今日は書類を片付けた後、秘書艦の雪風を執務室に置いて、鎮守府内の菜園に来ていた。
隣に居るのは響。
響や時雨、天龍たちは本当に最初のころから居る。
そのため、未だ秘書艦の業務を覚える必要のある子達と比べると、一緒に過ごすことが多い。
ちなみに不知火は一発で秘書艦の業務を覚えた。マジ有能。
不知火に落ち度はなかった。
だからこそ、提督としてはまだ俺に慣れてない子達と優先的に関わるようにしている。
古鷹や加古は、他の子達とはなんとかやっていけるようになってきたようだ。
ぽいぬこと夕立からも、演習での連携は取れるようになってきたっぽい!
と聞いた。
ただなぁ…。夕立は割と強引に突っ込んでいくという悪い癖があるしなぁ。
仕方なしにそのフォローをしただけ、という可能性がおおいにある。
やはり時雨や摩耶といった、周りの様子に気を配れる子達からのお墨付きを貰うまでは、遠征や出撃はさせない方が賢明か…。
あれで遠征というのは、ごくごく普通に敵艦隊と接触することもある。
ちゃんとした連携がとれるようにならないうちは、演習に特化させている方がいいだろう。
「ところで司令官、今日は何をするんだい?」
響はそう言って、透き通るような、水色に見えることもある白髪を揺らしながら、俺の少し前を歩く。
む、そうだな。
いつも大井っちが水やりはやってくれているし、雑草があれば抜いたりかな。
ああ、大井っちがいたら様子を聞くのもいいかもしれない。
そう答えると、わかった。という可愛らしい声が返ってくる。
俺、暁型4姉妹に関わることが出来ただけでもう充分幸せです…!
うちの艦娘達はみんな、こうやって俺が鎮守府内で何かしらしようとすると、たいてい誰かしら付いて来るようになった。
もっともだいたいの子は何かしらやることがあるのだが、基本一人は付いて来る。
やっぱりこの間、一人で深海棲艦と向き合ったのはまずかったか…。
当たり前である。
さて、菜園につくと大井はおらず、木曾がふんふんと上機嫌に鼻唄を歌って、うねの近くでしゃがんでいた。
こちらに気がつくと、手を上げてくれた。
よう、とこちらも軽く手をあげる。
何やってるのん?
「ああ、ようやくいくらか小さい芽が出たのがあってな。
その周りにある雑草を取っていたところだ」
ふむ。
手伝った方がいい?
「…芽と雑草の違いがわかるなら手伝って欲しいけどな」
ああ、すまん無理だ。
「だろう?
だから悪いけど、二人ともうねの周りにある雑草を抜いてほしいんだ」
それをやるとなんか変わるん?
「初めの芽のうちは背が低いだろう?だから、周りに背の高い雑草があると、上手く育たないんだ」
響と二人で、なるほどー。とか反応しつつ。
俺と響はうねとうねの間にある、見るからに雑草と分かる雑草を、木曾は芽の周りにある雑草を抜く作業に。
なるだけ根っこからぶちぶちと雑草を抜きながら、黙々と作業する。
少し離れている木曾も沈黙が気にならない方だし、俺も響も同様だ。
ひたすら作業する音が続き、日がだいぶ傾いてきたところで作業終了。
まだ全部がきれいに出来た訳ではないが、そもそも畑仕事は1日で終わらせることばかりではない。
木曾もいいタイミングだと思ったのか、膝を曲げたり伸ばしたりしている。
俺達も同様に屈伸。その後背伸びしたりして軽く体をほぐす。
そのまま三人で連れだって間宮さんのところに夕食を貰いに行く。
不思議と、穏やかな暖かさに包まれたまま、俺達は歩いて行った。