LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

129 / 240
ちょっと展開が早いとは思いますが、ご了承ください。


感想お待ちしております。


決戦

 

 

 

 

 

 

「……えーっと……どういう事ですか? ナツがアースラから脱走したって」

 

 

あの後、アミタとキリエと共にクロノの下へとやって来たティアナは、彼に先程の報告の真偽を問い掛ける。

 

 

「言葉の通りだ。ナツ・ドラグニルとその相棒のハッピーがアースラから脱走したんだ」

 

 

「……その原因は?」

 

 

ティアナは薄々感づいてはいるが、それでも一応クロノに原因を問い掛けた。それに対しクロノは溜息混じりに答えた。

 

 

「よっぽど乗り物酔いが辛かったんだろう。ずっと死にそうな顔をしていたからな」

 

 

「やっぱりか……」

 

 

予想通りの答えに怒りを通り越して呆れ果てたティアナは片手で顔を覆った。

 

すると、そんな彼女の後ろに控えていたフローリアン姉妹がヒソヒソと会話をしていた。

 

 

「あの…キリエ、ナツさんとはどういう人なんですか?」

 

 

「んー……とっても強いティアナちゃんの彼氏君かしら」

 

 

「なんと!? ティアナさんにはそんな殿方が!!?」

 

 

「しかもはやてちゃんの話だと、ティアナちゃんのお兄さん公認の仲らしいわよ」

 

 

「おおお……既にご家族公認とは……」

 

 

「違うわっ!!!!」

 

 

そんな姉妹の会話はバッチリとティアナの耳に入っており、それを聞いたティアナは姉妹に対して怒鳴った。

 

 

「えー、だってはやてちゃんはそう言ってたし」

 

 

「あのチビダヌキ……!! とにかく私とナツはただの腐れ縁!!! それ以上でもそれ以下でもないの!!!」

 

 

「んー…もしかしてティアナちゃんってツンデレさん?」

 

 

「誰がツンデレよ!!?」

 

 

「やっぱり、でぇきてぇるのですか!?」

 

 

「その発音誰から聞いた!!?」

 

 

悪乗りするフローリアン姉妹に対してティアナがツッコミの応酬を繰り広げていると、クロノがコホンっと咳払いをしてから口を開く。

 

 

「それともう1つ……脱走したナツ・ドラグニルを追って、エリオ・モンディアルとリニスもアースラから飛び出していってしまったんだが」

 

 

ブチンッ

 

 

そんなクロノの言葉を聞いた瞬間……ティアナから何かがキレる音が聞こえた。

 

 

 

「あんの……バカどもぉーーーーー!!!!!」

 

 

 

そしてティアナの怒りの叫びが、アースラに響き渡ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第129話

『決戦』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「(ゾクッ!!?)」」

 

 

一方その頃……脱走したナツとハッピーを追って海鳴市の上空を飛んでいるエリオとリニスは、何やら不気味な寒気を感じ取った。

 

 

「な…何か今……スゴイ殺気を感じたような……」

 

 

「エリオもですか? 私もです……」

 

 

背中に凄まじい悪寒を感じて冷や汗を流しながらも、2人はナツの探索を続けた。

 

 

「ナツさんとハッピー、どこ行っちゃったんだろう?」

 

 

「ニオイは感じないのですか?」

 

 

「うん。さっきから2人のニオイを探してるんだけど、どこにも感じないんだ」

 

 

「手当たり次第に探すしかない…という訳ですね」

 

 

そんな会話をしながら空からの探索を続けるエリオとリニス。

 

 

「……………」

 

 

すると、エリオは何かを考え込むような表情をしながら、リニスに向かって口を開いた。

 

 

「ねえ…リニス」

 

 

「はい?」

 

 

「あの時……ティーダさんとラクサスさんの戦いを見て、どう思った?」

 

 

「?」

 

 

エリオの問い掛けの意図が理解できず、疑問符を浮かべるリニス。

 

 

「僕はね……妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってから、強くなったと思っていた。闇の欠片で再生されたあのサル兄弟に勝った時も……強くなってるんだと実感した。だけど──あの2人の戦いは別格だった」

 

 

「!!」

 

 

そこまで聞いたリニスは、エリオの言わんとしている事が理解できた。

 

 

「確かに僕は強くなれたけど……S級魔導士の2人……特にラクサスさんは僕とはレベルが違った。魔導士としても…雷の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)としても……」

 

 

「エリオ……」

 

 

物憂げな表情を浮かべるエリオに何と声を掛けていいか分からず、ただ彼の名を呟くリニス。

 

 

「リニス……僕はもっと強くなりたい」

 

 

しかしそれも束の間……エリオは物憂げな表情から一転…真っ直ぐとした表情で口を開いた。

 

 

「もっともっと…誰にも負けないくらい強く……ナツさんやエルザさん、なのはさんやフェイトさんにも勝てるくらい強く」

 

 

「……ずいぶんと大きくでましたね。それがどれほど大変か、分かって言っているのですか?」

 

 

「もちろんだよ。あの人たちを超えるのは簡単じゃない……強くなってるのは僕だけじゃなく、あの人たちもどんどん強くなる。今の僕がいつ追いつけるかは分からない……でももう決めたんだ。いつか必ず追い付いて…追い越してみせる」

 

 

一片の揺るぎもない真っ直ぐとした瞳でそう言い放つエリオの言葉を聞いて、リニスは思わず微笑を浮かべた。

 

 

「なら、アースランドに帰ったらすぐに修行ですね」

 

 

「うん。エルザさんやザフィーラさん達にも、もっと稽古をつけてもらわないとね」

 

 

「では、早くナツさんとハッピーを探し出しましょう」

 

 

「そうだね」

 

 

決意を新たにし、そんな会話を口にしながらナツとハッピーの捜索を再開するエリオとリニス。すると……

 

 

「……ん? リニス、止まって」

 

 

何かに気がついたエリオはリニスにそう指示を出し、それを聞いたリニスは言われた通りその場の空中で止まった。

 

 

「どうしました?」

 

 

「このニオイ……」

 

 

「2人のニオイを見つけたのですか?」

 

 

「いや違う、ナツさんとハッピーじゃない……このニオイは、ディアーチェって人たち3人のニオイだ」

 

 

「あのハヤテ様やナノハたちそっくりの?」

 

 

「うん。しかもたくさんの闇の欠片のニオイも同時にしてる。あっちだ」

 

 

鼻をクンクンと動かしながらそう言って、ニオイのする方を指差すエリオ。

 

 

「リニス、行ってみよう」

 

 

「はい!!」

 

 

そう言うとエリオとリニスの2人は、ニオイのする方角へと飛んでいったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……海鳴市にある海の上空では……

 

 

「ファイアー!!」

 

 

「砕け散れー!!」

 

 

「消し飛べー!!」

 

 

U-Dの攻撃から復活していたシュテル、レヴィ、ディアーチェの3人が自身の姿を再生した闇の欠片の群生と戦っていた。

 

3人の一斉攻撃に何体かの闇の欠片は消滅するが、その後もまるで三人の行く手を阻むかのように闇の欠片が出現する。

 

 

「ええいザコ共め!! 次から次へと……!!」

 

 

「キリがありませんね」

 

 

「あーもーイライラするー!!」

 

 

次々と出現する闇の欠片達に顔をしかめる3人。

 

「これはU-Dが近いと言うことか?」

 

 

「だと思います」

 

 

「だったらここが踏ん張り所だね!」

 

 

3人で背を合わせ、自分逹を囲む闇の欠片の群生を見据える。

 

 

「くっ、だがこれほどの数がいると面倒だ……」

 

 

ディアーチェがそう呟くと同時に、闇の欠片達が一斉に3人へと襲い掛かる。

 

 

「これは流石に……」

 

 

「不味いですね……」

 

 

「くぅ……!!」

 

 

だがその時……

 

 

 

「雷竜槍・落雷!!!!」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

突然彼女たちよりもさらに上空から強力な雷撃が飛んできて、闇の欠片の群生に落雷のごとく降り掛かった。

 

そして3人が雷撃の飛んできた方へと視線を向けると、そこにはストラーダを構えたエリオの姿があった。

 

 

「リニス!!!」

 

 

「はい!!!」

 

 

そしてエリオはリニスと共に、闇の欠片の群生へと向かって行く。

 

 

「雷竜槍……」

 

 

その途中でエリオがストラーダを構えると、ストラーダの刀身に雷がバチバチと音を立てながら纏われていき……。

 

 

飛電斬(ひでんざん)!!!!」

 

 

そのままその雷を纏ったストラーダを振るい、その瞬間刀身から放たれる三日月形の雷の刃。エリオはその刃を飛ばし、次々と闇の欠片を薙ぎ払っていく。

 

 

「雷竜の……」

 

 

そしてあっという間に残り僅かになった闇の欠片に対し、エリオは自身の口の中へと魔力を集束し……

 

 

 

「咆哮ッ!!!!!」

 

 

 

雷のブレスを放ち、全ての闇の欠片を消滅させた。

 

 

「「「…………」」」

 

 

その様子を見ていたディアーチェたち3人は、ポカンとした表情でその場で佇んでいた。

 

 

「大丈夫?」

 

 

そんな3人にエリオが声を掛けると、ディアーチェはハッと我に返り、すぐさま口を開く。

 

 

「うぬは……あの時、桜頭と一緒にいた!!!」

 

 

「あ、はい。エリオ・モンディアルです」

 

 

「リニスです」

 

 

「名前など聞いておらぬわ!!! うぬらは一体──」

 

 

「すっごーーい!!! 口から雷出してたよ!!! ねえねえ何今の!? どうやったの今の!!?」

 

 

ディアーチェの言葉を遮り、レヴィが興奮した様子でエリオの周囲を飛び回る。

 

 

「え…えっと……」

 

 

「レヴィ、落ち着いてください。そちらの方が困っておられますよ」

 

 

「はーい」

 

 

「……何だか凄く懐かしい光景ですね」

 

 

そんな興奮気味のレヴィをシュテルが宥め、少々残念そうに彼女の言葉に従うレヴィ。その光景を見たリニスはエドラスでの2人を思い出し、小さくそう呟いた。

 

 

「それはそうと……助けて頂き、ありがとうございます」

 

 

「あ、うん。気にしないで」

 

 

ペコリと頭を下げて感謝の言葉を述べるシュテルに、そう返すエリオ。

 

 

「貴方がナノハ達が言っていた、異世界の魔導士ですね。となると先程のは、異世界の魔法ですか?」

 

 

「えっと…そうなるね」

 

 

「デバイスも無しにあの威力の魔法を扱えるとは……中々興味深いです」

 

 

そう言って先程のレヴィとはまた別の意味でエリオの魔法に興味を抱くシュテル。すると……

 

 

「コラーー!! 我をほったらかしにして話を進めるでないわーー!!」

 

 

ディアーチェが怒鳴りながら話に割り込んできた。

 

 

「おい貴様ら!! 異世界から来たのだか何だか知らんが、うぬらはあの桜頭の仲間であろう!!? ここへ何しに来た!!?」

 

 

「えっと、僕たちはナツさんとハッピーを──」

 

 

ディアーチェの問い掛けに答えようとそこまで言い掛けたその時……

 

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

 

「!? この振動は……」

 

 

突然空が激しく揺れ始め、先ほどまで雲一つなかった夜空も次第に雲が覆い、異様な雰囲気になってきていた。

 

 

「王様、シュテるん!! いたよ、UーDだ!!」

 

 

そう言ってレヴィが指差す方向には、U-Dが眠っていであろう赤い球体が浮かんでいた。

 

 

「あの中で力を蓄えているのですね。充填状況は既に8割超といった所でしょうか?──悪い予感が的中しました……現状では私が用意した作戦が通用しません」

 

 

「打撃を与えつつ、制御プログラムを打ち込む──我等3人がかり……最悪そこの赤髪チビとネコをいれても無理か?」

 

 

「(赤髪チビ……)」

 

 

「ええ、無理です。異世界の魔法といえど、通常戦闘であれば近づくことすら困難かと」

 

 

「フン。下がっておれ、シュテル、レヴィ、ついでに赤髪チビとネコ。ならば我が極大魔法にて、そのまま奴を停止させる!」

 

 

そう言って一歩前に出るディアーチェ。だが、そんなディアーチェをシュテルが止めた。

 

 

「王──しばらく」

 

 

「シュテるん……?」

 

 

「それは私の役目です──王には、来るべき戦いのために、力を温存しておいていただかねば」

 

 

「来るべき戦い──? 貴様、一体何を──?」

 

 

「「?」」

 

 

シュテルの意味深な言葉に、疑問符を浮かべるディアーチェと状況が飲み込めずにいるエリオとリニス。

 

 

「我等が束になっても、いくら策を遇してもあの子に敵わない事──予想はしてました。ですからナノハ逹にも協力を依頼したんです」

 

 

「シュテるんが僕に頼んだこと──」

 

 

「今できるのは、のちの勝利に繋がる次の布石を打つこと──つまりは、これ以上の充填を阻止すること──そして、少しでもあの子の力を削る事です」

 

 

「シュテるん、それって──」

 

 

「そう。私自身が布石です」

 

 

レヴィの言葉に、淡々とした声で答えるシュテル。

 

 

「まあ、この身と引き替えに、あの子の多層防御の何層かくらいは破損させてみせますよ」

 

 

「シュテるん、そんな!」

 

 

「貴様! 勝手は許さぬぞ──! 自ら捨て石になろうなど、我が許すと思ってか!」

 

 

「捨て石……? それってまさか……」

 

 

「それでも、意義ある一手です。なに、運が良ければ完全消滅には至りません──時が来れば復活も叶いましょう」

 

 

「『運が良ければ』であろうが──! 子鴉達に消滅させられた時とは訳が違う! システム構造そのものを破損されれば、いくら貴様とて……!!」

 

 

「それは貴方にも言える事ですから。貴方が居なくなっては、紫天の書を扱える者が居なくなってしまう──U-Dを手に入れる事も出来なくなります」

 

 

そこまで言うと、シュテルはエリオを含めたリニス以外の全員に朱色のバインド魔法をかけた。

 

 

「バインド!? シュテル、貴様っ!」

 

 

「う…動けない…!」

 

 

「くっ……!」

 

 

「エリオにまで……」

 

 

「関係のない2人を巻き込んでしまい申し訳ありません。そして無礼をお許しください、王。ですが少しだけ、そのままそこにいらしてください。レヴィもですよ」

 

 

「待って、シュテるん……! 待ってっ!」

 

 

「これが、最も理論的なやり方です。レヴィ──後の事を頼みましたよ」

 

 

「シュテル! 待て! 待たぬかっ!!」

 

 

ディアーチェの静止の言葉も虚しく、シュテルはU-Dへと向かって飛んでいってしまった。

 

 

「くそっ……あのバカ者め!!」

 

 

「こんの~~!! く・だ・け・ろーー!!」

 

 

ディアーチェはシュテルを止められなかった事に悔しそうに歯軋りをし、レヴィはバインドを必死で砕こうとしている。すると……

 

 

「そんなのダメだ……!!」

 

 

エリオが少し低めの声で、そう呟いた。

 

 

「誰かを助ける為に自分を捨て石にするなんて……そんな事、許される訳ないっ!!!!」

 

 

そして怒気を孕んだ声でそう叫ぶと、エリオの体から激しい雷が放出され、自身を縛っていたバインドをその電圧で焼き切った。

 

 

「行こうリニス。状況と事情はさっぱり飲み込めてないけど、シュテルとあのU-Dって子は放ってはおけない」

 

 

「はい。それとシュテルには、世の中には理論じゃ通じない事もあるって教えてあげましょう」

 

 

そう言ってシュテルが向かった方向へと飛んでいったエリオとリニス。

 

 

「待って!! ボクも一緒に行く!!」

 

 

するとレヴィは、力尽くで自身を縛っていたバインドを破壊し、エリオとリニスの跡を追って飛んでいったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃…シュテルは一人で空を翔けながら、何かを呟いていた。

 

 

「U-D──あの子の力は強大すぎる。それ故に、あの子は自立制御の機能をほとんど持たない──誰かが守り、導いてあげなければ、単なる災厄の暗闇でしかない。それをできるたった一人の誰かが、私達の王──つまり『闇統べる王(ロード・ディアーチェ)』──私は王の道を拓く炎──ならば、ここが私の燃え所。焼け尽き消える事となっても後悔はありません……」

 

 

「嘘だね……そんなの嘘だ!!」

 

 

シュテルが一人呟いていると、そんな彼女の両隣にレヴィとエリオが現れる。

 

 

「後悔あるに決まってる──ナノハとか言う子と、約束してるんでしょ? もう一度戦うって」

 

 

「それに…そんな悲しそうな顔でそんな事言っても、全然説得力ないよ」

 

 

「レヴィ!? エリオ・モンディアル!? 私のルベライトを破ったんですか?」

 

 

「ボクは力のマテリアルだぞ! バインドなんか、パワーで破れるッ!!」

 

 

「あれくらいのバインド魔法なら、僕の雷で焼き切れる」

 

 

「……異世界の魔法とレヴィの馬鹿力を甘く見ておりました」

 

 

エリオとレヴィの言葉に、少々呆れたようにそう呟くシュテル。すると、そんな彼女にリニスが問い掛ける。

 

 

「それより教えて頂けませんか? U-Dとは何なのか…そしてそれはあなた達にとって何なのか」

 

 

「……………」

 

 

「この期に及んで黙秘は許しませんよ? もう既に私とエリオは巻き込まれているのですから、知る権利は当然の事です」

 

 

「……わかりました」

 

 

リニスの言葉にとうとうシュテルは諦めたように嘆息したあと、話し始めた。

 

 

「私たちが闇の書から生まれた、マテリアルだと言う話は聞きましたか?」

 

 

「ええ。アースラで一度、あなた方の事は大まかにですが教わりました」

 

 

「ならば話が早いですね。あの子と私達は、元々一つなんです。星光(シュテル)雷刃(レヴィ)闇王(ディアーチェ)。そしてU-Dの四基が揃って、初めて『紫天の書』は完成するんです。紫天の書が完成すれば、私達は闇の書から独立して生きる事ができる。私たちが望んだ自由を手に入れられるのです」

 

 

シュテルがそう説明すると、黙って聞いていたエリオがゆっくりと口を開いた。

 

 

「………難しい事はよく分からないけど、これだけは何となく分かったよ。君はU-Dを──仲間を助けたいんだね?」

 

 

「……そういう解釈もできなくはないですね」

 

 

「ははっ! でも話は分かったよ。そう言う事なら、僕たちも強力する」

 

 

「……よいのですか? 元々異世界から来たあなた達とは、無関係の事なのに」

 

 

「確かに、この世界の出来事は僕たちの世界には関係のない事かもしれない……だけど君の話を聞いて、僕は君たちの力になりたいと思った……」

 

 

そこまで言うと、エリオは力強い眼差しでシュテルを見据え、彼女に言い放った。

 

 

 

「無関心じゃなければ、それはもう無関係なんかじゃないよ」

 

 

 

「エリオ・モンディアル……」

 

 

その言葉を聞いたシュテルは反応を示し、彼の名を呟く。そしてそんなシュテルに、さらにレヴィが口を開く。

 

 

「エリおんにも手伝ってもらおうよシュテるん。1人より、2人…2人より3人の方がまだ確率が高い。ボクにだってそれくらい分かる」

 

 

「レヴィ……」

 

 

「行こうシュテル──U-Dを手に入れるんだ。王様の為に……ボクらのためにっ!!」

 

 

「──はいっ!」

 

 

レヴィの言葉に力強く頷くシュテル。

 

 

そしてエリオたち4人は、U-Dのもとへと向かって行ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

それからしばらくすると、4人は空中で静かに佇むU-Dを見つけた。

 

 

「マテリアル―S…マテリアル―L…そして異界の魔導士──あなた達ですか──」

 

 

「えぇ。UーD…あなたを救いに来ましたよ」

 

 

「救いなど、求めていませんよ──私は私です──ずっと昔からこのままで……これからもずっとこのままです」

 

 

「そんな事はありません。きっと変われますよ」

 

 

「ボク達もそうだったんだ……全てを壊したい、切り裂きたい──そんな事ばっかりでさ」

 

 

「それが私の生まれた意味です──そして誰も私を扱いきれず──私を闇の書の底に沈めました」

 

 

「知ってます──あの牢獄のような虚無の中で……私達はずっと一緒だったんですから」

 

 

「それなら、私の前に立たないで下さい──私はあなた逹すら破壊してしまう──」

 

 

「壊れないよ……仲間を救いたいという想いは、そう簡単に壊れやしない!!!」

 

 

「仲間……?」

 

 

「そうだよ。シュテルやレヴィ…そしてディアーチェにとって、君は仲間なんだ。だから君を救う為に戦おうとしている」

 

 

「戯れ言です──それは幻ですよ。誰も私を救えたりしない──」

 

 

「できるよ! ボク達の王様が、きっと君を救ってくれる!」

 

 

「そうです──きっとできます。私達の王ならば!」

 

 

「その為にもまずは──君を止める!!!」

 

 

エリオのその言葉を最後に、3人はU-Dに向かって攻撃を始めた。

 

 

「雷竜の放電!!!」

 

 

「パイロシューター!!!」

 

 

「光翼斬!!!」

 

 

エリオの雷撃と、シュテルの放ったいくつもの朱色の魔法弾と、レヴィが放った蒼色の魔力刃がU-Dへと向かう。だが、それは直撃することなく、何かに阻まれると同時に霧散した。

 

 

「効いてない!!?」

 

 

「今のは……!?」

 

 

「おそらくU-Dを守る防壁でしょう。アレを破らない限り、ダメージは与えられません」

 

 

「何か方法はないのですか?」

 

 

「私とレヴィの干渉制御ワクチンを積んだ一撃……それならばおそらく……ただその準備にはかなりの時間を要します。戦いながらの準備は不可能でしょう」

 

 

それを聞いたエリオは、薄く笑みを浮かべた。

 

 

「わかった……それじゃあ僕がU-Dを引き受けるから、2人はそのワクチンとやらの準備をして」

 

 

「なっ…1人でですか!? ダメです!! 危険すぎます!!」

 

 

「そうだよエリおん!! だったらボクも協力するから2人でU-Dを止めて、シュテるんがワクチンを打ち込めば──」

 

 

「失礼な。1人ではありませんよ。私も居ます」

 

 

「リニスの言う通りだよ。それに僕の魔法なら、防壁を突き破れるかもしれない」

 

 

「何を……!?」

 

 

エリオの言葉に愕然としているシュテルに対し、エリオはさらに言い放つ。

 

 

「僕の魔法は滅竜魔法……本来はドラゴンと戦う為の圧倒的な破壊魔法なんだ。必ずやってみせる……だから、僕を信じて欲しい」

 

 

「エリオ……」

 

 

「エリおん……」

 

 

エリオの真っ直ぐとした覚悟を帯びた言葉に、シュテルとレヴィはそれ以上何も言う事が出来なかった。

 

 

「行こうリニス」

 

 

「はいっ!!!」

 

 

そしてエリオとリニスは、U-Dへと向かって行った。

 

 

「異界の魔導士……まずは貴方からですか」

 

 

「私もいますってば」

 

 

「君の相手は、僕とリニスで十分だって事さ!!!」

 

 

そう言うと、エリオはストラーダを構えてU-Dへと接近していく。

 

 

「雷竜閃!!!」

 

 

そして雷撃を纏ったストラーダを横薙ぎに振るうが、U-Dの強固な防壁の前に防がれてしまう。

 

 

「くっ……やっぱり堅い……!!」

 

 

「君からはあの炎の魔導士に似た魔力を感じる……だけど君は、あの男より弱い」

 

 

「!!?」

 

 

U-Dのその一言により目を見開くエリオ。そして次の瞬間、U-Dは背中の魄翼から巨大な手を出現させ、エリオに向かって振るった。

 

 

「っ…リニス!!!」

 

 

「わかってます!!!」

 

 

だがその攻撃は、リニスが翼を大きくはためかせてすぐさま後退した為、空を切るだけの結果に終わった。

 

 

「僕がナツさんより劣っているのは、僕が一番よく分かってる……でもだからこそ、いつかあの背中を追い抜くために……君を倒すんだ!!!」

 

 

そう叫びながら雷撃を帯びたストラーダで突きをU-Dに叩き込むが、やはり防壁の前に防がれる。

 

 

「確かに貴方の中には大きな力が眠っている……その力があれば、貴方の望みも叶ったハズ……私になんて出会わなければ……」

 

 

「そんな事はないよ……むしろ君に出会えた事に感謝してるくらいだ」

 

 

「?」

 

 

「ここで君を倒せば、また一歩あの背中に追いつけるんだから!!!」

 

 

そう言い放つと同時に、エリオは手に雷を帯電させ、その手を手刀のようにして構える。

 

 

「雷竜の角撃(かくげき)!!!!」

 

 

そしてその手刀をまるで雷を帯びたツノのように見立てて、そのままU-Dへと突き立てた。

 

 

「無駄です」

 

 

だがその攻撃も、U-Dの堅い防壁の前に阻まれる。

 

 

「まだだっ!!!」

 

 

しかしエリオは諦めず、ストラーダを換装空間へと戻し、それによって空いた手に雷を帯電させて同じように構える。

 

 

「雷竜の双角撃(そうかくげき)!!!!」

 

 

そしてそのまま、2本目のツノのような攻撃がU-Dに叩き込まれた。

 

 

「オオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 

雄叫びを上げながら、U-Dの防壁を突き破らんとさらに力を込めるエリオ。

 

 

しかし……

 

 

バチィイイン!!!

 

 

「!!?」

 

 

その攻撃も虚しく……防壁の前に弾かれてしまった。そしてその瞬間、U-Dは反撃に出た。

 

 

「バイパー!!!」

 

 

「ぐああああああっ!!!!」

 

 

「きゃああっ!!!」

 

 

U-Dはエリオの足元にいくつもの赤い魔力の槍を生成し、それらを一斉に発射してエリオとリニスを襲った。

 

 

「エターナルセイバー!!!!」

 

 

さらにU-Dは畳み掛けるように、左右に広げた魔力の剣を挟み切るように振るう。

 

 

「っ……!!」

 

 

その瞬間、リニスは咄嗟に翼を羽ばたかせてさらに上空へと上昇し、その攻撃を回避した。

 

 

「ありがとうリニス……」

 

 

「安心するのはまだ早いですよ!! 来ますっ!!!」

 

 

リニスの言う通り、U-Dは魄翼から出現させた2つの巨大な手を構えながらエリオへと向かってきていた。

 

 

「ハァアア!!!」

 

 

そしてその手を拳にして、エリオに殴り掛かる。

 

 

「くっ……雷竜の鉄拳!!!」

 

 

対するエリオも雷を纏った拳で迎え撃ち、互いの拳を衝突させる。

 

 

「オオオオッ!!!」

 

 

そしてエリオは巨大な拳を上へと弾いて逸らし、もう片方の手で拳を作る。

 

 

「雷竜の……」

 

 

そのままその拳にも強力な雷撃を帯電させ……

 

 

 

雷槌(いかづち)!!!!」

 

 

 

先程よりも強烈な雷の拳を、U-Dの防壁へと叩き込んだ。

 

 

だがそれでも……U-Dの防壁はビクともしなかった。

 

 

「堅すぎる……エリオの攻撃をあんなに喰らってビクともしないなんて……!!」

 

 

あまりの防壁の強固さにリニスが震えた声でそう言葉を漏らす。

 

 

「ナパームブレス!!!」

 

 

その瞬間……U-Dは巨大な赤黒い魔法弾を至近距離で放ち、エリオの腹部に命中させた。

 

 

「うああああっ!!!」

 

 

「くぅっ!!!」

 

 

それを喰らったエリオとリニスはさらに後方へと飛ばされてしまう。

 

 

「っ……雷竜の咆哮ッ!!!!」

 

 

それでもエリオは負けじと雷のブレスをU-D目掛けて放つ。

 

しかしそれも、U-Dの防壁の前によって防がれ……虚しく霧散した。

 

 

「終わりです」

 

 

「!!?」

 

 

その時U-Dが口にした小さな呟き……それを聞いて何やら悪寒が走ったエリオは……

 

 

「リニス!!! 離れて!!!」

 

 

「え? きゃっ!!!」

 

 

何と背中にいたリニスの首根っこを掴み、そのままリニスを遠くへと投げて自分から引き離した。

 

 

「エリオ!!? 何を──!!?」

 

 

彼の行動にリニスが驚愕しながらも問い掛けようとしたその瞬間……エリオの体がU-Dのバインド魔法によって捕縛されてしまった。

 

 

「くっ……!!!」

 

 

何とかバインドから抜け出そう足掻くエリオだが、シュテルの時とは違い上手く抜け出せない。

 

 

「ジャベリン」

 

 

「!!」

 

 

そしてそんなエリオの目に飛び込んできたのは……U-Dが生成したいくつもの魔力の槍。

 

 

「たとえ竜の力を持ってしても…私は止められない……私の力は……竜をも破壊してしまうから……ごめんなさい──さようなら」

 

 

その言葉を最後に──U-Dのいくつもの魔力の槍が一斉にエリオへと放たれた。そして……

 

 

 

ズドドドドッ!!!

 

 

 

「かっ…はっ……!!!」

 

 

その槍は1本残らず……エリオの体を貫いた。

 

 

「エリオーーーーーッ!!!!!!」

 

 

体中を貫かれ、血反吐を吐くエリオの姿を見て、リニスの悲痛な叫びが響き渡る。

 

 

そして飛行手段を失い、そのまま力無く落下しようとしていたエリオの体は……U-Dの巨大な手によって鷲掴みにされ捕まった。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……!!」

 

 

「これだけの傷を負って生きているなんて……」

 

 

ボロボロの傷だらけになりながらも息を荒げているエリオを見て、少々驚いたように呟くU-D。すると……

 

 

「ありがとうございます、エリオ」

 

 

「あとはボク達に任せて!!」

 

 

U-Dの背後からシュテルとレヴィがそれぞれのデバイスを構えて現れた。

 

 

「貴方を救うための──盤面、この一手…!」

 

 

「干渉制御ワクチンをありったけ詰め込んだボクとシュテるんのこの一撃──!」

 

 

そして……

 

 

 

「「ブラスト・シューートッ!!!」」

 

 

 

2人の攻撃がU-Dを襲った。

 

 

その瞬間、U-Dの巨大な手から解放されて落下していくエリオ。

 

 

「ああああああああっ!!!」

 

 

そんな彼の耳に入ったのは、U-Dの叫び声。それを聞いたエリオは……

 

 

「(ああ…まだだ……あれじゃあまだ決定打にはなっていない……あともう一押し必要だ……)」

 

 

と…内心で悟った。

 

 

「(体中が痛い…指1本動かすだけでも激痛が走る……もう…体が動かないや)」

 

 

そしてエリオは……そっと目を閉じていき……その視界が暗闇に染まっていった。

 

 

 

「(だけど──それがどうした!!!!)」

 

 

 

だがその直後…エリオの目が力強くカッと開かれる。

 

 

「ここで動かなかったら──妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名折れだッ!!!!」

 

 

そう叫ぶと同時に遠くに浮いているU-Dをキッと睨み付け……

 

 

「リニス!!!!」

 

 

「はいっ!!!!」

 

 

自身の相棒の名を叫び、それを聞いたリニスは迷わず羽を広げて一目散にエリオへと翔けつけ、彼の体を掴んだ。

 

 

「リニス、僕をU-Dの上に運んだから、そのまま僕を落として」

 

 

「え? ですが……」

 

 

「お願い……!!」

 

 

「……わかりました!!」

 

 

エリオの頼みを聞いたリニスは一瞬戸惑ったが、彼の覚悟を帯びた表情を見て、頷きながら承諾した。

 

 

「行きますよエリオ!!!」

 

 

「思いっきりお願い!!!」

 

 

そしてリニスは猛スピードでエリオをU-Dの頭上へと運ぶと、そのまま彼の体を手放した。そうなると必然的にエリオの体は落下し、そのまま勢い良くU-Dへと向かって落ちて行く。

 

 

「(これが僕の最後の攻撃……絶対に決めてみせる!!!!)」

 

 

するとエリオは両手の手のひらを構え、その中心に雷の球体を生成する。そしてそれはバチバチと音を立てながら段々と大きくなっていく。

 

 

「オオオオオオオオッ!!!!」

 

 

「!!!」

 

 

エリオの雄叫びを聞いて、苦しんでいたU-Dは彼の存在に気付く。しかし既に彼はU-Dの眼前へと迫ってきていた。

 

そして……

 

 

 

 

 

飛電雷竜吼(ひでんらいりゅうほう)!!!!!!」

 

 

 

 

 

両手の球体から、まるでレーザーのような雷撃を至近距離で放ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく




最後のエリオの攻撃は、レールガンをイメージしてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。