こんな作者で大丈夫か?
新しい艦がうちの鎮守府に着任した。したんだが...。
「不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです。」
目が...。目が死んでるじゃないですかーやだー。目のハイライトが無い。アカンやつだよこれ!
「ああ。こちらこそよろしく頼む。」
まあこっちはこっちでまったく感情が読み取れない顔とか言われるくらいの鉄面皮だけどね!
叢雲と天龍のお墨付きで。
「じゃあ、この鎮守府は叢雲が案内してくれるから、この後で駆逐艦寮の寮長室に向かってほしい。場所はわかるかな?」
そう言ったのは
しかし、そうか。この鎮守府の生き残りがいずれ復隊するって叢雲が言っていたが、今日だったか。
「いえ...。今の寮は不知火の知っている"生活許容圏"とは違いそうですので」
今なんか変な単語が聞こえたぞおい!
「?」
時雨がよくわかっていなさそうな微笑を浮かべてるが、この流れはまずい。この話を続ければ必ず不知火のトラウマを抉る話にいってしまう。ここはなんとしても話を終わらせなければ...。
「時雨、俺は休憩をかねて不知火を案内してくる。決裁待ちの書類はトレーに入れておいてくれ。」
「わかったよ。いつごろ戻ってくるかな?」
「三十分以内には戻る。では頼むぞ。」
「うん、いってらっしゃい。」
いやな顔もせず、優しく送り出してくれる。やはり時雨は天使だな。早く改二にしてあげたいものだが、いかんせんまだまだやらねばならんことが多すぎる...。
「こっちだ。」
不知火を引き連れて移動する。遠征部隊や新人の演習監督でみな出払っており、鎮守府は静かなものである。
「司令」
「ん?」
引っ張られる感覚とともに呼ばれる。不知火をふりかえると、彼女は不思議そうな顔をしていた。といっても、目が死んでいるのでおそらくそうだと思う、というレベルだが。
「司令は、私を殴らないのですか?」
「殴る必要がない。もっとも、正してやらねばならん時はその限りではないが」
「私は今、司令に案内を手間をかけさせるという最上級の無礼をしてしまっています。懲罰はなんでしょうか?」
俺は言葉を失った。さも当たり前のように言われた言葉が、彼女が過ごしてきたかつてを簡単に想像させる。だが、俺は彼女のような被害者を出すつもりはないし、彼女のように傷ついた艦娘たちが安心してすごせるようにしたい。
だから、まずは彼女を蝕む毒のような、呪いのようなこれまでの当たり前をぶち壊さなければならない。
「不知火。俺は休憩がてら案内すると言ったな。つまりこれは俺の意思で動いているにすぎん。懲罰がほしいならくれてやるが、お前を罰するつもりはない。」
「ですが」
「ここはお前の居た鎮守府じゃない。いいか。お前を苦しめていた司令官はもういないし、理不尽に暴力をふるわれることもない。
これから叢雲にこの鎮守府での基本的なルールを教わり、ここでの過ごしかたを覚えろ。いいな。」
「...はい。」
「それと、つらい事や嫌な事、愚痴でも質問でもなんでもいい。困ったら、俺のもとに来い。すべて聞いてやる。分かったら返事をしろ」
「了解しました。」
とは言ったが、彼女の目に生気が戻る気配はない。まあ、時間が解決してくれることを祈ろう。
俺がなにかしてやれるといいが...。
寮長室に着いた。あとは叢雲に丸投げしよう。
ドアをノックする。叢雲から返事が聞こえたのでドアを開け、不知火を中に入れる。
「では俺は戻る。しっかり話を聞くんだぞ」
俺がそう言うと、不知火は確かに頷いた。
「...以上でここでの基本的なルールはすべてになるわね。なにか分からないことはある?」
あの何を考えているか分からない司令官からは何も言われなかったので、仕方なく目の前の無表情で死んだ目をした不知火に話を聞いた。何をしてほしいかくらい言ってくれないと困る。あの鉄面皮め...。今度ちゃんと躾けないとダメね。
そこまで考えたところで、司令が初日からひたすら無表情でとことんマイペースだったことを思い出す。
あんなにわかりやすい挑発にも眉ひとつ動かさず、好き勝手に指示を出す。
しかも要点を抑えつつ効率がいいからタチが悪い。
...躾けるなんて無理かも知れないわね。
とりあえずこの鎮守府の決まりを一通り説明し、各施設を案内した。まあ彼女のほうがよく知っていたけど。
それにしても設備の損傷がひどい。特に工廠。
早急に直したいところだけど、予算に関しては本部から下りるまではなにも出来ることがないから困るわね。
司令もいろいろと働きかけているようだけど、こればっかりはそういった伝手がなければどうにもならない。
歯がゆいわね...。
「いえ、特には」
「そう、じゃあ貴女の部屋に案内するわ。ついて来なさい。」
そう言って、彼女を陽炎型の部屋に案内する。
とはいえまだ陽炎や黒潮はうちにはいないから、しばらくは彼女専用の部屋になるだろうけれど。
彼女は大本営の病院を退院してから来ているので、荷解きするものもあると思う。
私は陽炎型の部屋の扉のネーム部分に不知火の名前のプレートをかけ、彼女が部屋に荷物を運んだのを確認して寮長室に戻った。
新しい艦娘に、夕食の時間や消灯時間などをいちいち口頭で説明はいい加減面倒になってきた。説明用の冊子でもあるといいかも。
そうよ、これを司令に作らせてやればいいのよ!
そう思って部屋に戻る予定だったのを急遽変更し、私は執務室に向かった。
「おかえり、司令官。」
戻ってきたら大天使時雨が迎えてくれた。どこぞの尊大な態度の駆逐艦とは大違いである。
そういえばこの前、新しい艦に説明するのは大変とか言っていたな。
幸い溜まった書類の枚数はそう多くない。その叢雲に説明用の冊子でも作ってやろう。
ただし綴じ込みは自分でやらせるが。
どうせ最近は出撃回数も落ち着いてきて、寮長室でゆっくりしていることは把握している。
とりあえずは軽く50部程度でいいだろう。
いやー、俺って部下思いだねえ!
その後叢雲がやってきて説明用の冊子を作れと言ってきたので、ちょうど刷り終えた一冊11ページの冊子50部分の紙の山をまるごとプレゼントしてあげた。
泣くほど喜んでいたが、やはり良いことをすると気持ちがいいな!
やっと不知火さん登場させれた。
なんだか叢雲さんが苦労キャラになりつつありますね