遊戯王GX 僕の相棒は盗賊王:re   作:たら子

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正義の英雄

  "童実野町デュエルカーニバル"

 

 まだ見ぬ優秀な決闘者を見出すために童実野町で開催されたこの大会はしかし、多くの番狂わせにより、殺伐とした空気を醸し出していた。

 

 『お待たせいたしましたーー‼︎只今より準決勝第一試合を取り行います!』

 「………」

 『えっ…あ、あれ?皆さーん決闘の時間ですよーー⁉︎』

 

 実況のメリッサの声に誰も反応しない。大人たちは皆一様に不機嫌な面を崩そうとはせず、普段は誰よりも騒がしい子供たちでさえ、親たちの尋常ではない雰囲気を察したのか時折チラチラと親たちの顔を見ては不安そうな顔をしている。

 

 『つ、続きまして対戦者の発表でーーす!1回戦を見事、決闘アイドルYU☆KAこと深草遊華をワンターンキルで下し、彗星の如く現れたダークホース、高槻叶選手‼︎』

 

 突如勢いよく煙が吹き出し、中から黒の上下に、一本の白いネクタイを垂らした少女が現れる。歩くたびに少女のポニーテールが左右に揺れる。その凛とした佇まいはいっそ風格さえ感じさせるほどだ。

 

 彼女が現れてから、会場の空気がさらに殺伐さを増す。しかし誰も一言も野次を飛ばそうとはせず、それがより一層緊迫とした雰囲気を伝えていた。

 

 『さ、さて2人目の挑戦者の紹介です‼︎ご入場下さ』 「高槻、かなえぇぇぇぇ!!」

 

 メリッサの声を遮って、会場の重苦しい空気を打ち破るような怒声が入場口から響きわたった。そして煙が吹き出す前に学ランに身を包んだ少年が勢いよく飛び出した。

 

 「僕は君に言っておきたいことがある!!!」

 

 ビシッ、という効果音が聞こえてきそうなほど真っ直ぐに叶を指差す少年。見事に刈りそろえた坊主頭と学ランは、いかにも真面目で正義感の強そうな印象を与えている。指を指された叶はというと、鬱陶しそうに瞳を閉じて無視を決め込んでいた。

 

 『えっ、えーーと、四十万清隆君?勝手に出ないでくれないかな?』

 「すいません!!!」

 

 MCの役割を中断させられた為か、若干キレたような笑みを浮かべるメリッサ。しかし当の本人である四十万はそれに気付くことなく全力で頭を下げる。学年に1人はいそうな、熱血かつ正義感が強すぎて融通の効かなそうな少年だ。

 

 「高槻叶!僕は君に言いたいことがある‼︎」

 「………」

 「返事をせんかぁ‼︎」

 「……何よ」

 「君は!何故遊華君にあのような非道い真似をしたのだ⁉︎」

 「非道いこと…?」

 「君が彼女を不必要に痛めつけたことだ!彼女は決闘で人々を笑顔にしたいと!そんな彼女を、何故だぁ⁉︎」

 「……」

 

 叶が下を向き、顔を影が覆う。

 

 「ぷっ、クククあははははーーはっは!!」

 

 と思いきや、いきなり大笑いを始める叶。お腹を抱え、人が変わったように笑い続ける叶に、四十万はおろか、あれほどピリピリとしていた観客たちも怒りを忘れて唖然としている。

 

 「楽しい決闘?、決闘で笑顔を?ちゃんちゃら可笑しくってお腹痛いわ!!!」

 「何……⁉︎」

  「いい?決闘っていうのはね。勝たなければ意味がないの。楽しいのは勝った方だけ。所詮あの女が言っているのはね、ただの勝者の上から目線よ!!!」

 

 

 四十万だけでなく、会場中に訴えるように語る叶。会場の誰もがその迫力に言葉を失う中、叶は良いことを思いついた、と形の良い顔を狂相に歪めた。

 

 

 「この決闘、予言をしましょう」

 

  ーーーつ。

 

 「先攻は私がもらう」

 

 

  ーー二つ。

 

 

 「そのターンで決闘は終わり。あなたは、為すすべなく無様に敗北する」

 『え……これって、先攻ワンターンキル宣言⁉︎』

 

 メリッサの惚けたことような声がマイクから漏れ響いた。

 

 ーー出来るわけがない。

 

 それが彼女の発言を聞いたもの全ての気持ちだった。

 

 

 "ワンターンキル"。定義はいくつかあるものの、基本的には1ターンの内に相手のLPを削り切ることとしていて、現在の高速化した環境において、それはさほど珍しいものではない。しかし、先攻ワンターンキルは違う。デュエルモンスターズには多種多様なデッキが存在する。が、その多くが戦闘ダメージによる勝利を狙うビートダウン型である。最も安定しているが戦闘ダメージを与えるという条件上、どうしても決着が着くのが2ターン目以降となってしまうため、叶のHEROデッキでは先攻で決着をつけること自体が不可能なのである。

 

 「血迷ったことを!貴様に正義の決闘を見せてやる!」

 

 

  審判の磯野が時計を確認し、決闘開始の合図をする。

 

 「決闘開始いいぃぃぃ!!!」

 「「決闘!!!」」

 

 高槻叶 LP4000

        VS

        四十万清隆 LP4000

 

 

 決闘が開始され、決闘開始の宣言と同時に先攻後攻のランプが灯る。ここで叶が先攻を取れなければ、先ほどの予言全てが無駄となるが…

 

 「先攻は私ね」

 

 予言通り先攻を取ったのは、叶。

 

 「私のターン、私は手札から魔法カード融合を発動!手札のE・HEROエアーマンとE・HEROフラッシュを融合。光と風の英雄よ、今一つとなりて新たな英雄を語り継げ!融合召喚、現れろ!E・HERO The シャイニング!」

 

 【E・HERO The シャイニング】

融合・効果モンスター

星8/光属性/戦士族/攻2600/守2100

「E・HERO」と名のついたモンスター+光属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードの攻撃力は、ゲームから除外されている

自分の「E・HERO」と名のついたモンスターの数×300ポイントアップする。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、

ゲームから除外されている自分の「E・HERO」と名のついた

モンスターを2体まで選択し、手札に加える事ができる。

 

 現れたのは日輪を背負いし純白の英雄。その穢れなき姿は、まるで叶が正義であるかのよう眩い光を放っていた。

 

 「だが、いくら攻撃力が高くても先攻は攻撃することはできない」

 「それはどうかしら?速攻魔法、融合解除。融合を解除し、素材モンスターを特殊召喚する。現れて!エアーマン、フラッシュ!」

 

 【E・HERO エアーマン 】

効果モンスター(制限カード)

星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、

以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカード以外の自分フィールドの

「HERO」モンスターの数まで、

フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。

●デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 【E・HERO フラッシュ】

効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1100/守1600

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、

自分の墓地からこのカードと「E・HERO」と名のついた

モンスターカード3種類をゲームから除外する事で、

自分の墓地に存在する通常魔法カード1枚を選択して手札に加える。

 

 「エアーマンの効果でE・HERO オーシャンを手札に加えて召喚」

 

【E・HERO オーシャン】

効果モンスター

星4/水属性/戦士族/攻1500/守1200

(1):1ターンに1度、自分スタンバイフェイズに

自分のフィールド・墓地の「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。

その自分の「HERO」モンスターを持ち主の手札に戻す。

 

 

瞬く間に現れる3人の英雄達。先攻だというのに、その身体からは今にも爆発しそうなほどのエネルギーが流れ出ている。

 

 『叶選手!華麗なマジックコンボでフィールドに三体のモンスターを揃えました!しかし、場に幾らモンスターが現れても「魔法カード、クイックアタックを発動。このターン、私の場のレベル4以下のモンスターは1ターン目から攻撃できる」

 「『何だと(ですって)⁉︎』」

 

 

  【クイック・アタック】

通常魔法

以下の効果から1つを選択して発動する。

●自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●レベル4以下のモンスターは1ターン目に攻撃を行う事ができる。

 

  「ば、馬鹿な…!正義が…正義が、悪に敗れるなど」

 「愚かね。勝者こそが正義!…殺りなさい」

 「正義がああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 四十万 LP4000→2200→1100→ー400

 

 

 「何度も何度も正義って…他の言葉を知らないの?」

 

 

 四十万の身体が宙に舞う。その身体が地面に辿り着き、鈍い着地音が鎮り返っていた会場を鳴らした。

 

 「…っ!し、試合終了!!!勝者、高槻叶!」

 『けっ、決着ううぅぅぅ!!!高槻選手、予言通りに先攻ワンターンキルを決めました。凄い、本当に凄い!』

 

 審判の磯野の宣言で気がついたようにメリッサが叫び立てる。そんなメリッサを尻目に叶がツカツカと倒れた四十万に近づいて行く。

 

 

 ーーカツカツ

 

 「…あっ」

 

 呻く四十万。状況に気付いた磯野がインカムで警備員を呼ぼうとするが、叶は彼らの予想を裏切り、倒れている四十万に手を差し伸べた。

 

 

 ーー彼のデッキへと。

 

 

 「ふぅん。【ライトロード】ね。正義正義と言ってたけど、哀れなほどにそのまんまね」

 

 そのままパラパラとデッキを眺めていく叶。無感情に、無感動に見つめる瞳の色があるカードの前で色づく。

 

 「『裁きの龍』。これがあなたのエースみたいね」

 

 そのまま『裁きの龍』を取り出し、バサリという音と共に残りのカードが地面へと落ちた。

 

 そして。

 

 

 ビリッビリビリ。

 何かが裂けるような擬音が鳴る。

 そして、半分に裂かれた紙切れが、風に舞った。

 

 

 「なっ…あっ」

 「プッくくくアハハははは!!!」

 

 パキンッと、四十万の心の中で、大事な何かが砕けた。

 

 会場に叶の不気味な笑い声が鳴る。子供たちは泣き出し、大人たちは呆然としている。

 

 「ーーハハハ…ふぅ。ああそうそう、大事なことを忘れるところだった。マイクを渡してくれないかしら?」

 

 一頻り笑った叶の要望に、仕方無しに磯野がマイクを差し出す。止めてもよかったのだが、テレビ中継で同じ人間に何度も実力行使する訳にはいかないとの判断だった。受け取った叶は会場をぐるりと見渡すと、氷のような微笑を浮かべた。

 

 『私がこの場所で言うことはただ一つ。ーー兄さん、決着をつけましょう』

 

 ◇◆◇◆

 

 「ーー叶」

 

 少年は、ポツリと呟いた。

 

 ◇◆◇◆

 

(フフフ。これは面白い)

 

 東雲は一人、部下からの報告に目を通しほくそ笑んだ。

 

 (これを上手く活かせば、私の勝利は間違いない。)

 

 こみ上げる笑いを抑えて東雲は第2試合の対戦パネルを見やる。

 

 

 【高槻麟VSオースチン・オブライエン】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クイックアタックは、万丈目ホワイトサンダーが使ったアニオリカードです。これからもご愛読頂けたら幸いです。次話は一週間後を予定しております…できたらいいな。相変わらず決闘内容を決めるのが難しいです。
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