LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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U-D戦もいよいよクライマックスです。このままのペースで駆け抜けたいと思います。

感想お待ちしております。


積み重ねた想い

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォオオオオオン!!!!

 

 

エリオの放った最後の渾身の一撃は……見事にU-Dに直撃し、轟音と衝撃が響き渡る。

 

 

「うう……ぐ……あああ……っ!!」

 

 

そしてその直後に聞こえてきたのは、U-Dの苦しげな叫び。しかしその体には目立った傷は無く、戦闘不能には陥っていなかった。

 

 

「倒し…切れなかった……」

 

 

エリオは地上へと落下しながら、薄れ行く意識の中で悔やむようにそう呟く。

 

 

「ああ……あああーーーっ!!!」

 

 

そしてU-Dが再び叫び声を上げると、彼女の魄翼から血の様に赤く鋭利な針が飛び出し、エリオの体を貫かんと言わんばかりに向かって来る。

 

 

「(ダメだ……もう本当に…体が動かない……)」

 

 

既に死力を使い果たしたエリオに、その攻撃を避ける術はなかった。

 

 

「(くそっ…くそっ……くそぉ……!!!)」

 

 

そしてエリオがこれから来るであろう痛みに目を堅く閉じたその時……

 

 

 

 

 

「よく頑張ったな…エリオ」

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

そんな声が聞こえてきた同時に……誰かに抱えられた感触と、ズガガガガッという音を感じ取った。そしてエリオが恐る恐る閉じていた目をゆっくりと開けると……

 

 

「……ナツ…さん?」

 

 

そこには……片手でエリオの体を抱え、もう片方の手で向かって来ていた赤い針を素手で受け止めているナツ・ドラグニルの姿があった。

 

 

そしてナツは手に炎を灯し、掴んでいた赤い針を粉々に砕くと……ニッと笑みを浮かべながら言い放った。

 

 

 

 

 

「あとはオレに任せろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第130話

『積み重ねた想い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリオーーッ!!! 大丈夫ですか!!?」

 

 

そこへ慌てた様子のリニスが駆けつけ、そのまま人間形態へと変身して、ナツから受け取る形でエリオの体を抱きかかえた。

 

 

「ナツさん…ハッピー……今までどこに…?」

 

 

「それがナツってば、乗り物酔いのダメージが抜け切らなくて、今までずっと隠れて休んでたんだ」

 

 

「そしたらあのチビのニオイがしてよぉ、決着を着けてやろーと思って探してたらアイツに会ったんだ」

 

 

エリオの問いに答えながら、ナツは親指である人物を指差す。そしてその指差す先には……

 

 

「シュテル!! レヴィ!! しっかりせぬか……!!」

 

 

「王……」

 

 

「王様……」

 

 

魔力を使い果たしグッタリとしているシュテルとレヴィを抱えたディアーチェの姿があった。

 

 

「バインドで縛られてたディアーチェを見つけて、色々と事情を聞いて、一緒にここまで来たんだ」

 

 

「そういうこった。つー訳で、後はオレが引き受ける。エリオはあいつらと一緒に休んでろ」

 

 

「……はい」

 

 

ナツのその言葉に、エリオは力無く頷く。

 

 

「おしっ!!! 行くぞハッピー!!!」

 

 

「あいさー!!!」

 

 

そしてナツとハッピーは、目の前にいるU-Dへと向かって翔けて行ったのであった。

 

 

「っ……!!!」

 

 

そんなナツの背中を、エリオは悔しそうな顔付きで見送ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「炎の魔導士……また貴方ですか」

 

 

「よお……今度は逃がさねえぞ」

 

 

「逃げるのは貴方の方です……今すぐ私から離れてください」

 

 

「あ?」

 

 

「私はもう──自分の力を抑えられません」

 

 

そう言った瞬間……U-Dの体から膨大な魔力が溢れ出し、彼女の白かった服は血のように赤く染まり…顔にも赤い模様が浮かび上がる。

 

 

「逃げて……ください」

 

 

懇願するようなU-Dの言葉……それに対しナツはゆっくりと炎を纏った拳を構え……

 

 

 

「勝負だ」

 

 

 

と……言い放ったのであった。

 

 

「火竜の鉄拳!!!」

 

 

そして一気にU-Dへと接近し、彼女に炎の拳を叩き込む。が…彼女の堅い防壁は健在のようで、軽々とそれを防いでしまった。

 

 

「おおおおおらぁあああ!!!!」

 

 

「!!?」

 

 

しかしナツの拳の勢いは止まらず、何と防壁ごとU-Dを吹き飛ばしてしまった。

 

 

「……今のは……?」

 

 

体制を立て直したU-Dは先程のナツの攻撃に違和感を感じ、疑問を抱きながら自身の両手を見つめる。

 

 

「ボサッとしてんじゃねえぞ!!!」

 

 

そう叫びながらU-Dに向かって、真っ直ぐ突っ込んでいくナツ。

 

 

「っ…スピア!!!」

 

 

そんなナツに対してU-Dは魄翼を左右に大きく広げ、そこから大量の魔法弾を連射した。

 

 

「ハッピー!! 止まんじゃねえぞ!!! 思いっきり突っ込めぇ!!!」

 

 

「あい!!!」

 

 

向かって来る20を軽々と越える魔法弾の雨にも臆せず、ただただ一直線に向かって行くナツとハッピー。

 

 

「だらぁああああああ!!!!」

 

 

そしてナツは炎を纏った両拳を振るい、魔法弾を叩き落しながら突き進んでいく。

 

 

「がっ……ぐぅっ……!!!」

 

 

それでもやはり全ては防ぎ切れず、その内の何発かが肩や脇腹に直撃する。

 

 

「まだまだぁああ!!!」

 

 

しかしナツはそれを意にも介さず、魔法弾を叩き落しながらU-Dに向かって突き進んだ。

 

 

「止まらない……!? ジャベリン!!」

 

 

それを見たU-Dは多少驚きながらも、今度は巨大な赤い槍をナツに向かって投げつける。

 

 

「火竜の翼撃!!!!」

 

 

対するナツは両腕に纏った炎を振るい、飛んできた槍を薙ぎ払い粉砕した。

 

 

そして遂にナツは、U-Dの眼前へと迫った。

 

 

「火竜の鉤爪!!!!

──と、砕牙!!!!」

 

 

炎を纏った蹴りを叩き込んだ後、連続で炎の爪による攻撃を加えるナツ。

 

 

「無駄です」

 

 

しかしやはり、U-Dの防壁により遮られてしまう。だがナツはU-Dの呟きに対し、力強く言い放つ。

 

 

「そいつはどうかな」

 

 

そしてナツはU-Dから一旦距離を取り、両手に纏った炎を合わせて強大な炎へと変換し……

 

 

 

「火竜の煌炎!!!!!」

 

 

 

ドゴォォォオオオオオオン!!!!

 

 

そのままU-Dに叩きつけ、大爆発を起こしたのであった。すると……

 

 

ピキッ……!!

 

 

「なっ!!?」

 

 

ついにU-Dを守っていた防壁に、小さな亀裂が入ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あの堅い防壁にヒビが!!?」

 

 

「なんと!?」

 

 

離れた所でナツとU-D戦いを観戦しているエリオと人間形態のリニス、そしてマテリアルの3人。ナツがU-Dの誇る堅い防壁にヒビを入れた事に、リニスとディアーチェが驚愕の声を上げる。

 

 

「……やっぱり、ナツさんはスゴイや」

 

 

「エリオ?」

 

 

いつもなら興奮気味に喰い付くハズのエリオだが、今はどこか消沈気味にそう言う。そんなエリオの態度に、リニスは首を傾げた。

 

 

「僕があんなに攻撃を叩き込んでも、U-Dの防壁は一度も破る事が出来なかったのに、ナツさんはこんな短時間で……強くなろうって決めたばかりなのに……僕はなんて弱いんだ」

 

 

「………エリオ」

 

 

自己嫌悪するかのようなエリオの言葉。それに対しリニスが何か言おうとすると、それよりも先にシュテルとレヴィが口を開いた。

 

 

「申し訳ありません……王」

 

 

「ゴメンね……王様」

 

 

「シュテル? レヴィ?」

 

 

「この身と引き替えに、のちの勝利に繋がる布石を打つどこか……致命打を与える事すら叶いませんでした」

 

 

「ボクとシュテるんの全力と干渉制御ワクチンを詰め込んだ一撃も届かなかった……ボクたちのした事は……無意味だったのかな」

 

 

「た…たわけっ!! そんな事は……」

 

 

シュテルとレヴィのそんな言葉を否定しようとするディアーチェだが、今も変わらず暴れまわっているU-Dの姿を見たあとでは……それ以上の言葉を発する事ができなかった。

 

 

「そんな事ありませんよ」

 

 

すると、そんなディアーチェの代わりにリニスが、否定の言葉を口にした。

 

 

「エリオ…シュテル…レヴィ……あなた達の行動は、決して無駄ではありません。見ていてください、ナツさんの戦いを」

 

 

リニスがそう言うと、エリオたちは再びナツとU-Dの戦いへと、視線を戻したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「オオオオオオオオッ!!!!」

 

 

「っ……!!」

 

 

ドドドドドドッ!!!

 

 

雄叫びを上げながら炎を纏った打撃を連続でU-Dの防壁へと叩き込むナツ。その度に防壁に少しずつだが亀裂が広がり、U-Dは表情を歪める。

 

 

「何故……? この防壁がこんな短時間で亀裂が……炎の魔導士、一体何をしたのですか?」

 

 

「オレは何もしてねえっ!!!!」

 

 

U-Dの疑問に対してそう叫ぶと、ナツは炎の拳をもう一撃叩き込み、防壁ごとU-Dを後退させた。

 

 

「オレはただ殴ってるだけだ。それでお前の防壁が破られたっつーんなら、それだけお前の防壁が弱ってたって事だろ」

 

 

「そんな事はありえない。君1人と戦ったくらいで弱るほど、この防壁は甘くない」

 

 

「オレ1人じゃねえ!!!」

 

 

「!」

 

 

「あいつらが戦ったからだァ!!!!」

 

 

そう叫びながらナツはU-Dにさらに攻撃を叩き込み、防壁の亀裂を広げる。

 

 

「エリオ…レヴィ…シュテル……あの3人がお前と戦ったからこそ、今この状況を作り出せているんだ」

 

 

「あの戦いで…それほどの力を消耗していた……? 敗れたあの3人の力がそこまで……」

 

 

「敗れた? 何言ってやがる…あいつらはまだ負けてねえだろ」

 

 

「? 何を言って……」

 

 

ナツの言葉の意味を理解できず、疑問符を浮かべるU-D。そんな彼女に対し、ナツは力強く言い放つ。

 

 

 

「あいつらのお前を救いたいという『想い』が今……積み重なってお前と戦ってるんだ」

 

 

 

そう言い放つと、ナツはもう一度口を開き、言葉を続ける。

 

 

「エリオ…シュテル…レヴィ……聞こえるか? お前らの力は…『想い』は…ちゃんとこいつに届いている!!! 諦めねえ限り、その『想い』が負ける事はねえんだァ!!!!」

 

 

そしてナツは再び……炎の拳を構えてU-Dへと向かって行く。

 

 

「何故……そこまでして戦う……? 私の事なんか……放っておけばいいのに……」

 

 

「放っておけねえから戦ってんだろ。あいつらが必死にお前を救おうとしてんなら、オレもお前を救う為に戦う。仲間の意思は…オレの意思だ」

 

 

「ナツの意思もね。オイラたちには伝わってるから」

 

 

「仲間……? シュテルやレヴィも…君の仲間だと言うのか……?」

 

 

炎の拳を振るってくるナツを、U-Dは巨大な両手で迎え撃ちながらそう問い掛ける。

 

 

「あたりめーだろ!! たとえ住む世界が違っても…たとえ敵同士だったとしても…今は同じ『想い』のもとで戦っている。同じ『想い』を持っている限り──オレたちは仲間だっ!!!!」

 

 

問い掛けに対してそう叫びながら答えると、ナツは渾身の力で炎の拳をU-Dの防壁に叩き込み……爆炎を巻き起こしたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うっ…ぐ……うぅ……!!」

 

 

「っ……!!!」

 

 

「うあぁぁ……!!」

 

 

その頃……ナツの言葉を聞いていたエリオ、シュテル、レヴィの3人は……それぞれリニスとディアーチェの胸の中で涙を流していた。

 

 

「エリオ……あなたは弱くなんてありません。あなたの力があったからこそ、U-Dを追い詰める事ができているのです」

 

 

「……うん……ぐすっ」

 

 

リニスの言葉に、エリオは涙を拭いながら頷いた。

 

 

「王……私たちのした事は……無駄では…なかったのですね……」

 

 

「ボクたちの…ひぐっ……想いや力は……無意味じゃ…ぐす……なかったんだね」

 

 

「……当然だ。我が臣下がその身を賭して繋げようとした想いが、無駄であるハズがなかろう」

 

 

ディアーチェはシュテルやレヴィの体を抱き締めながらそう言うと、そのままエリオに声をかけた。

 

 

「赤チビ──いや…エリオ・モンディアル。1つ聞きたい。あの男は一体何者だ?」

 

 

「……あの人はナツ・ドラグニル。僕たちの仲間さ」

 

 

「……そうか」

 

 

エリオの短い答えを聞き、満足そうにそう言うと、ディアーチェは意を決したような顔付きになる。

 

 

「あの男は我が臣下の2人を仲間だと言った…そしてシュテルやレヴィの想いと共に戦っておる……なのに王である我だけが、ここで指で咥えて見ておる訳にはいかんな。

 

我も戦うぞ!!! U-Dを救う為に!!!」

 

 

そして自身の杖であるエルシニアクロイツを掲げると、高らかに言い放った。

 

 

「……ならば王よ」

 

 

「ボクたちの力……王様に託すよ」

 

 

すると、シュテルとレヴィはそう言って、ディアーチェに自身に残った魔力を注ぎ始めた。

 

 

「シュテル!? レヴィ!? 何をしておる!!? そんな事をすれば──」

 

 

「安心してください。躯体を維持できる分の魔力は、残しておきます」

 

 

「だから、ボクたちは消えないよ」

 

 

慌てるディアーチェにそう言いながら、魔力供給を続ける2人。

 

 

「どうか…ご武運を──」

 

 

「負けないでね……王様……」

 

 

そしてその言葉を最後に、2人からの魔力供給が終わった。

 

すると…ディアーチェの背から生えていた三対六枚の小さな黒翼が赤・青・黒紫の三色の色を持った翼へと変わった。

 

 

「任せておけ。うぬらから託された力……決して無駄にはせぬ!!!」

 

 

そう言って……ディアーチェは翼を羽ばたかせて戦場へと赴いたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「オラァァアアア!!!」

 

 

「くっ……!!」

 

 

咆哮と共に放たれるナツの猛攻。それをU-Dは防御ではなく回避に徹している。これ以上防壁の亀裂を広げられないようにする配慮であろう。

 

 

「いい加減……止まりやがれェ!!!」

 

 

そう叫びながらナツは拳を放つが、それもあっさりと回避される。

 

 

「私は誰にも止められない──1人でいられる強さを──手に入れたのだから」

 

 

「お前にも、仲間はいるんじゃねえのか」

 

 

「そんなものはいない。過去も未来も──私はずっと孤独でいい。そうすれば、誰も悲しむ事がない──私に近づきさえしなければ……」

 

 

悲しげな顔でそう語るU-D。すると……

 

 

「黙って聞いてりゃあウジウジと……逃げてんじゃねえぞコノヤロウ!!!!」

 

 

U-Dの暗い言葉を吹き飛ばすように、ナツが大声を張り上げる。

 

 

「逃げ……?」

 

 

「テメェはただ逃げてるだけだ。希望からも…絶望からも…仲間からも…自分の力からも……目を閉じて、耳を塞いで、逃げ回ってるだけだ!!!! そんなんじゃいつまで経っても…前には進めねえだろ!!!!」

 

 

そう叫びながらU-Dへと接近し、炎を纏った拳で殴り掛かるナツ。

 

 

「進む必要なんてない……私は1人ずっとここで、永遠に終わる事のない破壊の運命の中にいるのだから」

 

 

対するU-Dはそれを避け、ナツを迎え撃ちながらながら、尚も悲しげな顔でそう言い放つ。

 

 

すると……

 

 

「そんな事はないぞ……U-D」

 

 

「「「!!」」」

 

 

突然聞こえてきた声に、戦いの手を止めてそちらへと視線を移すナツとハッピー2人とU-D。

 

 

「王──どうしてここに……?」

 

 

そこにいたのは、三色の翼を広げたディアーチェであった。

 

 

「知れた事。貴様を我が手に収めにきたのよ」

 

 

「君は…私に敵わない──シュテルもレヴィも私に敗れた」

 

 

「笑わせるな。そこの男も言っていたであろう。2人とも負けてなどおらぬわ。我が身に力を託して、そこでしばし休んでおるだけよ」

 

 

「そうだとして……私を手に入れて、それでどうします?」

 

 

「貴様の力を我が物として制御しきってくれる。我らが悲願はまさしくそれよ」

 

 

「無限の力を手に入れて……仮に制御出来たとして……それであなたは何をする?」

 

 

「そうさの。この世界を粉々に砕いてやってもよいが……もう1つ考えている事がある。塵芥のような人間どもの居らぬ地に赴いて──ゼロから我が王土を築いてやろうとな」

 

 

「……夢物語だ……そんな事はできません」

 

 

「出来るか出来ぬかは知らぬ。だが、やるかやらぬかは我が決める事よ。貴様と無駄な問答をする気はない。これは命令ぞ……我が元に来い、U-D」

 

 

「あなたも──きっと壊れれてしまう──」

 

 

「阿呆が! 壊れぬわ! 我が身には、星と雷の魔力が託されておる! 貴様を我らの元へ導いてやれと、支えてくれておる! ゆえに、我が身は砕け得ぬ!! この力をもって──貴様を破壊の運命から引きずり出す!!! そして共に──前へと進むのだっ!!!」

 

 

エルシニアクロイツを構え、U-Dに向かって高らかにそう宣言するディアーチェ。すると、2人の会話を黙って聞いていたナツが口角を吊り上げながらU-Dに言った。

 

 

「何だよ、お前にもちゃんといるんじゃねーか……仲間って奴が」

 

 

「ち…違う……私は昔も今も…そしてこれからも──ずっと1人だ!!」

 

 

ナツの言葉を否定しながら耳を塞ぐように頭を抱え、顔を大きく横に振るうU-D。

 

 

「いつまでも逃げ回ってんじゃねえ!!! 目を閉じるな…耳を塞ぐな──周りを見ろ!!! 仲間の声に耳を傾けろ!!! お前は──1人じゃねえんだっ!!!!」

 

 

「うううあああああああああっっっ!!!!」

 

 

ナツがそう叫んだ瞬間……U-Dはこれ以上は聞きたくないと言わんばかりに咆哮を上げ、その体から先程よりも膨大な魔力を放出し始めた。

 

 

「スッゲェ魔力だ……」

 

 

「ナツ、どうするの?」

 

 

「…………」

 

 

ハッピーの問い掛けに対して、ナツは考えるように黙り込む。すると……

 

 

「ナツ・ドラグニル」

 

 

「!」

 

 

ディアーチェがナツに声をかけた。

 

 

「U-Dを救う策がある。しかし、いくら星と雷の力をもってしても、我1人では実行は難しい。だから頼む……手を貸してくれ。これはうぬにしか──いや…うぬだからこそ頼みたいのだ。我が臣下を仲間と呼び…2人の想いを繋げてくれた……うぬにな」

 

 

そんなディアーチェの頼みに対し、ナツはニッと笑いながら頷いた。

 

 

「いいぜ……オレはどうすりゃいい?」

 

 

「U-Dを止めるには、我の最大の一撃を当てる必要がある。だがその為には、あの防壁が邪魔だ。だからうぬはあの防壁を破壊し、本体に全力の一撃を入れて、奴の動きを止めよ」

 

 

「任せろ!! 燃えてきたぞ!!」

 

 

そう言ってナツは気合の表れとして自身の手のひらに拳を打ち付けると、まっすぐとU-Dを見据えた。

 

 

「行くぞハッピー!!!」

 

 

「あいさーー!!!」

 

 

そしてナツはハッピーと共に、U-Dへと向かって行ったのであった。

 

 

「お願いです……私にこれ以上……希望を抱かせないでください!!! 希望を持つから絶望する──私はそうして長い時間を過ごしてきたのだから!!!」

 

 

そんなナツに対し、U-Dは悲痛な叫びを上げると……片手を掲げ、魔力を集束する。すると彼女の手に、今までとは比べ物にならないほど巨大な赤い魔力の剣が出現する。

 

 

 

「エンシェント・マトリクス!!!!!」

 

 

 

そしてその剣を……クルリと体を回転させたのち、勢い良くナツへと向かって投擲した。

 

 

「もう絶望する事なんかねえ!!! オレたちの想いが…願いが…必ずお前を助け出すっ!!! だからお前はもう何も心配すんな……ただオレたちを──お前が抱いた希望を──」

 

 

しかしナツはそれに臆する事無く……両手に強大な炎を集束しながら一直線に突き進み……

 

 

 

「信じろっ!!!!」

 

 

 

ドガァァァアアアアアアアン!!!!!!

 

 

そう叫ぶと同時に……ナツとU-Dの剣が衝突し……大爆発を起こしたのであった。

 

 

「…………」

 

 

その爆発を……ただ呆然と眺めているU-D。

 

 

「……やはり……誰にも私を救うことなんて……」

 

 

U-Dが顔を俯かせて、ポツリと諦めと落胆の入り混じった言葉を呟く。

 

 

だがその時……

 

 

「信じろって言っただろ?」

 

 

「!!?」

 

 

そんな声が聞こえ、U-Dはバッと勢い良く顔を上げると……そこにはボロボロになりながらも、爆煙の中から姿を現したナツとハッピーの姿があった。

 

 

「お前は必ず──救ってみせる!!!!」

 

 

「行けーーーっ!!! ナツーーー!!!」

 

 

そしてナツとハッピーはそのままU-Dの眼前へと一気に迫り……ナツは炎を集中させた右手で……渾身の技を放った。

 

 

 

「紅蓮火竜拳!!!!!」

 

 

 

炎の連続パンチが、何度何度もU-Dの防壁へと叩き込まれる。そしてついに……

 

 

ビキビキビキビキ……パリィィィィイイイン!!!!

 

 

U-Dを守っていた防壁が粉々に砕け散ったのであった。

 

 

しかしナツの攻撃は……まだ終わってはいない。

 

 

「滅竜奥義……」

 

 

ナツは間髪入れずに、自身の両腕に灼熱の炎を纏い……そして……

 

 

 

 

 

「紅蓮爆炎刃!!!!!!」

 

 

 

 

 

「うああああああああっ!!!!」

 

 

ナツが渾身の力で放った強大な炎の刃が……U-Dを飲み込んだのだった。

 

 

「ディアーチェ!! 今だよっ!!!」

 

 

「ぶちかませぇえええ!!!!」

 

 

「礼を言うぞ……ナツ、ハッピー」

 

 

ナツとハッピーの叫びを聞き、ディアーチェはエルシニアクロイツを天に向かって高々と掲げる。その瞬間…彼女の足元と正面に、黒紫色の魔法陣が展開される。

 

 

「うぁぁあああああ!!!!」

 

 

「もう泣くな!! 貴様の絶望など──我が闇で打ち砕いてくれるわぁーーっ!!!!」

 

 

ズドォォォオオオオオオン!!!!

 

 

ディアーチェの放った魔法がU-Dに直撃し……あたりは眩い閃光に包まれた。

 

 

「やった……のでしょうか?」

 

 

「わかりません。まだ、なんとも」

 

 

「王様!! U-D!!」

 

 

「行ってみよう!!」

 

 

その様子を見ていたエリオとリニス、そしてシュテルとレヴィは、その閃光の中へと向かって行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「機能破損……永遠結晶(エグザミア)にダメージ……」

 

 

そう呟きながら、UーDは静かに落ちていく。

 

 

「私は……壊れたのでしょうか……」

 

 

誰も何も無い静かな白い空間で……ただ1人。

 

 

「何も見えない……何も聞こえない……とても……静かで──?」

 

 

その瞬間……U-Dは奇妙な感覚を覚えた。そして、閉じていた目をそっと開くとそこには……

 

 

「無事か! 貴様、しっかりせぬか!」

 

 

「王……?」

 

 

U-Dの体を優しく抱きとめた、ディアーチェの姿があった。

 

 

「我が戦術が上手く嵌ったようだ。飽和攻撃によって貴様の永遠結晶(エグザミア)の誤作動を止め……その隙に、我が貴様のシステムを上書きする。どこぞの子鴉が、かつて闇の書の融合騎にやったのと同じ作戦だ……癪には障るがな」

 

 

「……? 本当に、永遠結晶(エグザミア)が止まっている……」

 

 

ディアーチェの説明を聞き、U-Dは永遠結晶(エグザミア)の停止を確認する。

 

 

「我の闇の力、シュテルの発案、レヴィの出力……それに何より、ナツたち異世界の魔導士の協力もあって初めて成し遂げられた……まあ、必然の結果よ。貴様はもう、無闇な破壊を繰り返す必要も無い。暫くは不安定な状態もあろうが、我がしっかり縛り付けておいてくれる」

 

 

「何故……そんな事を……?」

 

 

「シュテルが思い出したのだ……貴様の事。我等は元々1つだった──永遠結晶(エグザミア)と、それを支える無限連環(エターナルリング)構築体(マテリアル)──すなわち、4基が揃って初めて1つの存在。闇から暁へと変わりゆく、紫色(ししょく)(そら)を織り成すもの──紫天の盟主とその守護者。我が王、シュテルとレヴィの2人の臣下。そしてお前は我等の主であり……我等の盟主」

 

 

「それは……」

 

 

「無理に思い出さずともよい──いや、思い出す必要もない。我等はずっと、お前を探していたのだ……我等が我等であるために。お前が1人で泣いたりせぬように」

 

 

「王……あなたは……」

 

 

「惰眠をむさぼり、捜すのに手間取り……随分と待たせた。たった今より、もうお前を1人にはさせぬ。望まぬ破壊の力を振るわせたりもせぬ。ナツの言葉を借りるなら──我等は仲間だからな。安心して、我が元に来い」

 

 

優しい笑みを浮かべながら、そう言い放つディアーチェ。

 

 

「王……」

 

 

「お前はチビだが、我等が盟主ぞ。王などと呼ぶな。単に名前で呼べ」

 

 

「……ディアーチェ」

 

 

「そうだ。それからな……シュテルがお前の名も思い出した。システムU-Dなどと無粋な名前ではないぞ。お前が生まれた時の名だ」

 

 

そう言って……ディアーチェは彼女の本当の名前を告げた。

 

 

 

「ユーリ・エーベルヴァイン──それが、人として生まれた時のお前の名だ」

 

 

 

「……ユーリ……エーベルヴァイン」

 

 

U-D……ユーリは自身の名を確認するように、小さく呟いた。

 

 

「これよりお前をユーリと呼ぶ。他の連中にもそう呼ばせる。良いな?」

 

 

「…うん…」

 

 

ディアーチェの言葉に、ユーリは小さく笑顔を浮かべて頷いた。

 

 

「さて、戻るぞ。外からはここの状況がわからん。外にいる連中が気を揉んでおるだろうからな」

 

 

そう言うと……ディアーチェはユーリを抱えたまま翼をはためかせ、白い空間から出て行ったのであった。

 

 

 

 

 

こうして……後にこの世界で『砕け得ぬ闇事件』と名付けられたこの出来事は静かに幕を閉じたかのように思われた。

 

 

 

しかし……彼らは知らない。

 

 

 

まだ全てが終わった訳ではないと言う事に……そして──

 

 

 

 

 

──さらなる脅威が……その産声を上げようとしている事を……

 

 

 

 

 

つづく

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