LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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敗北

 

 

 

 

 

 

 

 

第十三話

『敗北』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…どうして……何でこんなことをやってるの!? ギン姉ぇぇええ!!!!」

 

 

スバルの悲痛な叫びが目の前に居る女性…ギンガ・ナカジマに向かって発せられる。その叫びを聞いた一同は驚愕する。

 

 

「ギン姉って……姉妹!!?」

 

 

「あぁ…間違いねえ! オレ達も一度会ったことがある」

 

 

「あい! あの人はギンガ……スバルの実のお姉さんだよっ」

 

 

ルーシィの言葉にナツとハッピーが答える。

 

 

「ほう……お前の妹か? ギンガ」

 

 

「えぇ。リオン君、スバルは私に任せてもらえる?」

 

 

「構わんさ。お前たちは早く村を消しに行け」

 

 

ギンガの言葉にリオンは微笑しながら了承すると、後ろに居るシェリー達にそう言った。

 

 

「行かせるかっての!!!」

 

 

するとナツはそれを阻止しようとして駆け出す。

 

 

「よせ! ナツ! 動くな!!!」

 

 

「うおっ」

 

 

グレイがそう警告するが、既にナツの周りに冷気が漂い始める。

 

 

「ぬあっ! がっ! うああっ!!」

 

 

そして、それは一気にナツの体を覆い始めた。

 

 

「ハッピー!! ルーシィを頼む!!!」

 

 

「あい!」

 

 

「ちょっ…!」

 

 

翼を出してハッピーはルーシィをその場から連れ出す。

 

 

「逃がさない…ウィングロード」

 

 

すると、ギンガはスバルと同じ魔法…ウィングロードを展開し、ハッピーとルーシィを追いかける。しかし……

 

 

「でりゃぁぁああああ!!!」

 

 

「っ……!!」

 

 

同じくウィングロードを展開したスバルに阻まれる。そして二人はウィングロードに乗ったまま、真っ直ぐとお互いを見据える。

 

 

「邪魔よ…スバル」

 

 

「ギン姉……どうしてこんなことしてるの!!?ギン姉は確か〝蛇姫の鱗(ラミアスケイル)〟ってギルドで働いて……」

 

 

「昔の話よ。もうギルドは辞めたわ」

 

 

「っ!!?」

 

 

ギンガがスバルの言葉を遮ってそう言うと、スバルは大きく目を見開く。

 

 

「今はリオン君と一緒に、デリオラを封印している氷を溶かすことに専念してるわ」

 

 

「だからどうしてそんなことを!!? 月の雫(ムーンドリップ)って言う魔法が、どれだけこの島の人に迷惑をかけているのを知らないの!!?」

 

 

「知ってるわ」

 

 

「だったらどうして!!?」

 

 

スバルの必死の問い掛けに、ギンガは少しの間目を伏せ、そして……

 

 

「復讐……!」

 

 

「え……?」

 

 

ギンガが静かに呟いた言葉に、スバルは首を傾げる。

 

 

「10年前……デリオラが暴れまわったイスバン地方……その土地に覚えはない? スバル…」

 

 

「……忘れるわけない…イスバン地方……あそこは……!!」

 

 

「そう……私たちの母さんが、最後に向かったクエストの土地よ。そして……」

 

 

ギンガはそこで一旦言葉を区切り、鋭い目つきでスバルを睨み……

 

 

 

「母さんがデリオラに殺された土地でもあるのよっ!!!」

 

 

 

と怒気の入り混じった声でそう叫んだ。

 

 

「えっ……」

 

 

そんなギンガの言葉が、スバルは一瞬理解出来なかった。しかしすぐに理解した。

 

 

「母さんが……デリオラに……?」

 

 

「そうよ。母さんの最後の仕事はデリオラの討伐だった……だけどまったく歯が立たず、そのまま……!」

 

 

ギンガはそう語りながら拳を握り締める。

 

 

「そしてそれを知った私は同じ境遇のリオン君と出会って、協力することにした。リオン君は師匠であるウルさんを超えるため…私はデリオラへの復讐のために……」

 

 

ギンガが一通り語り終えると、スバルがゆっくりと口を開いた。

 

 

「……その為なら……この島の人たちがどうなってもいいの!!?」

 

 

「構わない」

 

 

スバルの問い掛けに、ギンガは即答する。それを聞いたスバルは激昂する。

 

 

「そんなの……私の知ってるギン姉じゃないっ!!!」

 

 

そう怒鳴りながらリボルバーナックルでギンガに殴りかかるスバル。

 

 

「人は変わるものよ……スバル」

 

 

それに対しギンガは特に慌てた素振りも見せず、冷静にそう言うと、左手にスバルとは違う形の『リボルバーナックル』両足にローラー型の靴『ブリッツキャリバー』を換装して装着する。

 

 

ドゴォォォォン!!

 

 

そして激しい轟音と共に両者のリボルバーナックルが衝突する。

 

 

「うわぁぁぁあっ!!?」

 

 

その衝撃に耐え切れず、後方に吹き飛ばされるスバル。対するギンガは微動だにしていない。

 

 

「くっ…うあぁぁぁぁあああ!!!」

 

 

すぐに体勢を立て直し、雄叫びを上げながらスバルはギンガに向かって行く。

 

そしてパンチやキックを巧みに繰り出してギンガを攻撃するが、ギンガはそれを難なく避けたり防いだりしている。

 

 

「型が乱れてるわよスバル。そんなに私のことが許せない?」

 

 

「許せないよっ!! この島の人たちに迷惑をかけてまでデリオラに復讐しても、母さんは喜ばないっ!!!」

 

 

そう叫びながらスバルはリボルバーナックルに魔力を込める。

 

 

「リボルバー…キャノン!!!」

 

 

ドガァァァァァアン!!!

 

 

先ほどよりも大きな轟音が響く。しかし……

 

 

「なっ!!?」

 

 

「………………」

 

 

なんと、スバルの渾身の一撃は……ギンガの左手で軽々と受け止められていた。

 

 

「………ないわ……」

 

 

「え……?」

 

 

「母さんが喜ぶとかどうとかなんて……関係ないわ」

 

 

ギンガは心底冷え切った目でスバルは見据え、掴んでいたスバルの拳を弾く。

 

 

「言ったでしょ? これは復讐………私の憧れであり、目標だった母さんを殺したデリオラへの復讐なのよっ!!!」

 

 

「っ……ギン…姉……」

 

 

ギンガの言葉にスバルは目を見開く。すると……

 

 

「お前がデリオラなんかに挑んだからウルが死んだんだぞ!! お前にウルの名を口にする資格はない!! 消えろ!! 消え失せろ!!!」

 

 

地上からリオンの怒声が聞こえてきた。見ると、リオンがグレイを叩きのめしていた。

 

 

「グレイさん!!!」

 

 

「余所見なんて余裕ね?」

 

 

「っ!!?」

 

 

ギンガは一瞬グレイの方に気を取られたスバルの懐に潜り込み、リボルバーナックルに青色の魔力を込める。そして……

 

 

「リボルバー…キャノン」

 

 

スバルと同じ技だが、威力が段違いの拳を叩き込んだ。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 

 

ドゴォォォォオン!!!

 

 

それを喰らったスバルは地面に叩きつけられた。

 

 

「ぐっ…うぅ……!」

 

 

スバルは何とか体を動かそうとするが、ダメージが大き過ぎて思うように動かなかった。

 

 

「これに懲りたら、もう私たちの邪魔はしないことよ…スバル」

 

 

「ギン…姉……」

 

 

そう言ってリオンと共に去っていくギンガに向かってスバルは必死で手を伸ばすが、その手は届かず、地に落ちたのだった。

 

 

そしてグレイと共にしばらく倒れていると……

 

 

「だせえな……二人揃って派手にやられやがって」

 

 

頭と両手両足以外を凍らされたナツがやって来た。

 

 

「な…ナツ……」

 

 

「ナツ…お前…なんで…ここに……」

 

 

「村がどっちかわかんねぇから高いとこまで戻ったんだよ。あっちだ!! ホレ…行くぞ」

 

 

そう言ってナツはグレイとスバルの二人を引きずって歩き始める。

 

 

「リオン……は…?」

 

 

「知らん。誰もいなかったし、儀式も終わってた。くそっ!ルーシィがいじめられてたらオレたちのせいだぞ!!」

 

 

そしてしばらくの沈黙のあと、グレイがゆっくりと口を開く。

 

 

「ナツ…」

 

 

「あ?」

 

 

「オレにはお前のこと…言えねぇ…何も言えねぇ……」

 

 

そう言って涙を流すグレイ。それを聞いたスバルは、頭の中で自分の言った台詞が浮かんでくる。

 

 

―この前私を置いていった薄情なティアを見返せるもんね!!!―

 

 

―憧れのなのはさんに追いつく為にも、引き下がるわけにはいかない!!!―

 

 

「私も…同じだよ……」

 

 

そしてスバルも静かに語りだす。

 

 

「ティアを見返す為とか、なのはさんに追いつく為とか色々と粋がってたクセに……ギン姉を止めることが出来なかった……間違った道に進もうとしている家族を…助けられなかった……!!!」

 

 

スバルはそう語りながら自分の非力さを痛感し、大粒の涙を流す。そんな二人に、ナツが叫ぶ。

 

 

 

「負けたくれぇでぐじぐじしてんじゃねえ!!! オレたちは妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!! 止まることを知らねえギルドだ!!! 走り続けなきゃ生きられねえんだよ!!!」

 

 

 

そう叫びながら、ナツは二人を背負って森の中を走って行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃…ガルナ島付近の海で、一隻の海賊船が存在していた。しかし、その船の船員が全員伸びており、船長でさえもボロボロであった。

 

 

「あ…あんな島に何しに行くつもりでぇ!?」

 

 

舵を取りながら船長が船を乗っ取った二人の人物に尋ねる。

 

 

「いいから舵をとれ」

 

 

「黙って従って」

 

 

「ひっ」

 

 

しかし二人の威圧感に圧倒され、船長は小さく悲鳴を上げる。

 

 

「勘弁してくれよ……ガルナ島は呪いの島だ…噂じゃ人間が悪魔になっちまうって……」

 

 

「興味がない」

 

 

船長の言葉をバッサリと斬り捨てる。

 

 

「私たちの目的は一つだけ……」

 

 

「掟を破った者どもへ仕置きに行く。それだけだ」

 

 

そう言って、二人の人物……エルザ・スカーレットと高町なのはは、ガルナ島へと向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

つづく

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