LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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本日ラストです。


火竜vs炎神

 

 

 

 

 

 

ついに天狼島へと攻めてきた悪魔の心臓(グリモアハート)。ギルドマスターであるマカロフも、敵のマスターハデスの前に敗れてしまった。

 

 

しかしそうとは知らない妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドメンバーたちは、島のあちこちで敵の群生と戦っていた。

 

 

「オラァ!!!!」

 

 

「ぐは!」

 

 

「うぎぃ!」

 

 

炎を纏った状態で組んだ両手をハンマーのように振り下ろし、敵の何人かを纏めて地面に叩きつけるナツ。

 

 

「ハアァ!!!!」

 

 

「うが!」

 

 

「ぎゃっ!」

 

 

クロスミラージュの銃口から放たれる魔法弾で、的確に敵を打ち抜いていくティアナ。

 

 

「こっちこっち~」

 

 

「このネコ……ちょこまかと……」

 

 

「チィ!」

 

 

「それー!」

 

 

「「うぎゃ!」」

 

 

「にひひ」

 

 

翼を広げて縦横無尽に飛び回り、敵を誘導して岩へと激突させるハッピー。

 

 

「くそっ!! 戦闘フォームを維持するだけの魔力がない」

 

 

「私も魔力不足で、人間モードになれません」

 

 

「仕方ないわよ、ウェンディは失った魔力までは回復できないの」

 

 

「あれ!? メストさんがいない」

 

 

「本当だ…一体どこに……?」

 

 

「こんな状況だ…逃げたんじゃねえの?」

 

 

「あんな奴、放っておけばいいのよ」

 

 

「譲ちゃん、自分のキズは回復できねえのか?」

 

 

「当たり前でしょ」

 

 

「そーゆーモノなのか」

 

 

「「………………」」

 

 

アズマに敗れ、傷ついた面々がそんな会話をしている間にも、ナツたちは次々と敵を倒していく。

 

 

「ファイアバレット!!」

 

 

「待ってました~~!!」

 

 

そう言って敵が放った火の魔法を、喜んでガブガブと食い始めるナツ。

 

 

「なァ…!!」

 

「コイツ…火を喰った!?」

 

「じゃあコイツが噂に聞く……」

 

 

その光景を見た敵が驚愕している間に、ナツは火を喰い尽くす。

 

 

「火竜の……翼撃!!!!」

 

 

そして体力と魔力を回復したナツは炎を纏った両腕を振るい、周囲の敵をその爆炎で薙ぎ払った。

 

 

「こ…こいつ……」

 

「中々やるぜ…」

 

「どうする?」

 

 

ナツの実力を目の当たりにした敵はどう立ち向かうか考え込む。すると……

 

 

「もういいよ。ウハッ、もういいってばよォ」

 

 

そう言い放ち、「ウハハハハ」と笑いながらやって来る1人の人物。

 

 

「ザンクロウ様!!」

 

 

「オメーらの敵う相手じゃねえってよ。ウヒヒヒヒヒ」

 

 

その人物とは……悪魔の心臓(グリモアハート)の煉獄の七眷属の1人……ザンクロウであった。

 

 

「オメーらはゼレフを探しに行きなって。こいつらはオレっち1人で十分だってよ」

 

 

そんなザンクロウからの指示を聞いた面々は、安堵の息を吐いた。

 

 

「は…はい……助かりました」

 

 

「コイツ…ものすごく強くて……」

 

 

「噂に聞く火竜(サラマンダー)ですよ、きっと」

 

 

「では……失礼します」

 

 

「待てやゴラァ!!!!」

 

 

そしてそそくさと立ち去ろうとしていた面々を、ザンクロウが怒声を上げて呼び止め、彼らはビクリと体を震わせて足を止める。

 

 

「今『強ェ』って言ったのか? ア?」

 

 

「あ…いや……」

 

 

「この世に悪魔の心臓(グリモアハート)より強ェギルドなんかねえんだって。オレたちが最強のギルドなんだってばよォ」

 

 

そう言うと、ザンクロウは自身の両手に黒い炎を纏う。そして……

 

 

悪魔の心臓(グリモアハート)に弱者はいらねえ!!!! ウハハハハハハ!!!!!」

 

 

あろう事か……その黒炎を同じギルドの部下である面々に放ったのだった。

 

 

「ぐああああ!!」

 

「ぎゃあああ!!」

 

「ひいいいい!!」

 

 

そして燃え盛る黒炎にメンバーたちは焼き尽くされる。

 

 

「黒い炎……!!?」

 

 

「何て事を……!!!」

 

 

「なんだコイツは……」

 

 

「お前…!!!! 自分の仲間を!!!!」

 

 

その光景を見たハッピーとティアナとリリーは驚愕し、ナツは怒りを露にする。

 

 

「ウハーーーッ!!!!」

 

 

そんなナツに向かって黒炎による攻撃を放つザンクロウ。

 

 

「オレに炎は効かねえぞ!!!!」

 

 

「ナツさん!! ダメ!! その炎はイヤな予感がします!!」

 

 

先程と同じように黒炎を喰らおうとするナツだが……

 

 

「うああああっ!」

 

 

その行動は叶わず、ナツの体が黒炎に包まれてしまう。

 

 

「く…喰えねえ!!!! 何だこの炎は!!?」

 

 

「頭が高ェってよ、竜狩りごときが」

 

 

ドゴォォォォオオ!!!!

 

 

「ぐあああああ!」

 

 

ザンクロウがそう言うと同時に黒炎は黒い爆炎を巻き起こし、ナツを吹き飛ばした。

 

 

「ナツーーーーー!!!」

 

 

「そんな…ナツが…炎の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が喰べられない炎だなんて……!!!」

 

 

「ウヒヒヒヒ…竜の炎の上を行く〝神〟の炎を喰うつもりかい。バチ当たりだって」

 

 

すると、ザンクロウは凶悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと言い放った。

 

 

 

 

 

「テメェの魔法とは格が違うんだって。こっちは神殺し……〝滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)〟だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第145話

『火竜vs炎神』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……敵の群生と戦っているグレイチームとカナチームの6人。

 

 

パァン!!

 

キィィィイン!!

 

 

「「「!?」」」

 

 

すると、手を鳴らすような音が響くと同時に、彼らと戦っていた敵の姿が消える。

 

 

「敵が消えた!?」

 

 

「まさか…転送魔法!?」

 

 

「降ってきたり消えてみたり、忙しいねえ」

 

 

突然姿を消した敵に一同が戸惑っていると……

 

 

「奴等では貴様等は倒せん。時間の無駄だ」

 

 

そんな声が聞こえ、一同はその声の主へと一斉に視線を向ける。

 

 

「貴様等の相手は(メエ)がしよう」

 

 

「敵!!?」

 

 

「ってかヤギ!!?」

 

 

「!」

 

 

そこには煉獄の七眷属の1人……カプリコが静かに佇んでいた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてエルザ、なのは、ジュビアのもとにも……

 

 

「作戦中に敵に遭遇。ただちにこれを排除。これより殲滅を最優先事項に変更。戦闘を、開始する」

 

 

「子供?」

 

 

「侮るな、妙な魔力を感じる」

 

 

「うん……やるしかないね」

 

 

煉獄の七眷属……メルディと遭遇していた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「寂寞の森で悪魔と妖精は出会ってしまった。これがオレたちの戦闘開拓地(バトルフロンティア)

 

 

「なんだこいつは。漢というか…(おとこ)……」

 

 

「見りゃわかるでしょ『バカ』よ」

 

 

「だが奇妙な魔力を持っている。油断はするな」

 

 

エルフマンとエバーグリーンとザフィーラの前には煉獄の七眷属のラスティローズが……

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「なんという不覚だ……雑兵の相手をしている間に、主はやてとはぐれてしまうとは……」

 

 

「主の事だから大丈夫だとは思うが、早く見つけて合流しなければな」

 

 

敵の群生の相手をしている間に、はやてとはぐれてしまった事を嘆くシグナムとリインフォース。その時……

 

 

ガサッ

 

 

「「!!」」

 

 

背後から草木の揺れる音が聞こえ、反射的にそちらへと体を反転させて警戒するシグナムとリインフォース。するとそこに立っていたのは……

 

 

「やれやれ、ネコと子供の次は女かね」

 

 

煉獄の七眷属の1人であり、ウェンディたちを傷つけた男……アズマであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士……発見」

 

 

「これより戦闘を開始します」

 

 

「こいつら…ノーヴェやチンクと同じ……戦闘機人!!?」

 

 

「リサーナ、下がってて。こいつらは危険よ」

 

 

「私も戦えるってば」

 

 

ギルドのベースキャンプにいたミラジェーン、スバル、リサーナの前にはナンバーズの2人……オットーとディードが現れたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「おっし、いっちょ上がりだ。さっさとはやて達と合流すんぞ」

 

 

「そうね、急ぎましょう」

 

 

敵の群生を片付けたヴィータとシャマルは一刻も早くはやてと合流する為にその場をあとにしようとする。すると……

 

 

パキィィイン!!

 

 

「「!!?」」

 

 

そんな2人の行く手を、突如出現した氷の壁が阻んだ。

 

 

「氷の壁!?」

 

 

「グレイ…な訳ねえよな……誰だ!!?」

 

 

ヴィータがそう言い放つと、氷の壁の影から、フードを深く被って顔を隠した1人の男が現れる。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士……〝紅の鉄騎〟ヴィータと〝風の癒し手〟シャマルだな?」

 

 

「誰だって聞いてんだコノヤロォ!!!」

 

 

ドガァァアアン!!!

 

 

そんなフードの男に向かって飛び掛り、容赦なくグラーフアイゼンを振り下ろすヴィータ。しかしフードの男はその一撃を…何と片手で受け止めていた。

 

 

「コイツ……!!」

 

 

「オレは無限の欲望(アンリミテッドデザイア)、チーム・シーズンの1人……冬季のインヴェルノ」

 

 

無限の欲望(アンリミテッドデザイア)!!?」

 

 

フードの男…インヴェルノの言葉を聞いて、目を見開いて驚愕の言葉を口にするシャマル。

 

 

「マスタージェイルの命により、これより悪魔の心臓(グリモアハート)と共にお前たち妖精の魔導士を……排除する」

 

 

そしてインヴェルノは、フードに隠された瞳を妖しく光らせ…そう言い放ったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

天狼島・海岸

 

 

「マカロフのガキどもが七眷属に勝てるハズがない。私が何年もかけて育てた大魔道たちだ。奴等は皆、魔道の根源に最も近い魔法、失われた魔法(ロスト・マジック)の使い手たち」

 

 

海岸の砂浜に打ち立てた悪魔の心臓(グリモアハート)の旗の下で、ハデスは誇らしげにそう言い放った。

 

 

「さらに今回は奴等もいる。無限の欲望(アンリミテッドデザイア)のマスタージェイルが生み出した魔道ならざる力を操る戦闘機人〝ナンバーズ〟……そして、戦闘機人の身体能力に加えて魔導士としての力を得た新たな戦闘機人〝シーズン〟」

 

 

そこまで言うと、ハデスはニタリと笑みを浮かべながら続けて言い放つ。

 

 

「禁断の魔法と禁断の技術の前に、成す術はなかろうて」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおっ!!!!」

 

 

「ウヒィ、竜狩りの力はこんなもんかよ」

 

 

ナツは炎を纏った拳でザンクロウへと打撃を振るうが、ザンクロウは余裕の表情でそれをいなしている。

 

 

「なにが滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だ!!! 神様に教えてもらったってか!!?」

 

 

「マスターハデスをあるいは神と呼べるなら、これは〝神〟から授かりし失われた魔法(ロスト・マジック)

 

 

「なーんだ〝人間〟に教えてもらったんじゃねーか! こっちは本物のドラゴンに教えてもらったんだ!!! 滅竜魔法!!!!」

 

 

そう言うとナツは両手に炎を纏わせて構え、それを見たザンクロウも黒炎を身に纏う。

 

 

「火竜の…」

 

 

「炎神の…」

 

 

「煌炎!!!!」

 

 

「カグツチ!!!!」

 

 

そして両者の炎がぶつかり合う。

 

 

「うわー!」

 

 

「きゃっ!」

 

 

「何て威力だ!!」

 

 

「すさまじい熱気!!」

 

 

「こんな炎見た事ねえぞ!!」

 

 

「滅竜魔法と滅神魔法……」

 

 

「竜と神の力のぶつかり合い!?」

 

 

その際に巻き起こる衝撃と熱風が、近くにいたハッピーたちを襲う。

 

 

「おおおおお…!!!」

 

 

「ウヒヒヒヒ」

 

 

必死に力を込めるナツに対して、余裕たっぷりに笑うザンクロウ。そして……

 

 

「くっ…がああああああっ!!!!」

 

 

ナツの炎が押し返され、ナツは吹き飛ばされてしまった。

 

 

「ナツが押し負けた!?」

 

 

「やかましいってよ!! ネコども!!!」

 

 

「うわー!」

 

 

「くっ!」

 

 

「「きゃあ!」」

 

 

「ウェンディ! キャロ!」

 

 

「うわあっ!」

 

 

「うっ!」

 

 

「アギト、リニス! ぐぅ!」

 

 

ハッピーの驚愕の声が癪に障ったのか、戦いを観戦していたティアナやハッピーたちにまで黒炎を放つザンクロウ。そしてそれを喰らってしまった面々はボロボロの姿で地面に倒れ伏す。

 

 

「こんのヤロォ! 火竜の咆哮!!!!!」

 

 

それを見たナツはすぐさま起き上がって岩の上に立つと、怒りに任せて灼熱のブレスを放つ。

 

 

「知ってるか? 人間に火という知性を与えたのは神だってよ? 火を生んだのは人でも竜でもねえ──神だ!!!!」

 

 

そう言うと同時に、ザンクロウはナツのブレスを喰らい始めたのだった。

 

 

「いっ!!?」

 

 

「ガブガブガブ」

 

 

「そりゃ…ねえ……って…」

 

 

今まで何度も敵の放った炎を喰らってきたナツだったが、自分の炎を喰われた経験は当然ながら一度も無かったので、その光景に絶句するしかなかった。

 

 

「うめえ炎だな、荒々しくて決して燃え尽きる事のねえ炎。だが竜を殺せる力があっても、神は殺せない。これが悪魔の心臓(グリモアハート)の魔法だ!!!!」

 

 

ナツの炎を喰らったザンクロウはそう言うと、先程のナツと同じように口の中に魔力を集中させて頬を膨らます。

 

 

「炎神の怒号!!!!!」

 

 

そしてナツのブレスに似た黒炎のブレスを放ったのであった。

 

 

「ぐあああああああ!!!!」

 

 

それを喰らったナツは大きく吹き飛ばされ、その後ろにあった崖から身を投げ出された。

 

 

「ナ…ツ……」

 

 

「くっ…ナツ!!!」

 

 

「ティアナ!!?」

 

 

それを見たティアナはすぐに起き上がって駆け出し……なんとナツを追って崖から飛び降りた。

 

 

「ナツ!!!」

 

 

「ティ…ア…」

 

 

ティアナは落下しながらナツの体を掴み、自身の体に抱き寄せる。そして彼を守るように、強く抱きしめたのであった。

 

 

「ナツーーー!!!! ティアナーーーー!!!!」

 

 

「ウハハハハハハハッ!!!!」

 

 

そしてその場には、ハッピーの悲痛な叫びと、ザンクロウの勝利の雄叫びにも似た笑い声が響き渡ったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「ん……!!」

 

 

「う…うぐ……無事か…ティア?」

 

 

「ナツ!?」

 

 

その後、崖下の森の中で目を覚ましたティアナは今の現状に驚愕した。

 

何故なら、ナツを守ろうとして彼の体を抱き締めて庇っていたにも関わらず……ナツの体が下敷きになって逆にティアナの体を庇っていたのだから。

 

 

「アンタ…自分から……」

 

 

「ったく……無茶すんじゃねーよ」

 

 

「……アンタにだけは言われたくないわよバカナツ。ボロボロのくせに」

 

 

「こんなもん何ともねえ……あんのヤロォ…久しぶりだ…火を熱ィって思ったのは…」

 

 

そう言って傷ついた体をゆっくりと起こすナツ。

 

 

「ん! このニオイ…!!」

 

 

「え?」

 

 

すると、何かのニオイを感じ取ったナツはすぐさまそのニオイのもとへと視線を向け、ティアナも釣られてそちらへと視線を向ける。

 

 

「じっちゃん!!!!」

 

 

「マスター!!!!」

 

 

そしてそこには……ハデスに敗れ、傷つき倒れているマカロフの姿があった。

 

 

「オイ……ウソだろ…じっちゃん!! 大丈夫かー!!?」

 

 

「マスター!!! しっかりしてください!!!」

 

 

「ナツと…ティアナ…か…ゲホッゲホッ」

 

 

ナツとティアナの呼びかけによって気がついたのか、ゆっくりと目を開けるマカロフ。

 

 

「じっちゃん!! くそ……!! ひでぇケガだ!!! 待ってろ!! 今ウェンディの所に連れてく!!」

 

 

「ダメよ!!! このキズで動かしちゃマズイわ!!!」

 

 

「そ…そっか……信じられねえ…!! 誰にやられたんだ!!」

 

 

「ナツ…ティアナ…よく……聞け……この戦い…ワシ等に勝ち目はない」

 

 

動揺するナツとティアナに対して言い放たれたマカロフの言葉に、2人は大きく目を見開いた。

 

 

「な…何言ってんだよじっちゃん!!!!」

 

 

「お前たち…のケガは…誰に…やられた」

 

 

「そ…それは……」

 

 

「こ…こんなのなんともねえ!!! 次こそは絶対勝つ!!!!」

 

 

「頼む…ナツ…ティアナ……みんなを連れて逃げるんじゃ」

 

 

「そんな事言うなよ!!!! S級試験はどうなるんだ!!!! じっちゃんは妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターだろ!!!! 勝てないなんて言うな!!!!」

 

 

「ナツ、落ち着きなさい」

 

 

「時には…引かねばならぬ時も…ある……」

 

 

「オレは……!」

 

 

マカロフの言葉に対してもまったく譲らないナツ。すると……

 

 

「ウヒヒ」

 

 

「!!!」

 

 

「アンタは……!!」

 

 

「マスターハデスにやられたんだろ? そうだよなァ? マカロフ……ウヒヒヒヒ」

 

 

「お前……!!」

 

 

そこへザンクロウが姿を現す。

 

 

「マスターハデス?」

 

 

「よせ……ナツ……敵う相手じゃない」

 

 

「敵わなくたって……」

 

 

そう言うナツの体はガクガクと震えており、その表情も恐怖に染まっていた。

 

 

「(ナツのあの顔…ギルダーツの試験の時と同じ……)」

 

 

「(恐怖…!!? あのナツが…!!?)」

 

 

「どうした滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、全身から脂汗が出てるってよ」

 

 

そんなナツの脳裏には……一次試験でのギルダーツの言葉が浮かんでいた。

 

 

『恐怖は〝悪〟では無い。それは、己の弱さを知るという事だ』

 

 

「これが…恐怖……!!?」

 

 

「ウハハハハ!!! そうだ!!! それが恐怖だ!!! 絶対なる者を前にした時、人は恐れ戦き、止まる事しかできねえ!!!!」

 

 

ザンクロウの言葉を聞いて、ナツの体の震えがより一層強くなる。

 

 

「もういい…ティアナ…ナツを連れて逃げてくれ……」

 

 

「…………」

 

 

「ティアナ…?」

 

 

顔を俯かせて沈黙しているティアナに、マカロフは疑問符を浮かべる。するとティアナは口元にフッと小さな笑みを浮かべると……

 

 

「大丈夫ですよ……マスター」

 

 

優しい笑みでそう言い放つ。そしてその時……

 

 

 

「違う」

 

 

 

ナツの力強い声が響き渡った。

 

 

「これは確かに恐怖だけど…ギルダーツの言ってた恐怖とは別の恐怖だ」

 

 

「はァ?」

 

 

その瞬間…ナツの体が荒々しい炎に包まれる。

 

 

「この震えは、じっちゃんをこんなに目に遭わせた〝敵〟を、オレ以外の誰かに始末されちまう事への恐怖」

 

 

そしてナツは、怒りに染まった瞳でギロリとザンクロウを睨みつけ……

 

 

 

「マスターハデスは必ずオレの手で倒す!!!! オレはお前たちを絶対に許さねえ!!!!」

 

 

 

そう声高く言い放ったのであった。

 

 

「ティア、じっちゃんを頼む」

 

 

「もちろんよ。マスターは私に任せて、アンタは全力で暴れなさい」

 

 

ナツの言葉に対して、ティアナは優しくナツの背中を見守りながらそう返した。

 

 

「マスターハデスを、倒すだと? ウヒヒ、冗談でもそんな事言えねーようにしてやるってよォ」

 

 

ナツの言葉を聞いたザンクロウも、怒りの表情を浮かべて、ほぼゼロ距離でナツを睨みつけた。

 

 

ゴッ!!!

 

ガゴォォン!!!

 

 

そんなザンクロウをナツは炎を纏った拳で殴り付け、続けて炎を纏った足で思いっきり体を蹴り飛ばす。

 

 

「そんな炎は痛くねえってよォ」

 

 

そう言ってたいしたダメージを追っていないザンクロウを追いかけるように、木から木へと飛び移り、ザンクロウに炎の蹴りを放つナツ。対するザンクロウは黒炎を纏った腕でそれをガードする。

 

 

「黒い炎……あやつも火の魔法を……」

 

 

「はい。滅神魔法と言って、その黒炎はナツでさえも喰らう事の出来ないんです」

 

 

ザンクロウの黒炎を見たマカロフにティアナが説明する。

 

 

「竜の炎と神の炎じゃ格が違うってよ。神の炎は燃やすんじゃない、全てを破壊する焔の薙刀だってぇ!!!!」

 

 

そう言って黒炎で形成された薙刀を振るい、周囲の木々を切り倒す。

 

 

「ウハハハハハッ!」

 

 

その攻撃を回避していたナツは切り倒されて宙を舞う木々を飛び移り、そして……

 

 

「ぬあぁっ!!!!」

 

 

「ずごぁっ!!!!」

 

 

丸太となった木に炎の拳を叩き込んで飛ばし、その丸太でザンクロウを押し潰す。

 

しかし……

 

 

ボゴォ!

 

 

「ウハハーーーー!!!!」

 

 

ザンクロウはその丸太を粉砕し、そのままナツの腹部に拳を叩き込む。

 

 

「神は炎の魔導士を喰うのが好きだって。炎神の晩餐!!!!」

 

 

そしてザンクロウが両手に纏った黒炎が、ナツの体をバクンっと飲み込んだ。

 

 

「ぐああああああ!」

 

 

「この炎に包まれたが最後……灰になるまで出る事はできねえ」

 

 

「こんなモン…逆に喰ってやる……」

 

 

「無駄だよ。竜の力じゃ神の炎は喰えねえってよ」

 

 

「があっ……がはああああああっ!!!!」

 

 

自身を包む黒炎を喰らおうとしたナツだが、やはり喰らう事ができずに体を焼かれてしまう。

 

 

「だから言ったじゃ……」

 

 

がしっ!

 

 

「!!!」

 

 

するとその時、マカロフの巨大化した手がザンクロウの体を鷲掴みにした。

 

 

「じっちゃん!!!」

 

 

「マスター!!? 何を…」

 

 

「フゥー、フゥー、これ以上親の目の前でガキをキズつけてみろ!!!! 貴様を跡形も無く握りつぶしてやる!!!!」

 

 

ボロボロの体に鞭打ち、力強くそう言い放つマカロフ。

 

 

「そんな力残ってるのかよ」

 

 

「うぐっ…ゲホッゲホッ」

 

 

「マスター!! やめてください!!! このままだとマスターが!!!」

 

 

「その女の言うとおりだってよ。ホレェ、早く手を放さねぇと、跡形も無くなるのはアンタの腕の方だってよ!!!」

 

 

「ぐああああああああっ!!!!」

 

 

「じっちゃーーーん!!!」

 

 

「マスターーーー!!!」

 

 

ザンクロウの体から放たれる黒炎がマカロフの手を焼きつくさんと燃え盛る。しかし……

 

 

「ああああああっ!!!!」

 

 

「ぐあ! 何だと!? 逆に力を入れて…」

 

 

マカロフは手を放すどころか、さらにザンクロウを握る手に力を込める。

 

 

「放すものか…」

 

 

「ぐぅぅ…コイツ…」

 

 

「やめろォ!!! じっちゃん!!!!」

 

 

「お願いですマスター!!! 手を放して!!!!」

 

 

ナツとティアナが制止の言葉をかけるが、マカロフは一切力を緩めない。

 

 

 

「家族の力、なめんじゃねぇぞォ!!!!!」

 

 

 

そしてマカロフのその言葉を聞いて、ナツとティアナは大きく目を見開いた。

 

 

「うああああああああ!!!」

 

 

「竜狩りか、マカロフか、オレっちか…先にくたばんのは誰だろうなァ!」

 

 

「あああああああ!!!」

 

 

そしてナツは最後の力を振り絞り、自身の炎で黒炎を跳ね除けようと試みる。

 

 

しかしその抵抗も虚しく……ナツの炎は黒炎の中で消え去った。

 

 

「ナツ…!!?」

 

 

「(ナツの魔力が消えた……!?)」

 

 

「ウッハーー!!! 竜狩りがまず落ちたぜぇー!!!!」

 

 

それを見たティアナとマカロフは目を見開き、ザンクロウは高笑いを上げる。

 

だがその時……

 

 

ごぷっ……

 

 

「「「!!?」」」

 

 

ナツを包んでいた黒炎が、ナツの口に吸い寄せられ始める。そしてそのまま、ナツは黒炎を吸い込むように喰らい始めた。

 

 

「バ…バカな……なぜ神の炎を喰っている!!?」

 

 

ありえないと言わんばかりに驚愕するザンクロウ。

 

 

「マスター、これは…?」

 

 

「……おそらく一度〝魔力〟を空にした事によって、喰えない炎を喰う器を作ったのじゃ」

 

 

ティアナの疑問にマカロフがそう説明する。

 

 

「なるほど…喰うのにコツがいる炎ってのもあるのか」

 

 

「コツって……そんなレベルなんですか?」

 

 

「そんな訳ないじゃろう……!!! 敵の魔力の中で自分の魔力を空にするなど……」

 

 

「ですよね……でも、それやるのがあのバカですから」

 

 

そう言ってティアナは呆れたように笑った。

 

 

「バカタレが!!!! 死ぬ気かァ!!!!」

 

 

「ぐおっ」

 

 

ナツの荒業に憤慨しながら、マカロフはザンクロウの体を宙に投げ捨てる。

 

 

「死ぬ気はねぇし…誰も死なせねぇ。みんなで帰るんだ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に……」

 

 

そう言うとナツは、右手に赤い炎…左手に黒い炎を纏う。

 

 

「合わされ!!!! 竜と神の炎!!!!」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「竜神の煌炎!!!!!!」

 

 

 

 

 

「ぐぁあああああああああ!!!!」

 

 

2つの炎を合わせた一撃が……ザンクロウを襲ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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