LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

160 / 240
4話目です。

実はまだあるんです。


雷炎竜

 

 

 

 

 

ついに始まったマスターハデスとナツたち7人による最終決戦。

 

 

開戦直後に7人全員による全力攻撃を叩き込んだが、マスターハデスの前には通じず……彼の圧倒的な魔力の前にただただ蹂躙されてしまったナツたち。

 

 

だが絶体絶命のピンチに陥ったその時……かつてギルドを破門されたマカロフの孫……ラクサスが乱入したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第160話

『雷炎竜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラクサス……」

 

 

「本当に…ラクサスが…」

 

 

「ラクサスが来てくれた……」

 

 

「あの人がマスターの……」

 

 

「僕と同じ魔法を使う……」

 

 

「……………」

 

 

「こやつ……マカロフの血族か」

 

 

思わぬラクサスの登場に、ハデスを含めた一同は様々な反応を見せる。

 

 

「情けねえな、揃いも揃ってボロ雑巾みてーな格好しやがって」

 

 

「だな」

 

 

そんなラクサスの皮肉にも、ナツは笑顔を浮かべて答える。

 

 

「なぜお前がここに……」

 

 

「先代の墓参りだよ。これでも元妖精の尻尾(フェアリーテイル)だからな」

 

 

ラクサスのそんな言葉に、エルザは思わずクスリと笑みを浮かべる。

 

 

「俺は初代の墓参りに来たつもりだったのになァ。こいつは驚いた……二代目さんがおられるとは」

 

 

今まで薄ら笑みを浮かべていたラクサスの表情がスッと消え、次の瞬間には憤怒が浮かべられた。

 

 

「せっかくだから墓を作って、拝んでやるとするか」

 

 

「やれやれ、小僧にこんな思い上がった親族がいたとは」

 

 

殺気と殺気をぶつけ合い、睨み合ったまま動かないラクサスとハデス。そんな様子を固唾を呑んで見守るナツたち。

 

 

そしてしばらくの睨み合いのあと……先に動いたのはラクサスであった。

 

 

「ぬぅ!!」

 

 

ラクサスの雷撃を纏った蹴りと拳の連続攻撃を受け、ハデスは後方に飛ばされる。それを全身に雷を纏った状態で追いかけ、さらなる追撃を加えるラクサス。

 

さらにもう1発攻撃を加えようとしたが、ハデスはすぐさま後退しそれを回避する。だがラクサスは逃がさんといわんばかりに雷のブレスを放つ。

 

ハデスはそのブレスを跳躍して避け、手から魔力の鎖を放つが、ラクサスはそれを体に横にそらしてかわす。しかしその鎖を放った狙いはラクサスではなく、その後ろにあった巨大な世界儀であった。

 

鎖を接続した世界儀を振り回し床を抉りながらそれをラクサスに叩きつける。

 

 

「フン」

 

 

「くっ!」

 

 

世界儀による攻撃を間一髪で回避に成功したラクサスであったが、ハデスは続けて魔力による波動を放ち、それを受けたラクサスは肩膝をついてしまう。

 

さらにそれを好機と見たハデスは片手で印を結び、ラクサスの周囲に黒い魔法陣を展開する。

 

 

「!!! これは……天照式の……!!!」

 

 

「散れいっ!!!」

 

 

「しまっ──」

 

 

そしてラクサスが驚愕したようにそう呟いた瞬間……魔法陣による大爆発が巻き起こり、相応の爆炎がラクサスを飲み込んだ。

 

周囲にいたナツたちも爆発により発生した爆風によって大きく吹き飛ばされてしまう。

 

だがその時……一筋の雷が爆炎を突き破った。

 

 

「かああっ!!!!」

 

 

そしてラクサスは体を雷化させ、天井を伝ってハデスの頭上に回り込み、上空からの重い蹴りを後頭部へと喰らわせたのだった。

 

 

「すげえ……」

 

 

「僕の魔法とは、まるでレベルが違う……」

 

 

「(こんなに強かったのかラクサスは……)」

 

 

そんな激しい攻防戦を見たグレイとエリオは思わずそう呟き、エルザは今まで見た事のないラクサスの実力に驚嘆していた。

 

しかし……

 

 

「ぐふっ」

 

 

「ラクサス!!!」

 

 

「さっきの魔法を喰らってたんだわ……」

 

 

突如血を吐いて膝を付いたラクサスにナツが叫び、回避したと思っていた攻撃を実は喰らっていた事に気づいたティアナがそう呟く。

 

 

「うう……」

 

 

「しっかりしろよ!!! ラクサス!!」

 

 

「ラクサスさん!!!」

 

 

「世界ってのは本当に広い。こんなバケモンみてーな奴がいるとは……オレもまだまだ…」

 

 

「何言ってんだラクサス!!!!」

 

 

肩膝をつきながら、どこか諦めた様な口調でそう呟くラクサスにナツが吼える。

 

 

「やってくれたのう……ラクサスとやら。うぬはもう消えよ!!!!」

 

 

そんなラクサスに向かって容赦なく魔法を放つハデス。

 

 

「立て!!! ラクサス!!!!」

 

 

それを見たエルザがそう叫ぶが、ラクサスはなぜか動こうとしない。

 

 

「オレはよう……もう妖精の尻尾(フェアリーテイル)の人間じゃねえけどよ……」

 

 

「ラクサス!!! 危ない!!!!」

 

 

「よけて!!!」

 

 

「それを喰らったらダメです!!!」

 

 

ティアナとルーシィとウェンディの叫びにも応えず……地面にそっと拳を添えながらラクサスは言葉を続ける。

 

 

「じじいをやられたら──怒ってもいいんだよな」

 

 

「当たり前だぁぁぁ!!!!」

 

 

ラクサスのその言葉に対し、ナツは声を張り上げてそう答える。その瞬間……ラクサスが地面に添えた拳から雷が放たれ、その雷は地面を伝ってナツのもとへと導かれた。

 

 

「雷!!? ラクサスの…!!?」

 

 

その直後……戦艦を大きく揺るがすほどの衝撃と爆発が巻き起こったのだった。

 

 

「「ラクサスーーー!!!」」

 

 

ハデスの攻撃を喰らい、ボロボロの姿で地面に倒れるラクサスを見て、ティアナとエルザは大声で彼の名を叫ぶ。

 

 

「オレの…おごりだ──ナツ」

 

 

そしてラクサスはそう言い残して、力無く地に倒れたのであった。

 

 

「え?」

 

 

「ナツさん?」

 

 

そんなラクサスの言葉を聞いて、全員の視線がナツへと集中する。

 

 

「ごちそう…さま」

 

 

そう言ってゆっくりと立ち上がるナツの体には、雷がバチバチと音を立てて迸っている。

 

 

「帯電?」

 

 

「オレの全魔力だ」

 

 

「自分の魔力をナツに!!?」

 

 

「雷……食べちゃったの?」

 

 

「そんな……滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が食べられるのは、自分と同じ属性だけのハズじゃ……」

 

 

「それにナツは昔、同じようにラクサスの雷を食べて体調を崩したのに……」

 

 

「(ラクサスの奴、魔力無しの状態であの攻撃を受けたって事かよ)」

 

 

「(そこまでしてナツさんに魔力を……?)」

 

 

自分の全魔力を雷に変換して、それをナツに喰わせたというラクサスの荒業に愕然とする一同。すると、それを受けたナツがポツリと呟くように問い掛ける。

 

 

「何で…オレに…オレはラクサスより弱ェ……」

 

 

「強ェか弱ェかじゃねえだろ。キズつけられたのは誰だ? ギルドの紋章を刻んだ奴がやらねえでどうする? ギルドの受けた痛みはギルドが返せ──100倍でな」

 

 

「──ああ」

 

 

ラクサスの言葉を受けたナツは、目元をグイっと拭って頷き……その体にラクサスから受け取った雷と、自身の炎を纏わせた。

 

 

「炎と雷の融合……」

 

 

「2つの属性を持った(ドラゴン)……」

 

 

「「雷炎竜」」

 

 

今のナツの状態を見て、ウェンディとエリオがゾクリと背筋を震わせながらそう呟いた。

 

 

「100倍返しだ」

 

 

そして……

 

 

「うおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 

「がぁああああ!!!!」

 

 

目にも止まらぬ速さで地を蹴ったナツは炎と雷を纏った拳をハデスの顔面へと叩きつけ、そのまま拳を振り切って壁に勢いよく叩きつける。

 

 

「んぎぃ!! あぁぁああああ!!!!」

 

 

そのまま炎を纏った蹴りによる追撃をハデスの頭上に叩き込むと、そこへさらに落雷のような攻撃がハデスを襲った。

 

 

「炎の打撃の後に、雷の追加攻撃!!」

 

 

「すごい!!!」

 

 

「これが雷炎竜の力……」

 

 

ハデスをも追い詰めるナツの雷炎竜の力に、ティアナやグレイたちも驚嘆を隠せない。

 

 

「オレたちのギルドをキズつけやがって!!!!」

 

 

さらに拳を振るうナツの脳裏に浮かぶのは……マカロフを初めとした妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間たちがキズつき…次々と倒れていく姿。

 

その元凶となった目の前の男に向かって……ナツは怒りを込めて拳を振るう。

 

 

「お前は…消えろォォ!!!!!」

 

 

片腕にそれぞれ炎と雷を纏ってそれを合わせ、ハデス目掛け一気にそれを叩き落とす。その攻撃により発生した凄まじい衝撃が周囲の壁や天井の崩れた瓦礫を吹き飛ばしていく。

 

すると、爆煙の中からハデスの魔力の鎖が伸びて来た。

 

 

「はっはーっ!! 両腕を塞いだぞォ!!!」

 

 

その鎖はナツの両腕に巻き付き、それを確認したハデスは得意気にそう言うが……ナツはその鎖を難なく引き千切る。

 

 

「なっ!!?」

 

 

呆気なく拘束が千切られた事に驚愕するハデスに対し……ナツは炎と雷……2つの属性を自身の口へと集束して頬を膨らませる。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「雷炎竜の──咆哮!!!!!」

 

 

 

 

 

「ぬがぁぁああああああああ!!!!!」

 

 

ナツが放った雷炎のブレスはハデスをいとも容易く飲み込み……そのまま船の壁を突き破って、天狼島全体を揺るがすほどの衝撃を与えた後……空の彼方へと消えていった。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

 

苦しげに荒い呼吸を繰り返すナツの視線の先には……大の字のなって倒れているハデスの姿があった。それを見たエルザたちの表情も、驚嘆や歓喜に染まる。

 

 

「やった…ぞ」

 

 

勝利を確信したナツの体から力が抜け、ゆっくりと倒れ始める。そんなナツの倒れる先には……激しい戦いの中で床に大きく開いてしまった穴があった。

 

 

「ナツ!!!!」

 

 

それを見たティアナは一目散に駆け出し、ナツの腕を掴んで落下を防いだ。

 

 

「た……助かった…もう完全に魔力がねえや」

 

 

「……まったく、無茶するんだから」

 

 

どうやら雷炎竜の力はその圧倒的魔力故に、消費量も激しい様であった。そんなナツの様子にティアナは呆れながらも、優しい笑顔を浮かべたのだった。

 

 

「これで終わったな」

 

 

「うん!!」

 

 

「はい!!」

 

 

「ですね!!」

 

 

グレイの言葉に同意するようにルーシィやウェンディ、エリオが笑顔を浮かべながら頷く。

 

 

こうして……長かった天狼島での戦いがようやく幕を閉じた────かのように思われた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……船の動力源を探して通気孔のような狭い通路をハッピー・シャルル・リリー・リニスの順で這って進んでいる4人。

 

 

「一体どこに動力源があるんだよぅ」

 

 

「これだけ大きな船ですから、おそらく巨大な魔水晶(ラクリマ)で動いているハズですよ」

 

 

「てか何でこんな通路通ってんだ」

 

 

「知らないわよ。ハッピーに聞いて」

 

 

「なんとなく」

 

 

「なんとなくかいっ!!」

 

 

そんな会話をしながらも動力源を探して通路を進んでいると……

 

 

「あ!!」

 

 

「きゃっ」

 

 

「ふごっ」

 

 

「あうっ」

 

 

突然ハッピーが立ち止まった為、その後ろにいたシャルルたちも前に追突しながらも立ち止まる。

 

 

「ちょっと!! 急に止まるんじゃないわよ!!」

 

 

「どうしたハッピー」

 

 

「何か見つけたのですか?」

 

 

「な…何だこれ……」

 

 

声を震わせるハッピーの視線の先には、通気孔に空いた金網がある。その金網から見える光景に……シャルルたちも同じく言葉を失った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「たいした若造どもだ」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

戦いが終わって一息つこうとしてナツたちの耳に……ハデスのそんな声が聞こえてくる。

 

 

「マカロフめ……まったくおそろしいガキどもを育てたものだ。私がここまでやられたのは何十年ぶりかのう」

 

 

そう言ってゆっくりと体を起こし…立ち上がるハデス。

 

 

「このまま片付けてやるのはたやすい事だが、楽しませてもらった礼をせねばな」

 

 

「そんな……」

 

 

「ウソだろ」

 

 

「あの攻撃が効かなかっただと!?」

 

 

グリモアの紋章が刻まれたマントを背に羽織ながらそう言い放つハデスに、愕然とするナツたち。

 

 

「悪魔の眼──開眼!!!!」

 

 

するとハデスは右目に着けていた眼帯を外し……ゆっくりとその目を開く。

 

 

「うぬらには特別に見せてしんぜよう」

 

 

そしてハデスの塞がれた右目が完全に開かれたその瞬間……その場の空気が変わった。

 

 

「魔道の深淵。ここからはうぬらの想像を遥かに超える領域」

 

 

そう言い放ちながらハデスは長い白髪の髪を逆立たせ……邪悪な魔力をその身から放ちながらナツたちを見据える。

 

 

「バカな……!!」

 

 

「こんなの……ありえない……!!」

 

 

「なんて……邪悪な魔力なんだ……!!」

 

 

「こんな魔力は感じた事がない!!」

 

 

「まだ増幅していく!!」

 

 

「どこまで…バケモンなのよ……!!」

 

 

「終わりだ──妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

ハデスの放つその邪悪な魔力の前に……幾多の戦いを潜り抜けてきたナツたちも恐怖を感じ、その身を震わせていた。

 

 

「んぐっ…うぅ……」

 

 

「ナツ!!!」

 

 

「くそっ!!! 動く力…さえ、残ってねえ…!!!」

 

 

どんなに体を動かそうとしても……疲労と恐怖に支配されたその体は、己の意思に反して拒絶するようにただガクガクと震える。

 

 

彼らにはもはや……絶望という言葉すら浮かんでいたのであった。

 

 

 

 

つづく

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