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S級魔導士昇格試験の二次試験。
試験の内容は……初代ギルドマスター・メイビスの墓を探し出す事だった。
制限時間は6時間。
誰もが簡単な試験だと思っていた。
そう……思っていたのだが……
「何これぇーーー!!!!」
「ルーシィ急げ!!!!」
「早く逃げるんだ!!!!」
そう叫びながらカナ、ルーシィ、ユーノの3人は、島に生息している巨大な怪獣のような生物に追いかけられていた。その生物は牙を剥き出しにして、大口を開けて3人を襲う。
「ひいいいいっ!」
もちろん、これは彼女たちだけではない。
「なんつー島だ」
「私…死んじゃうかも……」
「…………」
レビィ率いるガジル&ルーテシア。
「S級になるには、これくれぇ屁でもねえ!!!」
「たいした強がりだ」
「これがS級試験……」
グレイ率いるロキ&エリオ。
「ほらシグナム!! ずっと戦いたがってたやろ!? はよあの怪獣倒してきて!!!」
「申し訳ありませんが主はやて、怪獣は専門外です」
「我が主!! とにかく今は全力で逃げましょう!!!」
はやて率いるシグナム&リインフォース。
「こっちだエバーグリーン!」
「うっさい!! 指図すんな!!」
「そんな事を言っているヒマがあったら走れ!!!」
エルフマン率いるエバーグリーン&ザフィーラ。
いずれのチームも、遅い来る怪獣たちから逃げ回っていた。
彼らを除いて……
「試験の邪魔をぉぉ…するなァーーー!!!!」
「ングィーーーー!!!」
自分達の目の前に現れた生物を、炎を纏った拳で思いっきり殴り飛ばすナツ。
「ナツの前に現れたのが運のツキだったね」
「っていうか、アレはなんて生物なの?」
殴り飛ばされた生物に同情するようにそう言うハッピーと、見たことも無い奇妙な生物に疑問符を浮かべるティアナ。
「フウ」
「さすがナツだね。先に進もう」
「いや、待てハッピー」
そう言って先に進もうとするハッピーを静止するナツ。すると……
「初代マスターの墓はどこにあるか教えろ!!!!」
「うわ!! 話しかけた!!」
「通じる訳ないでしょバカナツ!!」
なんと今しがた倒した生物に墓の在り処を聞き出そうとしていた。そんなナツにツッコミを入れるハッピーとティアナだが……
「知りません」
「そっか」
「「しゃべったーーーーっ!!!!!」」
まさかの答えが返ってきたことに驚愕した。
そんな珍事件のような出来事がありながらも、墓探しを再開するナツたち。
「しかしヒントの1つもなしに墓を探せって言われてもなー」
「あんな怪獣どもと戦いながら、制限時間内に島中を探し回るなんてとても無理よ」
「二次試験、意外と難しいかもね」
そう言って頭を悩ませる3人。すると、ティアナがある事に気がついた。
「ねえ、そういえばこの島って変な形してなかった? 島の上に島があるみたいな」
「そういやそんな形だったな」
「そだね」
「だったら、あの頂上が怪しくないかしら?」
「おおっ!! 言われてみれば!!」
「確かに!!」
ティアナの言葉に喰い付くナツとハッピー。
「よーし!! やっぱりティアとハッピーと組んで正解だった! 行くぞてっぺん!!」
「了解っ」
「あいさー!!!」
141話
『黒魔導士と永遠の少女』
一方その頃、森の中に立てられた簡易ベースでは、試験に落選したなのはとジュビアのチームと、エルザとミラジェーンがいた。
すると、なのはと共に料理を作っていたエルザが驚愕の声を上げる。
「何!!? エルフマンとエバーグリーンが、結婚!!!?」
「……で、動揺した私をザフィーラが魔法で拘束して、そのまま一撃くらわしてくれたの」
驚愕するエルザに、傷ついた頬を撫でながらそう説明するミラジェーン。
「ちょっと待て!! 式はいつだ!? てゆーか奴等、いつの間にそんな関係に!!」
「エルザさん落ち着いて。たぶんミラちゃんを動揺させる為の作戦だよ」
「なのはの言うとおりよ。私もまだまだだな~」
「本当に作戦なのか!?」
「さすがにあの2人が…それは無いと思うなぁ。だってあの2人が結婚して子供が出来たら………」
そう言うとミラジェーンは、2人の間に子供ができた際の赤ん坊の姿を想像して……静かに泣き崩れた。
「泣くなミラ。考えようによってはかわいいぞ」
「かわいい…か?」
「えっと……ノーコメントで」
エルザの少しズレた発言に、疑問符を浮かべるヴィータと苦笑するスバル。
「エルフ兄ちゃんとエバーグリーンかぁ……ちょっとお似合いかも」
「こ…こ…こ……こども……」
感嘆の声を上げるリサーナと、グレイとのアレコレを妄想して顔を真っ赤にしているジュビア。
「ところでヴィータちゃん、どうして私は縛られてるのかしら?」
「オメーが勝手に料理を作らねーようにする為だ」
簡易ベースの端っこではシャマルが縄で縛られていたが、理由が理由なので全員気にしなかった。
「そういえばフリードたちは?」
「ギルダーツやクロノと一緒にギルドに戻った」
「最後まで見ていけばいいのにね」
フリードチームの3人とギルダーツやクロノが一足先に帰ってしまった事に、なのはは残念そうにそう言う。
「それよりメストとウェンディにキャロはどこに行った?」
「遅いわね」
「集合場所を忘れちまったんじゃねーの?」
「メストかぁ…彼とはエドラスで会ってないからよく知らないのよね。私のいない2年の間に入ったんでしょ?」
「そうだったっけ?」
「昔からいませんでした? メストさん」
「いたような…いなかったような……」
「存在感ないのね」
メストがいつからギルドに所属していたのか思い出せずに頭を悩ませていると、ジュビアがすくっと立ち上がった。
「ジュビア、探してきます。少し心配だし」
「あ、じゃあ私も行くよ、ジュビアちゃん」
「ならば私も行こう。他のみんなはここにいてくれ」
ジュビアに続いてなのはとエルザもそう言って、メストたちの捜索を開始したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「漢たるもの敵から逃げるべからず~~~!!!!」
「うるさい!!!! 少しは黙ってられないの~~~~!!!!」
「いいから黙って走れ!!!!」
一方エルフマンたち3人は現在、巨大なブタのような怪物から全力で逃げ回っていた。
「ブモーーー!!!」
すると、ブタの怪物がその巨大な蹄をエバーグリーン目掛けて振るう。
「危ねえ!!!!」
「きゃっ!」
「エルフマン!!! エバーグリーン!!!」
それを見たエルフマンはエバーグリーンを抱きかかえる様に庇い、そのまま大きく横に飛ぶ。するとその飛んだ先の岩場には穴が空いており、2人は偶然その中へと転がり込んだ。
そしてしばらくその穴の中を転がっていくと、その岩場の崖下したへと辿り着いた。
「ん…」
「いってぇ…」
「!」
落ちた痛みで2人がしばらく硬直していると、エバーグリーンはエルフマンに抱かかえられている事に気がつく。
「ちょ……何やってんのよ!」
「おるぼァ!」
そしてそのままエルフマンを突き飛ばす。
「さっきの作戦はミラを動揺させる為の狂言よ! まさか『コイツちょっとオレに気があるんじゃ』とか思ってないでしょーね!」
「思ってねーよ。けどお前には感謝してる。まさかあんなヒキョーな作戦を思いつくとはな」
「ヒキョー言うな!!」
「……お前たちは何をやっている?」
そんな言い争いをしている2人のもとに、同じ穴から通ってきたザフィーラが合流する。
すると……
「人!?」
「「「!!」」」
ガサッと草木を掻き分ける音と共に聞こえてきた聞きなれない声。
「人なのかい。こんな島に人が……ここなら誰もいないと思っていたのに……」
3人がその声の方へと視線を向けると、そこにはギルドの人間ではない青年が、悲しげな雰囲気で佇んでいた。
「誰だ貴様は」
「なぜ部外者がこの島にいる?」
「ここはウチのギルドの者しか入れないのよ」
「ギルド? そうか……ギルドの管理する島だったのか」
「おいテメェ!!!!」
「ダメだ!!!!!」
青年に掴みかかろうとするエルフマンを、青年自身が制する。
「ボクに近づいてはいけない」
「何を言ってやがる」
「わかった、出て行くよ。一緒だった連れが見つかり次第すぐに。だからお願いだ、ボクに近づかないでくれ」
そう言ってエルフマンたちから距離を取ろうとする青年。
「なんなのコイツ」
「放っておいていいのか」
「見る限りでは、無害そうな男だが」
そんな青年に対して疑問符を浮かべながらそう言うエルフマンとエバーグリーンとザフィーラ。
「ダ…ダメだ……来る……」
すると、突然青年が苦しげに自身の頭を抑える。
「死の捕食が……来てしまう……」
「(ゾワッ!!)」
その瞬間ザフィーラの全身に悪寒が走る。
「(なんだこの感じ……オレの
ザフィーラが本能的に危険性をそう感じ取ったその時……
キィィィィィイイン!!!
「「「!!」」」
青年の体から不気味な黒い波動が放出され、ドーム状に広がり始める。
その波動に飲み込まれた草木は次々と枯れていき、そのままエルフマンたちをも飲み込もうとしたその時……
「ふせろォォーーーーーッ!!!!!」
突如やって来たナツが、頭を押さえ込むようにして3人を押し倒し、波動から彼らを守った。
すると…そんなナツの姿を見た青年は目を見開きながら、静かに涙を流し……
「ナ、ナツ……」
と…彼の名前を呟いた。
「お前は…誰だ!!!?」
対して青年の事を知らないナツは、大声でそう言い返した。
「ナツ…どうしてここに……!?」
「び…びっくりさせやがって……」
「だが、助かったぞ……」
突然やって来たナツに3人がそう言うと、そこへハッピーも合流する。
「ナツーーー!!! どうしたの急に~!! てっぺん行くんじゃなかったの~!? ティアナともはぐれちゃったよ~!!」
「よくわからねえけど…すげえ不気味なニオイがした」
「!」
そしてハッピーは、その場の惨状を見て、驚愕する。
「な…なんだコレ……」
「辺り一面、木々が……」
「枯れてる」
「まさかあの一瞬で……」
周囲の枯れ果てた木々を見たあと、全員の視線がその元凶であろう青年へと向けられる。
「あいつの魔法なのか?」
「………」
「ただ者ではないな。奴は一体……」
すると、ナツが一歩前に出て、青年に大声で言い放つ。
「誰だか知らねーが、ここはオレたちのギルドの島だ!!! 試験の邪魔をするんじゃねーよ!!!!」
だが青年はそんなナツの言葉など意にも介さず、ゆっくりと口を開いた。
「大きく…なったね。会いたかったよ、ナツ」
不気味な雰囲気を漂わせながらそう言う青年の言葉を聞いて、ナツは勢いよく青年へと駆け出し……
「誰だテメェはァ!!!!!!」
思いっきり青年を殴り、地面に叩きつけたのであった。
「殴ったァ!!!!」
「いきなりかよ!!」
「容赦ないな」
そんなエルフマンたちの言葉を他所に、地面に叩きつけられた青年の体はバウンドするように宙を舞うが、青年はフワリと体制を立て直して地面に着地する。
「(そうか…まだなのか……まだ……ナツは……ボクを壊せない……)」
「お前なんか知らねえ!!!! 名乗れ!!!!」
「(ボクはもう誰も殺したくないのに……止められるのはナツしかいないのに……まだなのか!!!!)」
ナツの問い掛けにも答えず、青年はただ静かにナツを見据えたまま涙を流す。
「な……泣いて…る?」
「なんて不気味な奴なの……」
「ぬうう……」
「……………」
そんな青年の様子に、少なからず畏怖の念を抱く面々。
「逃げ…て……」
そして頭を抱えながらそう呟く青年の言葉を聞き、再び一同に悪寒が走る。
「さっきの黒い波動か!?」
「あれは命を奪おうとする魔力よ!!」
「アレを喰らえば、我々もひとたまりもないぞ!!!」
「全員ここから離れろォーーーー!!!!」
ナツがそう叫んだ瞬間……
「か……!!」
再び青年の体から黒い波動が放たれ……ナツを飲み込んだのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ナツーー!! ハッピーー!! どこ行ったのよーー!!!」
時は少々遡り……ナツとハッピーとはぐれてしまったティアナは、彼らを探して森の中を探し回っていた。
「まったくあのバカ……島の頂上に行くかと思ったらいきなりどっか行っちゃって……それにしても何だったのかしら? さっきの不気味な魔力」
ナツに対する文句を言いながら、ティアナは先ほど感じた不気味な魔力について考えていた。
すると……
「アレは死の捕食……決して抗う事の出来ない……命の晩餐」
「!!?」
突然聞こえてきた声に、すぐさま警戒心を露にしながらそちらへと視線を向けるティアナ。
するとそこには……白い衣服を身に纏い、ウェーブのかかった長い金髪をした儚げな雰囲気を持つ小さな少女が無表情で佇んでいた。
「誰? ここは私たちギルドの者しか入れない聖地よ」
「ギルドの……そうですか……ここにも、人がいるんですね。また彼の涙を…見る事になってしまう」
「何を言って──」
ブツブツと悲しげにそう呟く少女に対して、ティアナがさらに問い詰めようとしたその時……
「グルオォォオオオオ!!!!」
「!!?」
突然巨大な怪物がバキバキと木々を薙ぎ倒しながら現れ、少女に向かって大口を開けながら襲い掛かる。しかし少女は逃げようともせず、ただボーっと佇んでいる。
「危ないっ!!!」
それを見たティアナは少女に向かってそう叫ぶ。
「………………」
だが少女は逃げようともせず、ただ静かに向かってくる怪物に向かって片手をかざす。
そしてその時……
ゴシャッ!!!!
「──え?」
突如として耳障りな音が響き、それと同時にティアナは絶句した。
何故なら……少女の背中から出現した血のように赤く、獣のように鋭く巨大な手が出現し……怪物の首を鷲掴みにして持ち上げているのだから。
「ゴ…ガッ……!!!」
「命までは取りません。ですが、襲う相手は選んだ方がいいですよ」
少女は苦しげな呻き声を上げている怪物に向かって忠告するように語り掛けると、ゆっくりと腕を振り上げる。すると怪物を掴んでいる巨大な手も、少女の動きとリンクするように同じ動きをする。
そしてそのまま少女が軽く腕を振るうと、巨大な手は怪物を思いっきり遠くへ投げ飛ばし、空の彼方へと消えていったのであった。
「……………!!!」
あまりの光景に言葉を失い、愕然とした表情で佇むティアナ。
「あ…アンタ……一体…何者なのよ……!!?」
だがそれでも、震える声で少女に問い掛けるティアナ。
しかし少女はその問いに答えず、ジッとティアナの姿を見据えていた。
「? なに?」
そんな少女の様子に、ティアナが疑問符を浮かべていると、少女はゆっくりと口を開いた。
「ランスター?」
「!?」
「この魔力の感じ……もしや君は、ランスターの血縁者?」
「……私の名前はティアナ・ランスター……確かにランスターの人間よ」
ティアナがそう答えると、少女はうっすらと笑みを浮かべる。
「そう……生きていたのですね……ランスターの名を持つ者……星を司る……創主の血筋よ……」
顔を僅かに綻ばせながら、どこか嬉しそうな声色でそう言い放つ少女。
「何を言って……!!?」
そんな少女から気味の悪い雰囲気を感じ取ったティアナは、冷たい汗を流しながら僅かに体を震わせる。
すると……
キィィィィイイイイン!!!!
「「!!?」」
森の奥から先ほどティアナが感じた不気味な魔力を再び感じ取り、ティアナだけでなく、少女も森の奥地へと視線を向ける。
「彼が…泣いている……行かなくちゃ…彼のもとに」
「ま…待ちなさいっ!!!」
そう言って森の奥地へと向かってゆっくりと歩み始める少女。そんな少女に向かってクロスミラージュを構えるティアナ。
だがその時……彼女の背中から赤い霧のような外見をした翼が出現し、そのまま彼女の姿を覆い隠す。
「また会いましょう……ランスターの少女よ」
そして少女はティアナにそう言い残すと……赤い翼がハジけるように霧散し、同時に彼女の姿も消えていた。
「……何だったのよ……一体……」
ティアナはクロスミラージュを降ろすと、呆然と少女が先ほどまで立っていた場所を見据える。
「……とにかく今はナツと合流しないと。あいつの事だからたぶん、さっきの魔力を感じた場所にいるハズ」
そう言って気持ちを切り替えたティアナは、ナツと合流する為に、森の奥地へと走り出したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃……謎の青年が放った黒い波動に巻き込まれてしまったナツたち。
命を奪う黒い波動により、そこはすでに荒れ果てた場所に変わってしまっていた。
「ナツー!!!」
「大丈夫だ…それよりアイツは…」
「消えた?」
「ニオイも気配も感じない」
「なんだったんだ……」
何とか難を逃れたナツたちは青年の姿を探すが、すでにそこには青年の姿はなかった。すると、ハッピーがある事に気がついた。
「ナツ!!!? マフラーが!!!!」
「!!!」
ナツがいつも身に着けている鱗のようなマフラーが、真っ黒な色に染め上げられていたのだ。
「黒く……ヤロウ…イグニールからもらったマフラーを……!!」
「(イグニールのマフラーが、身代わりにナツを守ってくれたのかなぁ)」
何よりも大切なマフラーを汚された事に怒りを燃やすナツと、マフラーが黒くなってしまった理由を考えるハッピー。
「ナツー!!! ハッピー!!!」
「ティア!!」
「ティアナ!!」
するとそこへ、はぐれていたティアナが合流した。
「何よコレ……一体何があったの!?」
荒れ果てたこの場所を見て驚愕するティアナ。
そんなティアナにナツたちは事情を説明し、ティアナも自身の前に現れた少女の事を説明したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「(ボクは……まだ世界に、拒まれ続ける)」
一方ナツたちの前から姿を消した青年は、木にもたれかかりながら、悲しげに空へと向かって手を伸ばす。
「大丈夫です」
するとそんな青年の手を……いつの間にか傍に来ていた少女が優しく握った。
「たとえ世界が貴方を拒んでも、私が傍にいます。貴方が私にくれた〝
「……ありがとう……ユーリ」
優しくそう語りかけてくれる少女の言葉に……青年は静かに涙を流す。
「いいんですよ。貴方は私に〝永遠の命〟と……ユーリ・エーベルヴァインという〝名前〟をくれた恩人なのですから」
そして少女……ユーリは青年の頭を、その小さな腕で優しく包み込み……愛おしそうに抱きしめたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃……雲の上の遥か上空。そこには1隻の魔導艇が浮かんでいた。
「ついに見つけたわ。眠ってるみたいだけど」
水晶玉をコロコロと体で転がしながらそう言うのは、かつて評議院に所属し、ジェラールの計画の一端を担っていた女性……ウルティアであった。
「時は来たようです、マスターハデス」
ウルティアがそう言うと、ハデスと呼ばれた男は口角を吊り上げ、ゆっくりと語り始める。
「その男……古の地に降り立ち、黒き魔術を極め……数万の悪魔を生み出し、世界を混沌へと陥れた。魔法界の歴史において最強最悪の男……」
──黒魔導士ゼレフ──
「始めよう。進路を妖精の島へ」
マスターハデス率いる闇ギルド〝
闇ギルド界最強のギルドが今……妖精に牙を剥く。
つづく