LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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さて…天狼島編もいよいよ次回で終了し、物語は新たなステージへと移行します。

今回はフェアリーテイルの物語の中でも、自分が特に感動した話です。

感想お待ちしております。


愛する資格

 

 

 

 

 

「皆の者…心して聞けい。重大発表をする」

 

 

突然メンバーを集めて真剣な面持ちでそう切り出したマカロフに、メンバーたちは何事かとザワめく。そしてマカロフは一拍置いた後……ゆっくりと口を開いた。

 

 

「天狼島からギルドに戻ったその日より────女子のみ制服を設定する!!! ナース服かスク水限定じゃ!!!」

 

 

「何の話かしらーーー!!?」

 

 

そんなマカロフの重大(?)発表にメンバーたちはズッコケ、ルーシィのツッコミが炸裂した。

 

 

「なるほど、それは楽しみだな」

 

 

「服の調達は私に任せてや♪」

 

 

「エルザさんもはやてさんも乗らないでください!!! ここは怒るトコです!!!!」

 

 

2人して的外れな発言をしているエルザとはやてに対して怒鳴るティアナ。

 

 

「マスター……ここはマジメにっ!!!」

 

 

「すみません…ちょっとノリで……」

 

 

静かな怒気を纏ったミラジェーンに睨まれたマカロフは萎縮しながら、本来の重大発表を告げたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第163話

『愛する資格』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃…グリモアの戦艦では、突如現れたゼレフとユーリにハデスは愕然とし…ラスティローズと華院はその場で跪いていた。

 

 

「ゼレフ…あのゼレフが…私の目の前に…これは夢か、現実か……」

 

 

動揺しながらそう言葉を口にするハデスだが、目の前にゼレフが本物だと悟るやいなや、部下である2人に命令する。

 

 

「鍵だ!!! 鍵を持ってこい!!!」

 

 

「……う……」

 

 

「動けねっス……」

 

 

だがそんなハデスの命令にも、ラスティローズと華院は跪いた状態のままその場を動けないでいた。よく見れば2人の表情は恐怖に染まっており、体も小刻みに震えていた。

 

 

「その必要はないよ。僕は起きている」

 

 

「!?」

 

 

「僕が言えた道理じゃないけどね、その〝鍵〟とやらを手にする為に何人の命を奪ってきたんだ?」

 

 

「愚かな事です。そんなものはただの虚像に過ぎないのに」

 

 

「な…何だと!!?」

 

 

「大昔……黒魔導士ゼレフを妄信する一部の者が幻想した〝設定〟の1つがゼレフ復活の鍵……あなた方は作り話に踊らされていたにだけなのですよ」

 

 

ユーリの口から静かに語られる真実に…言葉を失うハデス。

 

 

「僕は元々眠ってなどいない。今ここにいるのが黒魔導士ゼレフだよ」

 

 

「バ…バカな!!!! 私は〝眼〟を使って見ていたぞ!!!! 私の部下にすら勝てなかったうぬの姿を!!!!」

 

 

そう…ハデスは右目の悪魔の眼を使って、ウルティアに敗れたゼレフの姿を見ていたのだ。

 

 

「だったら話は早いよね……あれが僕の実力さ──あの時の」

 

 

だが今のゼレフの姿は……あの時とは比べ物にならないほどの不気味な威圧感で満ちていた。

 

 

「僕はね……400年前、人の争いを…人の死を無数に見てきた。だけどね……ある日を境に命の尊さを知った。その頃からだよ、僕の呪われた体は命を尊く思えば思うほど人の魂を奪ってしまうんだ。人の魂を奪わない為には、僕は人の命の重みを忘れなければならない。我ながら惻然とするよ」

 

 

「命の重さと戦ってるというのか…!!?」

 

 

「そう……だから全然思ったように魔法は使えないんだ──命の重さを忘れれば別だけどね」

 

 

そう言い放つゼレフの威圧感は部屋全体を支配し…ユーリ以外の全員を震え上がらせる。

 

 

「あなた達は引き金を引いてしまった……アクノロギアは時代の終わりを告げる存在。あなた達の邪念がそれを呼んでしまった」

 

 

「アクノロギア!!? 一体何の話だ……!!?」

 

 

ユーリのその言葉の意味が分からず、ハデスは動揺しながらそう問い掛ける。

 

 

「君たちには罰を受けてもらうよ」

 

 

「ま…待て!!!! うぬにはまだ聞きたい事が!!!!」

 

 

そう言って円を描くようにゆっくりと腕を回し始めるゼレフを見て、ハデスは狼狽しながらも彼にある事を問い掛けようとするが、今のゼレフは聞く耳を持たない。

 

 

「1つはアクノロギアを呼んだ罪。もう1つは…僕に命の重さを忘れさせた罪だ」

 

 

そしてゼレフはハデスがナツたちとの戦いで見せた裏魔法の構えを見せる。だがその魔力と威圧感は…ハデスを遥かに凌駕していた。

 

 

 

 

 

「悔い改めよ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方……天狼島から離れた海のど真ん中。そこには脱出用のボートで島から出たウルティアとメルディの姿があった。

 

 

「メルディ、元気ないわね」

 

 

「…………」

 

 

「すぐには難しいかもしれないけど、忘れましょう。悪魔の心臓(グリモアハート)も、ゼレフの事も」

 

 

優しくそう言葉をかけるウルティアだが、メルディは黙ったまま何も答えない。すると、メルディは意を決したように口を開く。

 

 

「ねえ、ウルティア。私の街を襲ったの……ウルティアって本当?」

 

 

あの時ザンクロウが言っていた言葉の真意を確かめる為に、そう問い掛けるメルディ。それに対し、ウルティアは静かに俯く。

 

 

「私の家族も友達も全部、ウルティアが……」

 

 

「──そうよ」

 

 

「!!!」

 

 

ある意味聞きたくなかった答えを聞いた瞬間…メルディは自分の体からゾワリと血の気が引いたのを感じた。

 

 

「いつかきちんと話さなきゃと思ってたんだけど……私はこの人生を〝一周目〟と考えていたの。それは大魔法世界に行って時のアークを完成させれば〝二周目〟が始まるからよ。私はこの一周目がやり直しのきく人生だと信じてきた。だからどんなに残酷な事も、人の道に外れた事もできた。二周目こそが私の本当の人生、あなたの本当の人生…幸せな私たち。全ては……その為だった」

 

 

ウルティアの告白を聞いて、メルディは勢いよくボートの上で立ち上がる。

 

 

「わかってる…それは全部私の〝つもり〟。他の人から見たら私は鬼。罪を重ね、幸せな人生を妄想するバカ女」

 

 

自分を卑下しながらそう言うウルティアに対し、メルディはギリッと歯を食いしばる。

 

 

「許して……なんて言えないけど……ごめんなさい……と言わせて…」

 

 

そう言ってメルディに謝罪の言葉を口にするウルティアだが、メルディは彼女を見下ろしながら拳を震わせている。

 

 

「……そうよね、殺したいほど憎いわよね…でもね…」

 

 

それを見たウルティアは悲しげにそう言うと……その瞬間ボートの船底に、赤い液体が滴り始める。

 

 

「これ以上、あなたのキレイな手を汚す必要はない。私はもう……消える…から……」

 

 

その正体はウルティアの血であり、彼女は自分のわき腹にナイフを深く突き立てていた。そんなウルティアの行動に目を見開くメルディ。

 

 

「ウルティア!!!」

 

 

「あなたは幸せを見つけるの…きっと幸せになれる。大好きよ──メルディ…」

 

 

「ウルティアーーー!!!!」

 

 

そう言い残して海の中へと落ちていったウルティアに…メルディの叫び声が大海原に木霊したのだった。

 

 

「(海……母の中……悪くない……最期…ね……)」

 

 

そしてそのまま静かに海の底へと沈んでいくウルティアは…悪くない最期だと、自身の死を受け入れていた。

 

 

だがしかし……彼女にその最期が訪れる事はなかった。

 

 

「ぷはぁっ!!」

 

 

「!?」

 

 

何故なら……他ならぬメルディがそんなウルティアを助ける為に海へと飛び込み、彼女を体を引き上げたからである。

 

 

「メルディ……」

 

 

「生き…ようよ……」

 

 

「…………」

 

 

ウルティアはふと自身の腕を見ると、そこにはメルディの魔法である感覚共有(リンク)の紋章が浮かび上がっていた。

 

 

「ウルティアの悲しみも…悔しさも…私…全部わかる……ウルティアは私を育ててくれた……それは変わらない……

 

 

許す……!!! 許すから!!! もう二度とあんな事言わないから!!!!

 

 

お願いだから1人にしないで!!!! 大好きなの!!!! 一緒に生きて!!!!」

 

 

その両目から大粒の涙を流しながら、懇願するように叫ぶメルディ。

 

 

そんな彼女の体を……ウルティアも涙を流しながら……強く抱き締めたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ドゴォォォオオオン!!!!!

 

 

場所は戻り…グリモアの戦艦。

 

 

ゼレフの放った黒い波動が轟音と共に船全体を揺るがし……それを受けたハデスはゆっくりと倒れこみながら……その命を終えたのだった。

 

 

「マ…マスターハデスが……」

 

 

「し…しししし…死ん……」

 

 

目の前でゼレフに命を奪われたハデスを見て…ラスティローズと華院はただただ愕然とするしかなかった。

 

 

「身の程を知らぬクズめ。冥界へ落ちるがいい」

 

 

そんなハデスに対して吐き捨てるようにそう言い放つゼレフ。すると……

 

 

「ゼレフ!!!!」

 

 

「!」

 

 

ユーリの呼びかけと同時に何かに気がついたゼレフはビクリと体を震わせ、その顔には焦りの色が見えていた。

 

 

 

「来たか…アクノロギア!!!!」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「「「何だとぉ~~~~っ!!!!!」」」

 

 

「だ・か・ら~、今回のS級魔導士昇格試験は中止とする」

 

 

マカロフの口から語られた本当の重大発表。それは本来の目的であったS級魔導士昇格試験の中止であった。

 

 

「納得いかねーぞじーさん!!!」

 

 

「何で中止なんだよーーー!!!」

 

 

「せやせや!!! そんなん反対や!!!」

 

 

「オレをS級にしやがれー!!!」

 

 

「候補者はお前じゃなくてレビィの方だけどな」

 

 

そんなマカロフの決定に口々に異議を申し立てる候補者たち(1人除く)。

 

 

「仕方なかろう、色々あったんだから」

 

 

「候補者の中に評議員が紛れ込んでたり、悪魔の心臓(グリモアハート)に邪魔されたり」

 

 

「これだけの事があれば、試験中止の理由には十分だろう」

 

 

そう言ってミラジェーンとクロノが試験中止の理由を補足する。

 

 

「今回は仕方ないかな~」

 

 

「レビィがそう言うなら…仕方ない」

 

 

「オメェらはそれでいいのかよ!! チクショー!!」

 

 

「候補者のレビィがいいって言ってんだから諦めろよ」

 

 

「お前がそんなにアツくなる事もなかろう」

 

 

候補者であるレビィ本人がすでに納得してしまっている為、ガジルは渋々諦めた。

 

 

「……ま、しゃーないか」

 

 

「また来年頑張りましょう、我が主」

 

 

「だ~~~!!! S級になりたかった~!!!」

 

 

「仕方ありませんよ。そもそもロキさんがいない今、僕とグレイさんだけじゃチームとして成立しませんし」

 

 

「元気出してグレイ」

 

 

「そうです!! グレイ様なら次こそきっと!!」

 

 

「漢は引き際も肝心か」

 

 

そう言って他の候補者の面々も次々と引き下がる中、ナツだけはまったく譲らなかった。

 

 

「オレは諦めねーぞ!!! 絶対S級になるんだ!!!! グレイもはやてもエルフマンもレビィも諦めるんだな!!!? だったらオレがS級になる!!!! S級になるんだー!!!!」

 

 

「往生際が悪いわね」

 

 

「落ち着くこうよナツ」

 

 

叫びながら暴れまわるナツを見て呆れるティアナとハッピー。

 

 

「しょーがないのう。特別じゃ、今から最終試験を始めよう。ワシに勝てたらナツをS級にしてやる」

 

 

「本当かじっちゃん!!!! おおおうっしゃあああ!!!! 燃えてきたぁーーーーっ!!!!」

 

 

見かねたマカロフの言葉を聞き、ナツは意気揚々とマカロフに勝負を仕掛けるが……

 

 

「参り……ました……」

 

 

次の瞬間には……巨人の腕の一撃で沈められていたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

()に、()んの」

 

 

「いや……本物なのかなって思って」

 

 

「本物よ!!! 失礼ね!!!」

 

 

その頃、ラクサスは死んだハズのリサーナが生きていた事に驚き、彼女の頬を引っ張ったりポンポンっと頭を叩いたりして確かめていた。

 

 

「あまりイジめたらかわいそうよ」

 

 

「あの洞察力…さすがはラクサス……見習わねば」

 

 

「そ…そうか?」

 

 

「…………」

 

 

そんな会話をする雷神衆3人の隣りで、フェイトは1人考え込むような表情を浮かべていた。

 

 

「どうした? フェイト」

 

 

「えっと…その……あのね……本当は試験が終わってから言うつもりだったんだけど…」

 

 

そんなフェイトの様子に気づいたフリードがどうしたのか問い掛けると、フェイトはモジモジと手を揉みながら言いよどんでいると……やがて意を決したように口を開く。

 

 

「私もう一度──雷神衆に入ってもいいかな?」

 

 

「「「!!」」」

 

 

フェイトのその申し出に雷神衆3人は目を丸くし、近くでそれを聞いていたラクサスとリサーナも彼女に視線を向けていた。

 

 

「一度やめておいて、こんな事言うのは図々しいのはわかってるけど……やっぱり私…雷神衆に戻りたい……」

 

 

「「「……………」」」

 

 

そんなフェイトの言葉に対し…雷神衆の3人は無言で顔を見合わせると……

 

 

「「「あははははははっ!!!」」」

 

 

何故か一斉に笑い出した。そんな3人に今度はフェイトが目を丸くすると……

 

 

「その言葉を待ってたぜフェイト!!!」

 

 

「ようやくその気になったのね!!!」

 

 

「えっ!? えっ!?」

 

 

ビックスローとエバーグリーンの言葉にフェイトがオロオロとしていると、そんな彼女を落ち着かせるようにフリードが肩にそっと手を置いた。

 

 

「実を言うと…オレたちはどうやってフェイトにもう一度チームに戻ってきてもらうか、収穫祭の日からずっと考えていたんだ」

 

 

「えぇっ!?」

 

 

「最終的にはフェイトの意思を尊重して、お前から言い出すのを待とうという結果に落ち着いた。そして今日……ようやくその言葉を聞けた」

 

 

フリードのその言葉を聞いたフェイト…唇を震わせながら言葉を紡ぐ。

 

 

「じゃ…じゃあ……」

 

 

「とーぜん!!! 歓迎するぜ!!!」

 

 

「また一緒に頑張りましょう」

 

 

「おかえり……フェイト」

 

 

「~~~!!! うんっ!!!!」

 

 

フェイトは目元に涙を浮かべながら、自分に手を差し出してくるフリードの手を掴み、ビックスローとエバーグリーンもその上に自身の手を乗せたのであった。

 

 

「よかったねフェイト……」

 

 

「……フン」

 

 

その様子を見ていたリサーナは貰い泣きし、ラクサスも口元に笑みを浮かべて笑っていた。

 

 

そしてもう3人ほど、その様子を近くの木陰から覗いている者もいた。

 

 

「何だかちょっと出て行き辛いね……」

 

 

「そうね」

 

 

「あははは…」

 

 

その3人とは、ウェンディとシャルルとキャロであった。彼女たちは初めて会うラクサスに挨拶に行こうとしていたのだが、フェイトの話が始まったあたりから出るに出られなくなっていたのであった。

 

 

「それにちょっとだけ挨拶するの怖くなってきたねキャロちゃん」

 

 

「うん…エリオ君はもう挨拶を済ませたって言ってたけど……大丈夫かなぁ」

 

 

「え!? 何に怯えてんのアンタたち!?」

 

 

出て行きづらいというのもあるが、当のウェンディとキャロ自身がラクサスに思うところがあるのか、挨拶に行くのを躊躇っていた。

 

 

「色々噂を聞いているだろうが、根は悪い奴じゃない」

 

 

「「エルザさん」」

 

 

「ただ少し、不器用なだけなんだ」

 

 

そこへ現れたエルザのフォローする言葉を聞いて、ウェンディとキャロの表情から怯えが消えていった。

 

 

「はい!! 私たち、挨拶に行ってきます」

 

 

「行こう、ウェンディちゃん!!」

 

 

そしてウェンディとキャロは、今度は躊躇う事無くラクサスのもとへと足を踏み出したのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ユーノ~!」

 

 

「あ…ルーシィ、カナ。薬草の泉にはもう行ったのかい?」

 

 

「うん。少しキズに沁みたけど、おかげでほとんど楽になったわ」

 

 

「それはよかった。ところで、僕に何か用?」

 

 

「あ、そうそう。ギルダーツ見なかった?」

 

 

「ギルダーツ? 確か向こうの川でナツやエリオたちと一緒に釣りをしに行ったけど……」

 

 

ルーシィの問い掛けに答えながら、ユーノはふと彼女の隣りで深刻そうな表情を浮かべているカナが視界に入り、それを見て全てを察した。

 

 

「……そっか、全てを打ち明ける覚悟が出来たんだね?」

 

 

「……うん。S級にはなれなかったけど、お父さんに本当の事を伝えてみようと思うんだ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃…キャンプから少し離れた川ではナツとハッピー、そしてエリオとリニスを連れたギルダーツが彼らと釣りを楽しんでいた。とは言っても、ナツは釣竿を手につまらなそうな顔をしていた。

 

 

「なんだよそのシケたツラはよォ」

 

 

「だって全然面白くねーんだもんよ」

 

 

「わかってねぇな、釣りは男のロマンだろうが。お前もそう思うだろうエリオ?」

 

 

「えっと…僕に振られても困るんですが……」

 

 

突然話を振られたエリオは釣竿を手にしながら苦笑を浮かべていた。

 

 

「そうだよ!! 魚こそがロマンだよ!!」

 

 

「つまみ食いはダメですよハッピー」

 

 

そう言って籠の中入っている釣れた魚に手を出そうとしているハッピーを、リニスが戒める。

 

 

「食えりゃいいってもんじゃねえぞ。駆り立てられる狩猟本能!!! この大自然との一体感!!! 食うか食われるかの真剣勝負!!!! まさにここは男の狩猟場(あそびば)!!!!」

 

 

ナツとエリオに対してそう力説するギルダーツ。その時、ナツの釣竿がピクリと動いた。

 

 

「お! 何かかかった!」

 

 

「いいぞナツ!! 引けっ、引けっ!!」

 

 

するとそこへ、ルーシィとカナとユーノの3人がやって来た。

 

 

「ギルダーツ」

 

 

「ちょっと待て!! 今ナツが男のロマンに目覚める瞬間なんだ!」

 

 

「貴重な瞬間を邪魔して悪いんだけど、カナが少し大事な話があるんだ」

 

 

「ん?」

 

 

大事な話と聞いて、耳を傾けるギルダーツ。

 

 

「ナツもハッピーもこっちこっち」

 

 

「うわっ! 魚が…!!」

 

 

「みんなのエサが~!」

 

 

「エリオとリニスも、悪いけどこっちに来てね~」

 

 

「はぁ……」

 

 

「?」

 

 

ルーシィはナツとハッピーを…ユーノはエリオとリニスをその場から連れ出して行き、その場にはカナとギルダーツの2人だけが取り残された。

 

 

「…………」

 

 

「どうした?」

 

 

中々話を切り出さないカナにギルダーツの方から問い掛けると、やがてカナは意を決したようにゆっくりと口を開いた。

 

 

「私…ギルドに来た理由って…父親を探して……なんだよね」

 

 

「そりゃ初耳だな。つー事はアレか? お前の親父さんは妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいたのか?」

 

 

「う…うん……」

 

 

とここで、カナは再び黙り込んでしまう。

 

 

「がんばれ!! カナ!!」

 

 

「ちゃんと伝えるんだよ……」

 

 

「あんたたちは帰ってなさい」

 

 

「「「???」」」

 

 

その近くの木陰では、ルーシィとユーノが影ながらカナを応援している。その傍らには、まったく状況が飲み込めていないナツやエリオたちが疑問符を浮かべていた。

 

 

そしてカナは長い沈黙の末……ついに長年溜め込んできた言葉を言い放った。

 

 

「ギルダーツなんだ」

 

 

「──え? ええーーーーっ!!!?」

 

 

それに対しギルダーツはあまりに衝撃的な事実に、声を大にして驚愕する。そして木陰では、ルーシィとユーノは「うんうん」と頷いており、ナツたちに至っては口をあんぐりと空けて愕然としている。

 

 

「色々あって……ずっと言えなかったんだけど……」

 

 

「ちょ…ちょっと待て…お前……!!!」

 

 

「うん…受け入れ難いよね」

 

 

口をパクパクと動かしながら愕然としているギルダーツに対して、辛そうにそう言うカナ。しかし……

 

 

「誰の子なんだ!!? サラ…ナオミ…クレア…フィーナ…マリー…イライザ…いやいや!! 髪の色が違う!! エマ…ライラ…ジーン…シドニー…ミシェル…ステファニー…ブツブツ」

 

 

「オッサン!!!!」

 

 

動揺したギルダーツの口から次々と出てきた女性の名前にカナは思わずツッコミ……先ほどまでのシリアスは雰囲気が一気に瓦解した。

 

 

「どんだけ女つくってんだよ!!!」

 

 

「わ…わかった!! シルビアだな!! そっくりだぜ!!! 性別とか!!!」

 

 

「あーもう!! ハラ立つ~~~!!! こんなしょうもない女たらしがオヤジだなんてぇ~~~っ!!!!」

 

 

あまりに女にだらしないギルダーツの一面にカナはたまらずそう叫び、踵を翻す。

 

 

「とにかくそう言う事だから!!! それだけ!!!」

 

 

「ま…待てって!」

 

 

「私が言いたかったのはそれだけ!!! 別に家族になろうとかそういうのじゃないからっ!!! 今まで通りでかまわ……」

 

 

カナはそこまで言いかけ……途中で言葉が止まった。

 

 

「コーネリアの子だ。間違いねえ」

 

 

何故なら……気づけばギルダーツに優しく抱き締められていたのだから。

 

 

「放せよ」

 

 

「何で今まで黙ってたんだ」

 

 

「言い出しづらかったんだ。そんなこんなで今頃になっちまったのさ」

 

 

「コーネリアはオレが唯一愛した女だ。結婚したのもコーネリアだけさ。仕事ばかりのオレに愛想を尽かして出て行ったのが18年前。風の便りで逝っちまった事は知ってたが……子供がいたなんて……スマネェ……お前に気づいてやれなかった……」

 

 

そう謝罪するギルダーツの腕を、カナはそっと解いて抜け出し、彼に優しく声をかける。

 

 

「いいよ……わざとバレないようにしてたの私だし……勝手で悪いんだけどさ、私はこれで胸のつかえが取れた」

 

 

「こんなに近くに…娘がいたのに…」

 

 

「よせって…責任とれとかそういうつもりで話したんじゃないんだ…いつも通りでいいよ。ただ……一回だけ言わせて……」

 

 

そしてカナはそこで一旦言葉を区切り……

 

 

 

「会えてよかったよ──お父さん」

 

 

 

満面の笑顔で父親(ギルダーツ)にそう言ったのであった。

 

 

それを聞いた瞬間……ギルダーツは涙ぐみ、同時にギルドで過ごした彼女との思い出も脳裏に蘇る。

 

 

「カナ!!!!」

 

 

そして感極まったギルダーツは再び(カナ)を……今度は絶対に放さないといわんばかりに強く抱き締めた。

 

 

「もう寂しい思いはさせねぇ!!!! 二度とさせねぇ!!!! これからは仕事に行くのも酒を飲むのも…ずっと一緒にいてやる……」

 

 

「それはちょっとウザイかな?」

 

 

極端な事をいうギルダーツに思わず苦笑を浮かべながら、そっと抱き締め返すカナ。そして……

 

 

 

 

 

「だから……オレにお前を愛する資格をくれ」

 

 

 

 

 

ギルダーツのその言葉に……カナは静かに涙を流したのであった。

 

 

その光景をずっと見守っていたルーシィとユーノはそっと自身の涙を拭い……ナツたちにいたっては、ぐもぉっと号泣していた。

 

 

「お父さん…か……帰ったら久しぶりに会ってみようかな」

 

 

「……それがいいよ。きっとルーシィのお父さんも、君に会いたがってるハズさ」

 

 

「じゃあユーノも一緒に来る? お父さんに紹介したいし」

 

 

「え?」

 

 

そんな会話をしている彼らに……優しい一陣の風が吹き抜けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時まで……彼らは暖かな日差しの中にいた。

 

 

X784年 12月16日 天狼島

 

 

 

 

 

──破滅は突然やってきた。

 

 

 

 

 

つづく

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