やあみんな。書類仕事は好きかい?
うん、大好きSA☆
とか言ってくれるやつは代わって。本当に。
俺はどちらかと言うと体を動かしている方が性に合うんだ。だからこうやって、毎日毎日書類と格闘していると、突然首をかきむしりたくなる衝動に駆られたりするわけだ。
そんな時には執務室を抜け出して、そこらへんのゴーヤを拾って潜水艦寮の改築をしたり、畑を耕しに行って、農園の管理者みたいになりつつある大井に様子を聞いたりしている。
ただ、周りの艦娘たちからすると、これが息抜きや休憩ではなく、書類仕事が終わったらすぐに仕事をし出す、超絶堅物真面目な上官に映るらしく。
叢雲からはたまにはちゃんと休みなさいよ、とか言われてるし、神通からも無理はしないでくださいね、とか言われたりする。
そのたびに
「ああ、決して無理はしていないから大丈夫だ。
(俺の息抜きとして)とても重要だからな」
といったことを伝えてはいるのだが。
最近は間宮さんにも
「お休みになられてますか?」
って聞かれる始末。
「(ちゃんと睡眠は取ってるから)大丈夫だ。
それよりも、鳳翔のことを気にかけてやってくれ。あれはなかなかどうして、疲れを溜め込むタイプだからな」
って言ったら、任せて下さい!という力強い返事をもらったので、まあしばらくは間宮さんにお任せである。
手抜きも甚だしい杜撰な部下の管理だが、上司から関わり過ぎてもよくないし、まだまだやらねばならないことが山積みの現状、食事時に艦娘達と触れあったり、話を聞いてやるのが精一杯なのである。
このあたりの地域にいた艦娘達はあらかた保護したのか、最近は出撃や遠征で艦娘を保護することがめっきりない。
そろそろ重巡や空母、戦艦が来てほしくなってきている。
空母1、出撃の出来る重巡2、戦艦にいたっては0とか正直ホントにキツイ。
しかもその上、武器も毎日規定回数の開発をしているが、まだまだ駆逐艦全員に12.7cm連装砲を行き渡らせることすら出来ていない。あ、ドラム缶?あるよ。
あー、ヘーイ提督ゥ!とか、まあ、そうなるな。とか、戦艦達が来てほしい…。あと、剣崎こと祥鳳さんとか、まな板駆逐艦…違う、RJこと龍驤とかも。
飢えた狼さんでも良いな。
来ないかなぁ。来ないんだよなぁ…。
建造が出来ないのが本当つらいところ。
ちくしょうめぇ!
む。ドアがノックされた。
そうか、遠征から帰ってくる時間か。
「入れ」
俺としては、どうぞー、とか、空いてるよー。くらいの声をかけたいのだが、海軍の説明会行った時にさんざっぱら脅されたんだよね。
上官たる毅然とした態度で艦娘に応対し、絶対に嘗められるような口の聞き方をするなって。
なんだろ、昔問題でも起きたんかしらん。
まあ知らんけど。
ただ、こっそりやってりゃバレんやろ、とか思ってたんだけど、バレた時点で強制連行されるらしいからね。
あァァァんまりだァァアァ!とか思った俺はおかしくないはず。
まあそういうことで、基本的には艦娘達には結構つっけんどんな言い方をしている。
元々の無表情と相まって、そのうち機械上官とか言われたりしないかな?
あ、でも一緒にご飯食べたりしてるし大丈夫か。
大丈夫だよね。うん。
「艦隊戻ったわ~。報告よ~」
お疲れ龍田さん。
どお?
「ん~、やっぱり、まだまだ駆逐艦の子達が未熟かな~。経験を積んでいくしか、ないんじゃないかしら~」
神通さんの特訓の成果、とか…。
「そうね~。確かに前よりちょーっとは良くなったかな~?でも、やっぱり基礎がしっかりしてない感じね~」
そうか、分かった。
ゆっくり休んでくれ。天龍達の艦隊はもう遠征に行ったか。
「ええ、確認したわ~」
おk。把握。
それじゃあね~、といって龍田は出ていった。龍田さんの声って脳みそ蕩けそうな甘さがあるよね。実は好き。
その後は夕立に演習で勝ったことを聞いたり、天龍から遠征の報告を受けたり。
夕立がほめてほめてー!と言ってくる時には、徹底的にほめるようにしている。本人のお気に入りは頭をわしゃわしゃされることらしい。
執務室では机をはさんで報告を受けるため撫でたりすることはないが、夕食時にねだられたりする。
たまに時雨も来たりする。
この二人は犬っぽいところあるよね。そう思うのは俺だけじゃないはず。わんわんお!
古鷹、加古の様子は相も変わらず。
不知火に様子を見てもらうように頼んでいるが、やはりまだまだ心の傷は深く、俺や他の艦娘には壁があるのだろう。
不知火だけはやはり生き残った戦友ということなのか、普通に接してくれるのが救いか。
不知火に、俺はどうしたら良いんだろうな、と聞いてみたことがあるが、返って来た答えは
「司令はそのままで大丈夫でしょう。加古さんは古鷹さんが戻れば普通に接してくるようになってきます。加古さん自身、ここはゆっくりと心安らぐ、良い環境だと言っていましたし。
古鷹さんには、ひたすら黙って待つのがよろしいかと」
といったものだった。
そういうものかね。
今日もまた日が暮れていく。
ま、なるようになるか。