LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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2話目です。


at one time

 

 

 

 

 

ギルドの命運を賭けた決死の戦い。

 

エルザはボロボロになりながらも何度でも立ち上がり…死闘の末にアズマに勝利を収めたのであった。

 

 

「うっ…」

 

 

立っていることさえ辛くなったエルザはそのままゆっくりと前のめりに倒れ、ドサリと音を立てて樹から地面に落ちる。そして地面に倒れるエルザは、ふと目の前に倒れているアズマへと視線を移すと……

 

 

ニュル…ニュルニュル……

 

 

「!?」

 

 

なんと倒れているアズマの体から木の苗が生え始めたのだ。

 

 

「お…お前、その体……」

 

 

失われた魔法(ロスト・マジック)の副作用だね。過度に使いすぎたようだ」

 

 

どうやら大樹のアークは使いすぎると、術者の全身が樹に侵食されるというデメリットがあったようだ。

 

 

「約束は守る。皆の魔力は元に戻るだろう」

 

 

アズマのその言葉にエルザは安心したように息を漏らすと、彼にある事を尋ねる。

 

 

「ジェラールという男を知っているか?」

 

 

「ああ。生存しているハズのゼレフの亡霊に取り憑かれ、理性を失い、虚無の人生を歩んだ悲しい男。大切な人だったのか?」

 

 

「…………」

 

 

アズマの問いにエルザは答えなかったが、その悲痛な表情が全てを物語っていた。

 

 

「すまなかったね、あれはウルティアの仕業だと思う。評議院の目を一時的に我々からそらすための、8年がかりの作戦と聞いた。恐ろしい人だね。マスターハデスが最も信頼しているだけの事はある」

 

 

「お前たちは、なぜそこまでゼレフを求める」

 

 

「世界の始まりの魔法。一なる魔法に魔法に近づく為…かね」

 

 

「一なる魔法? それにたどり着けたらどうなると言うのだ!!!?」

 

 

エルザがそう問い掛けると、アズマは樹に侵食されながらも、口元に笑みを浮かべていた。

 

 

「ジェラールは〝楽園〟を夢見た……我々は……」

 

 

「オイ!!」

 

 

そこまで言いかけて、アズマの言葉は止まってしまった。そんな彼に駆け寄ろうとしたエルザだが、足に力が入らず再び倒れこんでしまう。

 

 

そして顔を上げると……そこにアズマの姿はなく……彼の成れの果てである樹のみが立っていた。

 

 

「一なる魔法……」

 

 

1つの謎を残しながらも……エルザはアズマに勝利した。

 

 

そして約束通り……アズマの支配下にあった天狼島の魔力が解放されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第155話

『at one time』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔力がないクセに中々ねばる」

 

 

「だけど…もう終わり」

 

 

静かにそう言い放つオットーとディードの目の前には、ボロボロの姿で地面に倒れこむユーノとクロノの姿があった。

 

 

「レイストーム」

 

 

そして2人にトドメをさすために、オットーは手のひらに集束した光を解放し、五条の光線を放った。しかし……

 

 

「ラウンドシールド!!!!」

 

 

「「!!?」」

 

 

その光線は、ユーノが張った魔力の盾によって弾かれてしまった。

 

 

「魔力が戻ってきた!!!」

 

 

「反撃開始だ!!!」

 

 

そして奪われていた魔力が戻ってきた事により体力も回復したユーノとクロノの2人は立ち上がり、すぐに反撃へとでたのであった。

 

 

だが…反撃が始まったのは彼らだけではない。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「体に魔力が…!!」

 

 

「よし!!」

 

 

「復活!!!」

 

 

ベースキャンプでラスティローズに追い詰められていた雷神衆とフェイトの魔力が回復し、すぐさま立ち上がる3人。

 

 

「オラァ!!!」

 

 

「ぐおあっ!!!!」

 

 

そして3人同時にラスティローズに攻撃をぶつけ、反撃を叩き込む。

 

 

「なんだったんだろう!?」

 

 

「わからないけど…急に魔力が戻ってきた」

 

 

「とにかく、これで魔力は元に戻ったみたい」

 

 

「シャルルたちが遅れているのは、この現象の仕業だったのか」

 

 

「かもな」

 

 

どうやらリサーナやスバルたちの魔力も元に戻ったらしく、倒れていた全員が起き上がっていた。

 

 

「どうしたアズマ!!? こいつらの魔力が元に戻ってるぞ!!」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「はぁっ!!」

 

 

「おっと! ふふん…魔力が戻った今、そんな攻撃避けるんは訳あらへんよ」

 

 

そう言ってセッテの固有武装である『ブーメランブレード』を得意げに笑いながら軽々と避けるはやて。

 

 

「それはどうですかね?」

 

 

「? 何を言って──って危なっ!!?」

 

 

はやてがセッテの言葉に疑問を持っている間に、避けたハズのブーメランブレードが軌道を変えて、はやての頭を掠めた。

 

 

「なんや今の動きっ!? ブーメランの動きやないやろ!!?」

 

 

ブーメランだから戻ってくる可能性も頭に入れていたはやてだが、先ほどのブーメランブレードの動きは余りに不規則だったため、はやては戸惑う。

 

 

「まだまだ行きます」

 

 

はやての疑問に答えず、再びブーメランブレードを投げるセッテ。

 

 

「くっ……!」

 

 

対するはやては当然それを避けるが……

 

 

「IS発動『スローターアームズ』」

 

 

セッテがそう呟いた瞬間…またもや不規則に軌道が変化したブーメランブレードがはやてを襲う。

 

 

「ひゃっ!?」

 

 

それの何とかギリギリで回避に成功するはやて。そしてブーメランブレードはセッテの手元へと戻っていく。

 

 

「……なるほどなぁ、そのブーメランの軌道を変化させんのが、アンタの戦闘機人としてのISってモンやな?」

 

 

「……そうです。私のIS『スローターアームズ』はブーメランブレードの制御、及び軌道を自由に変化させる能力。ですがそれが分かったところで、あなたに勝ち目はありません」

 

 

そう言い放つと、もう一度ブーメランブレードをはやて目掛けて投擲するセッテ。

 

 

「喰らわへんよ!! そんでもって……」

 

 

はやてはそれをしゃがんで回避すると、シュベルトクロイツの切っ先を軌道を変えようとしているブーメランブレードへと向ける。

 

 

「クラウ・ソラス!!!」

 

 

そして白い砲撃魔法を放ち、ブーメランブレードを撃ち落したのだった。

 

 

「でやっ!! 撃ち落してしまえば軌道を変えるも何も──!!?」

 

 

セッテへと振り返りながらそこまで言いかけて、はやては言葉を止める。

 

何故なら……撃ち落したブーメランブレードと別の、もう1本の武器を手にしたセッテがそれを大きく振り上げて、はやてへと駆け出していたのだ。

 

 

「くっ!!」

 

 

それを見たはやては咄嗟にシュベルトクロイツを横にして構え、ガキィインっという金属音を鳴り響かせながらセッテの振り下ろしたブーメランブレードを防御した。

 

 

「ブーメラン2本目とか……ちょおセコくあらへんか?」

 

 

「そのような言われ方は心外です。そもそもブーメランブレードは1本だけだと言った覚えはありません」

 

 

「そういうの屁理屈いうんやで」

 

 

ギリギリと鍔迫り合いをしながらそんな口論をするはやてとセッテ。

 

 

「では今度は先に言っておきましょう。私のブーメランブレードはあの程度では壊れません」

 

 

「!!?」

 

 

そんな言葉と共に武器を引いて後ろに跳躍し、はやてから距離を取るセッテ。その瞬間…はやての背中に切り裂かれるような激痛が走った。

 

 

「がっ……!!!」

 

 

その激痛の正体は……先ほどはやてが撃ち落したハズのブーメランブレードが背後からはやての背中を深く切り裂いたものであった。

 

 

「ぐっ…うぅ……」

 

 

背中から走るあまりの激痛にその場で膝をついてしまうはやて。そんなはやての目の前に、ブーメランブレードを振り上げたセッテが立つ。

 

 

「これで終わりです」

 

 

そしてそのまま高々と振り上げたブーメランブレードを、はやてに向かって振り下ろしたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あのギルダーツも魔力を失っちゃあ、てんで話にならねぇな」

 

 

そう言ってブルーノートは魔力を奪われ倒れているギルダーツを何度も踏みつける。すると…突然ギルダーツがその足を力強く受け止め、押し返し始める。

 

 

「! 戻ったのか!!?」

 

 

「こんなボコボコにされちまったら、試験管としての威厳もクソもあったもんじゃねえな。ガキどもの前でくらい、かっこつけさせろってんだヨ」

 

 

「おおお!!」

 

 

そう言って起き上がりながら掴んでいたブルーノートの足を投げ飛ばすギルダーツ。そして宙を舞ったブルーノートは難なく地面に着地すると、嬉しそうに言い放つ。

 

 

「いいぞ…!! いいぞギルダーツ!!!! もっと飛べそうな戦いをしようぜ!!!! そろそろ互いに本気を出してよォ!!!!」

 

 

「!!」

 

 

超重力球(ブラックホール)!!!!」

 

 

すると自身の両手を合わせると同時に、小さな黒い球体を作り出す。そしてその球体は、とてつもない勢いで周囲のモノを吸い込み始める。

 

 

「くぅ、んだコレァ!?」

 

 

「全てを吸い込む、無限の重力場!!」

 

 

「おおおおおおお!!!」

 

 

ブルーノートの造り出した球体に吸い込まれないように必至に踏ん張るギルダーツ。

 

 

「トベェ!!!! トベェー!!!!」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「レイストーム・捕縛!!」

 

 

「「!!?」」

 

 

オットーが手のひらから放った光線が、ユーノとクロノの体に巻き付き、2人を捕縛する。

 

 

「レイストームは攻撃だけじゃなく、こういう風に捕縛としても使える。ディード、今だよ」

 

 

「ええっ!」

 

 

そしてオットーが捕縛した2人に向かって、双剣を構えて向かっていく。

 

 

「ツインブレイズ……ハァァアアアアア!!!」

 

 

赤く輝く双剣の刃を、身動きが封じられたユーノとクロノの首を狙って振るうディード。

 

しかしその攻撃は……2人の首まであと数センチという所で止まった。

 

何故なら……

 

 

「こ…これは……!!?」

 

 

そんなディードの両腕に、翡翠色の魔力の鎖が巻き付いていたからであった。

 

 

すると、それを見たユーノがフッと小さく笑みを浮かべた。

 

 

「予想外な事態のせいで少し時間が掛かったけど、ようやく完成した」

 

 

そしてそう呟くと、ユーノとクロノを捕縛していた光線が粉々に砕け散る。同時に、ユーノを中心に巨大な翡翠色の魔法陣が展開された。

 

 

「出でよ……断罪の鎖」

 

 

「なっ!?」

 

 

その光景に驚愕している間に、その魔法陣から出現した魔力の鎖がさらにディードの体に巻き付き、そのまま彼女の体を宙へと持ち上げる。

 

 

「ディード!!? くっ…」

 

 

それを見てディードを救おうとレイストームを発動させようとするオットーだが……

 

 

「捕らえて封じよ……縛道の檻」

 

 

「うっ…ああぁ!!?」

 

 

そんなオットーの体にも魔力の鎖が巻き付き、彼女の体も宙へと持ち上げる。

 

 

 

「プリズナーチェーン!!!!」

 

 

 

そしてそのまま翡翠の鎖は、オットーとディードの体を硬く捕縛したのであった。

 

 

「トドメは任せたよ、クロノ」

 

 

「ああ……デュランダル」

 

 

ユーノからバトンタッチを受けたクロノは、杖をS2Uからデュランダルへと持ち替える。

 

 

「悠久なる凍土…凍てつく蒼き(つるぎ)…極寒の大地にて…氷河の咆哮を訊け……」

 

 

そしてデュランダルを構え、静かに詠唱を唱えると……クロノの周囲に無数の氷の刃が生成されていく。

 

 

「くっ…!!」

 

 

「この…!!」

 

 

それを見たオットーとディードは捕縛から抜け出そうとするが、ユーノの捕縛魔法はビクともしなかった。

 

 

そしてその間に、クロノの氷の刃の生成が終わり……

 

 

 

「ブリザードスティンガー!!!!!」

 

 

 

「ぐあぁああああああああ!!!!」

 

 

「うあぁああああああああ!!!!」

 

 

クロノの放った無数の氷の刃が捕縛されていた2人を切り刻み……それを喰らった2人は倒れ、意識を手放したのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「いでよ!!!! ディンギルの塔!!!! 愚かなる妖精にその悲しみの全てをぶつけ、土に還れ!!!!」

 

 

その頃…追い詰められたラスティローズは大地から巨大な塔を具現化させる。

 

 

「何だこれは…!?」

 

 

「身動きが……」

 

 

「取れない…!!?」

 

 

「うああああ!」

 

 

「しまった!! オレたちまで……」

 

 

「フハハハハハッ!!!」

 

 

その塔の壁には雷神衆やフェイトだけでなく、リサーナやスバル…その場にいた全員の体を取り込まれてしまった。

 

 

「くそ…!!」

 

 

「やむを得ねえ、造形眼(フィギュアアイズ)で」

 

 

「でもそれは、眼鏡をしている人には効かないんじゃ……!!」

 

 

「いや……」

 

 

そう言って仮面を外したビックスローの視線の先には…負傷してテントで眠っていたハズのエルフマンとザフィーラが任せろと言わんばかりに彼を見ていた。

 

 

「頼れる漢と守護獣が目を開けてんだ。操らせてもらうぜ」

 

 

「ああ」

 

 

「やってくれ」

 

 

その瞬間…ビックスローの造形眼(フィギュアアイズ)と目を合わせたエルフマンとザフィーラの体は人形化し、彼の操り人形となった。

 

 

「頼む!!!!」

 

 

「何!!? がはっ!!!」

 

 

そして完全に虚をつかれたラスティローズはザフィーラに殴り飛ばされ、続けてエルフマンに蹴り飛ばされる。それによって想像力が途切れた為、フリードたちを取り込んでいた塔が消滅する。

 

 

「解けた!!!」

 

 

「よしっ!! ウィングロード!!!!」

 

 

塔から解放された瞬間、スバルは得意魔法であるウィングロードで、ラスティローズまでの道を作った。

 

 

「フェイトさん!!!」

 

 

「うん!!」

 

 

そんなスバルの意図を汲み取ったフェイトはウィングロードに着地すると同時にバルディッシュを構え、音速の速さでラスティローズへと駆け出す。

 

 

「フリード!!」

 

 

一方動物の魂(アニマルソウル)で両手を翼に変えて羽ばたくリサーナは、フリードに両足を向ける。それの意味を察したフリードは彼女と両足に自身の両足を合わせると……

 

 

「お願い!!!!」

 

 

「ああ」

 

 

そのまま思いっきり蹴り出され、ラスティローズへと向かっていく。

 

 

「闇の文字(エクリテュール)……」

 

 

「ジェット……」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「〝滅〟!!!!!」

 

 

「ザンバー!!!!!」

 

 

 

 

 

2人の渾身の一撃が決まり……それを喰らったラスティローズは地面に沈んだのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ガッッ!!!!

 

 

「なっ!!?」

 

 

ブーメランブレードをはやてへと振り下ろしたセッテは驚愕する。何故なら、彼女が振り下ろしたブーメランブレードを、はやてが素手で受け止めたのだから。

 

 

「……まだ終わらへん……終わってたまるか……まだ私は…あの人に追いついてない……あの人の隣りに立ってへんねや……」

 

 

小さくそう呟き、受け止めたその手から血を流しながらもブーメランブレードを押し返し始めるはやて。

 

 

「ずっと一人ぼっちやった私に家族の暖かさと大切さを教えてくれた……居場所のなくなった私や守護騎士たちに、妖精の尻尾(フェアリーテイル)という居場所を与えてくれた私らの恩人────ギルダーツ」

 

 

そう語るはやての脳裏には……ギルドに入る前にギルダーツと過ごした幼い頃の日々が浮かんでいた。

 

 

「ギルド最強の男の隣りに立つためには…私もギルド最強の女にならなアカン……その時まで私は絶対に──負ける訳にはいかへんねやァ!!!!」

 

 

「!!?」

 

 

そして力強くそう言い放つと同時に、はやてはブーメランブレードを完全に押し返し、すぐさまセッテと距離を取った。

 

 

「無駄な足掻きを……!! ならばこれで今度こそ終わらせます」

 

 

そう言うとセッテは2本のブーメランブレードを構え、それらを一斉にはやてに目掛けて投擲した。

 

 

「IS発動『スローターアームズ』」

 

 

そして自身のISを発動させ、2本のブーメランブレードを縦横無尽に駆け巡らせる。はやてはそんなメチャクチャな軌道で自身の周囲を飛び回るブーメランブレードを少し目で追ったあと、そっと静かに目を伏せた。そしてゆっくりと夜天の書を開き、シュベルトクロイツを天に向かって高々と構える。

 

 

「彼方より来たれ…やどりぎの枝。銀月の槍となりて…撃ち貫け」

 

 

魔法の詠唱を唱えると同時にはやての足元に白い魔法陣が展開され、上空に七ツの白い光が出現する。

 

 

「石化の槍!! ミストルティン!!!!」

 

 

そして次の瞬間……はやての周囲を飛びまわっていたブーメランブレードは重々しい石へと変化したのであった。

 

 

「そんな……!!?」

 

 

石化され、ズシィンっと音を立てて地に落ちてしまった自身の武器を見て、絶句するセッテ。

 

 

「これで終いや!!!」

 

 

そう言ってはやては再び夜天の書を開き、シュベルトクロイツを構えて詠唱を唱え始める。

 

 

「来よ、白銀の風……天よりそそぐ矢羽となれ!!!!」

 

 

そして……

 

 

 

「フレースヴェルグ!!!!!」

 

 

 

「うあぁぁあああああああああ!!!!」

 

 

はやての放った巨大な白銀の閃光が……セッテを飲み込んだのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「オォラァァア!!!」

 

 

一方…ブルーノートが作り出した全てを吸い込む重力場に耐えながら、その重力場である球体に向かって手をかざすギルダーツ。

 

するとその瞬間……ギルダーツの魔法によって球体に亀裂が入る。

 

 

「ヒビ……!!?」

 

 

「そんなに飛びたきゃ飛ばしてやろうか?」

 

 

「魔法が割れるとか……え!?」

 

 

超重力球(ブラックホール)を粉々に粉砕され、動揺するブルーノート。そんなブルーノートに対し、ギルダーツは強く握り締めた拳を構え……

 

 

 

 

 

「破邪顕正・一天」

 

 

 

 

 

そのままブルーノートの顎に向かって思いっきり拳を突き上げた。

 

 

「あああああああぁぁぁぁぁぁ………!!!!」

 

 

それを喰らったブルーノートは吹き飛ばされ…雨雲を突き破り…空の彼方へと消えていったのであった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方……森の中で未だにエスターテと戦闘を繰り広げているなのは。

 

 

「フレイムメイク〝大槌兵(ハンマー)〟!!!!」

 

 

「くっ…!!」

 

 

手のひらに拳を乗せる構えでエスターテはなのはの頭上に造りだした炎のハンマーを落とすが、なのははそれを顔をしかめながらも横に飛んで回避し、そのまますぐに体制を立て直してレイジングハートを構える。

 

 

「ディバインバスター!!!!」

 

 

「ごはぁっ!!!」

 

 

そしてなのはが放った砲撃はエスターテに直撃し、彼の体を吹き飛ばす。だがエスターテは空中でクルリと体を反転させると、難なく地面に着地する。

 

 

「ハハハハハッ!!! いいぞナノハ・タカマチ!!! また楽しくなってきやがった!!!!」

 

 

「(……魔力が戻ったのはいいけど……この人、本当に強い!!!)」

 

 

奪われていた魔力が戻ってきた事により反撃に出たなのはであったが、それを差し引いてもエスターテの実力は本物で、中々決定打を与えられないでいた。

 

 

「フレイムメイク〝円盤(ソーサー)〟!!!!」

 

 

「プロテクション!!!!」

 

 

円盤のような回転ノコを炎で造り出し放つエスターテ。それをなのはは桜色の魔力のバリアを張って防御する。だがエスターテは間髪にいれずに、次の造形を始める。

 

 

「フレイムメイク〝(アロー)〟!!!!」

 

 

「くっ…うぅ……きゃああっ!!!」

 

 

エスターテは炎で造り出した弓でいくつもの燃え盛る矢を放ち、なのははそれを続けてバリアで防御しようとするが、さすがに防ぎきれずに破壊され、炎の矢をいくつか喰らってしまう。

 

 

「まだまだ行くぜ!!! フレイムメイ──!!?」

 

 

追い討ちを仕掛けようと手のひらに拳を乗せる構えを取ろうとするエスターテだが、その行動は途端に止まってしまった。何故なら……

 

 

「ユーノ君直伝のチェーンバインド……上手くいったの」

 

 

エスターテの体はなのはが放ったと思われる桜色の魔力の鎖による捕縛魔法に縛られていたのだ。

 

 

「チッ……こんなもん燃やしてやらァ!!!!」

 

 

それを見たエスターテは忌々しげに舌打ちをし、両腕から噴出された炎で魔力の鎖の破壊を試みる。それに対しなのはは、エスターテに向かってレイジングハートを構える。

 

 

「(私の捕縛魔法じゃ長くは捕まえられないし、あの調子じゃ数十秒しか持たない。だけどそれだけの時間があれば十分!!!)」

 

 

なのはが構えたレイジングハートの切っ先に、膨大な桜色の魔力を集束される。そして……

 

 

 

「エクセリオンバスター!!!!!」

 

 

 

「ぐぁぁああああああああ!!!!」

 

 

捕縛されていたエスターテに大威力で発射された砲撃魔法を避ける術はなく、そのまま桜色の閃光の中に飲み込まれて……ボロボロの姿で地面に倒れたのであった。

 

 

「……ふう……勝ったの」

 

 

戦いが終わったなのは、小さく一息ついて、グッと自身の手を握り締めたのであった。

 

 

だがしかし……

 

 

「ハハハハッ……アーッハッハッハッハ!!!!!」

 

 

「!!?」

 

 

その勝利の余韻は、倒れているエスターテが上げた高笑いによって、崩されたのであった。

 

 

「おもしれェ…おもしれェぞ!!! こんなおもしれェ戦いを早々に終わらせるなんざ勿体ねえ!!!! まだまだ楽しもうぜ!!!!」

 

 

楽しげな口調でそう言い放ちながら、ゆっくりと起き上がるエスターテ。そして彼は、その身を隠していたローブに手を掛け、ボロボロになったそれを勢いよく脱ぎ捨てた。

 

 

「──えっ?」

 

 

そんなエスターテの姿……いや、エスターテの素顔を見たなのはは、愕然とした表情で呆然と彼を見据えたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃…別の場所でも未だに死闘が繰り広げられていた。

 

 

「でりゃぁぁあああ!!!!」

 

 

「ハァァアア!!!!」

 

 

ガキィィイインっという甲高い音を響かせながら衝突する雷を纏った槍と氷の刀。その持ち主であるエリオとインヴェルノはしばらく鍔迫り合いをしたのち、互いに弾かれるように後方へ下がる。

 

 

「どうやらグリモアの作戦は失敗したようだな。だがまぁいい、どの道結果は変わらん」

 

 

「ずいぶんと余裕ですね。まだ僕たちは負けていませんよ」

 

 

「それも時間の問題だ。仮に貴様がオレを倒したとしても、最後に待ち受けるグリモアのマスターハデスには絶対に勝てない」

 

 

「!!」

 

 

インヴェルノの言葉にエリオは僅かに身を震わせる。想定していなかった訳ではなかったが…いざ言葉にしてそう言われると、エリオの心に僅かな恐怖が生まれる。

 

 

「……確かに勝てないかもしれませんね……僕だけなら」

 

 

だがそれでも、その恐怖がエリオの顔に現れる事はなかった。

 

 

「僕は1人じゃない…ナツさんやティアナさん…ウェンディやキャロ…ギルドの仲間がいるんだ!!」

 

 

「愚かな……マスターハデスには貴様らが束になっても敵わない脅威だと言っているんだ。現にマスターマカロフはハデスの前に敗れ去った。貴様らには万に一つも勝機はない」

 

 

「そんな事はありません。仲間との絆があれば…いればどんな脅威にも立ち向かえるし、どんな恐怖にも打ち勝てるんだ!!!!」

 

 

「!! 絆…だと?」

 

 

そう言い放ったエリオの言葉を聞いた瞬間……インヴェルノはここへ来る前に、自分たちのマスターであるジェイル・スカリエッティとの会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)を決して侮ってはいけないよ、インヴェルノ。甘く見れば必ず足元を掬われる』

 

 

『バカな。すでに新型戦闘機人であるオレとエスターテの調整は完璧です。戦闘シュミレーションでも、ナツ・ドラグニルやグレイ・フルバスター…さらにはナノハ・タカマチやティアナ・ランスターなど、奴等の主戦力となる魔導士には問題なく勝利しております』

 

 

『彼らの強さはシュミレーションなどでは測れないのだよ。奴等の強さは脅威は個人の強さよりも、団体の強さにある。特に自分たちの仲間が境地に陥った時は、それを救う為に信じられない力を発揮する。マスターマカロフがいうには、これを〝絆〟と呼ぶらしい』

 

 

『絆?』

 

 

『そう……仲間との絆。それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の強さの秘密さ』

 

 

 

 

 

「……くだらねえ」

 

 

「?」

 

 

「なにが仲間との絆だ……そんなモン何の役にも立ちはしないんだよ!!!!」

 

 

ギリッと奥歯を噛み締め、突然激昂したかのように怒鳴ると、インヴェルノはエリオに向かって一直線に駆け出す。

 

 

「くっ……!!」

 

 

それに対してエリオは迎え撃つ為にストラーダを構えるが……

 

 

「遅いっ!!!」

 

 

「なっ!!?」

 

 

一気に目の前までやって来たインヴェルノに、ストラーダを蹴り上げられて弾き飛ばされて、エリオの後方の地面に突き刺さる。

 

 

「しまった!!」

 

 

「氷竜拳・剛雪(ごうせつ)!!!!」

 

 

「がはぁっ!!!!」

 

 

ストラーダを手放し無防備となったエリオの腹部に、インヴェルノの冷気を纏った剛拳を叩き込まれ、思いっきり後方へと吹き飛ばされてしまうエリオ。

 

 

「氷竜槍・氷柱(つらら)!!!!」

 

 

さらに追い討ちをかけるように、自身の周囲に造り出した槍のような数本のツララをエリオに向かって放つ。

 

 

「この……!! 雷竜の放電!!!!」

 

 

それを見たエリオはすぐさま体制を立て直し、手から放った雷撃でツララを全て薙ぎ払う。

 

 

「オォォォオオオオ!!!!」

 

 

さらにエリオは地面に突き刺さっていたストラーダを引き抜きながら、インヴェルノへと駆け出す。

 

 

「雷竜槍・投擲!!!」

 

 

そして拾い上げたストラーダをすぐさま雷撃を纏った状態でインヴェルノへと投げ付ける。

 

 

「フン、そんな攻撃当たりはしない」

 

 

その攻撃をインヴェルノは体を横にそらすだけで回避し、目標をはずしたストラーダはそのまま岩壁に激突し、突き刺さる。しかし……

 

 

「(なっ!!? いない…!!? どこへ行った!!?)」

 

 

インヴェルノが一瞬だけストラーダに気を取られていたその間に、目の前にいたハズのエリオの姿が消えていた。するとインヴェルノの背後から、バチバチと電気が迸る音が聞こえた。

 

 

「後ろ!!?」

 

 

慌てて振り返ったインヴェルノの目に飛び込んできたのは、すでに眼前と迫ってきている全身に雷を纏ったエリオであった。

 

 

「(速い!!?)」

 

 

「雷竜の鉄拳!!!!」

 

 

「がっ…!!!」

 

 

エリオのスピードに驚愕している間に、インヴェルノの頬にエリオの雷撃を纏った拳が叩き込まれる。しかしエリオの攻撃はこれで終わりではない。

 

 

「旋尾!!! 角撃!!! 砕牙!!!」

 

 

回し蹴り…手刀による突き…爪を立てた一振り……それぞれが雷撃を纏った攻撃を休む間もなく連続でインヴェルノへ叩き込むエリオ。

 

 

「雷竜の……」

 

 

そしてトドメと言わんばかりに強く握り締めた拳に雷を帯電させ……

 

 

 

雷槌(いかづち)!!!!!」

 

 

 

それをインヴェルノに叩き込んだのであった。

 

 

「ああぁぁあああああ!!!!」

 

 

それを喰らったインヴェルノは吹き飛ばされ、後方にあった岩壁に激突する。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……!!!」

 

 

連撃の疲労か…荒く息を切らしながらインヴェルノが叩きつけられた際に発生した土煙を見据えるエリオ。すると……

 

 

「この程度か」

 

 

「!!?」

 

 

土煙の中から姿を現したのは……身に纏っていたローブはボロボロになっているが、本体はほとんどダメージを負った様子のないインヴェルノであった。

 

 

「そんな……!!!」

 

 

「所詮旧世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の力など、オレには通用しない」

 

 

インヴェルノがそう言い放ったその瞬間……彼が身につけていたローブが脱げてパサリと地面に落ち……彼の素顔が露となった。

 

 

「なっ……!!!?」

 

 

そんなインヴェルノの素顔を見たエリオは、目を大きく見開いて驚愕したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして何の偶然か……離れた場所にいるハズのエリオとなのはは、ほぼ同時に叫んだ。

 

 

「グレイ!!?」

 

 

「ナツさん!!?」

 

 

そう……敵であるインヴェルノとエスターテの素顔……それは自分たちの仲間であるナツ・ドラグニルとグレイ・フルバスターの顔そのものだったのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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