LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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2話目です。


心のかたち

 

 

 

 

 

 

城の地下へと続く坑道で待ち伏せていたエルザとナノハ率いる王国兵たちに捕まってしまったナツたちアースランド組。

 

 

ドカッ

 

 

「んがっ」

 

 

「きゃっ」

 

 

「うわっ」

 

 

そしてナツ、ウェンディ、エリオの3人はヒューズによって牢屋の中へと蹴り入れられる。

 

 

「……んの野郎…!! みんなはどこだーー!!!」

 

 

すぐに体制を立て直してヒューズへと向かうナツだが、その前に牢屋の扉が閉ざされてしまう。

 

 

「みんな?」

 

 

「キャロちゃんとルーシィさん…それにティアナさんとシャルルとハッピーです!!」

 

 

「キャロとルーシィ……ああ…あの女か。悪ィけど、あの女どもには用はねえんだ。処刑されんじゃね?」

 

 

ガシャン!!!

 

 

ヒューズがそう言った瞬間、ナツとエリオが扉の鉄格子からヒューズを睨む。

 

 

「ティアやルーシィに少しでもキズをつけてみろ、テメェら全員灰にしてやるからな」

 

 

「キャロにもだ……もし彼女に何かあったら、絶対に許さないぞ」

 

 

凄まじい剣幕でそう言い放つナツとエリオに対し、ヒューズは鼻で笑う。

 

 

「おお! スッゲェ怖-、アースランドの魔導士はみんなこんなに凶暴なのかよ」

 

 

「シャルルとハッピーは!?」

 

 

「エクシードの事か?」

 

 

「ハッピーはそんな名前じゃねえ!!!」

 

 

「任務を完遂したエクシードは、母国へお連れしたよ。今頃褒美でももらって、いいモン食ってんじゃね?」

 

 

「任務を完遂?」

 

 

その言葉を聞いて、ウェンディはシャルルがエドラスに来る前に言っていた事を思い出す。

 

 

『私がエドラスに帰ると言う事は〝使命〟を放棄すると言う事』

 

 

それを思い出したウェンディは、ヒューズに向かって口を開く。

 

 

「そんな事ありえない。その任務の内容は知らないけど、シャルルは放棄したハズ」

 

 

「いいや、見事に完遂したよ」

 

 

「……何なんだ、その任務って言うのは……」

 

 

「まだ気がつかねえのか?」

 

 

エリオの問いに対してそう言うと、ヒューズは2人の驚くべき任務の内容を告げられたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百八話

『心のかたち』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ハッピーとシャルルは……

 

 

「! あれ? ここは?」

 

 

どこかのベッドの上で目を覚ましたハッピーは、周囲を見渡すと、隣でシャルルが眠っているのを発見する。

 

 

「シャルル、起きて!!」

 

 

「オスネコ。私たち…どうなったの?」

 

 

「オイラたち眠らされちゃって……それで……どこだろここ」

 

 

「…………」

 

 

部屋の中を見渡すが、手がかりになるようなモノはなく、唯一分かるとすれば、この部屋がとても高価な部屋であると言う事だけであった。

 

 

「…………」

 

 

「シャルル?」

 

 

「私の〝情報〟が罠だった……」

 

 

「違うよ!! オイラたちはたまたま見つかったんだ!!! シャルルのせいじゃないよ!!!」

 

 

自分を責めようとするシャルルに強く言い放つハッピー。

 

 

「誓ったのに…私はウェンディたちを守るって誓ったのに…」

 

 

シャルルが悔しそうにシーツを握り締めながらそう言うと、突然部屋の扉がガチャリと音を立てて開かれた。そして部屋に入ってきたのは……

 

 

「お前たちがアースランドでの任務を完遂した者たちか? ウム……いい香り(パルファム)だ」

 

 

「一夜!!!?………てゆーか、ネコ?」

 

 

かつて共に戦った青い天馬(ブルーペガサス)の魔導士…一夜によく似たネコであった。

 

 

「何を驚く? 同じエクシードではないか」

 

 

「ニチヤさん」

 

 

すると、今度はノッポな黒いネコが、腕をしゅっしゅっと振りながら現れた。

 

 

「彼らは初めてエドラスに来たんですよ。きっとエクシードを見るのも初めてなんでしょう」

 

 

「おお! そうであったか。私はエクスタリアの近衛師団長を務めるニチヤだ」

 

 

「ぼきゅはナディ、任務お疲れ様」

 

 

そう言って自身の名を名乗る一夜似のネコのニチヤと、片腕を振り続けるノッポな黒ネコのナディ。

 

 

「任務…?」

 

 

「……………」

 

 

「さっそくであるが、女王がお待ちである。ついてまいれ」

 

 

「女王だって!!?」

 

 

女王が待っていると聞いて、驚愕するハッピー。

 

 

「シャルル…オイラに任せて。ここはひとまず様子を見るんだ。オイラが絶対守るからね」

 

 

ハッピーのそんな言葉に対しても、シャルルは表情を曇らせたままであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、ニチヤとナディの案内によって部屋を出て来たハッピーとシャルルは、大きな街へとやって来ていた。しかもただの街ではない。

 

右を見ても左を見ても……周りにはハッピーやシャルルと同じようなネコのみが行き交っていた。それを見たハッピーはぽつりと呟く。

 

 

「猫の国だ」

 

 

「ぼきゅたちはネコじゃない、エクシードさ。人間の上に立ち、人間を導くエクシードだよ」

 

 

「エクシード…」

 

 

「そしてここはエクシードの国、エクスタリア」

 

 

そしてハッピーとシャルルは、そのまま城の中へと案内された。

 

 

「人間はひどく愚かで劣等種だからね、ぼきゅたちがきちんと管理してあげないと」

 

 

「その上ひどい香り(パルファム)だ」

 

 

「女王様はここで人間の管理をしているんだ」

 

 

「女王様は素敵な香り(パルファム)さ」

 

 

「勝手に増えすぎると厄介だからね、いらない人間を女王様が決めて──殺しちゃうんだ」

 

 

そう言うナディの冷たい顔を見て、ハッピーはビクリと体を震わせる。

 

 

「な…何でそんな事……」

 

 

「失われつつある魔力を正常化する為だと、女王様はおっしゃった。女王様はこの世界だけでなく、アースランドの人間も管理しておられる」

 

 

「人間の〝死〟を決めてるの?」

 

 

「女王様にはその権限がある。何故ならあの方は、神なのだから」

 

 

「神…!!?」

 

 

全ての人間を管理する神と呼ばれる女王の存在に、ハッピーは驚愕する。すると、今まで黙っていたシャルルが口を開く。

 

 

「私たちの任務って何?」

 

 

「!」

 

 

「私には生まれた時から任務がすり込まれていた。女王の人間管理によって選ばれた──

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ウェンディとエリオの抹殺」

 

 

「え?」

 

 

その任務の内容に、ハッピーは愕然とした。

 

 

「ど…どういう事!!? シャルル!!!」

 

 

「黙ってて」

 

 

「ウェンディとエリオの抹殺ってどういう事だよ!!!!」

 

 

そこまで言うと、ハッピーの脳裏にとある可能性がよぎった。

 

 

「あれ?…それじゃ…オイラの任務って…あれ? まさか…」

 

 

「アンタ、知らなくて幸せ(・・)だったわね」

 

 

シャルルの皮肉めいた言葉と同時に、ハッピーの絶叫に似た叫びが響き渡った。

 

 

「ナツを…オイラがナツを抹殺する任務に………!!!!!」

 

 

生まれた時からの相棒であり…仲間であり…愛する友であるナツを抹殺するという任務の内容に、ハッピーは自分を見失いそうになってしまう。

 

 

「落ち着きなさいオスネコ!!! 私たちは任務を遂行してないし、遂行するつもりもなかった!!! なのにどうして完遂したことになってる訳!!?」

 

 

それを聞いたニチヤとナディは驚いたような表情を浮かべる。

 

 

「記憶障害か?」

 

 

「仕方ありませんよ。〝上書き〟による副作用は未知数なのですから」

 

 

「答えなさい!!!」

 

 

「ぼきゅが説明するよ」

 

 

そう言うとナディが代表して、説明を始めた。

 

 

「女王様の人間管理に従い、6年前100人のエクシードをアースランドに送ったんだ。卵から孵ると滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を捜索し抹殺するように〝情報〟を持たせてね。

 

しかし状況が変わったんだ。人間の作り出した〝アニマ〟が別の可能性を導き出したからね。

 

アースランドの人間を殺すのではなく…魔力として利用するというものなんだ。中でも滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の魔力は別格になるみたいだよ。なので急遽キミたちの任務を変更したんだ。

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を連行せよ」とね」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてナツ、ウェンディ、エリオの3人も……ヒューズから同じ話を聞かされていた。

 

 

「オレたちが本当に欲しかったのはオマエらさ、ドラゴンの魔力。カハッ」

 

 

そんなヒューズの笑いが……静かに響いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その話を聞かされたハッピーは愕然とし、シャルルはその場で力無くへたり込んだ。

 

 

「やはり遠隔での命令上書きでは、うまく伝わらなかったようですね」

 

 

「しかし結果オーライ。お前たちは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を連れて来たのだからな。魔力化(マジカライズ)は人間どもに任せてある。そう言うのは人間どもの方が得意だからな」

 

 

「ち…違う……私は自分の意思で……エドラスに…」

 

 

「ううん…命令を実行しただけだよ」

 

 

「私は…私はウェンディとエリオとキャロが大好きだから、守りたいって……」

 

 

「それは一種の錯覚だね。命令が〝抹殺〟から〝連行〟に……すなわち「殺してはいけない」と変更された事による」

 

 

 

「ウソだあああーーーーーーーーっ!!!!!!!」

 

 

 

涙を流すシャルルの悲痛な叫びが……周囲に響き渡る。

 

 

「お前たちの行動全ては、私たちの命令によるものだ」

 

 

「ああああああ!!!!」

 

 

泣き叫ぶシャルルを見て……ハッピーが涙を浮かべながらも、力強く言い放った。

 

 

 

「オイラたちは操り人形じゃないぞォ!!!!!」

 

 

 

ハッピーのその言葉に、ニチヤとナディは驚愕する。

 

 

「オ…オス……グスッ」

 

 

「オイラたちは……妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だァ!!!!!!」

 

 

「ハッピィ…」

 

 

そんな彼の名前を…シャルルは初めて口にした。

 

 

「行こうシャルル!!!」

 

 

「え?」

 

 

そしてハッピーはシャルルの手を引いて、その場から走り出す。

 

 

「ちょ…!!!」

 

 

「およよよよ…」

 

 

そんなハッピーの行動に戸惑うニチヤとナディ。

 

 

「オイラたちでみんなを助けるんだ!!!! 絶対に助けるんだ!!!!」

 

 

そう叫びながら、ハッピーはシャルルの手を引いてその場か走り去って行った。

 

 

「こ…これは……」

 

 

「堕天…地上(アースランド)の汚れに毒されてしまったエクシードは堕天となる」

 

 

「オオオオオオオーー!!!! メェーーーン!!!! 堕天2人が逃走!!! 近衛師団!!! 出撃ーー!!!」

 

 

それからハッピーとシャルルは、ニチヤが率いる近衛師団から逃げながら街へと飛び出す。

 

 

「どいてどいてー!!!」

 

 

「待て待てーい!! メェーン!!!」

 

 

「あれに隠れよう!!」

 

 

ニチヤたちの追跡を振り切る為、ハッピーとシャルルは近くにあった藁の入った荷車の中に身を隠す。その行動が功を奏し、ニチヤを含めた近衛師団が荷車の前を通り過ぎていく。

 

そしてほっと一息をついたのも束の間……

 

 

ガタン

 

 

「「!」」

 

 

突然何かの拍子に荷車が動き始め、しかもその先には急な坂道がある。となると必然的に……

 

 

「うわあああああああ!!!」

 

 

「きゃあああああああ!!!」

 

 

2人を乗せた荷車は物凄いスピードで坂道を下り降りていった。

 

そのまま街の外へと飛び出しても、荷車のスピードは決して落ちる事無く走り続けた。

 

 

「あっ」

 

 

「シャルル!!!」

 

 

「ハッピー!!!」

 

 

すると、シャルルが荷車から放り出されてしまった。そしてハッピーはすぐさまそんな彼女の手をがっしりと掴んだ。

 

 

「しっかりつかまってて」

 

 

「うん」

 

 

その後も2人を乗せた荷車は走り続け、ようやく止まったのはそれからしばらくしてからであった。

 

 

「ううーん」

 

 

「うう…」

 

 

止まった荷車から放り出された2人は辺りを見渡すと、どこかの畑に来てしまったようである。

 

 

「ハッピー!! あれ見て」

 

 

「! 魔水晶(ラクリマ)が浮いてる!!」

 

 

シャルルが指差す方向を見ると、少し遠くにある浮遊島に巨大な魔水晶(ラクリマ)があった。

 

 

「王都で見たのより大きい……」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のみんなだよ!! あんなところにあったんだ!!」

 

 

その魔水晶(ラクリマ)が、ずっと探していたギルドとマグノリアのモノだと確信するハッピー。

 

 

「ここ…!! 空に浮かぶ島だったのか!!」

 

 

「王都があんな下にあるなんて」

 

 

目の前の崖の下を覗いて見ると、そこには王都の街が広がっていた。どうやらエクスタリアは、王都の上空に浮かぶ浮遊島に存在するらしい。

 

 

「どうやって〝王都〟まで降りよう」

 

 

「今の私たち〝(エーラ)〟が使えないし…」

 

 

これからどうするかを話し合うハッピーとシャルル。すると……

 

 

「おめぇたち、オィラの畑で何しとるだ」

 

 

「!!」

 

 

「しまった!!!」

 

 

振り返ると……そこには口周りにヒゲを生やし、眉毛を一本に繋げたおじさんくさい白い毛並みのネコが、(くわ)をハッピーとシャルルに向けていた。

 

 

「ははーん……兵隊どもが探し回っとる〝堕天〟とはおめぇらの事だな」

 

 

「「…………」」

 

 

「かーーーーっ!!!!」

 

 

「ひいいいっ!!!!」

 

 

「出てけ出てけーっ!!!」

 

 

「あい!!! ごめんなさい!!!」

 

 

凄まじい剣幕で鍬を振り回す白ネコに、ハッピーとシャルルはその場から去ろうとした。しかし……

 

 

「荷車が転がっていったのはこの辺かー」

 

 

「探せー!」

 

 

「はっ」

 

 

「! もう追ってきた…」

 

 

見ると、すでに近くに近衛師団がやって来ていた。

 

 

「かーーーーっ!!!!」

 

 

「うぎゃあ!」

 

 

「畑から出てけーっ!!!」

 

 

「あい!! すぐ出ていきます!」

 

 

「そしてウチに来いっ!!!!」

 

 

「え?」

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……王都の広場では、ついに魔水晶(ラクリマ)からの魔力抽出の儀式が行なわれようとしていた。

 

数多くの王国兵が警備する中、それを大歓声を上げながら見物している民衆たち。そんな民衆たちの中に、ローブで身を隠した3人組が紛れ込んでいた。

 

 

「おいガジル……早くしねえと魔水晶(ラクリマ)から魔力が抜き取られちまうぞ」

 

 

「わかってる。だがこう人が多くちゃ身動きできねえ……」

 

 

「…………」

 

 

その3人組とは…ガジル、ルーテシア、アギトの3人であり、彼らはエドラスの自分たちの報せを受けて、この魔水晶(ラクリマ)がある広場へとやって来ていたのである。

 

しかし警備と民衆の数が多く、身動きが取れない状況へと陥ってしまっていた。

 

 

そんな中……民衆の中に怪しい動きを見せている別の3人組がいた。

 

 

「行きますよルーテシア、アギト」

 

 

「OK♪」

 

 

「が…頑張りマス……」

 

 

そう言って3人組……エドラスのガジルとルーテシアとアギトの3人は、鉄のボルトのような棒を取り出す。

 

 

「おい、あんた何だそれ?」

 

 

「なーに、魔力抽出のお祝いですよ。ちょっと……花火をねっ!!!」

 

 

民衆の1人にそう答えながら、エドガジルはその鉄の棒から花火を発射する。

 

 

パァァアアン!!!

 

 

「花火だーー!!!」

 

 

「いいぞー!!! もっとやれー!!!」

 

 

「何だ!?」

 

 

「花火なんて聞いてないぞ!!」

 

 

それを見てさらに歓声を上げる民衆だが、警備の王国兵は困惑していた。

 

 

「ガジル…あれ」

 

 

「!!」

 

 

「何だ……N?」

 

 

ガジルはルーテシアが指差した方向を見ると、そこにはエドガジルが打ち上げた花火が『N』の文字を作っていた。

 

 

「まだまだ行くわよ~♪」

 

 

「ご…ごめんなさーい!!!」

 

 

そしてエドルーテシアとエドアギトも同様に、次々と花火を上げる。そしてその花火がそれぞれ『O』『R』『T』『H』の文字が浮かび上げた。

 

 

「NORTH……」

 

 

「北?」

 

 

「ギヒッ……そう言う事か」

 

 

その文字を見たガジルは、ニィッと口角を吊り上げた。

 

 

「あとは任せましたよ」

 

 

「がんばってね~」

 

 

「は…早く行きましょう……」

 

 

役目を終えたエドラスの3人組は、民衆に紛れて姿を消した。そしてガジルたちはさっそく、行動を開始する。

 

 

「見ろ!!! あそこに何て書いてある!!?」

 

 

「広場の北だ!!! 怪しい奴等が魔水晶(ラクリマ)を狙ってるみたいだぜ!!!」

 

 

そんなガジルとアギトの叫びを聞いた王国兵は動揺する。

 

 

「なに!?」

 

 

「マズイぞ!! 北側は魔水晶(ラクリマ)の裏だ!!! 固めてる人数が少ない!!!」

 

 

「3分の1を残して北に向かえ!!! 見物人をもっと後ろに下げろ!!!」

 

 

「さ…下がってください!!! もっと後ろへーー!!!」

 

 

そう言って何人かの兵が北側へと向かい、残った兵も見物人の誘導へと回った。そしてそれに戸惑いながらも後ろへと下がる見物人たち。

 

 

「よーし、これで大暴れできるぜ……ギヒッ」

 

 

「久しぶりにいっちょ派手にやるか、ルールー?」

 

 

「うん」

 

 

そしてそれを確認したガジルたち3人はローブを脱ぎ捨てて、警備が手薄になった魔水晶(ラクリマ)へと向かう。

 

 

「あのミストガンってのは胡散臭せえ奴だが、ひとまず今は信じてやるぜ!!!

 

鉄竜棍ッ!!!!」

 

 

「ぐあああ!!!」

 

 

「うああああ!!!」

 

 

まずは腕を鋼鉄の棍棒に変形させたガジルが、王国兵を殴り飛ばす。

 

 

「来て……ガリュー」

 

 

そしてルーテシアは、召喚魔法で自分のもっとも頼れる全身甲冑を纏ったかのような人型の召喚蟲であるガリューを召喚する。

 

 

「お願い」

 

 

「(コクリ)」

 

 

「があっ!」

 

 

「な…なんだこの怪物は!?」

 

 

「ひいい!」

 

 

ルーテシアの願いを聞き届けたガリューは小さく頷くと、目にも止まらぬ速さで王国兵を薙ぎ倒していく。

 

 

「オラァ!!! フレネンス・ヒューガ!!!!」

 

 

「ぎゃああああ!」

 

 

「あ…熱いっ!」

 

 

そしてアギトは得意の炎の魔法で、王国兵に攻撃を仕掛ける。

 

 

「今だガジル!!! 魔水晶(ラクリマ)を!!!」

 

 

「わかってらぁ!!!」

 

 

そう言うとガジルは、そのまま魔水晶(ラクリマ)へと飛び掛り……

 

 

「鉄竜剣!!!!」

 

 

そのまま鋼鉄の剣へと変形させた腕を振り下ろし、なんと魔水晶(ラクリマ)を砕いてしまった。

 

 

「まだまだァ!!! オリャァ!!!!」

 

 

もう一度鋼鉄の剣を魔水晶(ラクリマ)へと叩き込むガジル。すると……

 

 

キィィィィイイイン……

 

 

突然その魔水晶(ラクリマ)が眩い輝きを放ち始める。

 

 

「やったぜ!!! これでギルドのみんなを……」

 

 

「……違う」

 

 

「え?」

 

 

ルーテシアの呟きに首を傾げるアギト。そうしている間に魔水晶(ラクリマ)の光が止むとそこには……

 

 

「な…何ィ!!?」

 

 

「どういう事だよコレァ!!?」

 

 

彼らにとって……予想もしない結果が待っていたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……王国に捕まり、1人独房に閉じ込められてしまったティアナは、自分の両手に付けられた手錠をジッと見据える。

 

 

「……さてと」

 

 

そう呟くと、ティアナは履いているブーツの中から1本の針金を取り出す。そしてその針金を口に銜えてそのまま手錠の鍵穴の中に入れ、カチャカチャと弄くる。すると、カシャンっと音を立てて、手錠が外れた。

 

 

「ふう……まさか昔兄さんが冗談で教えてくれたピッキングが役に立つ日が来るとは思わなかったわ。この世界の手錠の作りが意外と古かったのが救いね」

 

 

そして手錠を外したティアナは一息つきながらゆっくりと立ち上がり、両手にクロスミラージュを握る。

 

 

「換装空間に仕舞ってある武器は取り上げようがないわよね。このまま処刑されるまで待つつもりはないし、さっさと逃がさせてもうわよっ!!!」

 

 

ズドドドドドドドッ!!!!

 

 

そう言うと同時に、ティアナは鉄の扉に向かってクロスミラージュから魔法弾を連射する。

 

 

『何だこの音は!!?』

 

 

『こっちの牢からだ!!!』

 

 

扉の向こうからバタバタと兵隊たちがやって来る足音が聞こえてくる。それを見計らって、ティアナはすでにボロボロになった扉を……

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

ドガンッ!!!

 

 

「ぎゃっ」

 

 

「ぐえっ」

 

 

思いっきり蹴破った。その際に兵隊に2人ほど巻き添えを喰ったらしいが、ティアナは気にしないしする必要がない。

 

 

「囚人が逃げ出したぞーー!!!」

 

 

「捕まえろーー!!!」

 

 

「捕まえられるもんなら捕まえてみなさいっ」

 

 

「「「待てーーー!!!」」」

 

 

そう言って牢屋から出て一目散に逃げていくティアナを、王国兵たちが追って行く。

 

 

そして誰もいなくなったハズの牢屋の中から、何とティアナがひょっこり姿を現す。

 

 

「フフ…幻影魔法(ミラージュ・マジック)〝フェイク・シルエット〟……実体のない幻影を、いつまでも追いかけてなさい」

 

 

そう…先ほど逃げて行ったティアナは彼女が魔法で造り出した幻影だったのである。

 

 

「さて、他のみんなを助けに行かないと……」

 

 

そう言ってティアナが動き出そうとしたその時……

 

 

ジャキン!

 

 

「!」

 

 

後ろから聞こえた音に、ティアナがゆっくりと視線だけ背後に向ける。

 

 

「やはりアースランドの魔導士は侮れませんね。様子を見に来て正解でした」

 

 

そこには、レイジングハートに似た機械的な杖をティアナに突きつけたナノハが立っていた。それを見たティアナは冷や汗を流しながら、ゆっくりと口を開く。

 

 

「……別人とはいえあなたに褒められるとは嬉しいですよ、なのはさん」

 

 

「ほう…アースランドの私と知り合いなのですか?」

 

 

「知り合いも何も、同じギルドに所属する仲間ですから」

 

 

「私が妖精の尻尾(フェアリーテイル)に?」

 

 

「ええ。と言っても…私の知ってるなのはさんは貴女みたいな冷たい無表情じゃなくて、優しくて喜怒哀楽がハッキリしてる人ですけどね」

 

 

「それは人それぞれの個性というものです。しかしそうですか、アースランドの私はそんな人間なのですね。別世界の自分の話を聞くのは、中々興味深いです」

 

 

「お望みとあればもっと話してあげますよ。その突きつけているモノを下ろしてくれたら…ですけど」

 

 

「それは出来ない相談です」

 

 

「ですよ……ねっ!!!」

 

 

「!!」

 

 

そう言うとティアナはすぐさま屈むと同時に、ナノハの足元に向かって足払いを仕掛ける。それを見たナノハは咄嗟に後ろへと飛んで、それを回避する。

 

 

そして両者はそれぞれの武器を構え……

 

 

「クロスファイヤー……」

 

 

「パイロシューター……」

 

 

「「シュートッ!!!!」」

 

 

ズドドドドドドドドォン!!!!

 

 

お互いに魔法弾を連射し、それらは全て相殺され、凄まじい爆音と衝撃が周囲に響き渡る。

 

 

「……名を……聞いておきましょうか」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士……ティアナ・ランスター」

 

 

「そうですか……ではティアナ・ランスター」

 

 

そう言うと、ナノハは杖の切っ先をティアナへと向けて……無表情のまま言い放つ。

 

 

「エドラス王国魔戦部隊総隊長側近……〝星光の殲滅者〟ナノハ・スタークスとその愛機〝ルシフェリオン〟の名において、あなたを殲滅いたします」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

あのあと、おじさんネコ(以後おじさん)の家に連れてこられたハッピーとシャルルは、彼と彼の妻である優しそうな青い毛並みのおばさんネコ(以後おばさん)に匿われていた。

 

 

「あらあら、それは大変だったわね」

 

 

そう言うとおばさんは、ハッピーの大好物である魚料理をテーブルの上に置く。

 

 

「おじさん、おばさん…匿ってくれてありがとう」

 

 

「かーーーっ!!! めしを食え!!! めしっ!!!」

 

 

「あい!!」

 

 

「ありがとう…」

 

 

「ウチの人ってば王国の考え方とソリが合わなくてね、昔追い出されちゃってこんな所で暮らしてるのよ」

 

 

「かーーーっ!!! いらん事言わんでええ!!!」

 

 

「はいはい」

 

 

「そっか…それでオイラたちを…」

 

 

「そんなんじゃねぇやい!!!」

 

 

そう言ってハッピーからプイっと顔を背けると、すぐさま凄い形相で怒鳴り始める。

 

 

「めし食ったらフロ入れー!!! かーーっ!!!」

 

 

「あ…あい……」

 

 

「かーーっ!! これ着ろ!!! かーーっ!! その辺で勝手に休め!!! かーーっ!!!」

 

 

言い方はアレだが、一応ハッピーとシャルルに食事や入浴などをさせてくれたおじさんであった。

 

 

それからひと段落して、ハッピーとシャルルは家の縁側でおばさんと話していた。

 

 

「ハッピーとシャルルって言うのね、素敵な名前。アースランド生まれなんでしょ? 誰が名前をつけてくれたの?」

 

 

「ナツ……友達だよ」

 

 

「私も……そう……友達」

 

 

おばさんの問い掛けに元気に答えるハッピーと、俯きながら答えるシャルル。

 

 

「その友達が王都に捕まってるんだ、オイラたち助けに行かないと」

 

 

「人間を助けるのね」

 

 

「エクスタリアでは、その考え方は間違っているのよね……」

 

 

「そんな事ないわ、素敵な事よ。友達にエクシードも人間も関係ない。だって見た目が違くても〝大好き〟っていう心の形は同じなの」

 

 

「心の形…?」

 

 

「そう…大好きの心の形はみんな一緒」

 

 

そう言って優しい笑顔を向けるおばさんだが、シャルルの表情は晴れない。

 

 

「私の心は…私じゃない誰かによって操られてる。今…話してる言葉さえ、私のものなのかどうか……」

 

 

「シャルルの言葉だよ!! シャルルの心だよ!!! オイラたちがみんなを助けたいって心はオイラたちのものだ!!!」

 

 

そうシャルルに言い放つハッピーの言葉を引き継ぐように、おばさんが口を開く。

 

 

「今はちょっと迷ってるみたいだけど、きっと大丈夫よ。こんな素敵なナイト様が近くにいるじゃない」

 

 

「ナイト様……!!」

 

 

「あなたは自分の心を見つけられる。ううん、本当はもう持ってるの。あとは気付けばいいだけなのよ、〝大好き〟の気持ちを信じて」

 

 

その言葉を聞いたシャルルは……ようやく笑顔を浮かべた。

 

 

「おばさん変わってるのね」

 

 

「そうかしら?」

 

 

「だって…エクシードはみんな自分たちを〝天使〟か何かのように思ってる。人間は劣等種だって言ってた」

 

 

「昔はね…そう言う考えだった。でも子供を女王様にとられてね」

 

 

「「!!」」

 

 

「ドラゴンスレイヤー抹殺計画とかで、100人の子供…卵が集められた。そして自分の子供の顔も見れないまま、アースランドに送られてしまったの」

 

 

「「……………」」

 

 

「その計画に反対したせいで、私たちは王国を追い出された。その頃からね…私たちは神でも天使でもない…私たちはただの〝親〟なんだって気付いたの。そしたら人間だとかエクシードだとか、どうでもよくなってきたわ。ウチの人も、口は悪いけど私と同じ考えなのよ」

 

 

おばさんがそう言うと、おじさんがズカズカと足音を鳴らしながらやって来た。

 

 

「かーーーっ!!! くだらねぇ事話してんじゃねーよ! おめぇらもいつまでいやがる!!!」

 

 

「アナタ…」

 

 

「辛気くせぇ(ツラ)しやがってぇ! 生きてるだけで幸せだろーが! かーーっ!!! 甘えてんじゃねぇぞー!!! 早く出てけーーーっ!!!!」

 

 

「アナタ…そんな急に…」

 

 

「ううん……おじさんの言う通りだよ。オイラたち、早くみんなを助けにいかないと」

 

 

ハッピーのその言葉に、シャルルが頷く。

 

 

「怯えたままじゃできる事もできねぇんだっ!!! 最近の若ぇのはそんな事もわからねぇのか!!!」

 

 

「!」

 

 

そんなおじさんの言葉に、ハッピーは何かに気がつき、表情を引き締めた。

 

 

「ありがとう!! おじさん!! おばさん!!」

 

 

「かーーーっ!!! 二度と来んなーーっ!!!」

 

 

「気をつけておいきー」

 

 

そうしておじさんおばさん夫婦の家を後にしたハッピーとシャルルは、わき目も振らずに走り出す。

 

 

「シャルル!! さっきおじさんの言ってた言葉の意味わかる?」

 

 

「ええ……わかったわ」

 

 

「エドラスについた時、オイラ…不安で一杯だった」

 

 

「そうね、私も…」

 

 

「でも、今は違う!! 進まなきゃいけないから!!!! 飛ばなきゃいけないから!!!!」

 

 

そう言うと、何とハッピーとシャルルは浮遊島から飛び出した。そうすると必然的に、2人は真っ逆さまに地上へと落ちていく。

 

 

「(私たちはエクシード。この世界(エドラス)において、唯一体内に魔力を持つ者。魔法が使えなかったのは、心が不安定だったから

 

ホラ……自分の心の形が見えた時、翼が私たちを前へ進ませる)」

 

 

そしてその瞬間……2人の魔法である〝(エーラ)〟が発動し、ハッピーとシャルルは再び空を翔る力を手に入れた。

 

 

「行こう!!! みんなを助けなきゃ!!!!」

 

 

「あい!!!!」

 

 

そう言って2人は、友達を助ける為に、王都へと飛んでいったのであった。

 

 

そして……そんな2人を見送っている、おじさんとおばさんの夫婦。

 

 

「かーーっ!!! 見やがれマール、ちゃんと飛べるじゃねーか」

 

 

「飛び方がアナタそっくりね、ラッキー」

 

 

「バカ言うない!!! 飛び方なんかじゃねぇ!!! 一目見りゃァ気がつくだろ!!!!」

 

 

「そうね…あの娘、彼女かしら?」

 

 

「かーーーっ、女連れてくるなんて、100年早ェんだョ」

 

 

そう言って大粒の涙を流しながら、2人を見守るラッキーとマール。

 

 

「友達想いの優しい子に育ったのね…」

 

 

「かーーっ、あい…グス」

 

 

そうして2人は涙を流しながらも……大好きな友達を助ける為に王都へと向かった勇敢な息子の姿を……その目にしっかりと焼き付けたのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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