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フィオーレ中の魔導士ギルドが集まって〝魔〟を競う大イベント…大魔闘演武の開催が5日後に迫ったある日……
―魔導士ギルド・
「大魔闘演武!!? ウチらは毎年2位!!! けしからんねえ!!! 冗談じゃないよ!! 今まではただの祭だと思ってたけどね!! 今年はそうはいかないよっ!!!」
そう言って腕や体をクルクルと回しながら怒鳴っている1人の老婆。この老婆こそ、
「リオン!! ジュラ!! ギンガ!! チンク!! 今回はアンタらも参加しな!!」
「まいったな、おばばに言われちゃ断れん」
「仕方ないわね」
「おばば様直々の指名だからな」
「たまには祭というのもよいものだな」
おばばの命によりリオン、ギンガ、チンク…そして聖十の称号を持つジュラの4人が大魔闘演武に参加すると聞いた瞬間……その他のメンバーたちが大いに盛り上がった。
「今年はリオンとジュラさんが出るのか!!」
「ギンガちゃんとチンクもだ!!」
「こりゃ優勝間違いねえぜー!!」
「ラミアがフィオーレ一だーっ!!!」
―魔導士ギルド・
「マジで!? ジュラの旦那が出場すんのか!?」
「そ……それはマズイ
「今回はウチらも優勝を狙ってたのにねぇん♡」
「では、コチラも
「ならついでだ、アイツも参加させるか。今の実力なら申し分ねえだろ」
風の噂で聖十のジュラが参加すると聞いて、ヴァイスと一夜がマスターボブと共に対抗策を話し合っており……彼らも優勝の為に隠し玉が存在するようであった。
―魔導士ギルド・
「マジで? 大魔闘演武にナツさんたちが出るの?」
「ええ……マグノリアではそんな噂がたってますよ」
「フローも聞いた」
「こいつァ楽しみになってきたな。な、ローグ」
「興味ないな」
「相変わらず釣れねーなァ。アインハルトはどうよ?」
「興味がないと言えばウソになりますが……私はただ、この拳の強さを証明するだけです」
現フィオーレ最強ギルドを誇るスティングたち
そして参加するギルドの中には……こんなギルドも存在した。
「7年も待たせおって…マカロフめ……妖精を黒く塗り潰す裁きの時がァ……来た。大魔闘演武が楽しみなだねぇ」
マカロフの息子にしてラクサスの父親……イワン・ドレアーが率いる魔導士ギルド〝
「同盟ギルドであるお前たちの働きにも期待しているぞ……カレン・フッケバイン」
「もっちろん♪ 依頼とあれば討伐・戦闘・暗殺・破壊工作でもキッチリこなすのが私たちのギルドよ。当然表向きは普通の魔導士ギルドだから、評議院にバレないようにだけどね♪」
そしてレイヴンの同盟ギルドであり……明るく陽気な雰囲気を持つ妙齢の女性……カレン・フッケバインが率いる魔導士ギルド〝
様々なギルドの思惑が交錯する中……大魔闘演武の開催が刻一刻と迫ってきていたのであった。
第170話
『
そしてその頃……海合宿へとやって来ていたナツたちは、シーズンが終わり人気のなくなったビーチで魂が抜けたように呆然としていた。
「なんという事だ……」
「大事な修行期間が」
「星霊界の宴会にたった1日参加しただけで……」
「3ヶ月があっという間に過ぎた……」
「どうしよう……」
そう……彼らに与えられていた3ヶ月もの修行期間が、星霊界でたった1日遊んだだけでパーになってしまったのである。
「姫、提案があります。私にもっとキツめのお仕置きを」
「帰れば」
ナツたちを星霊界に送った張本人であるバルゴは誰から罰なのか石畳に座らされ、膝の上に重石を乗せられると言う古風な罰を受けさせられていた。そんなバルゴの提案を、ルーシィは冷たくつき返す。
「大魔闘演武まであと5日だってのに!」
「全然魔力が上がってねーじゃねーか」
「今回は他のみんなに期待するしかなさそうだね」
「だな…それしかねえよ」
「はあ…」
レビィの言葉にアギトが同意し、ジュビアが残念そうに溜息を漏らす。
「またリリーやリニスとの差がひらいちゃうよ」
「「え!?」」
「アンタ、気にしてたの?」
意外な事を気にしていたハッピーにウェンディとキャロが驚き、シャルルが呆れたようにそう言う。すると、エルザが意気揚々と立ち上がって言い放つ。
「むうう!!! 今からでも遅くない!!! 5日間で地獄の特訓だ!!!! お前ら全員覚悟を決めろ!!!! 寝るヒマはないぞ!!!!」
「ひええ~」
「エルザの闘志に火がついた……」
闘志を燃やしながらとんでもない事を言い放つエルザに、ルーシィとユーノを初めとしたメンバーが戦慄していると……
「クルッポ」
「ん?」
そんなエルザの頭の上に、1羽のハトが降り立った。
「ハト?」
「足に何かついてるぞ」
「これは手紙ね。えーっと……」
そのハトの足には1枚の手紙が結び付けられており、それを取り外したティアナが手紙を広げて内容を読み上げる。
「『
◇◆◇◆◇◆◇
その後ナツたちは手紙の内容に従って、西の丘の吊り橋前へとやって来たのだが……そこにはナツたち以外誰もいなかった。
「ここで間違いないハズなんだけど……」
「誰もいねーじゃねーか」
「イタズラかよ……」
「だからやめとこって言ったじゃない」
誰も待っていない場所にこれ以上留まる理由がないので、さっさと帰ろうとするナツたち。すると……
キィィィイン!
「「「!」」」
突然壊れている橋が淡い光に包まれ始める。
「これは…」
「橋が……直った!!?」
「向こう岸に繋がったぞ!!!」
そして次の瞬間、まるで時が戻るかのように橋が修復され……断たれていた向こう岸へ渡れるようになったのであった。
「渡って来いという事か」
「罠の可能性もあるかもしれないよ」
「なんか怖いです」
「誰だか知らねーが、行ってやろーじゃねえか!!」
ユーノが罠の可能性があると懸念するが、今更引き返すわけにもいかないので、一行は橋を渡り向こう岸へと足を踏み入れた。
それからしばらく森の中を道なりに進んでいくと……
「「「!」」」
「誰かいるわ!!」
「みなさん、気をつけて!!」
一行の目の前にローブを身に纏い、フードを深く被った3人の人影が現れ……それを確認したティアナとジュビアが警戒しながら叫ぶ。
するとその4人の人物は……彼らにゆっくりと歩み寄りながら口を開く。
「来てくれてありがとう──
そしてその中の1人がそう言うと……3人は一斉にフードを脱いでその正体を明かした。
ゼレフの亡霊に憑りつかれ評議院を破壊した大罪人であった青年……ジェラール。
同じく
忘れもしない顔ぶれたちの登場に、エルザを初めとしたメンバーたちは驚愕する。
「ジェラール…」
「変わってないな、エルザ。もう…オレが脱獄した話は聞いているか?」
「ああ…」
ジェラールの問いに短くそう答えるエルザ。彼女は天狼島から帰ったその日に、ビスカからジェラールの事を聞かされていたのである。
「そんなつもりはなかったんだけどな」
「私とメルディで牢を破ったの」
「私は何もしてない。ほとんどウルティア1人でやったんじゃない」
「メルディ」
「ジュビア、久しぶりね!」
「(こんな素敵な笑顔を作れるようになってたのね)」
7年前はほとんど無表情であったメルディが明るく笑うようになっていた事に、ジュビアは嬉しそうに笑った。
「ジェラールが脱獄?」
「こいつらグリモアの……」
「まあ…待て、今は敵じゃねえ。そうだろ?」
「ええ」
グレイの問い掛けに対し、ウルティアが頷きながら答える。
「私の人生で犯してきた罪の数はとてもじゃないけど〝一生〟では償いきれない。だから…せめて私が人生を狂わせてしまった人々を救いたい……そう思ったの。例えばジェラール」
「いいんだ、オレもお前も闇に取り付かれていた。過去の話だ」
そんなジェラールの言葉に違和感を覚えたエルザは、彼にある事を問い掛ける。
「ジェラール…お前記憶が……」
「ハッキリしている。何もかもな」
それはつまり……ジェラールが失われていた記憶を取り戻した事を意味していた。
「6年前……まだ牢にいる時に記憶が戻った。エルザ……本当に…何と言えばいいのか……」
「楽園の塔での事は私に責任がある。ジェラールは私が操っていたの。だからあまり責めないであげて」
「……………」
ジェラールを庇護するようにウルティアがそう言うが、エルザはそれに対し何も言わない。
「オレは牢で一生を終えるか…死刑。それを受け入れていたんだ、ウルティアたちがオレを脱獄させるまではな」
「それって、今のジェラールさんには生きる目的が出来たって事ですか?」
「ウェンディ…キャロ……そういえば君たちが知っているジェラールとオレは……どうやら別人のようだ」
「あ、はい!! その事はもう解決しました」
キャロがジェラールに問い掛けると、彼は過去にウェンディとキャロ…そしてエリオを助けたジェラールは自分ではない事を伝え、それを聞いたウェンディがその件についてはすでに解決した事を伝えた後……ジェラールは改めてキャロの問いに答える。
「生きる目的…そんな高尚なものでもないけどな」
「私たちはギルドを作ったの。正規でもない、闇ギルドでもない独立ギルド〝
「独立ギルド?」
「どういう事?」
「ギルド連盟に加入してねえって事か?」
ウルティアの独立ギルドを立ち上げたという言葉に、レビィとハッピーとアギトが疑問符を浮かべる。
「
「ここ数年で、数々の闇ギルドを壊滅させているギルドがあるとか」
そんな中で彼女たちのギルド名を聞いた事のあるジェットとドロイが驚いたように言葉を口にする。
「私たちの目的はただ1つ」
「ゼレフ…闇ギルド…この世の暗黒を全て払う為に結成したギルドだ。二度とオレたちのような闇に取り付かれた魔導士を生まないように」
「おおっ!」
「それって結構すごい事じゃない」
ジェラールたちのギルドの理念を聞いたナツとティアナは、そう感嘆の声を上げる。
「評議会で正規ギルドに認めてもらえばいいのに」
「脱獄犯だぞ」
「私たち元
「それに正規ギルドでは表向きには闇ギルド相手とはいえ、ギルド間抗争禁止条約がある。オレたちのギルドの形はこれでいいんだ」
グレイのそんな言葉に苦笑しながら答えるジェラールとメルディ。いくら理念が立派だとは言え、脱獄犯と元グリモアのメンバーで構成されたギルドが評議院で認められる訳がなかった。
「……で、あなたたちを呼んだのは別に自己紹介の為じゃないのよ。大魔闘演武に出場するんだってね」
「お…おう」
「一応ね」
本題の話に入ったウルティアの問いに対し、歯切れが悪そうにナツとティアナが答える。
「会場に私たちは近づけない。だからあなたたちに1つ頼みたい事があるの」
「誰かのサインが欲しいのか?」
「それは遠慮しとくわ」
途中で余計な茶々が入ったが、ウルティアは軽くスルーして、彼女に代わってジェラールが彼らにある頼み事を伝えた。
「毎年、開催中に妙な魔力を感じるんだ。その正体をつきとめてほしい」
「なんじゃそりゃ」
「大魔闘演武にはフィオーレ中の魔導士ギルドが集まるんでしょ? 妙な魔力の1つや2つあるもんなんじゃないの?」
ジェラールのそんな頼み事に、疑問符を浮かべながらそう問い掛けるティアナ。
「オレたちも初めはそう思っていた。しかしその魔力は邪悪で、ゼレフに似た何かなんだ。それはゼレフに近づきすぎたオレたちだから感知できたのかもしれない」
「ゼレフ……」
天狼島で会った最凶の黒魔導士ゼレフ……その名を聞いた瞬間、ナツたちは表情を歪める。
「私たちはその魔力の正体を知りたいの」
「ゼレフの居場所をつきとめる手掛かりになるかもしれないしな」
「もちろん、勝敗とは別の話よ。私たちも陰ながら
「雲を掴むような話だが、請け合おう」
「助かるわ」
「いいのかエルザ」
「妙な魔力のもとにフィオーレ中のギルドが集結しているとあっては、私たちも不安だしな」
そう言ってエルザは
「報酬は前払いよ」
「「食費!!」」
「家賃!!」
「いいえ、お金じゃないの」
報酬と聞いてナツとハッピーとルーシィの目が変わったが、ウルティアはその報酬が金ではないと言い切る。
「私の進化した時のアークが、あなたたちの能力を底上げするわ」
「「「え?」」」
「パワーアップ……といえば聞こえはいいけど、実際はそうじゃない」
ウルティアの話によると……魔導士にはそれぞれ魔力の限界値を決める器のようなものが存在する。
たとえその器の魔力が空になってしまっても、大気中に存在する魔力の素となるエーテルナノを体が自動的に摂取して、しばらくすればまた魔力の器は元に戻る。
だが最近の研究で……魔導士の持つその器には普段使われていない部分が存在する事が判明したらしい。
それが誰にでもある潜在能力〝
「時のアークがその器を成長させ、
「「「おおーーーっ!!!!」」」
「ぜんぜん意味わかんねーけど」
3ヶ月の修行期間がパーになり、諦めかけていたパワーアップの糸口が掴めた事に歓声を上げるナツたち。
「ただし……想像を絶する激痛と戦う事になるわよ」
「あああ…」
「目が怖いです……」
目を妖しく光らせながらそうリスクを伝えるウルティアに、怯えるウェンディとキャロ。
「かまわねえ!! ありがとう!!! ありがとう!!!! どうしよう!? だんだん本物の女に見えてきた!!!」
「だから女だって」
「まだ引き摺ってやがったのか」
「ってか、無闇に女の体に抱きつくんじゃないの」
「うごっ」
感謝しながらウルティアに抱きつくナツだが…未だに彼女の事を男だと勘違いしており、それに対し呆れるグレイと、マフラーを引っ張ってウルティアからナツを引き剥がすティアナ。
そして一同が笑いあう中……エルザだけが、真剣な面持ちでジェラールを見据えていたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「か……は……がっ…ああ……ぎぃいいいいい!!!!」
「「「……………」」」
その後……
「服…脱がなきゃ魔法陣…描けねーのかなァ」
「グレイはそれ…心配する必要ないでしょ?」
そんなナツの様子を……グレイやユーノを初めとした他のメンバーはサァーっと血の気が引いたような表情で眺めていた。
「がんばって。潜在能力を引き出す事は簡単じゃないのよ」
「うがぁぁああああああああああああ!!!!」
そう言って魔法をかけながら声援を送るウルティアだが、ナツの絶叫は止まない。
「ちょっと……アレ大丈夫なの?」
「バキバキって音がすっごい聞こえるんだけど」
「どんだけの痛みなんだよ」
「感覚
「ふざけんな!!」
「(ああ……軽いジョークも言えるようになったのねメルディ)」
苦しむナツの心配をしながらそう呟くティアナとルーシィ。メルディの冗談に全力でツッコむグレイ。そしてそんなメルディを見て嬉しそうに微笑むジュビア。
「私たちも…アレ…やるの?」
「やる…しかないんだろうなぁ」
「……………」
「泣きそうです」
「っていうか怖いです」
「「オ…オレらには関係ねえし、帰ろうかな」」
「ナツ……」
顔色を青くしながらそう呟くレビィとアギト。いつもの無表情と思いきや、若干顔色が悪くなっているルーテシア。そしてナツの様子を見て泣きそうになる(というかすでに泣いている)ウェンディとキャロ。すでに帰ろうとしているジェットとドロイ。苦しむナツを心配そうに見据えているハッピー
メンバーたちの反応は様々であった。
「そういえばエルザは?」
「ジェラールと2人でどこか行ったよ」
「2人で!!? そういう事ならジュビアたちも」
「どーゆー事だよ」
「(ああ……やっぱり恋は進展してないのね)」
この場にエルザがいない事に気がついたシャルルの問いにハッピーが答え、それを聞いたジュビアがグレイを連れて行こうとするが冷静にツッコまれ却下される。その様子を見ていたメルディは、2人の関係がまったく進展していない事を悟ったのであった。
「エルザさん……」
そしてその場には……ティアナは心配そうな声が小さく響いたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
その頃……エルザとジェラールは、みんなとは少し離れた夕日に照らされている浜辺に2人っきりで来ており、エルザは物憂げに地平線を眺め…ジェラールは彼女と少し距離を置いて岩場に腰掛けていた。
「記憶が戻ったと言ったな、ジェラール」
「ああ」
「それはつまり、シモンの事も」
「………オレが殺した」
記憶と取り戻したジェラールは…楽園の塔で仲間であったシモンをその手にかけた記憶もハッキリと思い出しており、エルザの問い掛けに静かにそう答えた。
「ニルヴァーナの事は?」
「覚えてるよ。記憶を無くした自分……という感じで覚えている。不思議な気分だ」
「私は昔のお前だと思って接していいのか?」
「そうしてもらえたら嬉しいが……シモンの件もある。オレとは距離を置いてくれて構わない」
そんなジェラールの言葉にエルザは複雑な表情で目を伏せ…ジェラール本人も悲しげな表情で俯いていた。
「お前がシモンの敵を討ちたいと望むなら、オレは命を捨てる覚悟もある」
「シモンがそんな事を望むと思うか? 闇ギルドを殲滅する為のギルドを立ち上げた。それがお前の罪滅ぼしであり、お前の覚悟だろ?」
「………よくわからないんだ」
「何だと!!?」
「確かに最初は罪滅ぼしのつもりで
ジェラールがそう言った瞬間……エルザが彼の頬をはたき、パンッと乾いた音が浜辺に響き渡る。
「何を腑抜けた事を言っている」
「お前ほど強くないんだ、オレは……」
「強くなければ生きていてはいけないのか? 違うだろ!!!! 生きていく事が強さなんだ!!!! お前は昔のジェラールじゃない!!!! 生きる事に必死だったあの頃のジェラールじゃない!!!!」
「そうかもな」
「貴様!!!」
ジェラールのそんな態度に憤慨したエルザは彼の胸倉を掴むが、その際に足元にあった小さな岩に躓いてしまう。
「!」
「エルザ!」
「「うあああ!!」」
そのまま前のめりに倒れそうになるエルザを受け止めようとするジェラールだが……受け止めきれずに2人そろって後ろにあった転げ落ちていってしまう。
そして2人が落ちていった先では……ジェラールがエルザを地面に押し倒すような形で止まっていた。
さらにはその周囲にあった植物の特性なのか……植物から噴出された雪のような粉が舞っており……それが夕日に照られて淡い金色に輝きながら2人にそっと降り注いでいた。
そんな状態でエルザとジェラールは互いに見詰め合っていると……ジェラールがゆっくりと口を開く。
「お前の言葉はいつも正しい」
「そんな事はない……不器用なりに精一杯生きている──それだけだ」
「エルザ……」
「もう…会えないかと思っていた……ジェラール」
そう言って片手で顔を覆いながら、静かに一筋の涙を流すエルザ。
すると2人は……まるでお互いに引き合うかのように、お互いの顔を近づけた。
もう二度と会う事はない……そう思っていた。
だが今……その相手が目の前にいる……エルザとジェラールにとってこんなに嬉しいことはない。
もう決して離れぬよう……もう決して引き裂かれぬよう……その誓いをたてるかのように2人は互いの唇をそっと近づけていく。
そして夕日が照らす中……エルザとジェラールの影が重なり、互いの唇が触れ合った──
──と思われたその瞬間、ジェラールが寸でのところでエルザの体を引き剥がしてしまった。
「!」
「できない……婚約者がいるんだ」
「~~~~~!!!?」
ジェラールに婚約者がいる……それを聞いた瞬間、エルザは激しく動揺する。
「あ…いや……私は…その…そーゆーアレではなくて……」
「いや…オレの方こそ…その……すまない……」
「そ…そうか!! それはめでたいなっ!! し…知らなかったよ……そうだよな……うん…7年も経ってるんだ…うんうん」
「……………」
動揺しながらまるで自分に言い聞かせるようにそう言うエルザだが、バツが悪そうに視線をそむけるジェラールの姿を見た瞬間……何かを察したかのように柔らかい笑みを浮かべた。
「大事な人なのか?」
「あ…ああ……」
「だったら、その人の為にも生きなければな」
「──そうだな…」
◇◆◇◆◇◆◇
「「「ああああああああああっ!!!!」」」
その夜……浜辺にある小屋でウルティアの魔法を受けたメンバーたちが、夕刻のナツのように絶叫を上げながら激痛と戦っていた。
「おかげ様で、みんな動けそうにない」
「何でアンタは平気なの?」
同じ魔法をかけたにも関わらず、ケロリとしているエルザに対してウルティアは少々引いていた。
「ギルドの性質上、一箇所に長居はできない。オレたちはもう行くよ」
「大魔闘演武の謎の魔力の件、何かわかったらハトで報告して」
「了解した」
「競技の方も陰ながら応援してるから、がんばってちょうだい」
「本当は観に行きたいんだけどね」
「変装していく?」
「やめておけ。それじゃ…また会おうエルザ」
「バイバーイ!」
「みんなによろしくね。グレイの事も、お願いね」
そう言ってその場から立ち去っていくジェラールたち3人。そんな3人を……エルザが静かに見送ったのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
その後…エルザたちと別れたジェラールたちは、途中で見つけた洞窟で野宿をしていた。
「謎の魔力…
「ま…あのコたちなら何とかしちゃうかも…って期待もあるのよね」
「うん。それよりさジェラール、どうして婚約者がいる……なんてウソついたの?」
「き…聞いてたのか!!?」
そう…ジェラールがエルザに言った婚約者の話は真っ赤なウソだったのである。
「少しは自分に優しくしてもいいんじゃないの? それとも自分への罰のつもり?」
「〝罰〟こそが
優しい表情でまるで自分に言い聞かせるようにそう語るジェラール。
「……にしてももっとマトモなウソなかったの?」
「サイテーね。なーにカッコつけてんのかしら」
「!?」
しかしウルティアとメルディの反応はとても冷たいものであった。
◇◆◇◆◇◆◇
場所は戻り……ジェラールたちを見送って1人浜辺に立ちすくむエルザ。
「(婚約者……か。ウソが下手なのは相変わらずだな。昔と何も変わらない……)」
エルザはジェラールの婚約者の話はウソだと見抜いていた。見抜いていた上で、その話に合わせたのであった。
「(これでよかったんだ。これが私たちの答え……)」
スッキリしたような……それでいてどこか寂しい気な表情を浮かべるエルザ。
「見て見てエルザー」
「!」
するとそんなエルザの側にいつの間にかハッピーが来ており、木の棒を使って砂浜に何かを描いていた。
そしてそれは……真ん中がヒビ割れたハートマークであり、それを描いた本人であるハッピーもバカにしたようにエルザを見て笑っていた。
直後にハッピーがエルザによって空の彼方まで蹴り飛ばされてしまったのは言うまでもなかった。
つづく
本当は魔女の罪にもリリカルキャラを入れたかったんですけど、該当するキャラがいなかったので断念しました。