LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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GOD編のエピローグです。

次回から閑話を少し挟んだあと、いよいよ天狼島編に入ります。

感想お待ちしております。


ずっと繋がっている

 

 

 

 

 

暴走した闇の欠片が再生したイグニールを、全員の力を合わせて死闘の末に撃破する事に成功したナツたち。

 

 

その戦闘を最後に、後にこの世界で『砕け得ぬ闇事件』と名付けられたこの出来事は今度こそ幕を閉じた。

 

 

そして同時に……別れの時が近づいてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第134話

『ずっと繋がっている』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件を終えた一同がアースラへと戻った直後は、全員疲労困憊でしばらく動く事ができなかった。その中でも特に酷かったのは……

 

 

「うう、がんばった分、後が辛い……」

 

 

「クリスさんとティオも、大丈夫ですか……?」

 

 

「(ふるふる)」←厳しいらしい

 

 

「にゃー……」

 

 

「うおお……いかん、目眩がしてきた……」

 

 

「トーマしっかり……でも、私もくらくら……銀十字、周辺魔力吸収モード。回復促進…」

 

 

【回復促進開始】

 

 

ヴィヴィオとアインハルト、そしてトーマとリリィの未来組であった。

 

 

「未来組は色々と未熟者が多いな……色々大変そうだ」

 

 

「だらしねえ奴等だよなー」

 

 

「あい」

 

 

ヴィータの嘆息混じりの言葉に、ナツとハッピーが同意する。

 

 

「アタシとしては何で一番ボロボロだった奴が一番ピンピンしてんのかが疑問だよ」

 

 

「それがナツですから」

 

 

「今はもうそれで納得できちまう自分が怖ェ」

 

 

ハッピーの言葉に対して妙に納得できてしまった自分に軽く自己嫌悪するヴィータであった。

 

 

「ところでナツ、乗り物酔いは大丈夫なの?」

 

 

「おう!! シャマルに治してもらった!!」

 

 

「正確には身体強化魔法でバランス感覚を強化しただけなんだけどね」

 

 

「ウェンディのトロイアみたいな感じだね」

 

 

ナツとハッピーとシャマルがそんな会話をしている間に、話題は再び未来組へと戻る。

 

 

「でも、あの子たちのおかげで助かった場面も多いよ。凄い子たちだと思う」

 

 

「しかし一番小さいあの子は、未来ではお前の子供だという話だが」

 

 

「そうなんだって。キリエさんからは『あんまり接触しないように』って言われてるんだけど……」

 

 

「あ! ちっちゃいママー♪」

 

 

「はーぁいー♪」

 

 

「バリバリ仲良くしてんじゃねえかよ!」

 

 

「だって、無視したりとかできないよ~」

 

 

「なのはさんらしいですね」

 

 

接触しないように忠告されているにも関わらず、優しく返事を返すなのはにヴィータがツッコミを入れ、ティアナが苦笑を浮かべる。

 

 

「でも、どこの世界でもなのはさんとヴィヴィオが仲のいい親子で安心しました。私たちの世界でも、父親がもう少し素直になってくれればいい家族なんですけどね」

 

 

「父親!!?」

 

 

ティアナの言葉に異様に食いついたのは、驚愕の顔を浮かべたヴィヴィオであった。

 

 

「アースランドの私には父親がいるんですか!?」

 

 

「正確には父親代わりだけど……そっちにはいないの?」

 

 

「はい……未だになのはママ、そういう話が一切無くて」

 

 

「ちょっと待ちなさい。アンタの世界って10年以上先の未来でしょ? なのはもいい大人になってるハズじゃない」

 

 

「それなのに……無いの?」

 

 

「はい、まったく……」

 

 

「「「…………」」」

 

 

「にゃ?」

 

 

ティアナとシャルルとヴィヴィオはヒソヒソと会話をしたのち、同情的な視線をなのはへと向けるが、当の本人は不思議そうに首を傾げていた。

 

 

「それ言うなら、トーマ君に私がなんで怖がられてるのかも、もーちょい詳しく知りたいとこやけど」

 

 

「(ぞくっ!)」

 

 

「……やめておきましょう。トーマさんが可哀想です」

 

 

直感的に危険を察知し、背筋を凍らせているトーマを見て、フェイトに抱かれている状態のリニスがやめるように言った。

 

 

「未来の事なんて、知らない方がいいのよ」

 

 

「これは、博士から厳命されていた事でもあるんですが……現地の人が未来の情報を知ってしまった場合は、未来に関わる記憶は出来る限り封鎖しておくように、と……」

 

 

「やっぱり、そうなりますよね……」

 

 

「知ってしまう事で未来が変わる事もあるしね。ナノハちゃんで言えば、未来を知ったせいで、あの子と親子にならない可能性も出てきちゃうし」

 

 

「「それは嫌ですーー!」」

 

 

「ハモった!」

 

 

「すでに息ピッタリですね」

 

 

綺麗にハモって抗議の言葉を口にするなのはとヴィヴィオを見て、フェイトとリニスがそう声を漏らす。

 

 

「トーマ君やリリィちゃんも、かなり奇跡的な確率で生き残った子らしいので、ちょっとした切欠で助からなかったりとか……」

 

 

「困ります! それ、ものすっげー困ります!!」

 

 

「私もですー!」

 

 

「必死だね」

 

 

同じくトーマとリリィも抗議の言葉を口にし、ハッピーがそう声を漏らす。

 

 

「ですので、『時間移動という出来事が存在した』という箇所だけを慎重に封鎖させていただきます」

 

 

「私たちや王様たちと会った事、戦いがあった事……そのへんについては、消すと色々問題が起きそうだから、『時間移動』に関しての事だけね」

 

 

「事件そのものについては、忘れたりしないんですよね?」

 

 

「そこまで封鎖しちゃうと、逆に思い出しやすくなっちゃうからね。封鎖後は、私やお姉ちゃんはそこか、ええと…管理外世界? から来た人って事になると思う」

 

 

「ヴィヴィオさんたちも、過去の記憶は封鎖してしまう方が良いと思います……この先の未来に影響を及ぼしかねませんし」

 

 

「あ、えーと……お願いします」

 

 

「はい」

 

 

「オレも、2人に同意」

 

 

過去の記憶封鎖について、未来組は了承する。

 

 

「じゃあ私たちはどうなるのよ? 別にこの世界の未来や過去を知っても、私たちの世界には関係ないんじゃないの?」

 

 

「そうとも言い切れないのよねぇ。ティアナちゃんたちの世界…アースランドだっけ? その世界にもナノハちゃんたちが存在している以上、アースランドにもトーマ君やアインハルトちゃんが存在してる可能性もあるの」

 

 

「それでもし、これからその世界の未来でトーマ君たちに出会うとしたら、間接的に未来を知ってしまっていると言う事になるので……」

 

 

「私たちの世界の未来が変わっちゃうかもしれない…って事ね」

 

 

アミタとキリエの説明にティアナが納得すると、理解できずに疑問符を浮かべているナツが口を開く。

 

 

「つまり……どういうことだ?」

 

 

「この世界での記憶を消しておかないと、マフラー君は未来でお父さんのドラゴンに会える可能性が無くなってしまうってことよ」

 

 

「なにぃ!!? それは困る!!!」

 

 

その説明を聞いて、ナツも記憶封鎖を受ける事を渋々とだが了承した。

 

 

「そういえば、ヴィヴィオやトーマ君たち、それに妖精の尻尾(フェアリーテイル)のみなさんはちゃんと帰れるんですか?」

 

 

「そのへんは間違いなく。私たちが帰る時に、ちゃんと元の世界にお連れします」

 

 

「王様とユーリが、力を貸してくれる事になったからね。ちゃんと戻せると思う」

 

 

「あ、そのユーリと王様たちは……?」

 

 

「あの…エリオもいないんですけど……」

 

 

ユーリとマテリアルズ、そして何故かいないエリオについて尋ねるフェイトとリニス。すると……

 

 

「気安く呼ぶでないわ」

 

 

「オリジナル、オイッスー!」

 

 

「あはは……」

 

 

彼らの前にマテリアルズとユーリ、そして何故か彼女たちに連れられたエリオが現れた。

 

 

「エリオ、今までどこに行ってたんですか?」

 

 

「えっーと……休んでたら急にレヴィにさらわれちゃって……」

 

 

「エリおんが帰る前に、エリおんの世界や魔法の事を色々と聞いてたんだ~」

 

 

リニスの問い掛けに答えながら、レヴィはエリオの腕に抱きつき、その行為に顔を赤くするエリオ。因みにその光景を見たリニスとシャルルは……

 

 

「あらあら、ずいぶんと懐かれてしまいましたね♪」

 

 

「ウェンディとキャロが見たら卒倒するわね」

 

 

と呟いていた。

 

 

「ユーリももう動いて大丈夫なの?」

 

 

「はい。おかげさまで、すっかり元気です」

 

 

そう問い掛けるハッピーに優しく笑いかけながら答えるユーリ。

 

 

「お前らはこれからどうすんだ?」

 

 

「ふむ……そうさのう……」

 

 

ナツの問い掛けに、ディアーチェは考えるような素振りを見せたのち、淡々と答えた。

 

 

「この世界の塵芥どもに我が闇の恐怖を味わわせてやろうと思っておったが、この世界は我等には窮屈でいかん。よって我等は、赤毛と桃色の世界に侵攻する事とした」

 

 

「え……? それって……」

 

 

「そうなんです。王様たち、私たちの世界へ来てくれるって……」

 

 

そう言って嬉しそうな笑顔を浮かべるアミタ。

 

 

「なんか色々エキサイティングな世界だって聞いてるから、退屈しなさそうだし!ダンジョンとかもあるし、モンスターとかもいるんだって!」

 

 

ワクワクという擬音が聞こえてきそうなほど楽しそうにそう語るレヴィ。

 

 

「そ…そんな世界なんだ?」

 

 

「古い遺跡が多いですし、死蝕地帯には危険生物もいますので……」

 

 

「私もお姉ちゃんも、実践訓練はそこで積んだのよ」

 

 

「はー……ええなー、私も行ってみたい……」

 

 

アミタとキリエの説明を聞いて、エルトリアに興味を持つはやて。すると、ナツが口を開く。

 

 

「ダンジョンやモンスターなら、オレたちの世界にもいんぞ。なぁハッピー」

 

 

「あい。ギルドに入れば、ダンジョンの調査とかモンスター討伐の依頼とかがくるしね」

 

 

「依頼の場所によっては様々な街や村などに行きますから、ちょっとした冒険も楽しめますしね」

 

 

「ま、その分不測なトラブルに巻き込まれたりもするけどね」

 

 

「……………」

 

 

「レヴィ、心揺れてはいけませんよ」

 

 

ナツたちの話を聞いて、行きたそうな顔をしているレヴィをシュテルが戒める。

 

 

「まぁ、我等も初めはナツたちの世界に侵攻しようと思ったのだが……ユーリがな」

 

 

「ユーリが?」

 

 

「私達の暮らす世界はもちろんですが、ユーリの力──無限連環(エターナルリング)の力が、エルトリアの復旧に役立つかもしれないと聞いて、ユーリが……」

 

 

「はい……壊すばかりだった私の力が、世界の復興に役立つならと思い……ディアーチェやアミタさん達に、我が侭を言いました」

 

 

「別にワガママではなかろう。我もレヴィも2つ返事で了承したわ」

 

 

「ユーリにやりたい事が見つかったのは良い事です」

 

 

「そう……でもそれだと、あんまり会えなくなっちゃうね」

 

 

残念そうにそう声を漏らすなのは。

 

 

「ですね。時間が異なりますから、文通するというわけにもいきませんし」

 

 

「寂しいな……」

 

 

「寂しがる事なんかねえさ」

 

 

すると、ナツが笑みを浮かべながらそう言い放つ。

 

 

「たとえどんなに離れていても…住む世界が違っても…オレたちはいつまでも仲間だ。記憶が封鎖されても、共に過ごした時間が消える訳じゃねえ。思い出せなくなっても、オレたちはずっと──(ここ)で繋がっていられるんだ」

 

 

己の心臓部分をドンッと叩きながら笑顔でそう言い放つナツの言葉を聞いて、その場にいた全員が釣られて笑顔を浮かべたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

こうして……ひと時の休息のあと、別れの準備は滞りなく進んでいった。

 

 

「さてと。それじゃあ、そろそろ戻る準備をしましょっか」

 

 

「ええ。時間移動や世界移動で来られた皆さんは、元いた時間、元いた世界へお送りします」

 

 

「あと記憶封鎖ね……未来組と異世界組、こっち来てー」

 

 

「現在組の皆さんは、こちらへ──」

 

 

そう言って、ナツたち異世界組とヴィヴィオたち未来組はキリエのもとで…なのはたち現在組はアミタのもとで記憶封鎖を受けた。

 

 

そして記憶封鎖も終了し、別れの時がやって来た。

 

 

「それでは皆さん! 本当にありがとうございました」

 

 

「お邪魔しました~♪」

 

 

「じゃあなーー!!」

 

 

「みんな、バイバーイ!!」

 

 

そんな簡単な別れの言葉と共に……妖精組とフローリアン姉妹と未来組、そしてユーリとマテリアルの3人は空へと舞い上がり……やがて消えていったのであった。

 

 

そうして……この世界で『砕け得ぬ闇事件』は終わりを告げた。

 

 

あとに残ったのは……それぞれの世界での……それぞれの時間であった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

X784年

アースランド・妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「がーっはっはっは!!! どんどんかかって来いやー!!!」

 

 

そこではテーブルの上に乗り出したナツが、元気に次々とギルドメンバーたちを叩きのめしていた。

 

 

「うるせーなナツの奴。何であんなに元気なんだよ?」

 

 

「何でも、イグニールと再会する夢を見たらしいよ」

 

 

「なるほど、だからあんなに上機嫌なのか」

 

 

毒づくグレイになのはが説明し、納得したように頷くエルザ。

 

 

「ったく、夢くれーで浮かれやがって。ウゼェったらね──ごはっ!?」

 

 

すると、毒づいていたグレイのもとに、ナツにボコられたマックスが飛んできて、それに巻き込まれたグレイは床に倒れる。

 

 

「何しやがるクソ炎!!!」

 

 

「あーん? んなトコにいるテメェが悪ィんだろ。文句があんならかかって来いよ変態カキ氷!!!」

 

 

「上等だ燃えカスチョロ火野郎!!!」

 

 

そこへグレイも参戦し、ナツとのケンカが始まった。

 

 

一方近くのテーブルに座っていたルーシィはある事に気がつき、同じ席についていたウェンディとキャロに問い掛ける。

 

 

「そう言えば2人とも、エリオは一緒じゃないの?」

 

 

「はい。エリオ君なら、もっと強くなるんだって言ってリニスと一緒に修行に行っちゃいました」

 

 

「私たちも着いて行きたかったんですけど、置いて行かれちゃいまして……」

 

 

「「ハァ……」」

 

 

「あ…あはは……大変ね」

 

 

そう言って盛大にため息を漏らすウェンディとキャロに、ルーシィは苦笑を浮かべたのであった。

 

 

「そう言えばティアナはどうした? いつもならとっくにナツを止めに入ってるだろう」

 

 

「ティアナなら、ティーダさんのお墓参りに行ったよ。ティアナもティーダさんに会う夢をみたらしくて」

 

 

「そうか。しかし、そろそろ止めてやらんとな」

 

 

「そうだね、これ以上はギルドがボロボロになっちゃうから、2人を止めて──」

 

 

ガンッ!! ゴンッ!!

 

 

そう言って立ち上がった2人の額に、ナツとグレイがケンカの際に飛ばしたのであろう流れ弾ならぬ、流れビンが直撃した。

 

 

「「あっ……!!」」

 

 

それを見たナツとグレイも、表情を強張らせてケンカの手を止めた。そしてエルザとなのはの2人は、ギロリと当の2人を睨む。

 

 

「ナツ…グレイ……貴様らそこを動くなぁっ!!!!」

 

 

「少し……頭冷やそうか?」

 

 

「「ぎゃああああああああっ!!!!」」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)は今日も通常運転であった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

新暦66年

地球・八神家宅

 

 

「アミタさんや王様達、エルトリアで元気にやってるかなぁ」

 

 

「渡航できたらいいんだけどねー。行き方わからないもんね」

 

 

「みんなで一緒だし……元気で世界の復旧をしてるんじゃないかな」

 

 

「そうだね。あと私、シュテルたちの事も気になるんだけど、あともう1人! あの変身でおっきくなる子……! ええと、名前も顔も出てこないんだけど……ホラ、何かちっちゃな浮遊デバイスを連れてた、格闘型のあの子……」

 

 

「なのはちゃん、あの子の事、ホントにお気に入りやねえ」

 

 

「なんでだろうね? そんなに沢山話したり、戦ったりしたわけじゃないと思うんだけど……」

 

 

「まあ、また会えるよ、きっと」

 

 

「うん……そうだといいな。元気にしてるかなー……あの子」

 

 

「あの子も元気にしてるかな……私と同じ雷の魔法を使う男の子が連れてた、あのネコの使い魔」

 

 

「あー、そういえばフェイトちゃんはそのネコちゃんがお気に入りやったねえ」

 

 

「うん……何だかあの子を思い出すと、懐かしい気持ちになれるんだ。はやてはそう言う子いないの?」

 

 

「うーん……私はそういう子はおらへんけど、なんや頭に強く残ってる単語があるんよ」

 

 

「あ、はやてちゃんも? 私もなんだー」

 

 

「実は私も……」

 

 

「ホンマに? ほんなら、せーのでその単語言うてみようや」

 

 

「いいよ♪」

 

 

「うん!」

 

 

「「「せーの──」」」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

新暦79年

ミッドチルダ・首都クラナガン

 

 

「こないだ見た不思議な夢のこと──アインハルトさん、まだ覚えてます?」

 

 

「ええ──まだ少しは」

 

 

「面白いですよね。2人で同じ夢を見るなんて」

 

 

「ええ。不思議な経験です」

 

 

「楽しかったような、色んな人に会ったような……覚えていないのが勿体ないですが。でも1つだけ……心に残ってる言葉があるんです」

 

 

「ヴィヴィオさんもですか? 実は私も……どういう意味かは分かりませんが、凄く勇気が湧いてくる言葉です」

 

 

「夢で聞いたあの言葉──」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

新暦82年

ミッドチルダ・特務六課

 

 

「ハァ~……」

 

 

「また怒られちゃったね、トーマ」

 

 

「うん……確かに夢で見た戦術を試してみたくなって、アイシスに相手をしてもらったら加減を間違えてトレーニングシステムを壊しちゃったのは全面的にオレたちが悪いんだけどさ……高町隊長と八神司令とヴィータ師匠のトリオを3on3で相手にする事になるなんて……」

 

 

「また空の上で、撃墜されまくっちゃうね……」

 

 

「あははは……でも、クヨクヨばかりしてられないよな。よしっ!! リリィ、あの言葉を胸に頑張ろう!!」

 

 

「そうだねっ! 私とトーマが見た夢の中でも特によく覚えていて、勇気が湧いてくるあの言葉──」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

エルトリア

 

 

「何度見ても思うけど……博士に見せてあげられてよかったよね、ここの風景」

 

 

「ユーリと王様のおかげですよね。それから4人を連れてきてくれた、あなたのおかげ」

 

 

「それ皮肉? 私1人じゃ結局何も出来なかったし」

 

 

「皮肉じゃないですよ。素直な気持ちです」

 

 

「ああ、それからもちろん……私たちを助けてくれた、優しい魔導士たちにも」

 

 

「うん──特に、異世界から来た彼らにはね」

 

 

「そうですね。出来ることなら、また会いたいです──」

 

 

 

 

 

『『『妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!!!』』』

 

 

 

 

 

たとえ違う世界…違う未来を歩んでいたとしても……彼らの紡いだ絆は……確かに繋がっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ここは……アースランドにあるどこかの森。

 

 

空はすっかり夜に包まれ、満月の光だけが森の中を照らしていた。

 

 

そんな森の中で、川の水を飲んでいる1人の青年の姿があった。

 

 

「はーー」

 

 

川の水で喉を潤し、一息つきながら空に浮かぶ満月を眺める青年。すると……

 

 

「グルルル……」

 

 

そんな青年を、飢えた狼の群れが取り囲んでいた。

 

 

「ボクに近づいてはいけない」

 

 

青年は狼たちにそう言い放つが、当然そんな言葉が通じるハズがなく、狼たちは目の前の獲物によだれを垂らす。

 

 

「よすんだ、ボクは君たちの敵じゃない」

 

 

そんな事もお構いなしに、1匹の狼が牙を剥き出しにして青年へと飛び掛る。しかし……

 

 

ドサッ

 

 

その狼の体を青年の体を通り過ぎ、そのまま地面に倒れて息絶えてしまった。

 

 

「ダメなんだ、ボクに近づいては」

 

 

青年がそう言うと、その他の狼たちも突然糸が切れたように倒れ、そのまま息絶え始める。

 

 

「ごめんね…」

 

 

そんな狼たちに謝罪の言葉を口にする青年。すると……

 

 

「また……罪無き命を奪ってしまったのですね」

 

 

「……うん」

 

 

近くの木陰から1人の小さな少女が現れ、青年に歩み寄ってくる。

 

 

「可哀想な人です。誰よりも命を尊く思っているのに……誰よりも命を奪ってしまう。生きとし生けるもの全ての命を……」

 

 

そう言うと、少女は青年の後ろから彼の体を優しく抱きしめる。

 

 

「でも安心してください。永遠を生きる私の命までは、奪えはしませんから」

 

 

すると、青年がゆっくりと口を開く。

 

 

「ボクは誰の命も奪いたくないのに…世界がボクを拒んでいるんだ」

 

 

青年が言葉を紡ぐたびに、彼の周囲にあった草木は瞬く間に枯れ…飛んでいた鳥たちは力無く空から落ちていく。

 

 

そして青年は……続けてゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナツ……早く会いたいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

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