簪side
私は、お姉ちゃんが羨ましかった。なんでも出来て、みんなから認めて貰えてることが。でも、それを考える度に自分が惨めに思えてくる。今私は、どこかの組織に誘拐されて、どこかに監禁されている。いつも足手まといになっている私は、いなくなった方がいいのではないだろうか、と思いながら泣きたいのを我慢していた。
アリアside
私は、ここ数日間ずっと、新たに完成したIS版ガンダムの2号機である《ガンダムアメイジングデュナメス》を使った訓練をしていた。今は、シュンを相手に模擬戦を始めるところだ。もちろん機体の出せる出力を競技用に変えてやっている。
「それじゃあ、シュン。始めるわよ」
「おう。アリアがいいなら何時でもいいよ」
その会話を最後に私は、アメイジングGNスナイパーライフルでシュンを狙った。しかし、操縦技術は当然向こうの方が上なので簡単に躱される。更に数発撃ったがやっぱり躱される。
「なかなかいい腕じゃないか。前よりも上がっている。並のパイロットなら簡単に当たるよ」
「そう?なら素直にその賞賛は受け取っておくわ。シュンに簡単に躱されちゃうと自信なくしそうだけど」
「そりゃしょうがないだろ。俺の方が戦闘経験が多いし、ISでの稼働も俺の方が早く動かしてるから慣れているし」
そんな事を言いながら訓練を続けていると、仲間の一人が私達にミッションを伝えに来た。
「訓練中にすまないな。しかし、これは防がないとまずい問題なのでな」
「かなり慌ててきていましたけど、何がですか?」
シュンがISを解除して話しかける。
「日本の暗部である更識家は知っているな」
「そりゃあ知っていますよ」
シュンの返答に私は首を縦に振って肯定する。
日本の暗部、更識家。私達が今いる日本を裏から支え続けた裏の家。その影響力は、日本を影から操れる、と裏社会では言われる程の名家の事だ。
「その家が何かしたんですか?」
「したんじゃなく、されたんだ。更識家17代目当主の妹が攫われた。しかもその組織は、亡国企業(ファントムタスク)だ。あそこの姉妹関係はあまり上手くいってはいないが、当主は、妹の事をかなり大事にしているらしい。おそらくそこを突くつもりなんだろう。妹と引き換えに彼女が乗っているIS《霧纏いの淑女(ミステリアス・レイディ)》を渡せとな。日本政府とロシア政府、加えて更識家は、必死に隠そうとしているけどな」
「また、亡国企業か」
シュンが苦い顔で言う。無理もないだろう。この世界にシュンが帰ってきてから知った事だったが、約3年前のシュンの誘拐事件も、裏では亡国企業が関わっていたのだから。それに、世界のテロを調べていくと、その殆どに表だってではないが、亡国企業が必ずと言っていい程関わっていたのだから。
「これは、止めないといけないわね。どこの国も、企業も、表向きはISコアを決められた数だけ持っているから大きな国同士の争いになっていないのであって、そのバランスが崩れれば余計な争いを生み出しかねないわ」
「そうだな。アリア、実戦での訓練を兼ねて行くぞ」
「わかったわ。準備は?」
「それは問題無い。他の仲間達が準備に取り掛かっている。完了まで10分ってところだ。完了次第出撃して、武力介入を頼む」
この事を伝えに来た仲間が言う。
「「了解」」
私達は、出撃準備に取り掛かかった。
シュンside
俺達は今、仲間の一人が運転する車に乗って移動している。なぜなら、監禁場所が日本の東京都内だったからだ。これを聞いた時、日本の首都でこんな事件を起こすなんてな、と亡国企業に対して思った。
「すまないがここまでだ。これ以上近づくと感づかれる」
仲間がすまなさそうに言ってくるが、俺やアリアはそんな事を一度も気にした事がない。既に、十分過ぎるほどのサポートを受けているのだから。
「「わかりました」」
俺達は、そう言うと、車から降りて路地裏に入った。そして、周りに誰もいない事をISのセンサーで確認後、ISを纏った。
「アリアは、機体の特性上遠距離からの射撃で俺の援護だ。それと、外の様子を時折俺に教えてくれ」
「了解。気を付けて」
「お互い様だろ」
そう言って俺達は別れ、俺は監禁場所である倉庫へと、機体をGN粒子散布モードにして向かった。
倉庫の近くに到着すると、黒色の服を着た人物が男女合わせて十人いた。電波、通信障害が起こっている事には、まだ気付いていないようだった。俺は、上空から見た後、一気に降下して敵へと近づいて次々と音もなく気絶させていった。周りに意識のある奴が誰もいなくなった後、アリアに通信を開いた。
「どうだ、どこか変わったところはあるか?」
『今の所ないわよ』
「了解だ。無理はしなくていいからな。出来る時にこちらの援護をしてくれ」
『了解よ。何か変化があったらこちらから連絡するわ』
俺は、通信を切って倉庫の扉を十字状に切り裂いて破壊し、進入した。
中には数人の人がいる。その内の二人がISを装着しているようだ。二機とも、ラファール・リヴァイヴみたいだが、僅かにカスタマイズされている。
「何者だ‼︎」
ISを装着している一人がこちらに言いながら手にしているアサルトライフルを撃ってくる。さすがテロリストだ。問答無用でこちらを攻撃してくる。それに、これで死んだら儲けものといったところだろう。今のはかなりデタラメに撃ってきている事から牽制のようだ。俺は、その銃撃を躱しながら救出対象の更識簪を探した。するとこの奥の方にいる事がわかった。どうやらこの倉庫は、二つの区画があるようだ。その部屋には、見張りとして二人いるが、ISを使っている以上敵ではない。俺は、早急にここにいる者達を片付け始めた。先ずは、さほど脅威とはならないが、非IS着用の者達を片付けた。ここより狭い奥の方の部屋へと逃げこまれて人質を盾にされても困るので、そいつらを盾にしながらそいつらを気絶させていった。人数もそんなにいないからすぐに片付け終わった。
「何なんだ、このISは‼︎こちらの攻撃が当たらない。それに戦い慣れている。上手く味方を盾にしてこちらが撃てないようにしてくる」
「あの報告にあった正体不明ISじゃないか?機動性能が従来機より上だ」
「なんですって‼︎それじゃあこちらに勝ち目がないじゃない!」
「だが、上からは絶対死守だと…「上だ!」‼︎‼︎‼︎」
俺は、彼女達が話す事に僅かに意識を傾けたその瞬間に上とジャンプし、そこから右腕に装備しているアメイジングGNソードで敵の一機を縦一直線に切り裂いた。ギリギリ肌に傷が付かないように切る。かなりの神業だが、これでISは、絶対防御を発動して一気にシールドエネルギーを削った筈だ。これでシールドエネルギーは、殆どなくなっただろう。俺は、そこに間髪いれずに蹴りを食らわせて外へと蹴り飛ばした。ここからは見えないが、センサーが外からのビームを検知した。おそらくアリアが止めの一発を撃ち込んだのだろう。これでさっきの操縦者は気絶したはずだ。この戦闘で、奥の部屋にいる連中も気が付いているだろうから、時間はこれ以上掛けられない。
「くっそぉぉぉぉぉぉーー」
と、言いながら敵は両手に持ったマシンガンを連射してくる。俺は、避けるのも面倒なので、GNシールドを掲げて防ぎながら近づいた。そして、アメイジングGNソードで斜めに切り、さっきと同じように外へと蹴り飛ばした。その時に、敵の怯える顔が一瞬見えた。一通りの掃除が終わった後、再び監禁されている部屋の壁を切り裂き進入した。
簪side
ドガァーン‼︎
その音ともに目の前にあった壁がバラバラに崩れ、その向こうから見た事ないISが立っていた。するとそのISは、瞬きする間もなく一瞬で見張りとしていた人達を戦闘不能にした。ISを使っている以上当然かもしれないが、ほんの一瞬でここまで出来るということは、かなりの腕だ。私は、そのISの操縦者に恐る恐る尋ねた。
「貴方は、誰?」
「……………」
返答が返ってこない。そこで私は、質問の仕方を変えてみた。
「私を助けに来てくれたの?」
すると首を縦に振って肯定を示してくる。私は、得体の知れないこのISに恐怖もあるけれど、それと同時に安堵もした。なぜなら、敵意を感じないからだ。私だって更識家の端くれ、殺気くらいはわかる。そんな事を考えているとそのISは、私の方へと近づいてきた。
シュンside
俺は、彼女からの質問には、一切声を出さなかった。ボイスチェンジャーが付いているから喋ることはできるが、前回の時にロックオンへ話しかけた事でかなり怒られたので、それからは声を出さない事にしたのだ。後から聞いた話しによると、ボイスチェンジャー機能は、どうしても会話しなければならない時の非常用だそうだ。だから、彼女が、質問の仕方を変えてくれたのは助かった。こちらが答えやすいからだ。俺は、彼女を連れて脱出しようとした時、アリアから緊急通信が入った。
『シュン、大変よ!今、更識簪さんのおね…………「かんちゃん!」遅かったようね』
俺の方の音を拾って聞いたアリアが、少し、罪悪感を滲ませながら言ってくる。
「みたいだな」
俺の目の前には、更識簪の姉であり、更識家第17代目当主がいた。
楯無side
私は、更識家の情報網と、日本政府。さらにロシア政府からの情報を受けてかんちゃんの監禁場所へと向かった。するとそこには、今まで見た事がなかったISがいた。そして、そのISはかんちゃんに近付こうとしていた。私はそれを見てすぐに、手に持っている蒼流旋を使って突撃した。
「かんちゃんから離れろぉぉぉぉぉおおおお」
そのIS操縦者の反応が早く、すぐに左腕に装備されているシールドでこちらの攻撃を受けた。その攻撃による衝撃でそのISは、飛ばされて反対側の壁へと飛ばされた事でかんちゃんから離れた。そして、私がかんちゃんの側にいる位置になった。そのISは全身装甲のようで全く表情が見えない。私は、かんちゃんを守る為に私の密閉空間での得意技、《クリア・パッション》を私がかんちゃんの上に覆い被さるようにしてから発動させた。爆発の煙が晴れるとほぼ無傷のISがいた。
「なんて装甲なの!」
私は、思わず毒付いてしまった。今の技は、大抵のISであったら戦闘続行が困難になる程の威力を持っているのだ。(屋内でないと十分な威力が出ないのが欠点だが)しかし、次の瞬間にはそのISのバイザーにヒビが入り、そのままそのヒビが広がって割れてしまった。そして、その下には光る二つの目と顎の近くに赤い突起を持った者がいた。それに意識を取られているとISのミサイルが来ていると知らせる警報がなった。しかし、回避行動を取るには遅く、かんちゃんを守る為に移動ができない。私は、もう一度かんちゃんに覆い被さって爆発から守ろうとした。そして、そのミサイルがここに着弾すると白い煙がこの空間を満たした。
ズドォーン!
その音ともに煙が上へと流れ始めた。そこには、まだよく見えないが天井に穴が空いていた。そして、見た事ないISはそのまま離脱していった。私は、かんちゃんを救う事が目的なのであえて追う事はしなかった。私は、かんちゃんへと向き直って聞いた。
「かんちゃん、大丈夫?」
そう聞くと、かんちゃんは凄い形相でこちらを恨めしそうにしながら、かんちゃんにしては大きな声で言ってきた。
「お姉ちゃん、何て事をしたの!あのISは、私を助けてくれたんだよ‼︎私、何回も止めたのに」
「え、そうだったの」
私は、頭に血が上っていて聞こえていなかった。そして、今更ながらあのISにした事を少し後悔した。暗部の更識家としての行動としては正しいだろうが、人としてはちょっと失敗したなと思った。
シュンside
「なぁ、アリア。何で楯無を止めなかったのさ」
「ミッション遂行の邪魔になるとは思ったけど、今回の敵ではないし、倒してしまった場合に、シュンが気絶させた人達が意識を取り戻して襲いかかった時にISが使えなかったら困るだろうな、って思ったから何もしなかったのよ」
「成る程ね。一理あるかな。でも、出来れば援護して欲しかった。おかげで、ガンダムフェイスを隠すバイザーが壊れてこの顔を見られたよ」
俺は、破壊されたバイザーを指しながら言った。
「それは、想定外だったのよ。でも、直ぐには気づかないはずよ。私達の情報管理に抜け目はないから」
「そうだな。さて、仲間が待っているポイントへと急ごう」
俺達は、仲間が待っているポイントへと向かい、仲間と合流してWR社に戻った。
楯無と簪にガンダムフェイスを見られてしまいましたね。
次回は、WR社のお披露目と男性IS操縦者発見の話を書くつもりです。