LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

168 / 240
あと1、2話ほどしたら大魔闘演武編です。色々と原作内容を変更する必要があるかもしれませんが、ご了承ください。

感想お待ちしております。


そしてオレたちは頂上を目指す

 

 

 

 

 

 

場所は…妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドにある裏庭。

 

 

その裏庭では、2人の魔導士が戦っていた。

 

 

「マ、マジ…で?」

 

 

そのうちの1人であるナツが、地面に尻餅をつきながら驚愕の表情を浮かべて相手を見ていた。その相手とは……

 

 

 

「どうしたのナツさん? もう終わり?」

 

 

 

ファイティングポーズを構えて余裕そうな顔つきでナツを見据えている金髪のサイドテールに虹彩異色の少女──ヴィヴィオであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第168話

『そしてオレたちは頂上を目指す』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウソでしょ…?」

 

 

「ナツさんが……」

 

 

「ヴィヴィオに勝てないの?」

 

 

「そりゃこの1年…アタシがみっちり鍛えてやったからな」

 

 

ナツがヴィヴィオに押されている光景を目の当たりにして、ティアナとウェンディとルーシィは驚愕し、彼女を鍛えてやったと言うノーヴェは得意気にニッと笑った。

 

 

「もう一度だオラーーーー!!!!」

 

 

そんな彼女たちを他所に、起き上がって一直線にヴィヴィオへと突っ込むナツ。

 

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

 

そしてヴィヴィオに向かって何度も拳による打撃を放つが、ヴィヴィオに全て見切られ、最小限の動きで回避されてしまう。さらに……

 

 

「アクセルスマーーッシュ!!!!」

 

 

「うごっ!!!」

 

 

ヴィヴィオは拳を突き出したナツの懐に入り込み、カウンターとして魔力を付与した拳でアッパーをナツを殴り飛ばしたのであった。

 

 

「あのナツさんが一方的に……」

 

 

「凄いよヴィヴィオー!」

 

 

「ナツー! がんばれー!」

 

 

ヴィヴィオのアッパーにより吹き飛ばされるナツを見て、愕然とそう呟くエリオと、ヴィヴィオとナツにそれぞれ声援を送るなのはとハッピー。

 

 

「くそっ!!」

 

 

だがすぐに体制を立て直して地面に着地したナツは、炎の拳を構えて再びヴィヴィオに突撃する。

 

 

「火竜の…鉄拳!!!!」

 

 

「セイクリッドディフェンダー!!!!」

 

 

ナツの炎の拳による一撃を、虹色の魔力の防壁でガードするヴィヴィオ。

 

 

「ぬうぅ……!!」

 

 

力を込めて防壁を破壊しようとするナツだが、ヴィヴィオの防壁は今ひとつ破れない。

 

 

「スゲー!!」

 

 

「信じらんねえ! ヴィヴィオが!!」

 

 

「ナツを押してんのか!?」

 

 

「ひょっとして、オレたちもナツに」

 

 

その光景を見てマックスとビジターとウォーレンとナブの4人は驚愕し、自分たちでも今のナツには勝てるのではないかと希望を持つ。

 

 

「おおおおおおおおぉっ!!!!」

 

 

するとナツは一際大きな雄叫びを上げる。

 

 

「モード雷炎竜!!!!」

 

 

「「「!!?」」」

 

 

「あれって!?」

 

 

「まさか!?」

 

 

その瞬間ナツは自身の体に炎と雷を纏い……マスターハデス戦で見せた雷炎竜の姿となった。

 

 

「雷炎竜の……」

 

 

「あっ…ちょっ…何かイヤな予感……!!」

 

 

炎と雷の魔力を口の中へと集束し始めるナツを見て、少々青ざめた表情を浮かべるヴィヴィオ。そして……

 

 

 

「咆哮ォォ!!!!!」

 

 

 

ナツの口から凄まじい勢いで放たれた雷を纏った灼熱のブレスが……ヴィヴィオの防壁をあっさりと破壊して彼女のすぐ隣りを通過していき……その後ろにあった多くの木々や岩を飲み込んだ後に消滅したのであった。

 

 

「くそォ!! あの時ほどのパワーは出ねえな」

 

 

「アンタ、いつの間にそれを自分の物にしたのよ?」

 

 

「今」

 

 

「今って」

 

 

「「すごい…」」

 

 

「ハデスと戦ったほどじゃないにしても、やっぱりすごいパワーだ……雷炎竜」

 

 

ティアナの問いにあっさりとそう答えるナツに、軽く呆れるルーシィと、雷炎竜の力に感嘆の声を上げるウェンディとキャロとエリオ。

 

 

「ま…参りましたぁ……」

 

 

先ほどの凄まじいブレスですっかり怯えてしまったヴィヴィオは、小動物のようにプルプルと震えながら涙目で降参宣言をした。

 

 

「ママ~、怖かったよ~」

 

 

「よしよし、よく頑張ったねー」

 

 

そしてそのままなのはに泣きつき、なのはもそんなヴィヴィオを優しく抱き締めて慰めたのであった。

 

 

「次はどいつだ?」

 

 

「ひィー!!!」

 

 

「やっぱ強ェェ!!!」

 

 

「バケモンだぁ!!!」

 

 

「ってかあんなの喰らったら死ぬって!!!」

 

 

「かーっかっかっかっ!!」

 

 

先ほどのナツの力を見てすっかり戦意喪失してしまったマックスたちに、ナツは得意気に高笑いを上げるが……次の瞬間にはバタンと地面にぶっ倒れてしまった。

 

 

「威力が落ちてもやっぱり魔力の消費量がハンパじゃないのね」

 

 

「ナツ……それ実戦じゃ使わない方がいいよ」

 

 

そんなナツを見て冷静に分析するティアナと、忠告の言葉を口にするハッピー。

 

 

「でもヴィヴィオちゃんもすごいよ!」

 

 

「負けちゃったけど、あのナツさんを一方的に追い詰めたんだから」

 

 

「えへへ~♪」

 

 

キャロとエリオの2人に褒められ、泣き止んだヴィヴィオは嬉しそうに笑う。

 

 

「でも私も驚いたよ。この7年でヴィヴィオも強くなったんだね」

 

 

「うん。パパやママたちがいなくなってから、ギルドを守る為に強くなりたいと思って独学で魔法を勉強して……1年前からノーヴェ師匠に鍛えてもらってたの」

 

 

「鍛えたっつっても、アタシは格闘の基礎と実戦での立ち回り方を教えただけだぜ。ヴィヴィオは元々学習能力は高いし、センスもあったからメキメキと上達していったけどな」

 

 

ノーヴェはヴィヴィオの「師匠」という発言に照れくさそうにしながらそう説明する。

 

 

「それに実質ナツたちの実力は7年前のままだからな。今のナツが相手ならマックスでも互角の勝負ができる」

 

 

「何でそこでオレを引き合いに出すんだノーヴェ?」

 

 

ノーヴェのそんな説明にマックスがそう呟くが、全員普通に無視した。

 

 

「だけどそのくらいの力があったら、オウガに好き勝手やられる事もなかったんじゃない?」

 

 

「そうかもしれねーが」

 

 

「金が絡んでたからなァ」

 

 

「力で解決する訳にもいかんでしょ」

 

 

「マスターたちはやってしまいましたけどね」

 

 

「……だな」

 

 

シャルルの問いにそう答えるナブたちの言葉に、リニスがそう言ってマックスが苦笑を浮かべる。

 

 

「しかし、コイツァ思ったより深刻な問題だぞ」

 

 

「グレイ」

 

 

彼らがそんな会話をしていると、岩場の上で観戦していたグレイが口を開く。

 

 

「元々バケモンみてーなギルダーツやラクサスはともかく、オレたちの力はこの時代についていけてねえ」

 

 

「確かに……ノーヴェの言うとおりならナツでさえ、あのマックスに苦戦するって話だもんね」

 

 

「あのマックスさんに」

 

 

「あのマックスさんにですか」

 

 

「だから何でオレを引き合いに出すんだよ!!?」

 

 

ルーシィとウェンディとキャロのセリフに対し叫ぶマックス。だけどやっぱり全員無視。

 

 

「なんか一気に魔力を上げられる方法はないかなぁ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

という訳で、ナツ…ティアナ…グレイ…なのは…ルーシィ…ウェンディ…エリオ…キャロの8人と、ハッピー…シャルル…リニスのエクシード3人が魔力を上げる為に彼らがやって来たのは、東の森にある妖精の尻尾(フェアリーテイル)の顧問薬剤師・ポーリュシカの家。

 

 

「つー訳で」

 

 

「帰れ」

 

 

「「「……………」」」

 

 

しかし取り付く島もなく締め出されてしまった。

 

 

「ポーリュシカさん、なんかいい薬とかないですか?」

 

 

「一気に力が100倍になるのとかー!」

 

 

「さすがに都合よすぎかぁ」

 

 

「だよねー」

 

 

「そもそもそんな薬があったら誰も苦労しないですよね」

 

 

さすがに都合がよすぎたかと落胆するグレイたち。

 

 

「………………」

 

 

「? ウェンディ?」

 

 

「どうしたのウェンディ」

 

 

「顔色悪いよウェンディちゃん」

 

 

「具合でもよくないのですか?」

 

 

「ううん」

 

 

何やら浮かない顔をしているウェンディに気がついたエリオたちが問い掛けるが、ウェンディはその表情のまま首を横に振った。

 

すると、家の中から再びポーリュシカが姿を現した。

 

 

「おっ」

 

 

もしかして何かあるのかと期待するグレイたちだったが……

 

 

「人間は嫌いなんだよっ!!!! 帰れっ!! 帰れーっ!!! しーっ!! しーっ!!!」

 

 

「「「ひいいいいいい!!!」」」

 

 

出てきたのは彼らを追い返す為であり、ポーリュシカは箒を振り回しながらナツたちを追っ払ったのであった。

 

 

「「「失礼しましたー!」」」

 

 

「何だよあのばーちゃん!!」

 

 

「じーさんの昔の恋人」

 

 

「違うわボケッ!!!!」

 

 

人間嫌いのポーリュシカに追い返され、一目散に逃げていくナツたち。

 

 

だがそんな中……ウェンディだけが物憂げな表情でポーリュシカを見つめていたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……妖精の尻尾(フェアリーテイル)では、マカロフがメンバーたちを集めて何やら重大な話をしていた。

 

 

「……という訳で、ワシは引退を決意した。これより次期マスターを紹介する」

 

 

マカロフのそんな言葉に、ザワザワと浮き足立つメンバーたち。

 

 

「本気なの?」

 

 

「確かにマスターもええ歳やけど、そんないきなり……」

 

 

「待ってくれ、まだ心の準備が……」

 

 

「いや、マカオさんじゃねーだろ」

 

 

そんな言葉が飛び交っている間に、マカロフはついに……新しいマスターを紹介する。

 

 

 

「五代目妖精の尻尾(フェアリーテイル)マスター…ギルダーツ・クライヴ!!!!!」

 

 

 

そしてマカロフが指す先には…新ギルドマスターであるギルダーツの姿────ではなく、ニコやかに手を振っているミラジェーンの姿があった。

 

 

「「「!!?」」」

 

 

「!!!!?」

 

 

紹介された人物とはまったく人物が立っていた為、メンバーたちだけでなくマカロフ自身も愕然とする。

 

 

「ギルダーツはどうしたぁ!?」

 

 

「置き手紙がありました」

 

 

「何!!?」

 

 

驚きながらもマカロフは、ミラジェーンから渡されたギルダーツの手紙を読み始めた。

 

 

 

 

 

―マスター…それにギルドのみんなへ……―

 

 

―マスターとか、悪ィがガラじゃねえ―

 

 

 

 

 

「んなっ!!!!!」

 

 

「「「あはははははははっ!!!」」」

 

 

ギルダーツらしい言葉に思わず笑い声を上げてしまうメンバーたち。

 

 

 

 

 

―まあ…けど……せっかくだから五代目としての仕事を2つだけしておく事とする―

 

 

―1つ……ラクサスを妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員と認める―

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

「勝手な事をーーーっ!!!!」

 

 

「オッサン…」

 

 

破門中だったラクサスをギルドの一員として認める事にマカロフは憤慨し、ラクサス本人は呆然としている。

 

 

「よかったなラクサス!!!」

 

 

「フェイトもチームに戻ってきたし、これで雷神衆完全復活ね!!!」

 

 

「またよろしくね、ラクサス!!!」

 

 

「オレは…その……」

 

 

「ギルダーツ、あんたって人は……」

 

 

「ぬうう…五代目がそう言うならば従うまでよ」

 

 

「くすっ」

 

 

ラクサスがギルドに復帰した事に雷神衆は大いに喜び、五代目の決定ならばとマカロフも渋々と認めた。だがそんな素直ではないマカロフに、リサーナがクスリと笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

―2つ……マカロフ・ドレアー氏を六代目妖精の尻尾(フェアリーテイル)マスターに任命する―

 

 

 

 

 

「またワシかーっ!」

 

 

「「「あはははははっ!!!!」」」

 

 

先ほど引退すると公言したばかりなのに、またもやマスター職を押し付けられたマカロフに、メンバーたちは再び笑い声を上げた。

 

 

 

 

 

―オレはしばらく旅に出る。気が向いたら帰るつもりだ。それまで元気でな―

 

 

―それとカナ……また勝手をしてスマネェ―

 

 

―だが…会いたくなったらいつでもそのカードに願ってくれ―

 

 

 

 

 

そこまで読んだ後、ミラジェーンがカナに『CALL』という文字とギルダーツの絵柄が描かれたカードを手渡す。おそらくそのカードに願えば、すぐに彼女の下にギルダーツが飛んでくるのであろう。

 

 

「いらねーよ」

 

 

「カナちゃん!!」

 

 

しかしカナは、そのカードを何の躊躇もなく破り捨てたのだった。

 

 

「今まで通りでいいって言っただろ、クソオヤジ」

 

 

この場にいないギルダーツに対してそう呟くカナ。するとそんなカナの肩に、はやてがポンッと手を置いた。

 

 

「せやけどカナちゃん……もしホンマに寂しくなったら私の事をお母さんと呼んでも」

 

 

「呼ぶかアホッ!!!!」

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はオレの家だ。必ず帰る。

 

 

その時までに、また妖精の尻尾(フェアリーテイル)がフィオーレ一のギルドになっている事を願う。

 

 

だがそれはオレの役目じゃねえ、お前たちの役目だ。

 

 

マスター、それがアンタの最後の仕事だ。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)を再びフィオーレ一のギルドに!!!

 

 

 

 

 

ギルダーツの手紙の内容はそこで終わった。そしてそれを読み終えたマカロフは……

 

 

「ぬぅぅぅぅ~~~最後じゃと? バカタレがっ!!!! こうなったらもう誰にもマスターの座は譲らんぞ!!!! 死ぬまでやってやるわい!!!! 酒じゃっ!!!! 酒持ってこーい!!!」

 

 

やけくそ気味にそう叫んで、自棄酒を始めたのであった。

 

 

―P.S. 地下で見たものの事は他言しねえ……誓うよ―

 

 

「当たり前じゃバカタレ」

 

 

何はともあれ、この件についてはひと段落つき……またギルドはいつもの喧騒に包まれたのであった。

 

 

「ギルダーツの奴…フィオーレ一のギルドって……」

 

 

「さすがに話デカすぎだっつーの」

 

 

「そんな事はなかろう。上昇志向はよい事だ」

 

 

「7年前ならな」

 

 

「けど今は違う」

 

 

そう言ってエルザの言葉を否定するマックスとウォーレン。

 

 

剣咬の虎(セイバートゥース)はもちろん」

 

 

「ラミアや天馬だって、7年前とは比べ物にならないくらい強大なギルドになってるんです」

 

 

「でっかいギルドよ」

 

 

続けて娘のアスカを加えたコネル一家がそう説明する。

 

 

「それに比べてウチは主要メンバーが戻ったとはいえ」

 

 

「天狼組の力は実質7年前のまま」

 

 

「この7年の差は埋めようがねえよ。個人の魔力をとっても、ギルドの総合力をとっても、フィオーレ一なんてとても……」

 

 

「なるほどなぁ……昔のように戻るんは時間がかかりそうやなぁ」

 

 

メンバーたちの言葉を聞いて、はやてが小さく嘆息しながらそう呟く。すると、ロメオが意気揚々とテーブルに乗り出して口を開いた。

 

 

「オレたちはもう7年も待った。〝時間〟なんてかけたくねーよ」

 

 

「ロメオ!!」

 

 

「エルザ姉、はやて姉。すぐにNO.1になれる方法が──1つだけあるんだ!!!!」

 

 

「「?」」

 

 

「あっ!! そっかその手があった!!!」

 

 

「そういやもうそんな時期だな。タイミングがいいんだか悪いんだか…」

 

 

ロメオの言葉を聞いて疑問符を浮かべるエルザとはやて。そして思い出したようにヴィヴィオとノーヴェがそう言い放つ。

 

 

「……な!!」

 

 

「ま…まさか!!」

 

 

「それは……!!」

 

 

「「「???」」」

 

 

そしてそれを聞いたとたんにうろたえ始める7年後のメンバーたちと、エルザたちと同じく疑問符を浮かべる天狼組。

 

 

「ダメだ!!!! アレには絶対参加しねえって決めただろォ!!!!」

 

 

「アレって何じゃね、四代目」

 

 

「その呼び方やめてくんねーかな、六代目」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は戻り…東の森。そこではポーリュシカに追い出されたナツたちがグッタリと地面に座り込んでいた。

 

 

「もぉー、誰よポーリュシカさんのトコ行こうって言い出したの」

 

 

「アンタよ」

 

 

「とんでもねえばーさんだな」

 

 

「怖かったね~」

 

 

「おおおおお…」

 

 

「人間嫌いだとは聞いていましたが……」

 

 

「あそこまでとはね」

 

 

「オイラ猫なんだけどなぁ」

 

 

「ウェンディもキャロも大丈夫だった?」

 

 

「うん、私は平気だよ。ウェンディちゃんは……ウェンディちゃん?」

 

 

そう言ってキャロがウェンディの顔を覗き込むと……何故かウェンディは両目から涙を滲ませていた。

 

 

「ちょ……どうしたのよウェンディ!!?」

 

 

「あんのばっちゃん!!! ウェンディを泣かしたなァ!!!」

 

 

突然泣き出したウェンディにティアナは驚き、ナツはポーリュシカが泣かせたのだと憤慨するが…ウェンディ本人が否定するようにフルフルと首を横に振った。

 

 

「違うんです…懐かしくて…」

 

 

「懐かしい?」

 

 

「ウェンディちゃん、あの人と会った事があるの?」

 

 

「ううん…今さっき初めて会ったハズなのに…懐かしいの……」

 

 

ウェンディの懐かしいという言葉にエリオが首を傾げ、キャロがそう問い掛けると、ウェンディは震える声で答える。

 

 

 

「あの人……声が…匂いが……天竜(グランディーネ)と同じなんです」

 

 

 

その言葉に……ナツたちは大きく目を見開いて驚愕したのだった。

 

 

「あのばーさんがグランディーネ!?」

 

 

「ウェンディの育ての親で…いなくなった(ドラゴン)と同じ声?」

 

 

「それってどういう事?」

 

 

「知らないわよ」

 

 

困惑する一同を代表して、エリオがウェンディ自身に問い掛ける。

 

 

「ウェンディ、それは本当なの?」

 

 

「ぐす……わからない。でも…あの匂い…あの声……私のお母さん……天竜グランディーネと同じなの」

 

 

「こいつはちょっと確かめる必要があるな」

 

 

「待ちなさい」

 

 

その話を聞いてポーリュシカの下へ戻ろうとするナツを、ティアナが制止して言葉を続ける。

 

 

「仮にポーリュシカさんの正体が人間に化けたグランディーネだとしても、少しおかしくないかしら?」

 

 

「そうだよ! ナツやウェンディやエリオ、ついでにガジルも、あんたたちの(ドラゴン)が姿を消したのって確か7年前。正確には14年前──777年」

 

 

「でもポーリュシカさんって、それよりずっと前からマスターと知り合いなんだよね? それじゃあグランディーネとポーリュシカさんのいた時代が被っちゃうよ」

 

 

「時代のつじつまが合わない……同一人物だとは考えにくいわ」

 

 

ティアナとルーシィとなのはの説明に一同(ナツ以外)は「確かに」と納得し、ウェンディ自身も考え込むように顔を俯かせていた。

 

 

「生まれ変わりとか、化けてるって線は薄そうだな」

 

 

「うん」

 

 

「確かに落ち着いて考えてみればそうなんです、おかしいんです。声や匂いが同じでも、口調や雰囲気が全然違う」

 

 

「アンタ前に言ってたもんね、グランディーネは人間が好きって」

 

 

「どーしよう、ネコは嫌いだったら」

 

 

「ハッピー、今の問題はそこではありませんよ」

 

 

的外れな発言をするハッピーをリニスが戒める。

 

 

「グランディーネは優しい(ドラゴン)なんです」

 

 

「うーん…優しい(ドラゴン)かぁ」

 

 

「優しい(ドラゴン)ってのも想像できねーな」

 

 

(ドラゴン)にも色々いるとは思うけど……」

 

 

「アクノロギアを見ちゃったからね」

 

 

「あれは怖かったです……」

 

 

「イグニールも優しいぞ」

 

 

「ボルテウスもです」

 

 

そんな会話をナツたちが繰り広げていると……

 

 

「優しくなくて悪かったね」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

彼らの背後からポーリュシカ本人が姿を現し、一同は驚いてビクッと背筋を伸ばす。

 

 

「ポーリュシカさん!?」

 

 

「ビックリしたぁ~!」

 

 

驚いている一同を他所に……ポーリュシカはウェンディの目をジッと見据えると、静かに語り始めた。

 

 

「隠しておく事もないしね、アンタらだけに話しておくよ。私はアンタの探してるグランディーネじゃない。正真正銘人間だよ」

 

 

「でも人間嫌いって」

 

 

「人間が人間嫌いで文句あるのかい!!?」

 

 

「いえ…」

 

 

途中で余計な茶々が入ったが、ポーリュシカ本人から否定の言葉が言い放たれた。

 

 

「悪いけど(ドラゴン)の居場所は知らない。私と(ドラゴン)とは直接には何の関係もないんだ」

 

 

「じゃあ、あなたは一体…」

 

 

「こことは違うもう1つの世界、エドラスの事は知ってるね。アンタらもエドラスでの自分に会ったと聞いてるよ」

 

 

「エドラス……って」

 

 

「まさか……」

 

 

「そんな事って……」

 

 

「え? 何?」

 

 

「うそ…」

 

 

「信じられません…」

 

 

「?」

 

 

ポーリュシカの言葉に含まれた『エドラス』という単語。それを聞いた彼ら(ナツとハッピー以外)は「まさか」と1つの可能性を予想した。

 

 

 

この世界(アースランド)の人間から見た言い方をすれば、私はエドラスのグランディーネという事になる。何十年も前にこっちの世界に迷い込んだんだ」

 

 

 

予想通りとはいえあまりの事実に、一同は「どひゃーーーっ!!!!」と声を上げて驚愕した。

 

 

「私と同じ世界…エドラスで生まれたグランディーネ」

 

 

「エド・グランディーネ」

 

 

「向こうでは人間なんだ…」

 

 

「………………」

 

 

エクシード3人がそう声を漏らす傍らで、ウェンディだけはジッとポーリュシカを見つめている。

 

 

「ひょんな事からマカロフに助けられてね……私もすっかりアースランドが気に入っちゃったもんだから、エドラスに帰れる機会は何度かあったんだけど、私はここに残る事にした」

 

 

「もしかしてイグニールやボルテウスやメタリカーナも向こうじゃ人間なのか!? つーかこっちにいるのか!?」

 

 

「知らないよ。会った事もない。けど…天竜とは話した事がある」

 

 

「え!?」

 

 

グランディーネと話した事があるというポーリュシカの言葉を聞いて、ウェンディが反応する。

 

 

「会った訳じゃない。魔法かなんかで私の心に語りかけてきたんだよ。アンタら〝強く〟なりたいって言ってたね。そのウェンディって子だけなら何とかなるかもしれないよ。天竜に言われた通りに書き上げた魔法書だ」

 

 

そう言ってポーリュシカから懐から取り出したのは、彼女が書き上げた1冊の魔法書であった。

 

 

「2つの天空魔法〝ミルキーウェイ〟〝照破・天空穿〟。アンタに教えそびれた滅竜奥義だそうだ」

 

 

「グランディーネが私に……」

 

 

「会いにきたら渡してほしいとさ」

 

 

そう言ってウェンディに魔法書を手渡すと、ポーリュシカは踵を翻して歩き始める。

 

 

「その魔法はかなりの高難度だ。無理して体を壊すんじゃないよ」

 

 

そんなポーリュシカにウェンディは強く1歩を踏み出して、彼女に深く頭を下げた。

 

 

「ありがとうございます!!!! ポーリュシカさん!!!! グランディーネ!!!!」

 

 

そして満面の笑顔でお礼の言葉を口にするウェンディに……ポーリュシカもどこか優しい表情をしていたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「絶対出るんだーーーーッ!!!! 出る出る出る出る!!!!」

 

 

「出ねぇ出ねぇ出ねぇ出ねぇ!!!! 絶対認めねぇ!!!! アレにはもう二度と参加しねえっ!!!!」

 

 

その後…ナツたちがギルドに戻ると、ロメオとマカオの親子が何やら激しく言い争っていた。

 

 

「ただいま」

 

 

「おう、おかえり。いい薬は貰えたか?」

 

 

「ウェンディだけね」

 

 

「えへへ♡」

 

 

ギルドに戻ってきたナツたちをノーヴェが出迎えている間にも、2人の口論は続いていた。

 

 

「父ちゃんにはもう決める権限ねーだろ!!!! マスターじゃねえんだから!!!!」

 

 

「オレはギルドの一員として言ってんの!!!!」

 

 

「何の騒ぎだ?」

 

 

「親子ゲンカかな? あとグレイ服」

 

 

傍から見れば親子ゲンカにしか見えないやり取りに、今しがた戻ってきた面々は疑問符を浮かべる。

 

 

「出たくない人!! はーーーい!!」

 

 

「「「はーい!!!」」」

 

 

「アレだけはもう勘弁してくれ」

 

 

「生き恥を晒すようなものよ~」

 

 

マカオが多数決をとり、7年後メンバー全員がマカオに賛同するが、それでもロメオは引き下がらない。

 

 

「だけど今回は天狼組がいる!!! ナツ兄やエルザ姉がいるんだぜ!!! それにようやくノーヴェ姉だってギルドに入ってくれたんだ!!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)が負けるモンかっ!!!!」

 

 

「けど天狼組には7年のブランクがだな」

 

 

そんな彼らのやり取りを見ていたナツが、ようやく彼らに何の騒ぎか問い掛ける。

 

 

「さっきから出るとか出ねえとか何の話だよ!? ルーシィのおつうじじゃあるまいし」

 

 

「そんな話みんなでするかっ!!」

 

 

妙なたとえをするナツにルーシィがツッコミを入れる。

 

 

「ナツ兄たちのいない間に、フィオーレ一のギルドを決める祭りが出来たんだ」

 

 

「フィオーレ一を決める祭り!?」

 

 

「おーーーっ!!」

 

 

「そりゃ面白そうだな」

 

 

「フィオーレ中のギルドが集まって魔力を競い合うんだ」

 

 

フィオーレ一と聞いて、ナツとエリオとハッピーが食いつく。

 

 

 

「その名も…大魔闘演武!!!!!」

 

 

 

祭りの名前を聞いて、ナツたち天狼組は盛り上がる。

 

 

「おおーーーーっ!!!!」

 

 

「へえ…!!」

 

 

「大魔闘演武!!」

 

 

「フィオーレ中の魔導士ギルドが集まるんだ」

 

 

「楽しそうですね」

 

 

「この7年でそんなの出来たんだ」

 

 

「まさに〝祭〟って訳か」

 

 

「なるほど、そこで優勝すれば……」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はフィオーレ一のギルドになれる!!!!」

 

 

「「「おおっ!!!!」」」

 

 

再びフィオーレ一のギルドに返り咲く為の近道がある事を知り、ナツたちはさらに盛り上がる。

 

 

「しかし…今のお前らの実力で優勝なんぞ狙えるかのう」

 

 

「そうだよ!! そうなんだよ!!」

 

 

「でもマスター、優勝したギルドには賞金3千万Jが貰えるんだよ」

 

 

「出る!!!!」

 

 

「マスター!!」

 

 

参加する事に渋ったマカロフだが、ヴィヴィオから賞金の話を聞いた瞬間に手のひらを返したのであった。

 

 

「無理だよ!! 天馬やラミア…」

 

 

剣咬の虎(セイバートゥース)だって出るんだぞ!!」

 

 

「因みに過去の祭じゃ、オレたちずっと最下位だぜ!」

 

 

「えばるなよ」

 

 

「そんなの全部蹴散らしてくれるわい」

 

 

「燃えてきたぞーーーーーっ!!!!!」

 

 

「「「やかましい!!!」」」

 

 

7年後メンバーたちの言葉を聞いても、ナツやマカロフのやる気と決意は変わらない。

 

 

「その大会いつやるんだよ」

 

 

「3ヶ月後だよ!!」

 

 

「十分だ!!!! それまでに鍛え直して、妖精の尻尾(フェアリーテイル)をもう一度フィオーレ一のギルドにしてやる!!!!」

 

 

高らかにそう宣言するナツに釣られて、他の天狼組も笑みを浮かべる。

 

 

「いいねえ!!」

 

 

「まあ、このままギルドが舐められっぱなしっていうのも癪よね」

 

 

「うん!! みんなの力を1つにすれば」

 

 

「できない事はない」

 

 

「だよね♪」

 

 

「グランディーネから貰った魔法、それまでに覚えないと!」

 

 

「この3ヶ月で、僕ももっともっと強くならないと!!」

 

 

「頑張りましょう、エリオ!」

 

 

「祭だよーシャルルー」

 

 

「このギルドは年中そうでしょ」

 

 

「大魔闘演武がアタシの妖精の尻尾(フェアリーテイル)としての晴れ舞台って訳か…おもしれェ」

 

 

「漢ーーーーっ!!! 祭といえば漢だーーー!!!」

 

 

「お祭だーーーっ!!!」

 

 

「ギルダーツの願い……案外すぐに達成できそうじゃない?」

 

 

「せやな、ギルダーツが帰ってきたらビックリさせたろ♪」

 

 

そう言って天狼組の面々も、大魔闘演武への意気込みを見せ始める。

 

 

「マジかよ」

 

 

「本気で出るのか?」

 

 

「や……やめといた方が……」

 

 

「ナツが考えてるようなバトル祭とはちょっと違うのよ」

 

 

「え? 違うの!?」

 

 

「地獄さ」

 

 

「出ると決めたからにはとやかく言っても仕方あるまい!!!!」

 

 

7年後メンバーたちの弱気な発言をそうバッサリ言ってと切り捨てるマカロフ。

 

 

「目指せ3千…コホン──目指せフィオーレ一!!!」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「チームフェアリーテイル!!!! 大魔闘演武に参戦じゃああっ!!!!」

 

 

「「「オオオオオオッーー!!!!」」」

 

 

 

 

 

こうして……ナツたちは3ヵ月後に行われる大魔闘演武への出場が決まったのであった。

 

 

 

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。