LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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前回の感想でシナナ様から『ヴィヴィオはエリオに対してタメ口』という指摘を受けましたので、前回の話を少々修正しました。ご確認ください。

今回の話は、色々と端折った部分があると思いますが、どうかご容赦ください!!

感想お待ちしております。


逃亡劇

 

 

 

 

 

 

奇妙な魔力の正体を追って街の散策を行なったナツたち。

 

そこで彼らを待ち受けていたのは過去の自分と今までに戦った敵……そしてヴィヴィオとアインハルト…トーマとリリィという少年少女であった。

 

そして現在、彼らはビルの屋上で自分達の状況と今後について話し合っている。

 

 

【周辺警戒。周辺100km圏内に脅威判定なし】

 

 

「にゃあ、にゃあー」

 

 

【猫型端末によって、ブック本体に軽度の損傷。能動排除の許可を願います】

 

 

「ダメだよ、銀十字!」

 

 

「(ふるふる)」←ティオをたしなめる動き

 

 

「にゃあ」

 

 

「クリスさんの言うとおりです。銀十字さんを噛んだらダメです、ティオ。めっ!」

 

 

「にゃあー」

 

 

「あらあら」

 

 

「まったく、どうしようもないネコだよ」

 

 

「どうしようもないのはアンタも一緒でしょ、ハッピー」

 

 

「ガーン!!」

 

 

話し合って……いた?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百二十四話

『逃亡劇』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……魔導書とウサギとネコどもが仲良くしている間に、真面目な話をするわよ」

 

 

「「はい!」」

 

 

「うん!」

 

 

ティアナがが真面目な表情でそう言うと、トーマとヴィヴィオが返事を返した。

 

 

「アンタたちの話だと、この世界は『チキュウ』と呼ばれる世界で、しかもアンタたち4人にとっては過去の世界に当たる……って事ね」

 

 

そう言ってティアナはヴィヴィオたち4人から聞いた情報を簡単に纏めて確認し、それに対して4人は頷いて肯定する。

 

 

「そして、アンタ達4人はそれぞれ別の未来からやって来た」

 

 

「私とアインハルトさんは新暦79年から」

 

 

「私とトーマは、新暦82年から」

 

 

「3年、ズレているんですね」

 

 

【現在の時間滞在軸。新暦66年】

 

 

「13年前──」

 

 

「私達からすると、16年前」

 

 

「ヴィヴィオはまだ、俺とは直接会ったことがなくて──」

 

 

「うん。スバルさんと居る時に、通信で話しただけ」

 

 

「3年前なら、私とも会ってないよね──まだトーマとも会ってない頃だし」

 

 

「……ええと……」

 

 

ヴィヴィオとトーマとリリィの会話に、一人ついていけないアインハルト。

 

 

「あ、ゴメンね、アインハルト」

 

 

「すみません、説明します」

 

 

そんなアインハルトに3人は謝罪しながら彼女に説明した。

 

 

「トーマはスバルさんの弟みたいな子で、私は通信でちょっと話したことがあって」

 

 

「戦闘中はあんなナリになっちゃうけど、別に怪しいモンじゃないっていう」

 

 

「はい」

 

 

「で、二人はまだ知らないと思うけど、私は──」

 

 

リリィはそこまで言いかけて、トーマに目配せをする。恐らく未来の事をどう説明するかで迷っているのだろう。そして考えが纏ったのか、再び口を開く。

 

 

「えと、私はトーマとはちょっと切っても切れない繋がりがあって……それで、いつも一緒にいる間柄で」

 

 

「リリィ、その言い方は誤解を招くかもしれない」

 

 

「でぇきてぇる」

 

 

「出来てないし巻き舌風に言うな!! オレとリリィは大事な友達で、コンビのパートナー。これでオーケー」

 

 

「イエス、オーライ。そんな感じ」

 

 

「はい。なんとなく、わかりました」

 

 

リリィの説明をすぐにトーマが止めて、ハッピーの発現にツッコミつつ補足説明を入れる。そんな説明を聞いて、アインハルトはとりあえず納得する。

 

 

「それで……ティアナさんたちは、この世界とはまったく違うアースランドっていう世界からこの世界に飛ばされてやってきたんですよね?」

 

 

「そうよ」

 

 

「私たちの知ってるティアナさんやエリオとはまったくの別人で、その世界では私やなのはママたちも存在していて、みんなフェアリーテイルっていうギルドの魔導士……でいいんですよね?」

 

 

「そうだよ。そしてこれが、そのギルドの証である紋章」

 

 

「オレたちの誇りだ」

 

 

ヴィヴィオの問いに答えながら、ナツとエリオは自身の肩に刻まれたギルドの紋章を見せる。

 

 

「因みに私のはここね」

 

 

そしてティアナもスカートを小さく上げて、太ももに刻まれた紋章を見え易くする。

 

 

「わわっ……!!!」

 

 

そんなティアナの仕草を見たトーマは顔を赤くするが……

 

 

「ふんっ!」

 

 

「痛たっ!!?」

 

 

その瞬間、ナツに殴られた。

 

 

「何するんですか!?」

 

 

「何かムカついた」

 

 

そんな理不尽な理由で殴られたトーマは何か言いたげな顔をするが、それをグッと堪えて話を進めた。

 

 

「ともかく、オレたちはそれぞれの未来と世界から急に飛ばされてきた。どうにかして元の時間、元の世界に帰りたい」

 

 

「そのための方法を、あの子が……」

 

 

そう言ってリリィは銀十字を指すが…

 

 

「にゃーん」

 

 

【猫型端末の起毛、ページ間に侵入。自動除去します】

 

 

未だにティオに噛まれていた。

 

 

「……銀十字が調べてくれてる。ティオにゃん、ちょっとこっち来ようかー?」

 

 

「にゃー!」

 

 

リリィはそう言って銀十字からティオを引き離そうとするが、ティオは鳴き声を上げて拒否した。

 

 

「嫌がってるね」

 

 

「みたいね」

 

 

「噛み心地がいいのでしょうか…それともおいしい?」

 

 

そんなティオを見て、ハッピーとシャルルとリニスが口々にそう言う。

 

 

「ティオ! もう、こっちに来ていなさい!」

 

 

「にゃ…」

 

 

持ち主(飼い主?)であるアインハルトにそう言われ、ティオは渋々彼女の手元に戻った。

 

 

「ティオ、怒られたー」

 

 

「にゃーん」

 

 

悲しそうな声を上げるティオを、クリスが必死に慰めていた。

 

 

「それで、元の世界に戻る方法の検討はついたの?」

 

 

「うん。私達と同じように未来から来た人達がいるはずなの。その人達が見つかれば──」

 

 

「そいつが、時間移動なんてトラブルを起こした張本人かも、って──?」

 

 

エリオの問い掛けにヴィヴィオがそう答え、トーマが付け加えるようにそう言う。すると、ティアナが衝撃的な言葉を言い放つ。

 

 

「ああ、そいつの目星ならもうついてるわよ」

 

 

「「「ええっ!!?」」」

 

 

サラリとそう言ったティアナに全員が驚愕する。

 

 

「昨日の夜……こっちの世界じゃディアーチェだったかしら? そいつの隣に、桃色の髪をした女の子が居たのを覚えてない?」

 

 

「んー……そういや居たなぁ。戦ってたからあんま気にしてなかったけど」

 

 

「あい」

 

 

「確か名前は……キリエ・フローリアンとか言ってたわね」

 

 

「その人がどうかしたんですか?」

 

 

「そいつ、私とシャルルの事を〝異世界の迷い人〟って呼んでたから、たぶん間違いなく……」

 

 

「その人が今回のトラブルの発端かもしれない……ですね?」

 

 

リニスの問い掛けに、ティアナは静かに頷いて肯定する。

 

 

「それじゃあ、まずはその人を見つければなりませんね」

 

 

「でも、どこを探したら……」

 

 

肝心なキリエの居場所が分からず、どうするかを考え込むヴィヴィオ達。すると……

 

 

「ん?」

 

 

「あっ」

 

 

ナツとエリオが何かを感じ取ったかのように、空の向こうへと視線を向ける。そんな2人にアインハルトが問い掛ける。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

「匂う……知ってるニオイが急に現れやがった」

 

 

「数は大体……1…2…3……7人です」

 

 

「?」

 

 

「えっと……何の話を……」

 

 

ナツとエリオの言葉にヴィヴィオやトーマが首を傾げていると……

 

 

【転送反応確認。脅威判定7体】

 

 

トーマの銀十字からそんな報告が入った。

 

 

「7っ!?」

 

 

「おまけに、どうやらその中には、あのキリエという人が混ざってるみたいです」

 

 

「どうして分かるんですか?」

 

 

「オレとエリオが鼻が利くからな、ニオイで分かる」

 

 

「に…ニオイって……」

 

 

「犬みたいですね……」

 

 

ヴィヴィオとアインハルトがそう声を漏らしたが、当の2人は特に気にしていなかった。

 

 

「ナツ、キリエ・フローリアンの居場所は分かる?」

 

 

「ちょっと待て……色んなニオイが混ざって分かりづれぇけど、大体あっち側だ」

 

 

ティアナの問い掛けに答えながら、ナツは西方面を指差してそう言う。

 

 

「じゃあ行こうよ、その人のところに」

 

 

「でも脅威判定7体って、コレ追っ手だよね?」

 

 

「なのはさん達かもしれないけど──八神司令は来ませんように、来ませんように──」

 

 

「(トーマさんは、八神司令に何か辛い思い出が……?)」

 

 

「(さ、さあ……私にはちょっと……)」

 

 

はやてに対して何かしらのトラウマがあるのか、切にそう願うトーマだが……

 

 

「はやてのニオイもしてんぞ」

 

 

「orz」

 

 

ナツの言葉を聞いた瞬間トーマは膝から崩れ落ちた。

 

 

「キリエ・フローリアンを抜いて追手は6人だとしたら、人数的には互角ね」

 

 

『(スルーした…!)』

 

 

落ち込んでいるトーマをスルーしながら、ティアナは作戦を練る。

 

 

「こう言うときは散り散りに逃げて敵の戦力を分散させるのが定石だけど、お互いに連絡が取れないと後の合流が難しくなる……何か連絡を取る方法があればいいんだけど」

 

 

「ティアナさんたちは、念話は使えないんですか?」

 

 

「ええ。私たちは思念伝達系の魔法はまったく使えないわ」

 

 

「えっと…オレたち全員、念話できますよ」

 

 

「ホント?」

 

 

トーマのその言葉を聞いた瞬間、ティアナの頭の中で作戦が纏り、さっそくそれを全員に伝えた。

 

 

「みんな聞いて。ここからはハッピーたちを含めて3人1組で三手に分かれて逃げるわよ」

 

 

「何で逃げんだよ!!? 追っ手なんざぶっ飛ばしちまえば──へばっ!!!」

 

 

異論を唱えようとしたナツだが、ティアナの拳骨の前に呆気なく沈んだ。

 

 

「で…各々追っ手を何とか撒きつつ、キリエ・フローリアンのもとへ向かう…それでいいわね?」

 

 

説明を終えたティアナは他のメンバーに問い掛けると、全員(沈んでるナツ除く)肯定するように頷いた。

 

 

「もし追っ手の人と戦う事になっても、なるべく穏便に済ませましょう。万が一大怪我でもさせたら、こっちが悪者になっちゃうから」

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

全員からの肯定を受け取ったあと、ティアナは地面に沈んでいるナツの胸倉を掴んでムリヤリ起き上がらせると……

 

 

「いいわねナツ……戦う事になっても『穏便』に済ませるのよ。もし後で何かしらの問題になるような事をしでかしたら……それなりに覚悟してもらうわよ?」

 

 

「あ…あい……」

 

 

ティアナは低くドスの効いた声で暴走しがちなナツに釘を刺し、それを聞いたナツは冷や汗を流しながら頷いたのだった。

 

 

「ティアナさんって……あんな方でしたか?」

 

 

「いえ…私の知ってるティアナさんはもうちょっと穏やかですよ……たぶん」

 

 

「こ…怖いよトーマ……」

 

 

「うん…こっちのティアさん……怖いな……」

 

 

「大丈夫だよ、ナツ限定だから」

 

 

その光景を見て、軽く怯えているヴィヴィオたちにハッピーがそう言う。

 

 

「さて…それじゃさっそく3チームに分かれるわよ」

 

 

ティアナのその言葉を発端に、短い話が行なわれたのち、3チームが出来上がった。そのチームとは……

 

 

「よろしくな、トーマ!」

 

 

「あ、はい…よろしくお願いします、ナツさん」

 

 

「ナツでいい。かたっ苦しいのはキライなんだ」

 

 

「……わかった。よろしくな、ナツ、ハッピー!」

 

 

《よろしくね、ナツ君にハッピー》

 

 

「おう!」

 

 

「あい!」

 

 

ナツ&ハッピー&トーマ(inリリィ)チーム。

別名『主人公&相棒チーム』

 

 

「その姿って、変身魔法?」

 

 

「私は大人モードって呼んでます」

 

 

「ずいぶん大きな10歳になるのね」

 

 

ティアナ&シャルル&ヴィヴィオチーム。

別名『ヒロインチーム』

 

 

「よろしく、アインハルト」

 

 

「よろしくお願いしますね」

 

 

「あ、はい……こちらこそ」

 

 

エリオ&リニス&アインハルトチーム。

別名『特になし』

 

 

この3チームに分けられた。

 

 

「おしっ!!! 行くぞォ!!!!」

 

 

「「「おおっ(はいっ)!!!」」」

 

 

そしてナツの号令と共に、3つのチームはバラバラに分かれて空へと飛んで行ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

side

 

 

西の方角へと向かって空の上をしばらく飛行していたナツとトーマの2人。すると、彼らの目の前に現れたのは……

 

 

「いいッ!? 八神司令にヴィータ師匠!!?」

 

 

「あ、また『司令』? なんなん、それ?」

 

 

「師匠? 弟子なんか取った覚えはねーぞ」

 

 

「あ、いや……」

 

 

「おー、はやてにヴィータじゃねーか」

 

 

「ホントだー!」

 

 

「こっちの人とネコちゃんはだいぶフランクやのにな~」

 

 

彼らの前に立ち塞がったはやてとヴィータを見て、三者三様の反応を見せるナツたち。

 

 

《トーマ! 八神司令、やっぱりちっちゃカワイイよ! なでなでしたい》

 

 

「いや、ちっちゃくても八神司令だから! きっと怖いに決まってるから!」

 

 

ヒソヒソと小声でそんな会話をするトーマとリリィだが……

 

 

「あー、だいたい聞こえてるんやけど……」

 

 

はやての耳にはバッチリ聞こえていた。

 

 

「はやてに失礼な事言うな!! それにそんな物騒な武器ぶらさげて、2人ともそんなタトゥーなんぞ入れやがって。どこの不良少年だまったく!」

 

 

「あの、この模様はタトゥーじゃなくて……」

 

 

「この紋章はタトゥーじゃねえ!!」

 

 

「それに融合騎と使い魔もだ! マスターのやんちゃは融合騎や使い魔がいさめて止めてナンボだろーが!」

 

 

《いえその、私は融合騎じゃなく、リアクトプラグで……》

 

 

「オイラも使い魔じゃありません、ネコです」

 

 

「んな羽の生えたしゃべるネコがいるか!! どっからどー見ても使い魔だろ!!!」

 

 

「ハッピーは使い魔じゃねえ!! オレの大事な相棒だ!!!」

 

 

「まぁまぁヴィータ、落ち着いて」

 

 

憤慨しているヴィータを、はやてが宥める。

 

 

「それよりもしかして、私たち未来で知り合い? 未来の私とヴィータってトーマ君にはおっかないんか?」

 

 

「い…いえ!! そんな事は全然!! まったく!!!」

 

 

《私もトーマもアイシスも……3人揃って可愛がっていただいてます、ハイ》

 

 

「(んなビクビクしながら言われても説得力ねーっての)」

 

 

「(やっぱり怖がられてる──未来の私は何をしてるんやろーか)」

 

 

取り繕うようにそう言うトーマとリリィを見て、呆れるヴィータと未来の自分に疑問を抱くはやて。

 

 

「だははははっ!!! 見ろよハッピー!! はやてとヴィータの奴スゲービビられてんじゃねーか!!!」

 

 

「あい。トーマにとって、2人は相当怖いんだろーね」

 

 

「あっちはあっちで爆笑しとるし……っとそれより、あの…そっちのマフラーの方!」

 

 

「ん? オレか?」

 

 

はやてに声を掛けられ、首を傾げながらも対応するナツ。

 

 

「とりあえずまずは、あの時は助けて頂いてありがとうございました」

 

 

「あの時?」

 

 

「ナツ、たぶん昨日の事だよ」

 

 

「あー…あのチビと戦った時か。そういやはやても居たなぁ」

 

 

「わ…忘れられとったんか……」

 

 

「それがナツですから」

 

 

忘れられていた事に唖然としているはやてに、ハッピーがそう言う。すると、トーマがはやてとヴィータに向かって口を開く。

 

 

「あの、八神司令とヴィータ師匠のお手を煩わせてもアレですんで、オレらここでちょっと失礼します!」

 

 

《すみません、失礼しまーす》

 

 

「お、行くのか? じゃーなはやてにヴィータ」

 

 

「またねー」

 

 

「はーい──ってなんでやねん!!」

 

 

「逃がすかアホ!!」

 

 

そう言ってはやてとヴィータはそそくさと去ろうとするトーマたちの前に、即座に回り込む。

 

 

「ああやっぱり!! ノリツッコミで止められたっ!!」

 

 

「どこの世界に行っても、はやてははやてだな。ヴィータもいつも通り小っせぇし」

 

 

「あい。あのノリはどこの世界でも変わらないんだね。ヴィータも小さいし」

 

 

「それは褒められとるんやろか?」

 

 

「小さい小さい言うんじゃねーー!!!」

 

 

ナツとハッピーの言葉に、はやては首を傾げ、ヴィータは憤慨する。

 

 

「で、どうするのトーマ?」

 

 

「決して逆らわないように、しかしどうにかして逃げ切る!!!」

 

 

「んじゃあ、あのはやてとヴィータをぶっ飛ばすか?」

 

 

「それは後が怖いから絶対にダメだ!!!」

 

 

トーマは首を必死に横に振りながらナツの案を却下する。

 

 

「ゴチャゴチャ喧しいっ!! いいから来い!! オメーらまとめて保護すんぞ!!」

 

 

「いやヴィータ、そんな乱暴な保護は聞いた事ないって」

 

 

痺れを切らしたヴィータが2人に向かって怒鳴り、そんな彼女にはやてが苦笑する。

 

 

「めんどくせーなぁ……要は逃げりゃあいいんだろ? ハッピー、作戦Eだ」

 

 

「あい!!」

 

 

「え?」

 

 

《作戦E?》

 

 

するとナツとハッピーがそんな事を言い出し、トーマとリリィがその言葉に疑問符を浮かべていると……

 

 

「火竜の……」

 

 

息を大きく吸い込むように口の中に魔力を集束させ、頬を膨らませる。そして……

 

 

「咆哮ッ!!!!」

 

 

はやてとヴィータに向かって、灼熱のブレスを吹いた。

 

 

「なっ!!?」

 

 

「えっ!? ちょっ!!?」

 

 

はやてとヴィータが驚愕している間に、2人は炎に飲み込まれてしまった。

 

 

「ええぇ!!? く…口から火を吹いた!!?」

 

 

《スゴイ!! 怪獣みたいだよトーマ!!》

 

 

「いやリリィ、そういう問題じゃない!! それに八神司令やヴィータ師匠は大丈夫なのかアレ!!?」

 

 

「おら行くぞ」

 

 

「ぐえっ」

 

 

戸惑っているトーマの首根っこを乱暴に掴むナツ。そして……

 

 

「ハッピー!! 全速力だ!!!」

 

 

「あいさー!!!」

 

 

「ちょっと待ああああぁぁぁぁ……!!!」

 

 

トーマの制止の声も虚しく、ハッピーの全速力により、2人は瞬く間にその場から離れていった。

 

 

「かーっかっかっか!! これぞ作戦E!! エスケープ(ESCAPE)の〝E〟だ!!!」

 

 

「でもナツ、ティアナは穏便に済ませろって言ってなかった?」

 

 

「済ませただろ穏便に。あれでも手加減したんだからな」

 

 

《アレで手加減してたんだ……ってあれ? トーマ?》

 

 

「………………(ピクピク)」

 

 

《きゃああああ!!! 絞まってる!!! 首が絞まってトーマが白目剥いてるよーー!!!!》

 

 

そんな一悶着がありながらも、ナツとトーマ組は西の方角へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「し…死ぬかと思った……」

 

 

「なははははっ!! ワリーワリー」

 

 

「……絶対に悪いと思ってないだろ」

 

 

何とか窒息状態から回復したトーマは元凶であるナツを睨むが、当の本人は悪びれた様子もなく笑っている為、トーマも怒る気を失くしてしまった。

 

 

「それより、他のみんなは大丈夫かな?」

 

 

「待って、今念話で確認を取るから」

 

 

ハッピーの問い掛けにそう答えながら、トーマは他のルートで逃げているヴィヴィオとアインハルトに念話を繋げた。

 

 

《ヴィヴィオ、アインハルト、聞こえる?》

 

 

《トーマ? うん、聞こえるよ》

 

 

《聞こえてます》

 

 

すると、すぐさま2人からの返事が返ってきた。

 

 

《よかった、2人とも無事だったんだ》

 

 

《うん、ティアナさんもシャルルも無事だよ》

 

 

《こちらも誰一人欠けていません》

 

 

《そっか……こっちには追っ手の八神司令とヴィータ師匠が来たけど、そっちに追っ手は?》

 

 

《あー……来たには来たけど……》

 

 

《その…何と言いますか……》

 

 

《? どうしたの2人とも?》

 

 

《何かあったの?》

 

 

歯切れの悪い返答に、トーマとリリィが聞き直す。

 

 

《えっとね、こっちには小っちゃいなのはママとザフィーラが来たんだけど……その…ティアナさんが小っちゃいなのはママを圧倒しちゃって……》

 

 

《……は? ティアさんが、なのはさんを圧倒?》

 

 

《うん……ティアナさんいわく『確かに強いけど、子供のなのはさんに負けるほど弱くない』って言って、最終的には砲撃でなのはママを落として……それでなのはママが負けたのにザフィーラが驚いてる隙に、全速力で逃げてきたの》

 

 

《そ…そうなんだ……アインハルトの方は?》

 

 

《こちらの追っ手は、ユーノ司書長とヴィヴィオさんのもう一人のお母様でした》

 

 

《フェイトママ?》

 

 

《はい。それで逃げる為に戦おうとしたんですが……》

 

 

《ですが?》

 

 

《……ヴィヴィオさんのお母様が、何故かリニスさんの名前を聞いた瞬間、酷く動揺なさいまして……》

 

 

《《《へ?》》》

 

 

《それを見たユーノ司書長が落ち着かせようとしている間に、エリオさんが強力な雷の魔法を放ちまして……それから》

 

 

《あー…もういいよアインハルト、大体察しがついたから》

 

 

話のオチが読めたトーマはそう言って、アインハルトの報告を途中で止める。

 

 

《ねえトーマ……トーマの方ももしかして……》

 

 

《うん、2人と大体似たような感じ》

 

 

《あはは……》

 

 

ヴィヴィオの問い掛けにそう答えるトーマと、苦笑するリリィ。

 

 

《ま…まぁとにかく全員無事ならそれでいいや! また後で合流しよう!!》

 

 

《気をつけてね、2人とも!!》

 

 

《うん、そっちもね!》

 

 

《では後ほど》

 

 

その会話を最後に、トーマは念話を切った。それを見計らって、ナツがトーマに問い掛ける

 

 

「どうだった?」

 

 

「全員無事だって言ってた。また後で合流しようって」

 

 

「そっか……おしっ!! ニオイも近くなってきたし、アイツらより先にキリエって奴を見つけねーとな!!」

 

 

「いや、別に競争じゃないから」

 

 

「それがナツです」

 

 

《理由になってないような……》

 

 

そんな会話をしながら、一行は夕暮れとなった海の上を翔けて行ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あら──誰か来る?」

 

 

一方その頃、夕暮れの空の上でただ一人佇んでいたキリエのもとに、5人の少年少女が迫る。

 

 

「見つけたぞコラァーーー!」

 

 

「私達と同じく、未来から来た方──」

 

 

「僕たちが元の時間、元の世界に帰る方法──!!」

 

 

《教えてくださーーーいっ!》

 

 

「……はい?」

 

 

そう言って突然迫られて、首を傾げるキリエ。しかしそんな事はお構い無しに、ナツはズイズイと彼女に迫る。

 

 

「やいやいやい!!! 惚けてねーで、さっさとオレたちを元の世界に──」

 

 

「落ち着きなさいバカナツ」

 

 

「ごはっ」

 

 

だがそんなナツを、ティアナが拳骨で鎮める。

 

 

「昨日ぶりね、キリエ・フローリアン」

 

 

「あぁ…あの時のツインテちゃんね。昨日ぶり」

 

 

「さっそくだけど、私たちは別の世界や未来の世界からこの世界に飛ばされてきたのよ。アンタなら何か知ってるんじゃない?」

 

 

「ああ、なるほど──あなた達も別の世界や未来から引っ張られて来ちゃったのね」

 

 

ティアナの言いたい事を理解したキリエは、納得したように言う。

 

 

「どうやったら帰れますか?」

 

 

「向こうで待っている人がいるんで……早く帰りたいんですよ」

 

 

「そう……迷惑をかけちゃったのね。ごめんなさい」

 

 

申し訳なさそうな表情で、素直にそう謝罪するキリエ。

 

 

「あ、いえ……」

 

 

「時間移動や世界移動については、分からない事が多いの……何とかしてあげたいけど、私一人じゃどうしようもないかもしれない。一緒に来てる姉がいるから彼女にも聞いてみる」

 

 

「あの…はい……」

 

 

「(何だか、我々が悪い事をしてしまったような……)」

 

 

《(うん…私も思ってた)》

 

 

意外と親身になって話してくれるキリエに、少々バツの悪そうな表情をする未来組の3人。

 

 

「アンタ……昨日とはずいぶん印象が違うじゃない?」

 

 

「そう? まぁ、色々あったのよ」

 

 

ティアナの問い掛けにどこか憂いを帯びた笑みを浮かべながらそう答えるキリエ。

 

 

「あのー私も話に混ぜてくれへんやろうかー」

 

 

すると、たった今合流した追っ手組を代表してはやてが話しかけてきた。

 

 

「待って。もうすぐ済むから」

 

 

「うん……」

 

 

キリエはそう言ってはやてをあしらうと、再び未来組に視線を向ける。

 

 

「ごめんなさいね……こっちでやる事を片付けたら、あなた達が戻れるように努力する──だから安全な場所で、少し待ってて」

 

 

「……わかったわ、今はアンタの言葉を信じる。みんなもいいわね?」

 

 

「ちゃんと帰れんだろ? だったら文句はねーよ」

 

 

「あい」

 

 

「ま、仕方ないわね」

 

 

「僕も異論はありません」

 

 

「エリオに同じく、です」

 

 

「「「『はい』」」」

 

 

ティアナがそう確認すると、ナツやトーマたちも納得したように頷く。

 

 

「八神ちゃん、この子達を保護してあげて」

 

 

「了解や」

 

 

「別世界の子たちは問題ないけど……未来から来た子たちの素性とかは、あんまり聞かないであげてね。会話も控えた方がいいと思う」

 

 

「ん……分かった」

 

 

「すみません」

 

 

「お世話になります」

 

 

「よろしくな!」

 

 

こうして、ナツたちは時空管理局へと保護されることになったであった。

 

 

だがその時……

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

「な…何や!!?」

 

 

突然地響きのような揺れが起こり、全員が戸惑う。

 

 

《緊急事態だ!!》

 

 

「クロノ君!!」

 

 

すると、なのはやフェイトたちにこの世界のクロノからの通信が入る。

 

 

《海鳴市で、今までにないほど巨大な闇の欠片反応が2つ確認された!! すでに結界は張ってある!! 遭難者をアースラに送り次第、君たちは至急現場に向かってくれ!!!》

 

 

「了解や!!」

 

 

クロノの指示にはやてが代表して答え、通信を切る。

 

 

「……このニオイ……」

 

 

「ナツ?」

 

 

「今朝感じたのと同じだ……知ってるけど知らねえ奇妙なニオイ……だけどこのニオイは……」

 

 

ナツがブツブツとそう呟くと……

 

 

「行くぞハッピー!!!」

 

 

「えっ?」

 

 

「ニオイはあっちの街の方からだ!!! 急げ!!!」

 

 

「あい!!!」

 

 

よく分からないがナツの指示に従い、彼が指差す方向へと翼を広げて飛んでいくハッピー。

 

 

「ナツさん!!?」

 

 

「あのバカども!! シャルル、追うわよ!!!」

 

 

「わかってるわよ!!」

 

 

「リニス、ナツさんを追おう!!」

 

 

「あ、はい!!!」

 

 

そんなナツとハッピーを追って、ティアナとシャルル…エリオとリニスも街へと向かって飛んでいった。

 

 

「あ、ちょっと!! 勝手な行動は──」

 

 

それを見たなのはが慌てて止めようとするが、ナツたちは聞く耳を持たずに飛び去っていった。

 

 

「行っちゃった……」

 

 

「仕方ない……ユーノとザフィーラは他の漂流者とキリエさんをアースラまで送って。街には私となのは、それからはやてとヴィータで追いかけよう」

 

 

「わかった」

 

 

「うむ」

 

 

フェイトの指示に従い、ユーノとザフィーラはキリエやヴィヴィオたちを連れて、転送魔法でその場から消えていった。

 

 

「私たちも行こう!!」

 

 

「うん!」

 

 

「おうよ!」

 

 

「了解や!」

 

 

そしてそれを見送ったフェイトやなのはたちも、ナツたちを追って街の方へと飛んでいったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「見つけた!!」

 

 

「おいコラ!! テメェら勝手な行動してんじゃねー!!!」

 

 

その後、ナツたちを追いかけていたなのは達4人は、街の上空で佇んでいた彼らと合流した。

 

 

「街の件は私たちに任せて、あなたたちは一刻も早くアースラに……」

 

 

「待て」

 

 

フェイトの言葉をナツが遮り、そのまま彼はクンクンと鼻を動かす。

 

 

「匂う……奇妙なニオイが混ざってて分かりづれぇが……このニオイは間違いねえ……アイツだ」

 

 

「「「?」」」

 

 

ナツの言葉にティアナやエリオを含めた全員が首を傾げ、疑問符を浮かべる。すると……

 

 

 

ピシャアアアアアアアアアンッッ!!!!!

 

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「「「!!?」」」

 

 

突然ナツたちの目の前のビルの屋上に、激しい雷が落ちた。その閃光と轟音になのはが小さく悲鳴を上げ、他の面々も目を瞑ったり耳を塞いだりしている。

 

 

そして雷による閃光が消え、全員がそっと目を開けると……先程まで誰も居なかったビルの屋上に、1人の青年が、目を閉じて、腕を組んだ状態で佇んでいた。

 

 

「あ…あれは……!!!」

 

 

「ちょっと…ウソでしょ……!!?」

 

 

「やっぱりアイツか……」

 

 

ナツとティアナとハッピーは、その青年の姿に見覚えがあるのか、そんな声を上げる。

 

 

逆立った金髪に…右目には雷マークを反転させたかのような傷…背中には厚手のロングコートを羽織っており、両耳にはトゲのついた独特のヘッドフォンを身に着けた大柄の青年。

 

 

そしてその青年が、閉じていた目を勢いよくカッと開くと……

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!」

 

 

まるで天に向かって吼えるように雄叫びを上げ、それと同時に体から激しい雷光を放つ。それによって身に着けていたコートやヘッドフォンが消し飛ぶが、青年は構わず叫ぶ。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)は……オレのモンだぁぁあああああああ!!!!」

 

 

そんな青年を見て、ナツとティアナとハッピーは……彼の名を高らかに叫んだ。

 

 

 

 

 

「「「ラクサス!!!!」」」

 

 

 

 

 

そう、彼は現在は破門された妖精の尻尾(フェアリーテイル)のS級魔導士にしてギルド最強候補だった男……ラクサス・ドレアーであった。

 

 

 

 

 

つづく




本当はゲーム通りにはやてやヴィータとの戦闘シーンを書くつもりだったのですが、途中で……

「10歳にも満たない幼女はやてに対して、大の男が2人がかりで戦うのって……絵面的にヤバくね?」

という事に思い至り、大幅に変更いたしました。どうぞご容赦ください。
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