LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

120 / 240
今回の前半は、アニメで描かれたエドラスのその後となっております。


感想お待ちしております。


2つの世界 その後

 

 

 

 

 

ナツたちが去った後のエドラスの様子を、少しだけ語ろう。

 

 

「おーい、レンガもっと持ってきてくれー!」

 

 

「しっかし大魔王とはよく言ったもんだ」

 

 

「あっちこっち壊しやがって」

 

 

「まあまあ、とにかく今は街を再建しないとな」

 

 

「精出していくぞ!! オレたちは魔力なんて無くてもやっていくんだ!!」

 

 

「「「オオーーッ!!!」」」

 

 

王都ではナツたちが破壊した街の再建が行なわれており、意気揚々と取り組む国民たちの顔には、魔力を失った事への悲壮感など一切なかった。

 

 

「ギヒッ…いい具合の活気ですね」

 

 

「だね♪ 久しぶりにいい記事が書けそう」

 

 

「うん!」

 

 

その様子を、エドラスのガジルとルーテシアとアギト……3人組の記者が眺めていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百二十話

『2つの世界 その後』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい!! ちょっと待てぇーー!!!」

 

 

場所は移り、王都の街外れ。そこではルーシィの絶叫に似た叫びが響き渡った。

 

 

「何よクソルーシィ」

 

 

「確かにギルドを引越しさせる手段を考えろって言ったけどなぁ……何だよこりゃァ!!!?」

 

 

そう叫ぶルーシィの目の前には、キャタピラ付きの巨大荷車に入れられたギルドの姿があった。それを見て、ユーノが恐る恐ると言った風にレビィに問い掛ける。

 

 

「お…おいまさかコレ……人力で引っ張るのか?」

 

 

「しょうがないでしょうが、魔力が無くなっちゃったんだから」

 

 

それを聞いていたナツが、こっそりその場を後にしようとするが……

 

 

「逃げる気かよ? アァ?」

 

 

「逃げるのはダメだよナッツ~♪」

 

 

「そ…そんなぁ……」

 

 

両肩をルーシィとティアナの2人に掴まれ、退路を断たれた。

 

 

「あっ、そうだ!! こいつで引っ張ればいいんだ!!」

 

 

そう言うと、ナツは私物である魔導四輪に乗り込む。

 

 

「オレのマシンの威力を見てな……GO!!! FIRE!!!!」

 

 

シーーン……

 

 

当然…車は微動だにしない。

 

 

「ありゃ?」

 

 

「何あれ?」

 

 

「魔力がねーんだから動く訳ねーだろぉ」

 

 

「バカ」

 

 

そんなナツを見て呆れたようにそう言葉を口にするスバルとエリオとキャロ。

 

 

「魔法が使えない魔導四輪って、荷車より使えないって事よ」

 

 

「さすがジュビアちゃん!! 賢い!!」

 

 

「アンタも使えないって事」

 

 

「ヒドイ……」

 

 

ジュビアの辛らつな言葉に落ち込むグレイ。

 

 

「すみませ~ん……」

 

 

「最初から期待してない」

 

 

「ヒドイッ!!!」

 

 

同じくルーシィの厳しい言葉に落ち込んでいたナツを、ティアナが慰める。

 

 

「まあまあ、そのうち魔力以外を動力源にした車を作ってみるから」

 

 

「ティアちゃ~ん……」

 

 

「それに……ワイルドなナッツをもう見れないのは寂しいもん♪」

 

 

「そっちかよ」

 

 

ティアナの言葉にルーシィが小さくツッコミを入れた後、そのままギルドメンバーたちに指示を出す。

 

 

「いいか!! とにかくコイツを王都まで運ぶんだ!! 配置に着け!!!」

 

 

「「「オオーーッ!!!」」」

 

 

そしてギルドメンバーたちは、荷車に繋がれたロープを引っ張ってギルドを運び始めた。

 

 

「「「オーエス!! オーエス!! オーエス!! オーエス!!!」」」

 

 

そんな掛け声と共に必死に荷車を引っ張っていると、ナツがある事に気がついた。

 

 

「って…あのー、何してるの?」

 

 

それは…荷車を引いているのは男性陣のみで、女性陣はそれを離れた所から眺めているだけであった。

 

 

「あーん? あたしらか弱い乙女にこんな重いモン運ばせる気か?」

 

 

「「「か…か弱いって……!!!」」」

 

 

ルーシィの暴論に反論しようとしたが、彼女を筆頭にした女性陣に勝てる気がしなかったので、結局荷車は男性陣のみで運ぶ事となったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

王都城内。そこではバルコニーで街の様子を眺めていた新しい王……ミストガンの姿があった。すると、彼の後ろから1人の兵士が報告に現れる。

 

 

「連れてまいりました」

 

 

「わかった」

 

 

兵士にそう答えながら部屋の中に戻ると、そこにはファウストとハヤテ…ナノハとフェイト…そしてエルザ、ヒューズ、シュガーボーイの各魔戦部隊隊長と、さらにはバイロとココの姿があった。

 

 

「王都は新たな時代に入った。皆の心は未来に向いている。だが、君たちの存在を忘れてしまった訳ではない。然るべき処分を下し、ケジメをつけなければならない」

 

 

「わかっている」

 

 

ミストガンのその言葉に答えたのは、どこか憑き物でも落ちたかのような表情をしているファウストであった。

 

 

「王として、ここに宣言する。ファウスト……あなたに王都よりの追放を命じる。二度と再び、王都へ戻る事は許されない」

 

 

「うむ…」

 

 

「そんな……」

 

 

「父上……」

 

 

ミストガンの命を受け入れるかのように頷くファウストと、それを聞いて顔を俯かせるハヤテとココ。

 

 

「エルザ・ナイトウォーカー……私の許可無くして、王都を出る事は許されない」

 

 

「処刑なら甘んじて受ける。好きにしろ」

 

 

「いや……民と共に、王都の再建に努めよ。バイロ、シュガーボーイ、ヒューズ、エルザ・ナイトウォーカーと同じ処分を下す」

 

 

「!!?」

 

 

その言葉に、目を見開くエルザたち4人。

 

 

「ハヤテ……君はこの国の副王となり、王である私の右腕として働いてもらう。ナノハとフェイトは、副王専属の護衛とする。以上だ」

 

 

「なっ!?」

 

 

「!?」

 

 

「?」

 

 

そしてハヤテたちもミストガンから下された処分に驚愕する。フェイトだけは疑問符を浮かべていたが……

 

 

「どういう事だ?」

 

 

「スゲェっつーか、スッゲェ納得できねえよ!」

 

 

「んーーー、魔戦部隊はお咎めなしって事かい?」

 

 

「一体、どういうおつもりでしゅかな?」

 

 

「罪を償うのだ」

 

 

「ならばいっそ処刑してくれ!! 生き恥を晒すのはゴメンだ!!」

 

 

「そーゆー事、わかる?」

 

 

「もとより覚悟は出来ているからね。んーーー」

 

 

「新しき王よ、これが我々の意志でしゅ。汲み取って頂けましゅかな?」

 

 

「ならん」

 

 

彼らの抗議の言葉を一蹴するミストガン。

 

 

「だったら、私も一緒に罪を償うよう!」

 

 

「ならん。ココ、お前は己の良心に基づいて動いた。それは気高き行為だ。過去はどうあれ、その行為を無にするな」

 

 

「でも……」

 

 

そう言ってココを諭すようにそう言うが、彼女は納得していない。

 

 

「ならば兄上……我を副王にするとはどういう事だ?」

 

 

「それに、護衛が私とフェイトと言うのは?」

 

 

「ハヤテ……君には私よりも王としての資質がある。だがもはや君を王にする事はできない……ならばその資質を、王都の未来の為に私に貸して欲しい。ナノハとフェイトを専属の護衛につけたのは、2人が適任だからだ」

 

 

ハヤテとナノハにそう答えると、ミストガンはさらに言葉を続ける。

 

 

「魔力が無くとも、君たちには人としての素晴らしい潜在能力…そして、知識と経験がある。それを王都の復興に役立てて欲しい。もしもそれが辛いと言うのなら、私が与える究極の〝罰〟だ」

 

 

「それは陛下も……いや、ファウスト殿も同じだろう。何故1人だけ追放する!?」

 

 

「そうだよう!」

 

 

「……もうよい」

 

 

すると、黙っていたファウストが静かに口を開いた。

 

 

「達者でな」

 

 

「父上……!!」

 

 

そう言うと、ゆっくりとミストガンの方へと歩き始める。

 

 

「新たな王の寛大なる処分に感謝する」

 

 

そしてミストガンに小さく頭を下げると、天を見上げながらポツリと言葉を漏らす。

 

 

「別れ際に、あの若者に声をかけた」

 

 

「ええ…気付いていました」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

それは…エドラスの魔力とナツたちがアニマに吸収され始めた時のこと。

 

 

「結束力……」

 

 

「ん?」

 

 

「勇気…信念…私は大切な事を忘れていたようだ」

 

 

天に昇っていくナツを見据えながらそう語るファウスト。その表情は、とても穏やかであった。そしてファウストは、ナツにとある質問を投げかけた。

 

 

 

「ギルドは……楽しいか?」

 

 

 

その質問に対してナツは……

 

 

「ああっ!!」

 

 

屈託のない満面の笑顔で答えたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ギルドは楽しいか……そう聞かれた時の、あの若者の笑顔は生涯忘れん。何故だかはわからんが……では、これにて」

 

 

そう言って再びミストガンに頭を下げると、ファウストはハヤテとココに向き直る。

 

 

「ハヤテ…副王として新たな王を…兄を支えてやれ。ココ、これからもよく走れよ」

 

 

「……言われずとも…その…つもりだ……」

 

 

「はいっ……!!」

 

 

その言葉に、ハヤテとココは涙ながらにそう答えた。

 

 

こうして……前王ファウストは王都を追放された。しかし彼の顔に後悔や悲壮感はなく、まっすぐとした顔付きであった。

 

そして王都の外にある砂漠を1人歩くファウストを見送りながら、ミストガンは彼に向かって天を指すポーズを示した。

 

 

「兄上……それは?」

 

 

「アースランドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)で学んだものだ。たとえ姿が見えていなくても…たとえ遠く離れていても…私はいつでもあなたを見ている…あなたをずっと見守っている……そんなメッセージが込められているそうだ」

 

 

「そうか」

 

 

ミストガンのその言葉にハヤテは満足そうに目を伏せると、後ろに控えていたナノハとフェイトに視線を向ける。

 

 

「これから忙しくなる。2人とも着いてまいれ」

 

 

「了解です、王よ」

 

 

「どこまでも着いて行くよ王様ー♪」

 

 

「たわけ!!!」

 

 

「「?」」

 

 

突然の叱咤の言葉に疑問符を浮かべるナノハとフェイト。するとハヤテはそんな2人に向かって……

 

 

 

「王ではない……ハヤテだ」

 

 

 

と……優しい笑顔でそう言った。

 

 

「あ……ハヤテ……」

 

 

「ハヤテェ……!!」

 

 

2人にとって願いとも言うべきハヤテの優しい笑顔を目にして、ナノハとフェイトは嬉しそうに涙ぐんだ。

 

 

「ゆくぞ……今度こそ着いてまいれ、我が掛け替えのない友よ」

 

 

「はいっ…!!」

 

 

「おおーっ!!」

 

 

こうして……王都は新しい未来へと進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……エドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)は……

 

 

「ハァ~楽ちん楽ちん♪」

 

 

「落ち着きますわね~」

 

 

「ほっこりするね~」

 

 

「お茶が美味しい~」

 

 

「だね~」

 

 

そう言いながらギルドのテーブルでのんびりとお茶を楽しんでいるギルドの女性陣。

 

 

『『『中に乗るなーーっ!!! しかもお茶すんなーーっ!!!!』』』

 

 

外から絶賛引越し中の男性陣の叫びが響き渡ったが、女性陣がそれを取り合うことはなかった。

 

 

そんな出来事がありながらも、妖精の尻尾(フェアリーテイル)は王都へと到着した。

 

 

「引越し終了!!!」

 

 

「「「お疲れっした~……」」」

 

 

元気なルーシィとは裏腹に、疲労で死屍累々と地面に転がる男性陣。

 

 

「なんだありゃ?」

 

 

「建物が移動してきたぞ」

 

 

「おい、あのマークひょっとして……」

 

 

そんな彼らの姿を見てざわついている王都の住民たち。すると……

 

 

「王都のみなさ~ん!」

 

 

「「「私たちは妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!!」」」

 

 

「お困りの事があれば是非うちへ!!」

 

 

「よろずトラブル解決しますわ~!!」

 

 

「金額は要相談!!」

 

 

「今なら新装オープン記念で格安ー!!」

 

 

「よろしくーー!!」

 

 

ギルドのキレイ所の女性陣が愛想よく笑顔でそう呼びかける。

 

 

「おおーそりゃ助かる!!」

 

 

「大魔王に屋根壊されちゃってさ、直してくれる?」

 

 

「レンガ職人の数が足りねえんだ、誰か寄越してくれ~!」

 

 

「「「「よろこんで~♪」」」」

 

 

さっそくの依頼を快く承諾する女性陣。

 

 

「屋根直せとか言ってんぞ……」

 

 

「レンガを焼けってのもあるよな……」

 

 

「ってか、確実にオレら男に回ってくるよなその仕事……」

 

 

「鬼だ……」

 

 

そんな彼女たちとは裏腹に、男性陣の顔は暗かった。

 

 

「さあ!!! 稼げっ!!!」

 

 

「「「むご過ぎるぅ~~……」」」

 

 

 

 

 

エドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)は、今日も(一部を除いて)元気だった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方こちらは、アースランドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「リサーナが戻ってきたぞ~!!!」

 

 

「今日は仕事しねえ!!! 飲むぞ食うぞー!!!」

 

 

「おかえりリサーナ!!」

 

 

そこではリサーナが生きて帰ってきた事を祝って、盛大に宴が開かれていた。

 

 

「なんかギルドも変わってるし、ミラ姉も雰囲気変わってるけど」

 

 

「そう?」

 

 

「やっぱり妖精の尻尾(フェアリーテイル)妖精の尻尾(フェアリーテイル)だね」

 

 

ようやく帰ってきた自分の本来のギルドを見て、リサーナは嬉しそうにそう言う。

 

 

「めでてぇ日だぜベイビー」

 

 

「本当に無事でよかった」

 

 

「おかえり、リサーナ」

 

 

そんなリサーナに、雷神衆の3人とフェイトが歩み寄る。

 

 

「雷神衆!! ギルドにいるなんて珍しいね」

 

 

「私はもう違うけどね」

 

 

「そんな事ないわよ。だって私こそ妖精ですもの!」

 

 

「何か髪型変わってる」

 

 

そう言うエバーグリーンの髪形は以前と違い、降ろした髪にウェーブがかかっていた。

 

 

「ジトーーーー」

 

 

「うわっ、こっちも!!!」

 

 

「雨?」

 

 

そして何やら落ち込んでいるジュビア。その髪型は以前のファントム時代の髪型に戻っていた。

 

 

「ジュビア、どうしたのかしら」

 

 

「元気ないようだね」

 

 

そんなジュビアを見て首を傾げるルーシィとユーノ。その原因は、ハッピーがジュビアに言った言葉が起因している。

 

 

『エドラスではグレイの方がジュビアにホレてるんだよ』

 

 

『何ですって!!?』

 

 

『髪型かな』

 

 

この会話が原因で……現在に至る。

 

 

「(ジュビア…エドラスに行きたい!!)」

 

 

「そーゆー事か……」

 

 

そんなジュビアに、ルーシィは呆れたように嘆息した。

 

 

「えーーっ!!? ティア、エドラスのなのはさんに勝ったのー!!?」

 

 

「まぁ…一応ね」

 

 

スバルの言葉に少々照れ臭そうにそう答えるティアナ。

 

 

「へぇ~ティアナも強くなったんだ。それじゃあ今度は私と戦ってみる?」

 

 

「え…遠慮しておきます……」

 

 

そう言っていい笑顔でレイジングハートを構えるなのはを見て、ティアナは全力で首を横に振ったのであった。

 

 

「やっぱギルドは最高だぜーーー!!!」

 

 

「うわっ、喧しい!」

 

 

「暴れんじゃねえナツ!!」

 

 

「向こうのナツもこんな感じなのかよ」

 

 

「ご愁傷様な事で……」

 

 

「あはは、それがねっ、ボ…ボク、ルーシィさんにいじめられて…みたいな?」

 

 

「ぶははははっ!」

 

 

「見てえ!! そのナツ超見てえ!!」

 

 

「かわいいのよー♪」

 

 

エドラスでのナツを笑いの種にしてさらに盛り上がるギルドの面々。そんな彼を見て、新しいメンバーであるリリーとリニスは感想を口にする。

 

 

「さ…騒がしいギルドだな」

 

 

「ですね……」

 

 

「第一印象はみんな同じなのね」

 

 

「楽しいトコだよ」

 

 

「ここに居る者全員が、体内に魔力を持っているというのか」

 

 

「そう考えると……すごいですね」

 

 

そう言ってゴクリと固唾を飲み込むリリーと、純粋に感心するリニス。するとそんな2人に、エルザが歩み寄る。

 

 

「そうだ、それがアースランドの魔導士」

 

 

「エルザ!!」

 

 

「そーいえば、アンタたちエドラスじゃエルザと同僚だったのよね」

 

 

「正確には、なのはとフェイトもそうですね」

 

 

「また一緒だね」

 

 

「しかし大切なのは魔法そのものではない。魔法を持つ者の心……そうだろリリー、リニス」

 

 

「別人とはいえ……知ってる顔が複数いると落ち着くモンだな」

 

 

「あとでこの世界のなのはやフェイトに挨拶をしなければなりませんね♪」

 

 

そんな会話をしていると、彼らのもとにまた新たな人物が歩み寄る。

 

 

「あっ、その子たちが新しいギルドの仲間やね。初めまして、私は……」

 

 

「「は…ハヤテ様!!!」」

 

 

その人物……はやてを見た瞬間、リリーとリニスは無意識に姿勢を正す。

 

 

「話には聞いとったけど、ホンマに私はエドラスじゃ王女様やったんやなぁ」

 

 

そんな2人を見て、はやては思わず苦笑いを浮かべる。

 

 

「私は八神はやて。この世界じゃ王女でもなんでもない、ただの1人の魔導士や。そう硬くならんと、これからよろしゅうな、リリーにリニス」

 

 

「はい……いや、こちらこそよろしく頼む、はやて」

 

 

「よろしくお願いします、はやてさん」

 

 

そう言って笑顔を浮かべながら手を差し出してくるはやてを見て、リリーとリニスは態度を改めて彼女と握手を交わした。すると……

 

 

「コラァ!!! 火竜(サラマンダー)!!!! 小僧ぉ!!!! 小娘ぇ!!!! オレのリリーと青猫、白猫、人猫勝負させろやァ!!!」

 

 

「ア?」

 

 

ガジルのその言葉に反応するナツ。

 

 

「2人とも、ガジルさんに目をつけられちゃったね」

 

 

「あう…」

 

 

「あはは…」

 

 

キャロの同情に似た言葉に唸るウェンディと苦笑いを浮かべるエリオ。

 

 

「望むところだァ!!!」

 

 

「ギヒッ」

 

 

「望まないでよ」

 

 

「言っておくが、オレのリリーは最強と書いて最強だぜ!」

 

 

「ハッピーは猫と書いて猫だぞコノヤロウ!」

 

 

本人たちを差し置いて睨み合うナツとガジル。

 

 

「あのさ……オイラ一瞬で負けちゃうよ?」

 

 

「だらしないわね…やる前から諦めてどうすんの?」

 

 

「オイラ期待されてる!!」

 

 

「いえ…やめておきましょう。こう見えても私とリリーは部隊を率いておりましたので」

 

 

「無駄なケンカはケガをするだけだ」

 

 

「相方と(ちご)ぉて大人なんやな」

 

 

「奴等が幼稚なのでは」

 

 

「エクシード同士仲良くやりましょう、ハッピー、シャルル」

 

 

「リリー、リニス」

 

 

「フン」

 

 

どうやらナツたちと違ってエクシード組の関係は良好らしい。

 

 

「……で、なんで本人たちがケンカしてんのよ」

 

 

「グレイとエルフマンまで混ざってる」

 

 

「ヴィータとシグナムもや」

 

 

ちょっと目を離した隙にナツとガジルの睨みあいは殴り合いのケンカに発展しており、何故かその中にグレイやエルフマン、ヴィータやシグナムといった他数名も混ざっていた。

 

 

「激しくぶつかり合う肉体と肉体…ジュビアも!!」

 

 

「グレイじゃないんだから脱いじゃダメ!!!」

 

 

何を勘違いしたのか、そこに服を脱いで飛び込もうとしたジュビアをなのはが止める。

 

 

「たまには便乗して暴れるのも悪くない」

 

 

「ヒャッハー!! そう来なくっちゃ!!!」

 

 

「まぁ…たまにはよかろう」

 

 

「じゃあ僕も!!!」

 

 

そう言ってフリード、ビックスロー、ザフィーラ、エリオも喧騒の中へと身を投じる。

 

 

「あわわ……エリオ君までぇ…」

 

 

「結局こうなるのよね~」

 

 

それを見てアワアワとうろたえるウェンディと、呆れながらそう言うティアナ。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこうでなくちゃ……でしょ? ティア」

 

 

「リサーナ……それもそうね」

 

 

自分の隣に歩み寄ってきたリサーナの言葉に、ティアナは同意しながら笑みを浮かべた。

 

 

「やれやれ」

 

 

そしてその光景をカウンター席に座りながら眺めているマカロフとギルダーツとクロノの3人。

 

 

「ミストガンの事は残念じゃったが…そのエドラスとやらで元気にしてる事を願おう」

 

 

「元気ですよ、彼は」

 

 

「このギルドで育ったんだ、元気に決まってる」

 

 

クロノとギルダーツの確信めいた言葉に、マカロフはニカッと笑みを浮かべる。

 

 

「ギルダーツ、クロノ、しばらく町にいるのか」

 

 

「うーん、どうすっかなァ」

 

 

「僕は一度実家に顔を出したら、しばらくは町でゆっくりするつもりですよ」

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ここは……新たに編成された、新生魔法評議院。

 

 

「けしからん!!!! 何じゃこの始末書の量は!!!」

 

 

そう言って長机の上にドサリと置かれる大量の紙の束。

 

 

「これが全て1つのギルドが起こした問題だというのか!!?」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「先代からの頭痛のタネだよ」

 

 

「それほど角を立てる事でもなかろう。バラム同盟の六魔将軍(オラシオンセイス)を壊滅させた労はある」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)を庇護するようにそう言うのは、先代から引き続き在籍する事となったオーグ老師である。

 

 

「評議会が作戦を許可したという記録はないぞよ」

 

 

「地方ギルド連盟の独断で行なわれてますな」

 

 

「厳密に言えば、たとえ闇ギルドといえど、ギルド間抗争禁止条約に反しておるわい」

 

 

「さらにこの件により、バラム同盟の正規ギルドへの報復もありえるぞ」

 

 

「いや…それはないな。奴等は同盟といっても単なる不可侵条約にすぎん」

 

 

「それよりも奴等はジェラールを〝仲間〟と言ったなどという報告まで入っておる」

 

 

「危険な思想を持っておるな」

 

 

「……………」

 

 

口々にそう言う議員たちの言葉に、オーグがバツの悪そうな表情でヒゲを撫でていると……

 

 

「あら? そんな事はないんじゃないかしら?」

 

 

老人が多い議員たちの中でただ1人…若い女性の声が響き渡る。

 

 

「経過はどうあれ、ジェラール・フェルナンデスと共に六魔将軍(オラシオンセイス)を壊滅させ、超反転魔法ニルヴァーナを破壊したのは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を含めた地方ギルド連盟。

 

対して私たち新生評議院がした事といえば……傘下ギルドの捕縛や、彼らに敗れて動けなくなった六魔将軍(オラシオンセイス)の逮捕といった、いわゆるオイシイとこ取り。独断で行なわれた作戦とはいえ、せめて労いの言葉を掛けてあげればいいのにそれも無し。客観的に見れば、どっちが正義の組織かしらね?」

 

 

「口を慎め!!! リンディ・ハラオウン!!!!」

 

 

クスクスと妖艶に笑う女性の言葉を聞いて、1人の議員がドンッと机を叩いて彼女…リンディに怒鳴る。

 

 

「我々評議院は新しくなった!!!! 何が〝新しい〟のか!? 国民に示さねばならん!!!!」

 

 

「失われた信頼を取り戻す為に、問題あるギルドは厳しく取り締まるのじゃ」

 

 

「議長」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に次は無い。次はギルドを解散させる」

 

 

魔法評議院の新議長、グラン・ドマの言葉を聞いて、他の議員たちは賞賛するように盛大な拍手を送る。

 

そんな中…オーグは眉間を押さえ、リンディは小さく嘆息していた。

 

 

 

「全ては魔法界の聖なる秩序の為に!!!!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は戻り、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

そこでは既に騒ぎ疲れたギルドの面々が思い思いの場所で、盛大な寝息を立てていた。

 

 

「みんなどんだけ騒いだのかしら」

 

 

「さぁね……ふわぁ」

 

 

そんな中で目を擦りながら起き上がるルーシィと、欠伸を噛み殺しながら起き上がるティアナの2人。

 

そんなルーシィの目に、3人兄妹で寄り添いながら仲良く眠っているミラジェーン、エルフマン、リサーナの姿が映った。

 

 

「(よかったね、ミラさん、エルフマン)」

 

 

心の中でそう呟きながら笑みを浮かべると、今度は床で盛大なイビキをかいているナツの姿が視界に入る。

 

 

「ねえティアナ、ナツでも寂しいとか思う時あるのかな?」

 

 

「何よやぶから棒に?」

 

 

「いや……ミラさんたちを見てたら、ナツもイグニールに早く会いたいんだろうなぁって」

 

 

「……まぁ…そうね。最近は少なくなったけど、ギルドに入ったばかりの頃は毎日イグニールを探して街の周辺を探し回っていたわ。たまに1人っきりになって泣いてる事もあったらしいわよ」

 

 

「らしい…って?」

 

 

「リサーナから聞いたの」

 

 

ティアナのその言葉にルーシィは「なるほど」と納得すると、眠っているナツの顔を覗き込む。

 

 

「(眠ってればかわいいトコあるのに)」

 

 

「か…」

 

 

「んー?」

 

 

「か…か…」

 

 

何やら寝言言っているナツの顔を笑顔で見守っているルーシィ。

 

 

「あ…ルーシィ、あまり寝てるナツに近づかない方がいいわよ。そいつ時々寝相で──」

 

 

そんなルーシィにティアナがそう言いかけた瞬間……

 

 

「火竜の鉄拳~♪」

 

 

「ぐひゃあ!」

 

 

「殴って来るから──って、遅かったわね」

 

 

ルーシィは寝惚けたナツの拳に殴り飛ばれて屋根を突き破り、そのまま夜空の向こうへと消えていった。

 

 

「かかかかっ!!! 参ったかグレーイ!! ムニャ」

 

 

「ハァ……寝てても騒がしい奴ね」

 

 

未だに寝言でそう言っているナツに、呆れながらも歩み寄るティアナ。

 

そして先程のルーシィと同じように顔を覗き込みながら、そっとナツの頬に手を添える。

 

 

「いつか会えるといいわね……イグニールに」

 

 

そう言ってティアナはナツの頬を愛おしそうに、優しく撫でたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廻り始める……とある1つの歯車が……

 

 

静かに…ゆっくりと…誰にも気付かれる事なく…ただ廻る。

 

 

本来なら決して関わるハズのなかった物語。

 

 

だが運命は彼らを選んだ……それがどんな結果を生むのかは、誰に分からない。

 

 

それでも廻り続ける……〝運命の歯車〟が……

 

 

 

 

 

つづく




え?天狼島編?まだやりませんよ。
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