これで本当にオリジナル編の最後となります。
後日談なので短めですが、お楽しみ頂けたら幸いです。
感想お待ちしております。
「あれから一週間……早いものですね」
「にゃはは、だね~♪」
そんなある日の
第百話
『未来への歩み』
「ところでなのはさん、ケガはもう大丈夫なんですか?」
「うん、まだ仕事に行くのは止められてるけどもう殆ど治ってるよ。ポーリュシカさんの薬と、ウェンディとシャマルの魔法が効いたみたいだね」
あの日の戦いで傷ついた者の傷は少なからず癒え、元気な者は早くもギルドでの仕事に復帰している。特にあの中でも一番の重傷を負っていたエルザだが、今ではすっかり何事もなかったかのようにケロリとしているあたり流石である。
「でも今回はさすがにヤバいと思ったんですけど、結局評議院からは何も言われませんでしたね」
そう……ヴィヴィオを取り返す為とはいえ、
しかし、一週間経った今でもそんな素振りがまったく見えないのである。
「と言うより、そんな戦いがあったこと事態知らないんじゃないかな? ほら、ナンバーズのみんなが『用心深いドクターの事だから色んな手回しをしてこの戦いを評議院に悟られないようにしてる』って」
「最初は半信半疑だったんですけど、一体どうやってそんな手回しをしたのかしら?」
「聞いた話だと、あの日は色んな場所で闇ギルドが暴れ回ってて、評議院はその対応で一杯一杯だったみたいだよ」
「あー……なるほど」
おそらくその暴れていた闇ギルドとは
つまりスカリエッティは、自分の傘下の闇ギルドを各地方で暴れ回させる事で、評議院の目を逸らしていたのである。
「ナンバーズと言えば、ノーヴェや他の子たちはどうしてるかな?」
「そうですね……あの時は大変でした。特にナツを止めるのが……」
少々ゲンナリした様子で、ティアナは一週間前の出来事を思い出す。
◇◆◇◆◇◆◇
一週間前。
「
倒壊したヴィネアの塔前では、ナツの大きな怒声が響き渡っていた。
因みにヴィネアの塔が何故倒壊したかと言うと、ナツやグレイたち全員が塔の外に出た途端一人でに倒壊してしまったのだ。ナンバーズいわく『ドクターが証拠になりそうなモノを残しておく訳がない』だそうである。
「どういう事だよノーヴェ!!? お前スカリエッティにギルドを抜けてウチに入るって言ってたじゃねえかよ!!!」
「言ってねえよ一言も!!! どんだけ自分勝手な耳してんだよお前は!!!」
そう怒鳴るナツに、負けず劣らずの怒声で怒鳴り返すノーヴェ。
「つーか入らねえとは言ってねえだろ!! 今は入れねえっつったんだ!!!」
「何でだよ!!! 今すぐ入りゃあいいじゃ──うごっ」
「落ち着きなさいバカナツ」
尚もヒートアップするナツを、ティアナが後ろから彼のマフラーを引っ張って強制的に黙らせた。
「ノーヴェの言う通り、今彼女たちをギルドに迎え入れる事は出来ないわ」
「うむ。抜けたとは言え、闇ギルドの一員として働いていた事は事実だ。言い方は悪いが、さすがに罪人をギルドに入れる訳にはいかん」
そう言ってナツに説明するティアナと、全身包帯だらけのエルザ。その傍らではウェンディが「エルザさん寝てた方が…」と言っていたが、エルザは華麗に無視した。
「だから、アタシたちはこれから評議院に自首しに行く。ギルドに入るのはそこで全部の罪を償って、スッキリと身軽になってからだな」
「こればっかりは仕方ないっスからね~」
「さすがに行くところがなくて評議院に追い回されるのは勘弁」
「何年かかるがわからないが、罪は償わなければならないからな」
「うん」
ノーヴェの言葉に同意するようにウェンディ、セイン、チンク、ディエチがそう言う。
「デーモンの人達は逃げてしまいましたけどね」
「あい」
そう言って苦笑いを浮かべるエリオとハッピー。
エリオの言う通り、
と言っても、あれほど手酷くやられればしばらく悪事はできないだろうというのもエルザの見解である。
「アタシもちゃんと罪を償わないとね……操られていたとは言え、闇ギルドに所属していたのは変わらない訳だしさ」
「アルフ……」
そう言うアルフを、フェイトは切なそうな瞳で見つめる。
「そんな顔をしないでおくれよフェイト。罪を償ったら、また会える訳だしさ」
「……うん、そうだよね。私、待ってるから」
「それでこそアタシの親友♪ あ、それと……」
「?」
すると、アルフはスッとフェイトに顔を近づけて、ボソリと耳打ちをする。
「アタシが出てくるまでに、ちゃーんと意中のアイツを射止めておくんだよ」
「なっ……もう!! アルフ!!!」
それを聞いて顔を真っ赤にして怒鳴るフェイトを見て、アルフは「ニシシ♪」と楽しそうに笑った。
「評議院から出てきたら、必ず行くからさ。それまでギルドに入るのは待っててくれよ……ナツ」
「……わーったよ」
ノーヴェのその言葉に、ナツは大人しく頷く。
「待ってからな。またケンカしよーぜ、ノーヴェ!!」
「おうよっ!!!」
そう言ってナツとノーヴェは誓いを立てるように、お互いの拳をぶつけ合わせたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
現在。
「まったく……女の子相手にまたケンカしようなんて誘い文句あるかしら? ホントにあのバカは……」
「あれ~? ひょっとしてティアナ、ノーヴェに妬いてる?」
「妬いてません!!!」
意地の悪い笑みを浮かべながらそう聞いてくるなのはに、ティアナはテーブルを叩きながら怒鳴る。
「にゃはは♪ まぁそれはともかく……マスターに聞いた話だと、ナンバーズのみんなはちゃんと罪を償ってるみたいだよ。
「そうですか……でも、奴等の本拠地は見つかってないんですよね?」
「うん。たぶんノーヴェたちも知らない拠点に移ったんだろうって」
「厄介ですね……」
なのはの言葉を聞いて、ティアナは苦虫を噛み潰したかのような表情を見せたあと、グラスに入ったジュースを口に含む。そしてそれを飲み込んでから、話題を変える為に改めて口を開く。
「そう言えば、ベルカの街の復興はどうなったんでしょう?」
「順調みたいだよ。ウチのギルドからも何人か復興作業のお手伝いに行ってるし、カリムさんとシャッハさんにはお世話になったからね」
「ですね。特にカリムさんは個人的にウチを気に入っちゃったみたいですし。こんな騒がしいギルドのどこが気に入ったんだか……」
「にゃはは……」
ティアナの辛らつな言葉に苦笑いを浮かべるなのは。すると、ティアナが思い出したかのように口を開く。
「ところでなのはさん……ヴィヴィオはなのはさんが引き取ったんですよね?」
「うん、そうだよ」
そう……あの事件のあと、ヴィヴィオはなのはが正式に養子として引き取り、彼女は「高町ヴィヴィオ」となったのある。
因みにその際、本当はグレイの養子にしようという話が持ち上がったのだが、当の本人から……
『オレはヴィヴィオの父親代わりにはなってやるが、本当の父親になる気はねえ』
と言ってその話を断ったのである。その際に全員から「ヘタレ」と言われたのは割愛しておこう。
「それであの……ヴィヴィオに本人に、あの話は……」
「……うん…したよ」
2人の言うあの話とは、ヴィヴィオの出生の話である。
「最初は驚いてショックを受けてたんだけどね……でも今はもうすっかり受け入れちゃって、逆に聖王の事を知りたがってるくらい」
「……血は繋がってないとはいえ、さすがはなのはさんの子です」
「どういうこと?」
「図太いって事です」
「ひどーい!」
なのははそう言いながらも、笑顔を浮かべている。
「それとね、ヴィヴィオったら最近魔法を教えて欲しいってせがんでくるの」
「魔法を? 将来は魔導士になるって事ですか?」
「うん。私やグレイみたいな魔導士さんになるーって聞かなくて……」
「微笑ましい限りじゃないですか」
「まぁね♪ 魔法の基礎くらいは教えてあげるつもり。そこからどんな魔法を極めていくのかはヴィヴィオ次第だけど」
「将来が楽しみですね」
「本当に♪」
「「あはははははっ!」」
そう言ってなのはとティアナが笑い合っていると……
「いつまでくっちゃべってんだよ」
「あいたっ!? 何するの!!?……ってグレイにヴィヴィオ?」
突然後ろから頭を叩かれ、振り返るとそこには呆れた表情を浮かべたグレイと、彼に寄り添うように立っているヴィヴィオがいた。
「ったく……ヴィヴィオの日用品の買出しに行くから手伝ってくれって言ったのはお前だろ?」
「だろー?」
「にゃっ!? そう言えばそうだったの!!!」
「オイオイしっかりしてくれよ。ヴィヴィオ、お前からも言ってやれ」
「なのはママのうっかりさん!」
「あう~」
グレイとヴィヴィオの2人からそう言われ、なのははガックリと肩を落とす。そんな光景に、ティアナはクスクスと笑っていた。
「それじゃあティアナ、私はもう行くね?」
「はい。楽しんできてください」
「うん! またね!!」
そう言って、なのはは先に歩き出していたグレイとヴィヴィオの跡を追って、走っていった。
『2人とも待ってよぉ~』
『お前が遅いんだよ』
『なのはママ!! 早くー!!』
『はーい! ってグレイ服っ!!! そんな格好でヴィヴィオと歩いてたら変態さんにしか見えないの!!!』
『うおっ!? しまったいつの間に!!?』
『もう!! 教育に悪いから今後一切ヴィヴィオの前では脱がないでよね!!!』
『へいへい』
『グレイパパ怒られた~♪』
『うっせ』
和気藹々とした雰囲気で遠ざかっていく3人の後姿を見て、ティアナはポツリと呟く。
「本当に……将来が楽しみね」
「そうじゃな」
「! マスター!?」
そんなティアナの呟きに答えるように、いつの間にか彼女の近くに立っていたマカロフが頷いていた。
「時の流れと共に世代は移りゆくもの……主らの世代の次は、あの子の世代かもしれんのう」
「……そうですね。未来の後輩に顔向けできるように、私も頑張らないと」
マカロフの言葉に、ティアナは笑みを浮かべながらそう答える。
「うおーいティアー!! 仕事行こーぜ!!!」
「ティアナー!!!」
すると、ギルドの入り口からナツとハッピーのティアナを呼ぶ声が聞こえてきた。
「わかったからちょっと待ってなさい!! それじゃあマスター、仕事に行ってきますね」
「うむ、気をつけてな」
「はい!!」
そう言うと、ティアナはナツとハッピーに向かって駆け出して行った。
そしてその場に残ったマカロフは、ポツリと呟くように口を開いた。
「そう、時代の流れは移りゆく……未来へと向かって。次の世代の者たちを、正しき未来へと送り出すのもワシら老兵の役目。
出切る事なら……ワシはお前にも未来を掴んで欲しかった。過去の悲しみを乗り越え、己の手で未来を切り開いて欲しかった。
じゃがお前が進もうとしておるのは破滅への未来……それを知りながらもその道を歩もうと言うのなら、ワシは何が何でもお前を止めるぞ。
──スカリエッティ」
そんなマカロフの言葉は、誰の耳にも届く事無く……吹き抜けた一陣の風が……それを掻き消したのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
そこの最深部の部屋では、スカリエッティとウェーブがかった薄紫の長髪をした女性が話し合っていた。
「ナンバーズの5、6、9、10の4名が離脱。これは我がギルドにとってかなりの打撃だと思いますが……」
「構わないよウーノ。それがあの子たちの選んだ道ならば、私は何も言わないよ」
「そうですか……」
「君も、抜けたくなったらいつでも抜けて構わないよ」
「ご冗談を。私はどこまでも貴方についていきますよ、ドクター」
「フフ……そうか」
女性…ウーノの言葉にどことなく嬉しそうな表情を浮かべるスカリエッティ。
「ところで、ゆりかごの鍵の少女ですが……本当に諦めるのですか?」
「そういう約束だからね」
「ですが、あの鍵なくしてはゆりかごの起動が……」
「フフフ……ウーノ、鍵を失くしてしまったのなら、合鍵を作ればいい……そうだろう?」
そう言ってスカリエッティが懐から取り出したのは、真っ赤な液体が入った小瓶であった。
「……なるほど、あの鍵の少女の血液ですね」
「その通り。これさえあれば、時間は掛かるが合鍵の複製が可能だ。そしてそれに加えて……興味深いサンプルがもう2つ」
そう言ってスカリエッティが取り出したのは、同じく赤い血液の入った2つの小瓶。
「それは?」
「ヴィネアの塔を倒壊させる前に、ガジェットに回収させたものさ。実に興味深い個体だったのでね」
その2つの小瓶の表面には……それぞれ『N』と『G』の文字が刻まれていた。
「では、私はしばらく研究の為に籠るとしよう」
「わかりました。それでは用があればお呼びください」
そう言って軽く会釈をしたあと、ウーノは部屋から退室する。
そしてそれを見送ったスカリエッティは、ポツリと呟くように口を開く。
「私は止まらないよ……マスターマカロフ。
今のこの世界に私の未来はない。だからこそ私はこの世界を浄化し、新たな世界を創る。
そうすればきっと、私にも未来が待っているハズだ。
私だけの……未来が」
そんなスカリエッティの言葉は、誰の耳にも届くことはなく……周囲の機械の音が、それを掻き消したのであった。
つづく