おそらく年内の更新はこれで最後となります。来年もリリカルテイルをどうぞよろしくお願いいたします。
それではみなさん、よいお年を。
感想お待ちしております。
街全体に広まっている闇の欠片により、過去の記憶から構成されたラクサスと激しい戦闘を繰り広げているナツとエリオ。
そんな2人とは別に、ティアナとシャルルはなのはとはやてと共に、もう1つの闇の欠片がある場所へと向かっていた。
「この先で間違いないのね?」
「はい! 間違いないよね、レイジングハート?」
【間違いありません】
「今度は一体誰が再生されてるのかしら? 闇ギルドみたいなヤバイ連中じゃないといいんだけど……」
「それは行って見ないとわからないわね」
そんな会話をしながら目的地へと向かって飛んでいると……
「あっ!! あそこや!!! あそこに誰かおる!!!」
そう言ってはやてが眼下にあるビルの屋上を指差す。そこには……1人の青年が佇んでいた。
「──え?」
そしてその青年の姿を見た瞬間……ティアナは驚愕と困惑が入り混じったかのような表情に変わる。
「!」
そんなティアナに気がついた青年は、宙に浮かんでいる彼女の姿を見つけて、同じく驚いたような表情を浮かべながら口を開いた。
「ティア……」
もう二度と聞く事がないと思っていた自身の愛称を呼ぶ声……二度と見る事がないと思っていた自身の姿を見つめる優しい眼差し……そして……もう二度と会う事が出来ないと思っていたその姿……
そんな青年の名を……ティアナは唇を震わしながら、呟いた。
「ティーダ……兄さん……」
6年前に亡くなったティアナの大好きだった兄……ティーダ・ランスターの名を……
第百二十六話
『ティーダ・ランスター』
「兄さんって……」
「ティアナさんの…お兄さん?」
「……ええ」
なのはとはやての問い掛けに、ティアナは短く答える。
「シャルル、私をあそこに降ろして」
「……わかったわ」
ティアナの心情を何となく理解したシャルルは彼女の頼みを聞き入れ、そのままティーダの立つビルの屋上へとティアナを降ろした。
「兄さん……」
「やっぱり……ティアなんだな」
そんなティアナの姿を見たティーダは、微笑を浮かべながら目を細める。
「大きくなったな……すっかり見違えたぞ」
「兄さん……もしかして記憶が……」
「ああ、ハッキリしている。オレの記憶が正しければ、オレは確かに死んだハズだ」
「そうね……今の兄さんは…その……」
「みなまで言わなくていい。オレがオレで無い事はちゃんと自覚している。ただ、ここは一体どこで、何故こういう現象が起こっているのか、そして……」
そこまで問い掛けながら、ティーダはチラリと、上空に浮かんでいるなのはとはやてに視線を向ける。
「どうしてあの2人が小さいままなのかを聞きたい」
「……話すと長くなるんだけど、色々とトラブルが起こってね」
そんなティーダの問い掛けに対し、ティアナはなのはとはやても交えて、現在の状況について説明した。
「……なるほどなぁ、ここはオレの知ってる世界じゃなく『チキュウ』と呼ばれる別世界で、ここに居るなのはとはやてはここの住人でオレの知る2人とは別人。さらに今この世界では、過去の記憶の人物を再生させるような事件が起こっていて、それに巻き込まれたティアの記憶から、オレが再生された…って訳だな」
「そう言う事よ」
「よし、納得した」
「(うそっ!!?)」
「(スゴイ理解力と順応能力やな……)」
「(ま、
ティアナたちの説明を聞いて、あっさりと理解と納得してしまったティーダに、なのはとはやては内心で驚いていた。
「それで……オレが死んでから、アースランドではどれくらいの年月が経ってるんだ?」
「6年よ」
「6年……と言う事は、ティアは今16か。将来は美人になると思っていたが、これはまだまだ期待できるな。ナツには勿体ないか……」
「な…何でそこでナツが出てくるのよ!?」
ティーダの口からナツの名が出た瞬間、ティアナは頬を朱に染めながら怒鳴る。
「ん? そんな反応するって事は、やっぱりお前今でもナツのこと──」
「わあああああああああっ!!!!」
ティアナは顔を真っ赤にしながら声を張り上げ、ティーダの言葉を掻き消す。
「ナツさんとティアナさんって、そういう関係なの、シャルルちゃん?」
「そうね…私から言わせれば、片や素直になれないツンデレ少女…片や本当に何も分かってない鈍感男って所ね」
「うわ、何やそのラブコメみたいな状況。シャルルちゃん、もうちょい詳しく……」
「そこっ!!! 変な詮索と適当な事言わない!!!」
なのはとはやてとシャルルはヒソヒソと話し合ってるが、その会話はバッチリとティアナの耳に届いていた。
「あ、ティア、ナツとそういう関係になった時はちゃんとオレの墓前に報告に来て──」
ドォンッ!!!
「──って危なっ!!?」
発砲音と同時に自分の顔に向かって飛んできた魔法弾を紙一重でかわし、冷や汗を流しながら表情を引き攣らせるティーダ。
そして魔法弾を放った張本人であるティアナは、何やら妖しい笑みを浮かべている。
「フフフ……ちょうどいいわ、この6年で私がどれだけ兄さんに近づけたか確かめさせてもらうわよ」
「あのー…ティア? もしかしなくても……怒ってる?」
「別に怒ってないわよ。ただちょっと戦うついでにこのバカ兄を冥土に送り返してやろうって思ってるだけよ」
「ハッキリ言った!! 堂々と兄貴殺害予告をしやがったこの妹!!!」
「大丈夫よ、兄さんはとっくに死んで、今目の前にいるのはニセモノだもの」
「ニセモノって……まぁ確かに間違いでもないんだが……ハァ……」
ティアナの辛辣な言葉に、軽くヘコみながら小さく溜息を漏らすティーダ。
「しょうがない……軽く相手してやるか。ほら、掛かって来い」
半ば開き直ったようにティアナに向かってクイクイっと挑発的に手招きをするティーダ。
「余裕ぶってると痛い目みるわよ!!!」
それが気に障ったのか、ティアナはムッと顔をしかめながら、自身の周囲に大量の魔法弾を生成する。
「クロスファイアーシュート!!!」
そしてそれらの魔法弾を、一斉にティーダへと放った。
「ほう……昔より量も精度も上がってるな。練習は怠っていないようで安心したぞ」
それに対しティーダは、感心したようにそう声を漏らす。
「だが、オレに当てるにはまだまだだ」
そしてそう言うと同時に、向かってきた全ての魔法弾を回避した。
「なっ!!?」
それを見てティアナは驚愕する。自身が放った魔法弾の雨を、ティーダは大きく動かずに、上半身を傾けたり一歩横に動いたりするだけで全てかわしてしまったのだから。
「お返しだ」
そして全ての魔法弾を回避したティーダは、そう言ってティアナに向かってピッと右手の人差し指を向けると……
「クロスファイヤーシュート」
間髪入れずに、ティアナに向かって生成したいくつもの魔法弾を発射した。
「ティアナさんと同じ魔法!!?」
「でも、ティアナより数は少ないわ!!」
「っ……!!」
シャルルの言う通り、先程自分が放った攻撃に比べれば数は多くない……それを確認したティアナはすぐさま回避行動に移れるように身構えるが……
カクン…カクン…
「!!?」
何と…向かって来る魔法弾が突然カクカクと不規則に曲がり始めたのだ。
「動きが読めな──きゃあっ!!!」
動き回る不規則な魔法弾に、一瞬動きを止めてしまったティアナは、その攻撃を数発ほど喰らってしまう。
「お前のクロスファイヤーシュートは、量も精度も問題無いんだが、一直線過ぎて見切りやすい。さっきみたいに不規則な動きを加えてやれば、敵の意識を乱せるし、上手くいけば意表もつける」
「くっ……」
そんな説明を述べているティーダを、ティアナは顔をしかめながら睨みつける。
「どうしたティア? もう終わりか?」
「そんなわけ──ないでしょ!!!!」
そう言い放つと同時に、ティアナは魔力の刃を纏ったクロスミラージュを構えながらティーダへと駆け出す。
「接近戦か。ならオレも……」
それを見たティーダも、懐から一丁の銃……ロストミラージュを取り出して構える。
「ハァァア!!!」
「よっと」
ガキィィイイン!!!
ティアナが振るった一太刀を、ロストミラージュの銃身で軽々と受け止めるティーダ。
「この……!!!」
それでもティアナは負けじと、クロスミラージュの2つの魔力刃を巧みに振るうが、ティーダはそれを受け止めたり回避したりでいなしていく。
「あのティアナが…完全に遊ばれているわね……」
その戦いを観戦しているシャルルがそう呟く。
そして……
「チェックメイトだ」
次の瞬間には……ティーダのロストミラージュの銃口が、ティアナの首元に突きつけられていた。
「…………!!」
それを見たティアナは動きを止め、冷や汗を流しながら突きつけられた銃口を見据える。そして……
「ハァ……まいったわ、降参よ」
そう言ってティアナはクロスミラージュを手放し、両手を上げて降参のポーズを取った。
「やっぱり、まだまだ兄さんには敵わないわね」
「当たり前だ。そう簡単に越えられてたまるか」
得意気にそう言いながら、ティーダもロストミラージュを降ろす。
「だが……強くなったな、ティア」
そう言うと、ティーダはティアナの頭の上に手を乗せ、そのまま優しく撫でる。
「あっ……」
ティーダの行動に、ティアナは驚きながらも、特に抵抗はせずに身を任せた。
「(懐かしい……兄さんの手……こんなに大きかったんだ……)」
そんな頭から伝わる感触に、気持ち良さそうに目を細めるティアナ。
そしてしばらくすると、はやてがティーダに1つの提案を持ちかけた。
「あのー…ここで立ち話もあれですし、私らの本部に行きません? 積もる話もあるやろうし、それに今の状況をもっと詳しく説明できるかもしれへんし」
「ん、そうか…それもそうだな。ティアの6年間の話も聞いてみたいし」
「そうね。私も兄さんに1つ聞きたい事があったのよ」
「それじゃあ──」
ティアナとティーダの承諾を得て、なのはがそう言い掛けたその時……
ピシャアアアアアンッ!!!!
「「「!!?」」」
突然遠くのビルに、凄まじい雷が迸った。そしてその雷を見たティーダは、驚愕で大きく目を見開く。
「あれはラクサスの……どういう事だ!!?」
「……実はね、兄さん……」
ティーダの疑問に答えるように、ティアナは全て説明した。
現在ティーダと同じく、過去の記憶から再生されたラクサスがナツとエリオと戦っている事だけでなく……ラクサスがギルドで起こしたバトル・オブ・フェアリーテイルの事も……
「そうか……あのバカヤロウ」
その説明を聞いたティーダは鋭い目付きで、雷が迸っている方角を見据える。
「すまない、君たちの本部に行くのはもう少し後になりそうだ」
「え?」
するとティーダはそう言うと同時に、ロストミラージュの銃口から自身の足元へと向かって魔力を放出し、勢い良く空へと飛び上がった。
「兄さん!!!」
そしてそのままロストミラージュの銃口から魔力を放出し続け、まるでジェット機のように空を翔けて行った。
「急いで兄さんを追うわよ!!!」
「「あ、はい!!!」」
それを見て、ティアナたちも急いでティーダを追って、空を翔けて行ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「オラァアアア!!!!」
「ぐあああっ!!!」
「うあああっ!!!」
一方その頃……ラクサスと戦っているナツとエリオは、圧倒的な力を前に苦戦を強いられていた。
「くそっ……やっぱ強ェな、ラクサス」
「強いのはわかってはいましたが、まさかここまで力の差があるなんて……」
そう毒づきながら起き上がり、ラクサスを睨むナツとエリオ。
「だりゃああ!!! 火竜の鉄拳!!!!」
そしてナツはラクサスに飛びかかるように駆け出し、炎を纏った拳を放つ。しかし……
ガシッ!!!
「げっ!!?」
ラクサスはその拳を軽々と受け止めると……
「オラァ!!!!」
「ごはっ!!!」
そのままナツの体を振り回し、地面へと叩きつける。
「まだだ……!!」
「!!!」
ズドォォオオン!!!!
「危ねっ」
そこへ、間髪入れずにラクサスが雷を纏った足でナツを踏み潰そうとするが、ナツは間一髪飛び上がり、回避に成功したが……
「逃がさねえぞコラ」
「!?」
ラクサスの伸ばされた手が、そんなナツの胸倉を捉える。そして……
「ライトニングラッシュ!!!!」
「ぐあああああああああっ!!!!」
ラクサスの拳がナツの腹部に叩き込まれ、さらにその拳から連続で放たれた雷撃により、ナツは大きく吹き飛ばされ、何度か地面をバウンドした後に鉄柵へと激突した。
「ナツさん!!! くっ……ハァァアアア!!!!」
それを見たエリオはストラーダを構え、ラクサスへと切り込んでいく。
しかしエリオのストラーダによるスピードを活かした素早い攻撃は、全てラクサスによって見切られて回避され、一撃たりとも当てることが叶わない。
「らぁっ!!!!」
「うぐっ……!!!」
そしてラクサスの雷を纏った蹴りに対して、ストラーダを盾代わりに使ってダメージを逃れるが、その威力に押されて大きく後退してしまう。
「雷竜の……」
「っ……雷竜の……」
口の中へと魔力を集束し始めたラクサスを見て、エリオも同じく自身の口内へと魔力を集束させ、頬を膨らませる。
そして……
「「咆哮ッ!!!!!」」
両者の雷のブレスが、凄まじい勢いで衝突した。
「オオオオオオオッ!!!!」
「アアアアアアアッ!!!!」
互いに拮抗し、せめぎ合う2つのブレス。
しかし徐々に……エリオのブレスがラクサスのブレスに押され始めた。
「(そんな……同じブレスなのに……僕のブレスが…押されて……!!!)」
そして次の瞬間には…エリオのブレスはラクサスのブレスに飲み込まれ、そのままエリオをも飲み込んだ。
「うあああああああああああっ!!!!」
基本的に雷が効かないエリオも、その電圧と威力に耐え切れず、そのまま力無く地面へと倒れた。
「ぐっ…くっそぉ……」
「あっ…が……!!」
何とか起き上がろうとするナツとエリオだが、受けたダメージが大きく、思うように体が動かせずに起き上がることができない。
「ナツ!!」
「エリオ!!」
「あの人……強過ぎる……!!」
「くそっ…アタシたちはまだ痺れが取れねえし……シグナムたちに救援要請した方がいいか……」
その戦いを上空から見ていたフェイトとヴィータも驚愕し、どうすればいいかと考えていた。
「ククク……消えろ消えろォ!!! オレの前に立つ者は……全て消え去れェエエ!!!」
そう天に吼えるように叫びながら体中から雷を放出するラクサス。
万事休すかと思われたその時……
「テメェが消え去れこの大バカヤロウが!!!!」
ズドォオオオオン!!!!
「!!」
「「!!?」」
突然空の上から落ちてきた1人の青年が、そんな言葉と共にラクサスの後頭部を踏み付け、彼を地面へと叩き伏せた。
「ったく……6年経っても何にも変わってねえなテメェは。変わったのはその無駄にデカい図体だけか? アァ?」
そして青年はラクサスの後頭部から足を退け、そのまま倒れているラクサスをギロリと睨みつける。
「立てよ雷小僧……長年の決着を、今この場で着けてやるよ!!!」
ラクサスの唯一無二のライバル……ティーダ・ランスターは、力強くそう言い放ったのであった。
つづく