遊戯王GX 僕の相棒は盗賊王:re   作:たら子

3 / 11
随分更新が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。


盗賊王

気付けば僕は、何もないどこまでも、どこまでも続く暗闇にいた。

 

『こうして話せるようになるのはもっと先だと思ってたんだがなァ』

 

現れたのは、褐色の肌をした白髪の青年。ぱっと見は女顔の美青年だが、その顔には十字の傷と、隠しても隠しきれない凶悪さが滲み出ている。

 

「君は誰?」

『オレ様はお前に力を与える者だ』

「僕に力を?」

 

その言葉で、今までの記憶が蘇る。まさか、

 

「その代償は魂、ですか?」

「……」

 

青年が沈黙する。まさか、本当に。……

 

『…プッ、クハハハヒャーハッハッハ。漫画の読み過ぎだぜ。誰もテメエのちんけな魂なんざいらねぇよ』

 

と思ったらただ笑いを堪えていただけのようだ。馬鹿にしたような言い方に若干ムッとしながらも、質問を重ねる。

 

「じゃあ何なんですか?」

『特に代償はねぇ。ま、強いて言えば俺様の手伝いをしてもらう程度だな』

「手伝い?」

『なあに簡単さ。俺様の野望を叶えるために俺様の宿主になるだけでいい』

「君の野望?」

『まあ、それはおいおいな』

 

青年が邪悪な笑みを浮かべながらはぐらかす。正直かなり怪しい。というかそれを言ったらこの空間自体がおかしいのだが。

 

「昨日カードを送ったり、デッキを組んだのは君?」

『ああ。この町を探った中で、てめえの心の闇が一番居心地良さそうだったからな』

 

〝 心の闇〟。またわからない単語だ。

 

『で、どうすんだ?俺と手を取るか、取らないのか』

「君に協力すれば、このデュエルに勝てるの?」

『ああ勝てるぜ』

 

その言葉だけで十分だった。右手を青年に向けて差し出す。

 

「君の名前は?」

『俺か?俺はバクラ。盗賊王バクラだ』

「よろしく。バクラ君」

 

そして僕達は、契約した。

 

 

◇◆◇◆

 

高槻麟 LP 500 手札0 場 なし

 

士道和也 LP 2200 手札1枚 場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

 

何だ?それが士道和哉が最初に感じたことだった。空気が重い。おまけに朝にも関わらずあたりがどんどんと闇に支配されていく。

 

「ってーな……」

 

高槻麟が立ち上がる。先程まで狂ったように笑っていたのが嘘のようだ。うまく言えないが、纏う雰囲気がまるで違う。

 

「諦めてはいないのか?」

「諦める?なぜ?」

「手札0。場には雑魚モンスター一体のみ。俺の場には攻撃力3400のダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンがいる。こんな絶望的な状況で貴様に何ができる?」

「絶望?」

 

突然、高槻麟が小馬鹿にしたような顔を向ける。先程までの弱弱しい様子がまるでない。いっそ不気味といって言いまでの変わりようだ。

 

「この程度の状況なんざ王墓の墓荒らしに比べたら、屁でもねえんだよ」

 

ギラリ、と瞳に光を灯し、デッキトップに手をかける。

 

「さあ、闇のゲームの始まりだ!オレ様のターン、ドロー‼」

 

ドローと共に突風が巻き起こり、取り巻きたちから悲鳴があがる。士道もその勢いに思わず目を閉じる。

 

「オレ様はモンスターをセットしてターンエンドだ」

「俺のターン」

 

オレ様、といきなり一人称が変わるなど明らかに様子がおかしい。が、そんなことは士道にとってはどうでもいいことだった。大切なのは勝つこと。そのための手札は揃っている。

 

「俺は魔界発現世行きバスガイドを召喚し、デッキから彼岸の悪鬼スカラマリオンを特殊召喚。2体のモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚。ランク3、彼岸の旅人ダンテ。効果でORUを一つ取り除き、デッキから墓地に3枚落とし、1500ポイント攻撃力をアップする。バトルだ!彼岸の旅人ダンテでセットモンスターを攻撃」

 

士道が召喚したのはダンテ。本当ならここはブレイクソードを呼びたいのだが、生憎と種切れだった。そしてダンテの攻撃でセットモンスターが反転する。そこに現れたのは、一つ目の不気味な壺。

 

「セットモンスターはメタモルポッド。リバース効果によりお互いは手札を全て捨て、その後手札が5枚になるようにカードをドローする」

 

 

【メタモルポッド】

リバース・効果モンスター(制限カード)

星2/地属性/岩石族/攻 700/守 600

(1):このカードがリバースした場合に発動する。

お互いの手札を全て捨てる。

その後、お互いはデッキから5枚ドローする。

 

 

「ちっ」

 

士道 手札1→0→5

 

高槻麟 手札0→5

 

先程まで空だった麟の手札が一気に補充される。

 

「だがこれで終わりだ!ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンで攻撃。反逆のライトニングディスオベイ‼︎」

 

反逆の龍の紫電を纏った太牙が、麟に襲いかかり、

 

『クリクリ〜』

 

それを守るように毛むくじゃらの茶色い毛玉が現れた。

 

 

高槻麟 LP500

 

「何⁉」

「手札からクリボーを墓地に送ることで、この戦闘で発生する戦闘ダメージは0になる」

 

【クリボー】

効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻 300/守 200

相手ターンの戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動できる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 

「ククク、一応保険として王様のカードを入れておいて正解だったぜ」

「貴様…そんな旧時代の化石のようなカードばかり。本当に勝つ気があるのか?俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

士道和哉

LP2550 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 彼岸の旅人ダンテ

伏せカード2枚

 

「オレ様のターン。カードドロー…士道っつたかぁ?確かにテメエのカードは強ぇ。オレ様が今使ってるカードじゃ普通なら逆立ちしたって勝てねえだろようよ。」

 

普通ならな、と高槻麟。否、バクラは顔を歪めて笑う。

 

「テメエが馬鹿にし、切り捨てていったカードども。しかしその怨霊こそが俺様の力となる。見せてやるぜ。怨霊どもの恐ろしさってやつを。オレ様は昇霊術師ショウゲンを召喚」

 

杖を構え、金の角帽子を被った高僧が現れる。

 

「何だよ坊主かよ」

「弱そうだよなぁ。やっぱバトルシティ時代の骨董品じゃ、士道さんのレアカードにゃ勝てねえんだよ」

 

見慣れないカードに士道が警戒する中、勢いよく召喚した割には貧弱そうなカードに、取り巻きたちが野次り出した。

 

「ククク。テメエらが馬鹿にできるのも今の内さ。オレ様はカードを1枚伏せてショウゲンの効果発動」

 

ブツブツと、ショウゲンが念を唱え始め、杖から光が溢れ出す。

 

「手札をランダムに1枚捨てることで、場に存在する特殊召喚されたモンスター全てを破壊する。天に召されな!魂魄天昇破!」

 

【昇霊術師ショウゲン】

効果モンスター

星3/光属性/魔法使い族/攻 200/守1300

手札をランダムに1枚墓地へ捨てて発動できる。

フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。

また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

お互いにモンスターを特殊召喚できない。

 

僧侶の念仏と共に、聖なる光が士道のモンスター達に襲い掛かる。

 

「っ…伏せカードオープン!永続罠、幻影霧剣。ショウゲンのモンスター効果を無効にする」

 

【幻影霧剣】

永続罠

フィールドの効果モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。

「幻影霧剣」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

対象のモンスターは攻撃できず、攻撃対象にならず、効果は無効化される。

そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。

(2):墓地のこのカードを除外し、

自分の墓地の「幻影騎士団」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

霧の剣がショウゲンを貫き、その身をも霧散させる。これでバクラの策は尽きた…にも関わらず、バクラの顔には未だに邪悪な笑みが浮かんでいる。

 

「フフフ…ショウゲンの効果を無効にしてくれてありがとうよ。これでオレ様のとっておきを安心して出すことができるぜ」

 

バクラのデュエルディスクから霧のようなものが噴き出す。何時の間にか形となった三体のそれは、まるで亡霊のようだった。

 

「このカードは、墓地の悪魔族モンスター三体を除外することで特殊召喚できる。地の底に眠る亡霊共よ、その怨念で死の人形を降臨させよ!現れろ!ダーク・ネクロフィア‼」

 

 

【ダーク・ネクロフィア】

特殊召喚・効果モンスター

星8/闇属性/悪魔族/攻2200/守2800

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地から悪魔族モンスター3体を除外した場合に特殊召喚できる。

(1):モンスターゾーンのこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズに、

相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動する。

墓地のこのカードを装備カード扱いとしてその相手のモンスターに装備する。

(2):このカードの効果でこのカードが装備されている場合、

装備モンスターのコントロールを得る。

 

 

赤子のような壊れた人形を抱えた、蒼顔の死体人形が現れる。その薄く開いた黄色い眼は、見る者全てに恐怖を感じさせた。

 

「何だよ、これ…」

 

取り巻きたちが恐怖のあまり固まっている中、士道は屈することなくその目をダーク・ネクロフィアへと向ける。

 

「ほお、まさかこいつを見て恐怖に屈しない奴がいるとはな。腕はまだまだ未熟だが器は神官クラスってとこか」

 

バクラが感心したように言う。どうやらこの士道という男、ただの不良というわけではないらしい。

 

「ふん。俺は誰にも屈しない。たとえどんなな敵であろうとも必ず打ち倒し、勝利をもぎ取るまでのこと」

「なら、最後まで抗ってみるんだな。ダーク・ネクロフィアで彼岸の旅人ダンテに攻撃。念眼殺‼」

「舐めるな!罠カード発動、聖なるバリアーミラーフォース」

 

呪いの一撃は、しかし聖なるバリアによって跳ね返され、ネクロフィアを直撃した。

 

「フッフッフ。……ありがとうよ士道。これで、オレ様の必殺コンボが完成したぜ」

「何⁉」

「オレ様はカードを2枚伏せる。そしてエンドフェイズ時にダーク・ネクロフィアの効果を発動する。取り憑け!呪操魂‼」

 

ダーク・ネクロフィアの怨念が反逆の龍に取り憑き、その身をドス黒いオーラが包み込んだ。

 

「ダーク・リベリオン‼」

「ダーク・ネクロフィアの怨念が取り憑いたカードはオレ様の僕となる」

 

バクラ LP500 手札0

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

伏せカード1枚

 

「ククク、イイ顔だぜぇ。それでこそ奪った甲斐があるってもんだ」

「黙れ!ダーク・リベリオンは必ず取り戻す。俺のターン」

「俺はダンテの効果を発動。オーバーレイユニットを一つ使い、デッキトップから3枚を墓地に送り1500ポイント攻撃力アップ」

 

彼岸の旅人ダンテ

ATK1000→2500

 

【落ちたカード】

幻影騎士団クラックヘルム

幻影騎士団フライジャルアーマー

幻影騎士団シャドーベイル

 

「俺は墓地にある幻影霧剣、幻影剣の効果発動。それぞれを除外し、墓地の幻影騎士団モンスターを特殊召喚する。甦れクラックヘルム、フライジャルアーマー。そしてレベル4モンスター2体でオーバーレイ!」

 

騎士達の亡霊が銀河に吸い込まれ、新たな命を生み出す。

 

「光を纏いて現れろ!闇を切り裂く眩き王者‼エクシーズ召喚、ランク4!HーC エクスカリバー‼︎」

 

【HーC エクスカリバー】

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻2000/守2000

戦士族レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。

このカードの攻撃力は、次の相手のエンドフェイズ時まで元々の攻撃力の倍になる。

「エクスカリバーの効果発動。ORUを2つ取り除き、攻撃力を倍にする」

「ほお。攻撃力だけならオベリスク並みか」

「バトルだ。エクスカリバーでダーク・リベリオンを攻撃。一撃必殺神剣‼︎」

「甘めぇぜ!伏せカードオープン。沈黙の邪悪霊。エクスカリバーの攻撃を無効にし、彼岸の旅人ダンテを強制攻撃させる」

「何⁉」

 

【沈黙の邪悪霊】

通常罠

このカードは相手のバトルステップ時にのみ発動する事ができる。

攻撃モンスター1体の攻撃を無効にし、

相手フィールド上に表側表示で存在する他のモンスター1体を選択して代わりに攻撃させる。

(選択したモンスターが守備表示の場合は攻撃表示にする)

 

「更に罠カード発動。メタル化・魔法反射装甲。ダーク・リベリオンの攻撃力を300アップする。滅ぼせ!反逆のメタルディスオベイ!」

「ガハッ」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

ATK3400→3700

 

 

士道 LP2200→1000

 

 

士道の体を、まるで炎に焼かれたような熱さと痛みが襲った。

 

「何だ、これは…?」

「ククク。それが闇のゲームの痛みさ。闇のゲームでのダメージは、実際にプレイヤーの命を削るぜ」

 

余りの痛みに思わず体がよろめいた士道に、取り巻き達が駆け寄る。

 

「騒ぐな!この程度の痛みどうということはない。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

(伏せたカードは魔法の筒。これで奴が攻撃してこようとも、それを跳ね返すことができる)

 

「オレ様のターンドロー。フフフ」

「何がおかしい?」

「士道。どうやらテメエはこのターンで終わりのようだぜ。永続魔法エクトプラズマーを発動。そしてターン終了時に、このカードの効果が発動する」

 

反逆の龍が突如として霧へと姿を変える。

 

「ダーク・リベリオンが霧に!?」

「エクトプラズマーは互いのエンドフェイズに場のモンスターを生贄に捧げ、その元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与えるのさ。食らいやがれ!反逆のネクロディスオベイ‼」

「おおおおおおお‼」

 

士道LP1150→0

 

自らのエースの牙をその身に受けた士道が、その衝撃で後方に吹き飛ばされ気絶する。

 

「士道、さん…?」

 

取り巻き達の誰かが、惚けたような声をあげる。そしてそれはあっという間に伝染し、大きな環となってバクラの周りを取り囲む。

 

「あん⁉」

「テメエみてぇな雑魚に士道さんがやられる訳ねえんだ。きっとイカサマしたに違えねぇ。落とし前、つけさせてもらうぜ」

 

ポキポキ、と拳を鳴らしながら取り巻き達が迫る。

 

「ククク…いいぜぇ。リハビリにゃあ丁度良い。かかってきな。オレ様が相手をしてやる」

 

それが合図となり、取り巻き達が一斉に襲い掛かる。だが彼らは知らなかった。自分達が誰を相手にしたかということを。

 

 

◇◆◇◆

 

「ぐっ…あっ」

 

ここは?いったい何がどうなっている?

 

士道がぼんやりとした意識の中、辺りを見回す。すると、そこに映っていたのは…

「なっ…⁉」

視界に映るのは倒れた人、人、人。しかしその全てに士道は見覚えがあった。

 

「お前たち」

 

倒れているのは全員自分と共に苦楽を共にした仲間達。そして、その中心に立っていたのは…

 

「ったく…盗賊王のオレ様に喧嘩で挑むなんざ3000年早えんだよ。」

 

――高槻麟だった。

 

「あん?ほお。目が覚めたか。闇のゲームで負けた割には結構回復するのは早かったな。」

 

頑丈な体だぜ。

 

高槻麟(バクラ)がそんなことをつぶやいたが、士道は仲間達が麟のようなひ弱な少年にボコボコにされたという事実を受け止めきれられず、全く耳に入らなかった。

 

「ああそうそう忘れるとこだったぜ。てめえ確かデュエルする前に勝った方は負けた方になんでも一つ命令できるとかなんとか言ってたな。」

 

そう言うと、麟は今までにないほど邪悪な笑みを浮かべ、士道のデッキへと手を伸ばした。

 

「それじゃあお前のデッキはありがたく頂戴したぜ」

 

そう言うと麟はもう興味はないと言うように士道に背を向け歩きだした。

その背を、士道はただ黙って見ていることしかできなかった。

 

 

 ……これは、特別な王と少年の物語。誰にでも存在するものではない、闇の中に完結する物語。そして僕の物語は、ここから終わりへと向かい始めた。

 




更新遅れてすみません。バトルシティ時代の、しかもバクラが使ったカードを中心にして現代のデッキに勝たせるのに思いの外手こずってしまいました。一応、天罰以外はバクラが使ったもののみでデュエルしました。本当に疲れた。今度はもう少し早めに投稿したいと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。