LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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BURST

 

 

 

 

 

 

スバルとギンガの姉妹対決が終わった頃、遺跡の入り口付近では、リオンの部下を倒し終えたエルザやなのは達が居た。

 

 

「な…何!? 今の声…!!? てか本当に声だった!?」

 

 

「ルーシィのお腹の音かも!!」

 

 

「本気で言ってるとは思えないけどムカつく!」

 

 

ハッピーの言葉にルーシィは憤慨する。

 

 

「もしかして、デリオラ…?」

 

 

「例の魔物か?」

 

 

「そんな…まさか…復活しちゃった訳ーー!!?」

 

 

「待って! あの光見覚えあるよ! 月の雫(ムーンドリップ)

 

 

ハッピーが指差す方向には、細い月の光が差し込んでいた。

 

 

 

『オォォォォオオオオオオ!!!』

 

 

 

すると、再びデリオラの雄叫びが木霊する。

 

 

「また…」

 

 

「デリオラの声はしてるけど、月の雫(ムーンドリップ)の光はまだ差し込んでるってことは……まだ完全に復活してないんだ!!」

 

 

「来い!!」

 

 

「うん!!」

 

 

すると、エルザとなのはは上に上がる階段に向かって走り出した。

 

 

「え? デリオラは下だよ」

 

 

「儀式を叩けばまだ阻止できる!!」

 

 

「急いで! 時間がない!!!」

 

 

そう言って、エルザ達は月の雫(ムーンドリップ)の儀式を阻止するために階段を駆け上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十七話

BURST(バースト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおーーーーん!!!」

 

 

その後、遺跡の頂上で月の雫(ムーンドリップ)の儀式を行っていたトビーをエルザが阻止した。

 

 

「やった!! 月の雫(ムーンドリップ)が止まった!!」

 

 

「これでデリオラも……!!」

 

 

ルーシィとなのはは儀式を止めたことに喜ぶ。だが…

 

 

「もう遅ぇんだよ!!! わかれよっ!!! 儀式は終わったんだよ!!!」

 

 

「「え?」」

 

 

トビーがそう叫んだ瞬間、地下から凄まじい光が溢れ出したのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あ…あぁ……!!」

 

 

「デリ…オラ……!!」

 

 

ギンガに肩を貸しながら地下へとやって来たスバル。そこで二人が見たものは、完全に氷が溶けて復活したデリオラの姿であった。

 

 

『オォォォォォォォォォオオ!!!』

 

 

復活したことで島中が震えるような雄叫びを上げるデリオラ。

 

 

「グレイ!! スバル!! いたのか!!!」

 

 

すると、ナツが駆け寄ってきた。

 

 

「こうなったらやるしかねぇ!! 俺たちでアイツぶっ倒すぞ!!!」

 

 

「……わかった!!」

 

 

ナツの言葉に頷いたスバルはギンガから少し離れ、リボルバーナックルを構える。すると……

 

 

「ククク…おまえ…ら…には…無理だ……アレは…オレが……ウルを超えるために…オレが…ハハハ……」

 

 

「リオン君!!」

 

 

グレイに敗れたのであろう、身体中傷だらけのリオンが地面を這いずりながらやって来た。それを見たギンガはリオンに駆け寄る。

 

 

「どけ…ギンガ……アイツは…オレが……!!」

 

 

「そんなボロボロの状態じゃ無理よリオン君!!」

 

 

「ギン姉の言う通りだよ!!」

 

 

「オメーの方が無理だよ!! 引っ込んでろ!!」

 

 

ギンガとスバル、そしてナツの静止の言葉を無視して、リオンはデリオラを見上げながらゆっくりと立ち上がる。

 

 

「やっと…会えたな…デリオラ……あの…ウルが…唯一…勝てなかった怪物……今…オレがこの手で…倒す…オレは…今…アンタを…超え…る……」

 

 

「やめてリオン君っ!!!」

 

 

デリオラと戦おうとするリオンを見て、ギンガが悲痛な叫びを上げる。その時…

 

 

ビシッ!!

 

 

「!!!」

 

 

グレイがリオンの首に一撃を入れ、再びリオンは地に伏せた。

 

 

「もういいよ、リオン。あとはオレに任せろ。デリオラはオレが封じる!!!」

 

 

そう言うとグレイはデリオラに向かってあの構えを取る。

 

 

絶対氷結(アイスドシェル)!! よ…よせ!! グレイ!! あの氷を溶かすのにどれだけの時間がかかったと思ってるんだ!! 同じことの繰り返しだぞ!! いずれ凍りは溶け…再びこのオレが挑む!!!」

 

 

「これしかねぇんだ。今、奴を止められるのはこれしかねぇ」

 

 

グレイが絶対氷結(アイスドシェル)を発動させようとしたその時、ナツとスバルがグレイの前に立つ。

 

 

「オレはアイツと戦う」

 

 

「私も…デリオラを倒す」

 

 

「どけっ!! 邪魔だよ!!!」

 

 

二人に向かってそう言うグレイに、ナツとスバルは悲しげな視線を送る。

 

 

「死んでほしくないから…あの時止めたのに……」

 

 

「オレ達の声は届かなかったのか」

 

 

「…………!」

 

 

その言葉にグレイは目を見開く。

 

 

「やりたきゃやれよ。その魔法」

 

 

「ナツ…スバル……」

 

 

グレイが二人の名前を呟いたその瞬間、ついにデリオラが動き出した。

 

 

『ガアアアアア!!!』

 

 

ナツとスバルを叩き潰そうと腕を振り上げるデリオラ。

 

 

「スバル!! 逃げてぇ!!」

 

 

「よけろぉおーー!!!」

 

 

ギンガとグレイの叫びが響く。

 

 

「オレは最後まで諦めねえぞ!!!」

 

 

「行っくぞぉぉぉおお!!!」

 

 

ナツとスバルが迎え撃とうとしたその時……突然ピタリと、デリオラの動きが止まった。そして……

 

 

 

ゴボッ!!

 

 

 

「え!?」

 

 

なんと、突然デリオラの腕が音を立てて崩れ落ちた。いや…腕だけではなかった。

 

 

ピキ…ピキピキ…!

 

 

「な…!」

 

 

パキパキパキパキ…バキィ!!

 

 

「こ…これは……!?」

 

 

ボゴォ!

 

 

「な…何だ!?」

 

 

「デリオラが…崩れていく……!」

 

 

身体中にヒビが入り、それを皮切りにボロボロと崩れ落ちていくデリオラ。

 

 

「バ…バカな……そんなまさか……!! デリオラは…すでに死んで……」

 

 

リオンがそう呟くとほぼ同時に、デリオラの体は跡形も無く崩れ去ったのだった。

 

 

「10年間…ウルの氷の中で命を徐々に奪われ……オレ達は…その最後の瞬間を見ていると言うのか……」

 

 

そう言うと、リオンは地面を思いっきり殴り……

 

 

「敵わん…オレにはウルを超えられない」

 

 

師匠(ウル)の凄さを目の当たりにし、そう呟いて涙を流したのであった。

 

 

「リオン君……」

 

 

そんなリオンを一瞥したあと、ギンガは崩れたデリオラに目を向けた。

 

 

「(そっか…母さんの仇は……ウルさんが取ってくれてたんだ……)」

 

 

そう思うと、ギンガの目に涙が溜まる。

 

 

「ウルさん……ありがとう……!!」

 

 

そしてそう呟いて、ギンガも涙を流したのであった。

 

 

そしてグレイも……

 

 

「ありがとうございます…師匠……」

 

 

片手で顔を覆って、静かに涙を流したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「いあーーー!!! 終わった終わったぁ!!!」

 

 

「あいさーー!!」

 

 

あの後、ナツ達はなのはやエルザ達と合流し、デリオラが倒れたことを喜んだ。

 

 

「本当…一時はどうなるかと思ったよ。すごいよねウルさんって」

 

 

「これでオレ達もS級クエスト達成だーーっ!!」

 

 

「やったー!!」

 

 

「これで私達〝2階〟に行けるかも!!」

 

 

「はは……」

 

 

S級クエストをクリアしたことに喜ぶナツ達。しかし……

 

 

「「………………」」

 

 

ゴゴゴゴ…っと効果音が着きそうな表情で睨んでいるエルザと、笑顔だがどこかエルザと同じ雰囲気を漂わせるなのはを見た瞬間、一同は恐怖で体を震わせた。

 

 

「そうだ! お仕置きが待ってたんだ!!」

 

 

「その前にやることがあるでしょ?」

 

 

「悪魔にされた村人を救うことが今回の仕事の本当の目的ではないのか?」

 

 

「「「「え!?」」」」

 

 

「S級クエストはまだ終わっていない」

 

 

エルザとなのはの言葉に驚愕するナツ達。

 

 

「で…でも、デリオラは死んじゃったんですよ?」

 

 

「そうよ。村の呪いだってこれで……」

 

 

「いや、あの呪いとかいう現象はデリオラの影響ではない」

 

 

スバルとルーシィの言葉をエルザが否定する。

 

 

「たぶん、月の雫(ムーンドリップ)の膨大な魔力が島の人達にに影響を与えたんだと思う。デリオラが崩壊したからといって事態が改善するわけじゃない」

 

 

「そんなぁ~」

 

 

なのはの説明にルーシィは愕然とする。

 

 

「んじゃ、とっとと治してやっかーー!!」

 

 

「あいさー!」

 

 

そんなルーシィを他所にハイタッチを交わし合うナツとハッピー。

 

 

「どうやってだよ」

 

 

「あ、そうだ! ギン姉!!」

 

 

スバルは月の雫(ムーンドリップ)を使用した張本人達であるギンガとリオンに視線を向けるが……

 

 

「オレ達は知らんぞ」

 

 

と言う答えが帰ってきた。

 

 

「何だとぉ!?」

 

 

「とぉ!?」

 

 

「だって、アンタたちが知らなかったら他にどうやって呪いを……!」

 

 

ルーシィの問い掛けにギンガが答える。

 

 

「私達が3年前この島に来たとき、村が存在するのは知ってたわ。けど、私達は村の人達には干渉しなかった」

 

 

「奴等から会いに来ることも一度もなかったしな」

 

 

ギンガとリオンの言葉に疑問を覚える一同。

 

 

「3年間、一度もか?」

 

 

「遺跡から毎晩のように月の雫(ムーンドリップ)の光が降りていたはずだよね?ここに来ないなんておかしいよ」

 

 

「それに…月の雫(ムーンドリップ)の人体への影響についても、多少疑問が残るわ」

 

 

「何だよ……『今さらオレ達のせいじゃねえ』とでも言うつもりか?」

 

 

「3年間、オレ達も同じ光を浴びていたんだぞ」

 

 

リオンのその言葉に、ナツ達は「確かに」と言う表情を見せる。

 

 

「気を付けな、奴らは何かを隠している。ま…ここからはギルドの仕事だろ」

 

 

「そうはいかねぇ! おまえらは村をぶっこ」

 

 

何か言いたげなナツの両頬をエルザが掴んで止めた。

 

そして思い出すのは此処へ来る前に聞いたトビーの言葉。

 

 

 

『シェリーやギンガ…オ…オレ達はみんな……デリオラに家族を…殺された者同士だ…それでリオンに協力してんだよ……リオンならデリオラを倒してくれる……オレ達の恨みを、きっと晴らしてくれる……』

 

 

 

「奴には奴なりの正義があった。過去を難じる必要はもうない。行くぞ」

 

 

そう言ってエルザは全員を率いて立ち去ろうとする。すると、スバルがギンガに駆け寄る。

 

 

「ねえギン姉! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来ない?」

 

 

「え? 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に?」

 

 

突然の勧誘にギンガは目を丸くする。

 

 

「うん! ギン姉はもう蛇姫の鱗(ラミアスケイル)は抜けたんでしょ? だったら妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来てよ!! ティアもなのはさんも歓迎してくれると思うし、私もギン姉と一緒に仕事したいし!!」

 

 

「そうねぇ……」

 

 

「うーん…」と、ギンガはしばらく考える素振りを見せてから……

 

 

「やめとくわ」

 

 

と言って断った。当然スバルは納得しない。

 

 

「えー!?何 でー!!?」

 

 

「誘ってくれたことは嬉しいけど…私は蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に戻って一からやり直そうと思うの。それに……」

 

 

すると、ギンガはチラリとリオンに視線を移す。その顔はどことなく朱に染まっている。それを見たスバルは……

 

 

「あっ、そっか! ギン姉はリオンさんの事が好…」

 

 

「わーーーーーっ!!!」

 

 

何かを言おうとしたスバルの口を慌てて塞ぐギンガ。

 

 

「?」

 

 

それを見ていたリオンは首を傾げる。

 

 

「スバル…もしそういう事を軽々しく言ったら……!」

 

 

「…………!!(コクコクコク)」

 

 

ギンガのただならぬ雰囲気にあてられたスバルは冷や汗をかきながら何度も頷く。

 

 

「ふぅ……ほら、早く行きなさい。置いていかれるわよ?」

 

 

「あ、うん! それじゃあねギン姉!! 待ってよみんなー!!」

 

 

そう言い残して、スバルは先に行ってしまったナツ達を追いかけて行った。

 

 

「さぁ、リオン君。傷の手当をしましょう?」

 

 

「あぁ……すまないな」

 

 

「いいえ♪後でシェリー達も探して来ないといけないわね」

 

 

そう言って、ギンガはリオンに肩を貸して、遺跡の出口へと向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、一同は村の資材置き場へと戻って来た。しかし、そこに村人の姿は無かった。

 

 

「あれ? 誰もいない」

 

 

「ここにみんないたのか?」

 

 

「村がなくなっちゃったからね……でもみんなどこ行っちゃたんだろ?」

 

 

「とりあえず傷薬と包帯もらっとくぞ」

 

 

「あ、グレイ。傷の手当手伝うよ」

 

 

「おう。悪ぃな、なのは」

 

 

グレイとなのははテントから救急セットを取り出して傷の手当を始める。すると……

 

 

「皆さん!! 戻りましたか!!? た…大変なんです!!」

 

 

村人の一人が慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

 

「と…とにかく急いで村まで来てください!!!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「な…何これ……」

 

 

「昨日…村はボロボロになっちゃったのに……」

 

 

「元に…戻ってる!!?」

 

 

上からルーシィ、ハッピー、スバルの順で驚愕の言葉を口にする。そう…昨夜シェリー達の襲撃により村はほぼ壊滅状態にあったのだが、何故か全て元通りになっていた。

 

 

「どうなってんだコリャ…まるで時間が戻ったみてーだ!!!」

 

 

「せっかく直ったんだし、アンタはさわらない方がいいと思う」

 

 

家の壁をガンガンと殴るナツを見てそう呟くルーシィ。

 

 

「時間? まさかな…いや…改心したとか……ま、いっか」

 

 

「あいさー」

 

 

「ナツ、一人で何ブツブツ言ってるの?」

 

 

ナツは何か心当たりがあるのか考え込むが、元々深く考えるタイプではないのですぐに止めた。

 

 

「村を元に戻してくれたのはあなた方ですかな?ほが」

 

 

すると、先ほどまで元通りになったボボの墓の前に座り込んでいたモカがやって来た。

 

 

「それについては感謝します。しかし! 魔導士殿!! 一体…いつになったら月を壊してくれるんですかな!!! ほがーっ!!!」

 

 

「ひぇーーっ!!」

 

 

モカの余りの迫力にルーシィはたじろぐ。すると、エルザが口を開いた。

 

 

「月を破壊するのはたやすい」

 

 

「オイ…とんでもない事しれっと言ってるぞ」

 

 

「あい!」

 

 

「しかしその前に確認したいことがある。皆を集めてくれないか?」

 

 

エルザはそう言って、村人全員を入り口前に集めて、説明を始めた。

 

 

「整理しておこう。君たちは紫の月が出てからそのような姿になってしまった。間違いないか?」

 

 

「ほがぁ…正確にはあの月が出ている間だけこのような姿に…」

 

 

「話をまとめると、それは3年前からということになる。しかしこの島では3年間毎日月の雫(ムーンドリップ)が行われていた」

 

 

説明しながらウロウロと歩き始めるエルザ。

 

 

「遺跡には一筋の光が毎日のように見えていたハズ……きゃあ!!!」

 

 

「エルザさん!!?」

 

 

その瞬間、エルザは落とし穴に落ちてしまった。

 

 

「お…落とし穴まで復活してたのか……」

 

 

「きゃ…きゃあって言った…ぞ」

 

 

「か…かわいいな……」

 

 

「つまり、この島で一番怪しい場所ではないか」

 

 

しかし、エルザは説明しながら普通に上がってきた。

 

 

「うわ…エルザさん何事も無かったかのように再開しましたよ……」

 

 

「にゃはは…さすが、たくましいね」

 

 

そんなエルザを見て、スバルとなのはが苦笑いしながら言った。

 

 

「なぜ調査しなかったのだ?」

 

 

「そ…それは村のいい伝えであの遺跡には近付いてはならんと……」

 

 

「でも…そんなこと言ってる場合じゃなかったよね。死人も出てるし、ギルドへの報酬額の高さからみても」

 

 

ルーシィの言葉に村人達はざわつく。

 

 

「本当のことを話してくれないかな?」

 

 

なのはの言葉を聞いて、モカは少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「そ…それが……ワシらにもよく…わからんのです……正直…あの遺跡は何度も調査しようといたしました。皆は慣れない武器を持ち、ワシはもみあげを整え……何度も遺跡に向かいました。しかし、近付けないのです。遺跡に向かって歩いても……気がつけば村の門。我々は遺跡に近付けないのです」

 

 

それを聞いて、一同は唖然とした。

 

 

「ど…どーゆう事? 近付けない?」

 

 

「オレ達は中まで入れたぞ!! ふつーに」

 

 

「村からは一直線だから、迷うこともないしね」

 

 

遺跡に近づけないと言う言葉にナツ達は疑問を覚える。

 

 

「こんな話、信じてもらえないでしょうから黙っていましたが…」

 

 

「本当なんだ! 遺跡には何度も行こうとした!!」

 

 

「だが、たどり着いた村人は一人もいねえんだ」

 

 

村人達は必死に訴える。

 

 

「やはり…か」

 

 

エルザは小さくそう呟くと……

 

 

「なのは」

 

 

「ん? なに?」

 

 

なのはに声を掛け、そして……

 

 

 

「お前の砲撃で月を破壊しろ」

 

 

 

と言ったのだった。

 

 

「え……ふえぇぇぇぇええ!!?」

 

 

「おおっ!!」

 

 

「「「「えーーーっ!!!」」」」

 

 

当然驚愕する一同。ナツは一人興奮していたが…

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよエルザさん!! いくら何でも月を破壊するなんて無理だよぅ!!」

 

 

「あぁ…生半可な砲撃ではダメだろう」

 

 

「いや、そう言う意味じゃなくて……」

 

 

なのははそう訴えかけるが、エルザは無視して話を進める。

 

 

「だから…〝あの砲撃〟を撃つんだ」

 

 

「えぇっ!!?」

 

 

「「いいっ!!?」」

 

 

「ウソーー!!?」

 

 

「うぱーー!!?」

 

 

〝あの砲撃〟と言う言葉を聞いて、ルーシィ以外の全員が驚愕する。

 

 

「それ位の破壊力ではなければ月は壊れん」

 

 

「で…でもアレはマスターから、いざという時にしか使っちゃダメだって……」

 

 

「空に向かって撃てば問題ない」

 

 

「………………」

 

 

エルザの有無を言わせない言葉の連続に……

 

 

「うぅ…わかったよぅ……」

 

 

ついになのはが折れた。

 

 

「お…おいおい……マジで月ぶっ壊れんじゃねえの?」

 

 

「やべぇ…否定できねえ」

 

 

「なのはさんのアレだからねえ……」

 

 

「あい……」

 

 

ナツ、グレイ、スバル、ハッピーがそう言うと、ルーシィが首を傾げながら問い掛ける。

 

 

「ねえ! さっきから言ってる〝あの砲撃〟とか、アレってなんなの?」

 

 

「そっか…ルーシィはまだ見たことなかったよね? なのはさんのアレ……」

 

 

「だったら今からよく見とけ。なのはの砲撃魔法の恐ろしさをな……」

 

 

スバルとグレイはそう言うと、なのはに視線を向ける。それに釣られてルーシィもなのはの方を見る。

 

 

「目の前で見れるのか…月が壊れるのを」

 

 

「おお…やっと元の姿に戻れるんだぁ」

 

 

村人達も期待した眼差しでなのはを見る。

 

 

「……行きます!!」

 

 

レイジングハートを構えながら魔力を収束するなのは。そして段々と魔力は溜まっていく。

 

 

「全力…全開!!!」

 

 

魔力の収束が終了し、レイジングハートを構えなおす。そして……

 

 

 

 

「スターライトォォ……ブレイカーーーーー!!!!!」

 

 

 

 

ドォォォォォオオオン!!!!

 

 

今までよりもさらに巨大で強大な桜色の砲撃が発射された。

 

 

「ひいぃぃぃぃいい!!!」

 

 

「「うおぉーーー!!!」」

 

 

余りの迫力にルーシィは悲鳴を上げ、ナツとグレイは興奮したような声を上げる。

 

なのはが放った砲撃は一直線に月へと向かい……

 

 

 

ドゴォォォォォオオン!!!

 

 

 

直撃した。そして……

 

 

ピキィ…

 

 

『おおおおっ!!!』

 

 

「えぇっーーー!!?」

 

 

「「割れたーーー!!!」」

 

 

「「うそだぁーーーーっ!!!」」

 

 

月にヒビが入ったのを見て、歓喜する村人、驚愕するナツ達。砲撃を放ったなのはでさえも驚愕していた。

 

 

ピキピキィ…

 

 

月のヒビが段々と広がり、そしてついに……

 

 

パリィィィイン!!

 

 

音を立てて砕けたのだった。だが、割れたそこからはさらに月が見ていたのだった。

 

 

「え!!?」

 

 

「月!!?」

 

 

「これは…」

 

 

「割れたのは月じゃない……空が割れた……?」

 

 

そう。割れたのは月ではなく、空を覆っていた何かだった。

 

 

「ど…どういうことエルザさん!?」

 

 

なのははエルザに問い掛ける。

 

 

「この島は邪気の膜で覆われていたんだ」

 

 

「膜?」

 

 

月の雫(ムーンドリップ)によって発生した排気ガスだと思えばいい。それが結晶化して空に膜を張っていたんだ。そのため月は紫に見えていたと言う訳だ」

 

 

エルザが説明を終えると、村人達が綺麗な光に包まれる。

 

 

「邪気の膜は破れ…この島は本来の輝きを取り戻す」

 

 

そして光が消え、そこに居たのは……先ほどと変わらず悪魔の姿をした村人達だった。

 

 

「けど…元に戻らねえのか……?」

 

 

「そんな……」

 

 

姿が戻らない村人を見てスバルは悲しそうな表情になる。

 

 

「いや…これで元通りなんだ」

 

 

「どういうこと?」

 

 

エルザが言った言葉になのはが問い掛ける。

 

 

「邪気の膜は彼らの姿ではなく、彼らの記憶を冒していたのだ」

 

 

「記憶?」

 

 

「『夜になると悪魔になってしまう』……という間違った記憶だ」

 

 

「ま…ま…まさか…」

 

 

「ひょっとして……」

 

 

エルザの言葉の意味を理解したルーシィとなのはは体を震わせる。

 

 

 

「そういう事だ。彼等は元々悪魔だったのだ」

 

 

 

その言葉にナツとスバルは愕然とし、ルーシィとなのはは悲鳴を上げた。

 

 

「ま……マジ?」

 

 

「う…うむ……まだちょいと混乱してますが…」

 

 

「彼らは人間に変身する力を持っていた。その人間に変身している自分を本来の姿だと思い込んでしまったのだ。それが月の雫(ムーンドリップ)による記憶障害」

 

 

「じゃあ、ギン姉達が平気だったのは?」

 

 

「奴らは〝人間〟だからな。どうやらこの記憶障害は〝悪魔〟にだけ効果があるらしい。あの遺跡に村人だけが近付けないのも彼らは悪魔だからだ。聖なる光をたくわえたあの遺跡には闇の者は近づけない」

 

 

「エルザさん……すごいなぁ」

 

 

スバルは途中から来たのにも関わらず、島の謎を全て解明してしまったエルザに尊敬の眼差しで見ていた。

 

 

「さすがだ……君たちに任せてよかった」

 

 

するとそこに一人の来訪者が現れた。

 

 

「魔導士さん。ありがとう」

 

 

それはナツ達をこの島に連れてきた張本人であり、死んだと聞かされていた男……ボボであった。

 

 

「ボ…ボボ……」

 

 

「「幽霊!!!」」

 

 

「ああああっ!!」

 

 

「船乗りのオッサンか!!?」

 

 

現れたボボにモカは呟き、スバルとルーシィとハッピーは互いを抱き合いながら震え、グレイは驚愕する。

 

 

「え…!!? だって…ええ!!?」

 

 

「胸を刺されたくれぇじゃ悪魔(オレたち)は死なねぇだろうがよ!」

 

 

驚愕する村人に「はははっ」と豪快に笑いながらそう言うボボ。

 

 

「あ…あんた船の上から消えたろ…?」

 

 

グレイがそう問い掛けるのと同時に、ボボの姿が消える。

 

 

「あの時は本当の事が言えなくてすまなかった」

 

 

声がした方を見てみると、ボボは羽を広げて空を飛んでいた。どうやら船から消えた理由は空を飛んだからだろう。

 

 

「オレは一人だけ記憶が戻っちまってこの島を離れてたんだ。自分たちを人間だと思い込んでる村のみんなが怖くて怖くて。ははっ」

 

 

笑いながらそう語るボボを見て、モカは目に涙を溜め、そしてボボと同じよう羽を広げてボボに向かって飛んだ。

 

 

「ボボーーー!!!」

 

 

「やっと正気に戻ったな親父」

 

 

それに続いて他の村人達も羽を広げて飛び始める。

 

 

「ふふ…悪魔の島……か」

 

 

「でもよ……みんなの顔を見てっと…」

 

 

「うん……悪魔っていうより、天使みたいだよね」

 

 

月の光をバックに飛び回る悪魔達を見て…エルザ、ナツ、スバルはそう呟いた。

 

 

「今夜は宴じゃーーー!!! 悪魔の宴じゃーーー!!!」

 

 

「なんかすごい響きねそれ……」

 

 

「あい」

 

 

「ははっ、裏で魔王って呼ばれてるなのはにはピッタリなんじゃねーの?」

 

 

「酷いよグレイ!! その呼ばれ方気にしてるのに!!!」

 

 

 

 

そして…村中をあげての〝悪魔の宴〟は夜遅くまで続いたのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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