「ただ今の試合によりセシリア機が大破してしまい試合続行不可能となりましたのでセシリア・オルコットは棄権となります。ただし、まだ動ける機体がありますのでそれで再び対戦カードを組みます」
場内アナウンスが流れ今後の対戦についての説明がされた。さっきの試合でシュンが少々やりすぎて、すぐには修復不可能なレベルで壊してしまったからだ。
「次の対戦は、織斑春樹VSアリア・フィルネストです。もう一人の男性IS操縦者と條ノ之束が関わっているWR社の企業代表の試合は誰もが注目しているカードです」
ピッドに戻ると早々にシュンは織斑先生に拳骨を食らって怒られた。
「エルガスター、やりすぎだ。誰が相手の機体を大破させろと言った。これでは総当たり戦を予定していたのを変更せざる負えなくなったぞ。それにだ、イギリスから抗議を言われるぞこれは」
「すいませんでした。思っていたよりも強かったのでやり過ぎてしまいました」
シュンはそう言ったが、アリアにはわざと大破になるようにやったことが分かっていた。織斑先生も何となくわかっているような感じだったがそれ以上追及しなかった。
「次は僕と君か。せいぜい僕の引き立て役になってくれよ」
「お生憎様、私じゃなくて貴方がなるのよ」
「へ、精々粋がっていろよ。試合で負かしてやるから」
今のはアリアに対する春樹からの宣戦布告だったが特に気にした素振りを見せなかったが、嫌悪感は出していた。
「ほら、馬鹿者どもここで言い争うのではなくフィールドで勝負しろ」
織斑先生に促され2人はピッドから飛び立って行く。
「織斑春樹、白式行くぜ!」
先に春樹が出て行ったところでシュンはアリアに小声で声を掛けた。
「あんな奴に負けないと思うが頑張れよ」
「ええ、もちろんよ。アリア・フィルネスト、ガンナーストライク出るわ」
飛翔すると同時にEPS装甲をONにし、装甲の色が蒼色に変わる。互いに所定の位置に着くが互いの間に言葉などない。無言のまま試合開始のブザーが鳴ると互いに相手から距離を取る動きをした。だが本来、近接戦闘型の機体がわざわざ距離をとる意味がない。あるとすれば自分の精神を落ち着かせる為だが、開始早々に行う意味はない。そこをアリアは奇妙に思った。『相手には何か策があると』考えたアリアは警戒しつつ、GNスナイパーライフルⅢで狙いを定めてビームを放った。
「!!!!!!!!」
しかし、その射撃は見事に躱され、手に持っていた雪片二型を投げつけられて体制が崩れてしまった。流石のアリアも目の前で戦闘経験があるはずのない素人に、自分が得意としている射撃が外れてしまいなおかつ、攻撃を受けたことにショックを隠せなかったが、そこはガンダムマイスター。即座に次を撃つが当たる事は無く、白式のブレードを量子変換して回収し、再び実体化させた雪片弐型が届く間合いにまで入られてしまった。アリアは即座にライフルを捨てるとGNビームピストルⅢを取り出し、ビームコーティングされている銃身の下で攻撃を受け止めた。
「何だよ、あれだけ粋がってたのにこんなものかよ。期待してガッカリだ」
「さて、それはどうかしら。もしかしたら私がまだ本気を出してないだけかもしれないわよ」
互いにつりばせ合いながら言葉を交わす。実際、アリアは春樹がここまでやるとは思っていなかった。故に多少の油断はあったし、初心者でのその技量には素直に賞賛しようと思っていたりする。伊達に天才と呼ばれていただけのことはある。しかし、自らが最強だと思っているその心に本気を出さなくとも付け入る隙があった。
アリアが春樹に向かって膝蹴りを放ち、それを交わす為に春樹はアリアから離れることで一度互いに距離ができた。そこからはアリアの独壇場となった。先程は敢えてその場から動かないで撃っていたが、本来移動しながら射撃をする事はガンダムマイスターには造作もない事である。アリアは、GNビームピストルⅢで白式を撃ち続けた。一撃の威力が落ちるとはいえ、一定距離を取られたまま一方的に射撃を受け続けるのは春樹に限らず誰でも鬱陶しく感じてしまう。痺れを切らした春樹は残りの被弾を気にせずにアリアへと突っ込んで行った。アリアが途中から止まっていた事に気づかずに………。
「やはりアリアさんは凄いですね。でもそのアリアさんに食いついていっている織斑君も凄いです」
織斑先生は複雑そうな表情を一瞬浮かべた後元の顔に戻った。
「そう、だな。山田先生、実際に戦った私達なら分かる筈だ。彼女がまだ本気を出してない事を。それにもう終わりだ。中距離から一定の距離を保たれていいように撃たれ続けた織斑のイライラが頂点に達している。そして考えなしにフィルネストへと突っ込んで行ってしまった。あれはもう詰みだ」
山田先生もそれは感じていた。試験の時に使っていたビットを全く使っていなかったのだから。
画面上ではアリアの策に春樹がはまり、試合が終わろうとしていた。
「これで終わりだぁぁぁーー‼︎」
アリアの中距離からの攻撃を受け続け頭に血が上っていた春樹には周りを見る余裕がなかった。
「!!!!」
アリアに斬りかかる直前、アリアのいる場所から明後日の方向から2条のビームが飛来し、もろに直撃してしまった。バランスを崩し、ビームを受けた衝撃で態勢が崩れている所に間髪入れず、アリアはすかさずGNミサイル10発と、一度量子変換して回収していたGNスナイパーライフルⅢでトドメを刺した。
『し、試合終了ーーーーー‼︎途中までいい勝負をしているかと思えば意外にあっさりと織斑春樹が敗れました!ここで一度休憩と機体整備の為の時間を挟む為、1時間後に残りの二試合を行いたいと思います』
アナウンスが流れている間にアリアはピットへと戻り、アリアにやられて墜落していた春樹も反対側へのピットへと戻って行った。その際にアリアを睨み付けていたのはご愛嬌と言うべきか何なのか。
アリアは、ピットへ戻るとISを即座に解除してシュンへと飛び込んだ。
「おかえりアリア。そしてお見事と言うべきかな?」
アリアに、それも先生の前で抱き着かれているのが恥ずかしいのかシュンは、僅かに頬を赤らめながら告げた。
「ありがとうシュン。でも、あんなに簡単に引っかかるとは思わなかったわ。念を入れビットを2基使って1発は躱されてもいいようにしたのに2つとも当たるなんて」
その後もアリアをシュンが褒めながら欠点を指摘するという事が続いていた。しかし、甘い雰囲気など全体の中で1割あるかどうかくらいなのだが、織斑先生がシュン達の方へ来て注意をした。
「いい加減にしないか貴様ら!ここは学校だ。イチャつくならせめて放課後にしろ」
2人の雰囲気に当てられたのと教員としての2つの思いが重なったような声色で注意を受けて、アリアは、その去り際に耳元で一言囁いてからシュンから漸く離れた。自分の機体は整備が終わっているから、後は試合まで待つだけだったので、シュンはそのままでもいいと思っていた。しかし、注意された事もあって2人は次の試合までアリアのISを整備する事にしたのだった。
「くそ、どうなってやがる。俺は天才なんだ。あんな奴に負ける訳がない!次はこうはいかない。待ってろよ、シュン・エルガスター」
破損した白式を整備科の人達に預けた春樹は控え室で一人、呪いの様な声でブツブツ呟いていた。彼がシュンを標的に定めたのは次の相手でありなおかつ、自分を負かしたアリアの恋人であるからだ。恋人がボコボコにやられれば彼女の歪んだ表情が見れると思ったのだ。しかし、彼の思惑が叶う事はない。自分とシュンの実力差を理解しない限り勝ち目などないのだから……。
もう1話試合の話が続きます。それが終わったらいよいよ中華娘が登場です!もしかしたらもう一人、二人登場させるかもですけど。それにその時には世界に震撼が巻き起こります。お楽しみに^_^