないけど、おっぱい成分はそんなにないから重要じゃない。
我ながら卑屈だと、そう思う。
食堂の一席で既に冷めているだろう紅茶をぼんやりと眺めながらセシリアは頬杖とつきながら溜め息を吐き出した。
彼を考えれば、それこそ恋する乙女の様に色々と出来るだろう。大胆な事も、多少の恥ずかしさを持ちながら出来る。
けれどソレは彼に関わった事だけであって、自身の事になるとなんとも残念な状態なのだ。尤も、彼に関わっている事は恋愛であり、自分が許せない部分は戦闘部分だったりするので、また別なのだけれど。
織斑一夏に勝つことが出来ない。
許せない事の一つだったりする。機体の特性を考えれば当然の帰結であるけれど、それでも許せない。
エネルギー武装、BIT武装の試作機であるブルー・ティアーズだからこそ、一夏の白式――雪羅を抜く事が出来ない。零落白夜の特性をそのまま盾に転用したソレはエネルギー武装を通すことはない。お陰でセシリアの黒星は増える一方だ。
努力をしていない訳ではない。武装で勝てないのなら戦術を練ればいい。物理武装であるナイフと弾道型もある。ラウラに頼んでナイフでの戦闘を教えてもらったりもした。尤も、白式に近接戦闘を仕掛けるつもりにはなれなかったが……。
その努力を覆すのが一夏だった。呆れる程の成長速度だと思う。コッチが必死で考えた戦術をその場で対応し、辛うじてと頭には付くが白星を勝ち取っていく。いいや、そこには一夏の努力もあるのだろう。
だからこそ、セシリアは自身が許せない。
偏向射撃が出来ない。
これこそ許せない。姉妹機を操っていたあの少女は確かに出来ていた。机上理論を、あの少女は出来ていたのだ。
ああ、許せない。諦めていた自身を許せない。努力を怠ったであろう自身が許せない。努力の足りない自身が許せない。
「ごきげんよー、セシリアさん」
「…………」
「えぇ……挨拶したのに睨まれるってどういう事なんですかね」
へらりと情けない笑いを浮かべながら対面の席に座った夏野穂次を見て、セシリアは挨拶ではなく溜め息が溢れた。
この男に告白したことを後悔したことは無い。きっと未来でも後悔することはないと思う。
ちょっと残念に思うのは彼からの接触が減ったことだろうか。接触、と言っても彼は告白以前も肉体的な接触をあまりしてこなかったけれど。
「ごきげんよう、ヘタレさん」
「ほ、つ、ぎ。母音も被ってないんですがソレは」
「ニックネームですわ」
「スゲー不本意な愛称ダー」
正直な事を言うのなら、苛々している事を自覚しているからあまり彼を近付けたくはない。好きな相手に自分の汚い所を晒す趣味は無い。
へらへらと笑いながら持ってきたトレイに乗せた紅茶をセシリアの前に置いた穂次はセシリアの紅茶を自分の前に持ってくる。
「それで、悩み事は?」
「……別に悩んでなんかいませんわ」
「ふーん」
少しだけ図星をつかれて、ちょっとだけ意地になって口を尖らせて外方を向く。対して興味無さそうに声を漏らした彼は紅茶を一口飲んで、冷めた紅茶の苦味に眉を顰めた。
こうして
相変わらず告白の答えはさっぱり言わない癖に、わたくしの事を気にかけてくる。卑怯者。
「いつから気付いてましたの?」
「へ? 悩んでないんじゃなかったの?」
「…………」
「嘘だって」
冗談の様にへらへらと笑う彼を睨んでいるのは別に拗ねているからじゃない。彼がわたくしを見てくれていた事を軽く否定されたから、拗ねてる訳じゃない。拗ねてない。
へらりとした情けない笑顔を浮かべた穂次が悩む様に頬を指で掻いてから視線で宙をなぞる。因みに言えばわたくしの頭上には吹き出しはない。
「そうだなー……セシリアさんの感じが変わったのは夏休みが終わって、ちょっとしてからかな」
「……それは、告白した時からじゃありませんの?」
「ソレは別だから」
震えた声で否定した彼はやっぱり答えを出すつもりはないらしい。それよりも本当に告白した時ではないのなら、それこそ態度に出していたつもりは無いのだけれど。
そんなわたくしを見ながら彼は優しそうに微笑んでから、いつもの様にへらりと笑った。
「その頃に、鈴音さんとかにも確認したけど普通って言われたし。ただ俺が変だなーって思っただけ」
「穂次さんに変と思われるなんて……」
「ソコだけ言われると俺もどう反応していいか困るんですけど……」
眉を下げて情けない顔が余計に情けなくなった彼は分かるように肩を落として、冷めた紅茶を飲み込んだ。
「その時は別に大丈夫だと思ってたけど……ココ最近は変に無理してるし」
「……わたくしの何を知ってますの?」
少しだけ怒りの含んだ言葉だった。イライラしていた、という事もあったけれど我ながら自分の言葉に溜め息を吐きたい気持ちだった。
対して彼はそんな言葉にもケロリと――いいや、ヘラリと笑いを浮かべながら当然の様に言ってのける。
「そりゃぁ、セシリアさんの事ならある程度わかるよ」
イライラや、自分に対しての呆れが吹き飛んだ。瞼をパチクリと開閉して、今の言葉を頭の中で反復させる。
ヘラリと笑っている彼は自分が何を言ったかわかっているのだろうか? いいや、きっとわかっていない。なんせ、きっと彼は当然の事を言っただけなんだから。
ヤバイ。顔が熱い。待て、待つのよ、セシリア。そう考えるとオカシクなる。ああ、待って。えぇっと、つまり、あら?
確かに、夏休みが終わってから一夏さんに負け始めた。だから、彼の言っているわたくしが"変"になったのは間違いではない。ちょっと悩んだのも事実だ。
だから、その、つまり、え? 待って、待ってくださいまし。
少しだけ冷めた、ヌルい紅茶を一気に飲み干す。対面に座っている穂次さんはそんなわたくしにパチクリと瞼を動かして、はて? と言う顔をしている。
「どうしたの?」
「いえ、その、えー……」
顔が熱いのが分かる。言葉が上手く出ない。頭がちゃんと動いてない。この事実が真実だったならば、わたくしとシャルロットさんは大きな勘違いをしている。そして、その事実を彼は知らない。知っていたならば、きっと彼は先程の言葉を言わなかっただろう。
大きく深呼吸をして、頭の沸騰をどうにか抑える。まだ顔は少し熱い。
「ん……俺って変な発言し――」
「してませんわ! 何も問題なかったですわ!」
「お、おう……」
とにかく、彼がその事を自覚していないのなら、そのままである方が良いだろう。まだドキドキしてる。
口をへの字に曲げて、首を傾げている彼を少しだけ放置して、自分を落ち着ける事に専念する。
「えー、そう、そうですわ。今晩、部屋に伺ってもよろしくて?」
「よろしくても何も、何も言わずに来る時あるじゃないッスか」
「よろしくて!?」
「よ、よくってよ……」
セシリアの言葉に穂次は少しだけ身を引きながら応えた。何か怒らせる様な事をしただろうかと、考えた。尤も、真実はその真逆にあたるのだが。
セシリアは席を立ち、急ぎ足に、けれど走らずに食堂から立ち去る。そして食堂の次ぐ近くの角を曲がり、そこに背を預けて両頬に手を当てて「うぅー」と小さく唸った。
「やっぱり、穂次さんは卑怯者ですわ」
不意打ちだ、と更に呟いてから顔の熱を感じながら夜に向けての心の準備をしに部屋へと向かう。
今のままでは、絶対に彼の話をマトモに聞けない。そもそも彼がマトモな話をするかは分からないけれど。
◆◆
「――」
「な、何か?」
「なんか、気合入ってないッスか?」
「べ、別に、そんな事ありませんわ」
「まあ綺麗なセシリアさんを見るのは嫌な事じゃネーですけど、仮にも男の部屋なんですが……」
「…………男?」
「アッハイ、スイマセンデス」
こうして寝間着で彼の部屋に来るのは二度目になる。尤も、私服か制服なら何度かあるけれど。
磨ける所は全部磨いてきたし、僅かに香水も着けてきた。我ながら完璧だと思う。彼が襲ってくれれば言うことはないが、襲うとなると言うことも出てくるだろう。
果たして今の季節は春だったか。ともあれ頭の中に花畑があるのか。それとも常夏で開放的になっているのか。
どちらにせよ、今のセシリア・オルコットは頭のネジが幾分も緩んでいる事は確かだろう。
対して、夏野穂次の心境は穏やかではない。穏やかである訳がない。彼は
頭がトロピカルなセシリアは間違い無く美少女である。問題を上げるとすれば料理が下手すぎるぐらいだが、ソレは美少女と関係はないだろう。
ともあれ、美少女が――自分に告白までした美少女がしっかりと
自身の欲望を感じ、ソレを溜め息で流す。頭の中では近接武装対遠距離武装の戦術理論が並べ立てられている。
シャルロットがやってきた時も欲望を感じるけれど、ソレも似たように穂次は流している。決して彼が聖人君子だから彼女達を襲わない訳ではない。
ともあれ、そこに何か、男女の間に生じる
いつもの様に椅子に座り、やはり対面に座った彼を見つめる。セシリアは問題なく彼を見れる事に少しだけ安心した。
穂次に至っては慣れたモノで頭の中で理論武装を沢山装備しながらポットから紅茶を注ぎ入れている。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
実はコレもいつもの会話だったりする。
セシリアはこの紅茶が自身が実家でよく飲むモノである事を舌で判った。判った所で何を言うでもないけれど、ちょっとだけ嬉しいだけだ。
「それで?」
「? 何がですの?」
「いや、悩みを聞くって事で来たんだと思ったんですが……」
「――……そうでしたわね」
「えぇ」
すっかり忘れていた。という訳でもないけれど、そんな事よりも重大なことがあったからすっかり頭から抜け落ちていた。決して忘れていたわけじゃない。
カップを置いて、一つだけ息を吐き出す。
「どうすれば一夏さんに勝てるんですの?」
「……あー。そっかセシリアさんの武装もエネルギー武装ばっかりだったもんな」
「ええ。本国も物理武装を送ってくれそうにもありませんし……」
「弾道型でどうにか――」
「わたくしがしてないと思っているのかしら?」
「いんや。むしろ、俺が考えた以上の方法は試してそう」
へらりと笑って紅茶を飲み込んだ穂次はうーん、と唸ってみせる。
そんな穂次を見ながらセシリアは少しだけ引っ掛かりを覚えた。
「先ほど、わたくしの武装も、と言いましたわね」
「え? まあうん。俺の武装も大概だし」
「……そういえばそうですわね」
「因みに隠されたギミック盾の変形はあと四つぐらい残ってそう」
「スゴく曖昧ですわね……」
「出来るとは言ってない。けど、その四つもエネルギー武装だからなー」
「ん、俺も一夏に勝てねーじゃん」とへらへらと笑った穂次をセシリアは鋭く睨む。
「穂次さんは悔しくありませんの?」
「別に? 戦えば勝てないけど負けるつもりは無いし」
「勝ちたくはありませんの?」
「……うーん、そこらを言うと……勝ちたいよ。うん。俺って一夏に勝ちたいんだなぁ」
まるで無理やり吐き出す様に、確かめる様に、言葉は穂次の口から出てきた。
勝ちたい。その気持ちは確かにセシリアと同じである。けれど、セシリアはソレが同じでは無いことをなんとなく察した。
そんなセシリアを見て、ヘラリと笑った後に、椅子の背凭れに体重を預けて穂次は天井を見つめる。
「……俺は一夏をライバルみたいに見てるんだと思う」
「それは――一夏さんも同じだと思いますわ」
「どうだか。
少なくとも、ライバルとは思ってないんじゃないかなー。アイツの前で努力してねーし、何より負け続きだし」
と言った所で穂次は「負けるつもりないって、負けてんじゃーん」と戯けて言ってみせた。ついでにへらへらと笑みを浮かべて。
セシリアは言葉に詰まる。シャルロットの話の通りならば、穂次はちゃんと努力をしている。ソレを必死で隠しているのは意味が分からないけれど、隠している事は確かだ。
「そもそも一夏と俺は、たぶん本気で戦えないし」
「どういう事ですの?」
「一夏の性格上、俺を攻撃出来ないんだよ。バリアエネルギーを削るって事は俺の精神にダイレクトアタックする訳だし」
「ソレが雪片なら――」
「死ぬんじゃね?」
けろりと自分の死を言ってのけた穂次の言葉に感情は入っていない。「ISだから死なないけど」と付け加えはしたけれど、やはりソコには何の感情も無い。
少しの間をあけて、穂次が息を吐き出した。
「ま、俺の事はどうでもいいとして。セシリアさんの悩みを解決しようぜ!」
「……はぁ」
「溜め息吐かれるのはよくわかんないんですけど……」
「相変わらずだと思っただけですわ」
「えぇ……。んじゃ、他の悩みの解決を目指します?」
「他のって……」
「偏向射撃の撃ち方」
「知ってますの!?」
「のわっ!?」
机に手を付いて身を乗り出したセシリアに驚きを見せる穂次。その視線はしっかりと胸にいっている辺り結構冷静なのかもしれない。寝間着だから胸を支える下着をしていないのか、非常に柔らかそうな果実がソコには在った。
ゴクリと分からない様に生唾を飲み込んだ穂次は言葉を必死で選びながら口を開く。
「あー……知ってる、つーか、教えてもらう」
「どういう事ですの?」
「ん? まあ、ちょいと失礼」
穂次は手を伸ばし、セシリアの髪を少し上げて耳にあるイヤーカフスに触れる。
セシリアの顔が熱くなり、
「――へ?」
と穂次が情けない声を出すのに時間は掛からなかった。先に言う様だが、決してセシリアが我慢ならず彼の唇を奪ったわけではない。これだけ準備万端であるが、彼女は
情けない声を出した穂次はブルー・ティアーズから手を離し、その手を机の上に置いた。
自身の肌から手が離れた事を感じたセシリアはどういう訳か潤んだ瞳を穂次へと向けた。もう一度言うようだが彼女は淑女なのだ。いいね?
「ど、どうしましたの?」
「偏向射撃なんで出来ないの?」
「はぁ!?」
「いや、ゴメンナサイ。今のは失言。悪気の欠片もないから」
潤んだ瞳など無かったかのように、怒りをしっかりと露わにしたセシリアに穂次は腰を僅かに浮かし逃げる準備をして、言葉の謝罪をする。
「出来れば悩みもしませんわ……」
「デッスヨネー。まあセシリアさんなら出来るよ」
「そんな何の理論もなく――」
「理論とか、常識とか、俺を前にして通用する訳などしない」
「……そうでしたわね」
なんせ目の前にいる男は世界で二人しか居ないIS操縦者の一人であるし、更に言えばISにパーツとして認識されている人間でもあるのだ。確かに理論も常識も通用しない。ドヤ顔で言ってるのがかなり苛立たしいが。
そんなドヤ顔にしっかりと溜め息で応えたセシリアはまた情けなく「溜め息での反応はいけませんよ! セシリアさん!」と笑う穂次に今一度溜め息を吐き出した。
「それで、どうしてわたくしなら出来ると?」
「セシリアさんだから?」
「疑問形で言われましても困りますわ」
「力もブルー・ティアーズが知ってる。心はブルー・ティアーズも知ってる。努力はブルー・ティアーズが二番目に知ってる。じゃあ出来ない訳が無い」
ヘラリと笑う事もなく、それだけは確信があるように語った穂次の言葉。非科学的、非理論的、それなのに、どうしてかストンとセシリアは納得した。
納得したからこそ、一つ疑問が生じた。
「ブルー・ティアーズは二番目ですのね」
「一番目はセシリアさん本人らしいッスよ」
「ソコはあやふやですのね」
「俺も同じ事言われたからね」
やっぱり穂次は少しだけ情けなく笑った。
>>セシリーとシャルの大きな勘違い
穂次は女の子だったのだ!(偽情報
結構わかりにくい書き方をしてますが、なんとなーく、で書いてます。矛盾とか、描写の甘い所はあるけど許して、許して
>>卑怯者・夏野穂次
ちゃっかりセシリーの飲んでたであろう紅茶を奪って間接キスしてる所とか。
>>ギミック盾の武装数
弓を含めて残り四つ(エネルギー武装
流石SFダナ(白目
>>寝間着おっぱい
寝間着の時にブラジャーをする派としない派があるらしい。因みにする派でもブラワイヤーの入ってないキツく無いものらしいッスよ!